転生したから世界一のサイドバック目指す 作:口の端にほっぺが!
小学五年生を迎えた。
とは言っても、特に何が変わる訳でもない。学校は相変わらずイージーモードだし、塾の勉強も時間が取られること以外はさほど苦しくない。週5回のクラブ練習にも精を出しているし、頻繁に行われる試合にも慣れてきたところだ。
強いて言うなら、2ヶ月前のバレンタインデーで貰ったチョコが増えたことだろうか。この年で既に前世で貰った数(親戚チョコを含む)にトリプルスコアをつけている。思えば女子に話しかけられる回数も増えてる気がする。俺が自意識過剰じゃなければ。
やっぱり顔かよ、と呆れる。けれど俺のことなのでどこにも不満は無い。神様仏様マラド○ナ様*1バンザイといった具合だ。最高だぜ!
最近の習慣も、半年前とそこまで変わらない。自分のレベルを上げつつ、海外の下部組織の入団試験を探すのだ。
ちなみに、冬の強化合宿ではかすりもしなかった。2歳違うだけでフィジカルどれほど違うかというのを、文字通り体で判らされた。体の使い方を上手くすればいいのだろうが、それも一朝一夕にできるものでも無い。
ただ、最近は身長を伸ばすのにいいと呼ばれることを全部試している。父が190cm越えだから、希望はあるはずだ。155cmの母なんて見えない。この時期はニコニコで見たい動画や追いたい配信が沢山あるが、そういうのは大抵深夜にやるし見る時間もないので諦めている。無念なり。
一番変わったことといえば、新中一が引退したために新しくクラブに加入する選手が来ることである。かなり早い時期のステップアップだったため俺とツカサの他に同級生はいなかったが、今年で5年生ということで増えそうだ。海外に行く前にレギュラーで日本一を取りたいから、新しく入ってくる彼らとの連携を深めるのも大事なことだ。
ちなみに、去年の最高成績は全国大会グループステージ敗退だ。春と冬でふたつの全国大会があるが、どちらも決勝トーナメントには進めていない。得失点差で涙を呑んでいた。
6年生が抜けた後の新しいレギュラーは発表されていないが、俺が入ってることを祈るばかりだ。
「あ、パワプロまたお辞儀してる」
「まじ?むっずかしいなあ」
ちょうど今は、ツカサたちチームメイトとヘディング練習をしながら監督たちと新入部員を待っているところだ。
それっ!
うーむ。なかなか思った通りの場所に落ちてくれない。難しいなあ。
「ほらまた......。パワプロ、おでこで反射させるの。威力はその次」
他のチームメイトからも「控えめに言ってド下手」や「スマブラのハンマーみたい」との意見が上がる。ちくしょうめえ!
背が低くてもヘディングは打てるようにしとけというコーチからの指示で始めたことだが、前世でも今世でも経験のないことに苦労していた。
ちなみに160cmを超えたツカサは、セットプレーのターゲットになるほどには上手かった。
そんな彼女の意見の通り反射角入射角を考えておでこに当てようとして、ボールが目にもろに当たった。角度に意識を引っ張られすぎた。
当然チームメイトは笑うし、ツカサもなにしてるのと言いたげな表情で───実際にそう言って目の様子を見てくれる。幸い砂が目に入ることにはならなかったが、永遠にヘディングができないんじゃないかという不安は覚えた。ガッデム。
そのままツカサたちに笑われ、慰められていると15人ほど子供を連れた監督陣が現れる。
「そのままでいいぞ、パワプロがボールにお辞儀してるのは見えてたし、まだ笑い足りないだろうからな」
「いやいや監督......」
監督のからかいに、途端に笑いが巻き起こる。コーチたちも笑いに混ざった。くそう。
しばらくして、監督は選手の紹介に入る。
「というわけで、お前らお待ちかねの新しいメンバーの紹介だ。お前らを追い越してく奴らの名前だぞ?しっかり覚えとけよ?」
「んな簡単にポジション譲らねーよ」
何人かから返事が上がり、場は温まった。それを感じ取って、監督は選手に場を譲った。
長かったので省略するが、小六が7人、小五が6人、小四が2人だった。女子選手も3人いて、若干浮き足立ってるチームメイトも出てくる。
同学年の5年生では、FWが1人、MFが2人、DFが2人、GKが1人の内訳だ。6人のうち1人だけツカサより背が高く、1人だけ俺より背が低かった。......クラスでは真ん中以上はキープしてるんだけどなあ。
その後はいつも通りの練習を始め、コーチたちが丁寧に説明をしながら元々いる選手たちがリードしてスムーズに進める。
2時間ほどかけて行った練習の最後は、レクリエーションということで7人4チームで総当たり戦を行うことになった。今日はポジションもシャッフルして行うらしい。
キャプテンを決めて、7人を振り分けて。そしてくじ引きが始まった。キーパーは嫌だキーパーは嫌だキーパーは嫌だ......。
俺が引いたのは、CFだった。今までこういうゲームでしかやった事のないポジション。もちろん上手くやれるとは思えない。
しかし、監督は楽しむつもりでやるように言った。自分の技術をフルに使ってみろとのことだ。俺は突破力のあるドリブルが得意なわけじゃないし、ひとりで打開する力を持ってる訳でもない。ミドルシュートや下がって中盤で受けてスルーパスを狙っていくことにしよう。
「俺はパワプロ。裏抜けより出来れば足元に欲しい。そっから捌く」
キャプテンの集合で集まった6人に、自分がやりたいプレーを伝える。新入部員も二人いて、彼らはしっかり頷いていた。新人には割と「俺の方がうめーし、俺が点決める」みたいなやつがいがちなのだが、このふたりはそうでも無いらしい。
その片方の、髪も眉毛も深緑色のイケメンが発言する。
「俺は
ハキハキと周りの顔を見ながら意志を述べた。なんだか漫画のキャプテンキャラだな。深緑の地毛なんてそうそういないぞ? 時間が経てば黒バスの緑間みたいになったりするだろうか。顔のタイプは違うけれど。
彼は運良く本来と同じポジションを引いたようで、割と自信があるようだった。ドリブルと裏抜けが得意と言っていたし、左SBとしてはどれくらいできるのかも気になるところだ。ガタイは俺より一回り大きいし、イノシシタイプだったら厳しい可能性はある。
まあ、今日は味方なのだ。その得意のドリブルとやらを、存分に活かしてもらおうじゃないか。
試合は直ぐに始まる。4チームなのでふたつのコートを使って一気に試合をする。最初のチームはDFに1人本職がいて、それ以外はFWが多めだ。前からガンガンプレスをかけて、ショートカウンターを狙ってくる。
相手MFに入っているのが、去年のレギュラーでプレスの司令塔をしていたやつだから、こちらのチームは上手く運べない。なんなら味方GKも元々MFで、無理やり足技ではがそうとしている。同じMFなのにここまで違うものなのか。うちのキーパーなんてい○くらチャレンジ*2じゃねえか。
......イニ○スタってこんな気持ちだったんだろうか。
結局GKでボールを奪われ、そのまま点を決められた。試合再開後も同じように押し込まれ、前線になかなかボールが来ない。
WGが高さをとってくれているので俺も遠慮なく中盤に下がってきているのだが、相手MFに上手くコースを消されてしまっている。こんなときどうすりゃいいんだろうか。
あちこちに動いてみるも上手くいかず、焦れていると味方DFのクリアボールがディフレクトして俺の足元に収まる。が、その瞬間に本職DFが覆いかぶさってきた。体の自由を取り戻せず、危うくボールを奪われそうになる。
「......ええいままよ!」
更にはプレスバックしてきた相手選手も見えたため、右足で進藤がいるはずの方へ飛ばす。
右足でのヘロヘロのボールだ。届かずにカットされるだろう。
だがもし届いたのなら、あれだけ期待させていたドリブルを発揮しろよな......!!
そんな俺の心の声が伝わったのか、相手よりひと足早くボールを受け取りに来た進藤は、「任せろ!」と叫んでゴールを見据える。
彼に対峙するもう1人のDFは本職がFWだ。進藤が縦の突破をしようと体の向きを変えれば、直ぐに縦を切りに来た。進藤はその瞬間に進路を変え、一気にスピードをあげる。DFは体勢が崩れて思わず転けてしまう。
が、すぐさま本職のDFが進藤の前に立ちはだかった。先程まで俺を抑えていたのだが、レフェリーに見られないタイミングで、ファウルギリギリの強さで俺を倒した。その勢いも使って進藤に追いつき、俺は転んだせいでゴール前に駆け込むことが出来ていない。味方がやるとありがたいが、相手にやられると超ムカつくプレーだな、これ。
その結果、進藤はサポートがないまま本職とGKの2人と対峙している。進藤も減速し始めた。味方の上がりを待つのだろう。
悪くない判断だな、と思っていたら進藤はDFを交わしてゴールネットを揺らしていた。キックフェイントだ。本職さんをフェイントで釣って、強烈なシュートをゴールに突き刺した。
味方相手全員が驚きの歓声をあげる。進藤も嬉しそうで、味方と強烈なタッチをしてハグをしている。
もちろん俺の方にも来た。
「パワプロ、パスありがとうな」
「いや、しん......尊史が決めなかったらただのクリアだった。次はもっといいパスよこす」
「おう!俺もゴールするよ」
その明るさも、爆発力もスーパーなドリブルとシュートも全部が主人公みたいで直ぐに目に焼き付けられた。強烈な光で目がやられそうだ。
俺も、負けちゃいられない。
トラップ出来たら大チャンスの理不尽キラーパスをくれてやる。
「春と冬にふたつの全国大会」
現実なら夏にもフットサルの大会があるのですが、この世界ではないらしいですわ!