ASSAULT ARMOR   作:小糠雨

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 自分が読みたい感じのVRロボゲーものが見当たらなかったので書きました。
 とりあえず2話くらいまでは近日中に上がると思います、だいたい書けてるので。あとはわかりません。アーマードコアの新作が出るまではある程度は情熱があると思います。

 また作品概要にも書きましたが、本作に限らず私の作品は「自分が読みたい感じのが見当たらなかったから自分が読んで楽しむために書いた」ものを、せっかく書いたから他の人にも見てもらおっかな~という気持ちで公開しています。「ここがおかしい」「ここをこうしろ」「こんな展開やめろ」「こんなキャラを出せ」等言って頂く分には構いませんが作品に反映は一切しません。

 以上ご了承頂ける方のみ閲覧くださいますようお願いします。



馬鹿がジェットでやって来る

 

 フルダイブのVR技術が確立されてより十数年。

 軍事・医療の分野から発展していった技術ではあれど、西暦二〇〇〇年頃には漫画などでフルダイブVRゲームが扱われたことからもうかがえるように、ゲームの世界に入り込むというのはゲーマーの夢であることは疑いない。

 であれば、ゲーム業界がVR技術に手を伸ばすのは必然であり。

 現在においてはRPG、ガンシューティング、レース、牧場経営、山羊になる――等々、あらゆるジャンルのフルダイブVRゲームが登場した。

 その中でも特別に人気――というわけではないが、コアなファンを多く抱えるのがメカアクションだ。

 人型兵器に乗って操縦したい、という欲求を持つ人間は案外多いのである。

 

 さて、そうした中で半年ほど前に発売されたVRMMOメカアクションゲームがある。

 このゲームの売りのひとつが「機体作成の自由度」であった。

 基本的にプレイヤーは頭、胴体、右腕、左腕、脚の五つの部位を自由に組み替えて機体を作る。これに加えて武器、FCS、ジェネレーター、機体各部に仕込まれるブースター、コクピットの内装や操縦方式、果てはサポートAIの搭載の有無等々、細かいところまで様々あるが、とにかく自分好みの機体を作ることができる。

 そしてそのためのパーツは膨大な量が用意されているのだが――なんとこのゲーム、そうしたパーツをもプレイヤーが好きなように製作できるのである。外観や性能、内部構造に至るまで、文字通り好きなように、だ。

 無論制約はある。

 パーツの組み換えで自分だけの機体を作るというゲームコンセプトがあるため、例えば全身一体型のワンオフ機というのは作れない。必ず五つの部位に分けられるようにしなければならないし、五つの部位でフレームが構成されていなければならない。

 また既存パーツとの接続も可能でなければならない。コネクターやジョイントの無いデザインにしたいと思っても絶対にできないようになっている。

 ただ、細かいことはともかく大きな制約はこれだけだ。販売開始からそれほど経っていないにもかかわらず、既に多くのプレイヤーが多種多様なパーツを作って流通させているようだ。実用性はともかく。

 そしてこの機体作成の自由度が発揮されるのはゲームを始めてある程度資金や資材が手に入ってから――では、ない。

 なんとキャラクター作成時、つまり自分の初期機体を決める時点からである。全てのプレイヤーが、自らの命運を預ける最初の機体をゼロから生み出せるのだ。ゲームを始めた後だと資金や資材、設備等を揃える必要がある。

 また、この時作るパーツのパラメータは構造や材質などからシステムが決定するが、それに加えてパーツごとにポイントが与えられ、これを割り振ることでチューンすることができる。

 このチューンもゲーム開始後に行おうとするとスキルや資材、設備等が必要であるため、ゲーム開始時のみとはいえ手軽に出来るのは破格と言え、ある意味一番の売りであった。

 オンラインゲームである以上長く遊んでもらわなければならないため、このとき作れるパーツの性能は少なくとも〝総合的な性能〟では初期機体の域を大きく逸脱はしないらしいのだが。

 

『ようこそルーキー。これより傭兵登録を開始します』

 

 そんなゲームの世界に今日、俺は降り立つ。

 眼を開ければそこはいかにも電脳空間ですといった感じの場所で、俺は床も無いのに確かに床の感触を感じながら立っていた。

 

『まずはあなた自身の情報を登録します。性別は現実と同じとなり変更は出来ません。また、容姿はリスク管理の観点から現実とは違ったものとすることをオススメしますが、体格を大きく変更すると動作に違和感を覚える可能性があります』

 

 アナウンスに従って目の前に浮かぶ半透明なパネルを操作する。

 名前は……決めてなかったな。どうしよう。

 でもなんというか、変な名前にするのは嫌だな。せっかくロボットに乗って戦うんだ、敵に「もつ鍋」とか「ドジョウすくい」みたいな名前を見せたくないし、皮算用だがもしそれなりに勝てるようになってきたときにそういう名前が自分のものとして広まるのも嫌だ。

 となると、普通の名前っぽいのが良い。それも俺の本名とは全く似てないのが。

 

「名前は……カシュ・ハーゼルヌス、と」

 

 カシューナッツとヘーゼルナッツ……ではなくてだな。

 カシュはドイツ語圏の男性の名前だ。ネットサーフィンをしている時だったかに「黒い鳥を意味する」みたいな記述を見たことがあって、かっこいいじゃんって思ったのもあって印象に残ってたやつだ。

 ハーゼルヌスは……まあ、その。ヘーゼルナッツをドイツ語にしただけだ。さっき食べたんだよチョコレート。他の理由もあるけど。

 でもまあ、良い感じにドイツ語のフルネームっぽくなったと思う。たぶん。

 

 で、次は容姿だな。

 人型兵器を動かすだけのゲームなら自分の顔も相手の顔も見えないから容姿なんて要らないんだろうが、このゲームはそうではない。

 機体を降りて街を歩くこともあれば、通信で顔を映すこともあるし、生身で戦うことも少ないがあると聞いている。

 そうした場合にハゲののっぺらぼうというわけにもいかない。名前だけでなく容姿でもある程度プレイヤーの見分けがつかないと不便だし、世界観的にも支障が出る。

 しかしテンプレートを用意するにしたって限度はある。かと言ってパイロットスーツと顔の見えないヘルメット姿などにしたところでハゲののっぺらぼうと変わらないし味気ない。

 というわけで、ロボのみならず自分の身体をもクリエイトしなければならない。

 

「名前がアレだから、とりあえずヨーロッパ系の容姿にして……せっかくだからリアルじゃできない髪型でもやってみようかな。身長はいじると感覚変わりそうだからそのままにしとこう。あとは……」

 

 という感じでパネルに表示される項目をこねくり回すこと一〇分ほど。

 ハシバミ色の瞳で、肩甲骨あたりまである灰色の髪を首の後ろで雑にまとめ、顎に無精ヒゲを生やした、冴えない感じのひょろい青年が誕生した。ヒゲのせいで老けて見えるがまあギリギリ二〇代に見えるかな、という感じだ。まあ外国人の外見年齢がどう見えるかに自信は無いので個人的な感想になるが。

 

『傭兵情報の登録完了。続いて機体登録に入ります』

 

 待ってたぜぇ……この瞬間をよォ!!

 半透明のパネルに表示される項目が切り替わる。

 既存パーツからの選択か、自作か。俺は迷わず自作を選んだ。

 自作する自信が無い人や自作に興味が無い人も居る。そうした人のために既存パーツからも組むことができるし、それでもどう組んでいいかわからない人のためにテンプレートも用意されている。

 だが俺には乗りたい機体があって、そのためには既存パーツは役者不足なのだ。自作するより道は無く、その手間を惜しむつもりも無かった。

 

「えーと、事前に作ったデータを読み込むには……これだな」

 

 とはいえ既存パーツのガワを使って内部の配線やらをいじるならともかく、実際にデザインからこだわって自作すると時間がべらぼうにかかる。ゲーム開始時の登録で何時間も使うのは不毛だし、ゲーム内でパーツを作るときだって貴重な余暇をそればかりに使いたくないという人はたくさん居た。

 そこで運営はゲーム外でパーツを作れるアプリをリリースした。現実のちょっとした隙間時間にちょっとずつ作れるように。

 といってもこのアプリで出来るのは基本的なパーツデータの作成だけだ。実際にゲーム内で使うには資材を消費して作らなければならないし、配線やらをこだわったりチューンしたりしたいならゲーム内でする必要があるし、設定できる素材に関しても既製品に一般的に使われているようなものに限られる。今は初期機体作成なので関係ないが。

 

 データの読み込みが完了すると、俺の前に機体の立体映像が浮かび上がった。バスケットボールくらいのサイズで、SFによくある3Dホログラムといった感じだ。

 全体的に細身だ。装甲は最低限で、フレームが見えているところもかなりの割合で有る。

 頭部はバイザータイプのセンサーを搭載していて、左右の側頭部からブレードアンテナが後方上へと伸びている。ウサギの耳をイメージしたんだが、どちらかというと角っぽいな……。

 胴体はかなり小さめだ。というのも、コクピットブロックとジェネレーター搭載スペース、そしてそれらを支えるフレームをつけたあと、主に前方に薄い装甲をつけただけだからだ。素人なりに空力なんかを考えて流線形かつ尖った装甲にしたし、コクピットのある重要な部位なので他の部位よりは厚くしてあるが、薄いものは薄い。

 腕もほぼフレームだ。肩には胴と同じく前方に向かって尖った流線形の装甲が、上腕・前腕にはともに前側にゆるくカーブした装甲がついているが、他はほぼフレーム剥き出しである。肘の外側なんかには申し訳程度に装甲があるが。

 脚はいわゆる逆関節。普通の二脚より関節がひとつ多い、鳥脚とも言われるタイプ。これまた関節以外は前にしか装甲が無い。関節には曲がるのとは逆側に厚めの装甲がある。

 総じて脆そう以外の評価が出なさそうな機体。しかし俺の理想をこれでもかと詰め込んだ機体。

 

 そして各種装備も趣味に極振りしている。

 右腕につけるのはレーザーブレード。マニピュレータに持たせるのではなく前腕に取り付けるタイプ。刀身の長さと威力の数値が可能な限り高くなるように設計してある。

 左腕にはバカでかい拳銃だ。いわゆるハンドキャノンと呼ばれる類いの。五発入るリボルバータイプで、本当にでかい。全長がこの機体の前腕よりちょっと長いくらいにはでかいので、グリップとその他の部分のサイズがアンバランスだ。だがそれが良い。

 あと銃身下部にちょっと大きめの銃剣がついているが、このゲームは割とリアルらしいのでたぶん使うと銃身が歪む。なので非常時か弾を撃ちきった後に使うかも知れないくらいの感覚でつけた。

 さらに俺はフィクションだからこその無茶として、このハンドキャノンの弾をスナイパーキャノンのものにしている。ゲーム内で流通しているスナイパーキャノン全般に使える汎用弾だ。リボルバーで使えるのかって? アプリがエラー吐かなかったから使えるんだろ、たぶん。まあフィクションだし。

 撃ったら反動で大変なことになりそうだが……まあゲームだし! 練習すればなんとかなる! たぶん!

 そして背部には大型のブースターが左右にひとつずつ。これも本当にでかくて、全長は機体の身長くらいある。速そうに見えることを意識して流線形のスマートな形をしていて、使うときは基部付近からガバッと開いてドデカいバーニアが顔を出す。

 そしてこのブースター、上下左右にぐりんぐりん動く。左右どちらも外側には九〇度動く、つまり完全に横を向けられる。それにこちらが意図した効果があるかどうかは――まあ、使ってみるまでわからない。

 ついでに腰の横にも左右両方にブースターがついている。こちらは先に述べたハンドキャノンくらいの大きさだ。左右にはあまり動かない代わりに上下方向に三六〇度回転できるので、前を向かせることもできる。

 

 以上が内装以外の機体構成だ。

 装甲の色はマゼンタ。フレームと武器は黒。頭部メインセンサーをはじめとする機体各所のセンサーの光は青。

 

「美しい……」

 

 少なくとも外観は理想を体現した機体の立体映像を目の当たりにした俺はこの時点で感動にむせび泣きそうだったが、これからがある意味本番だ。チューンで俺の求める性能まで上がればいいんだが。

 

 頭部の性能はカメラ性能と妨害耐性にポイントを振る。頭部に使えるポイントのうち八割がカメラ性能、残りが妨害耐性だ。

 胴はとにかくエネルギー伝達率に極振りだ。これが低いとエネルギーのロスが激しく、俺の機体の場合コンセプト的に死に直結する。

 右腕は運動性能。ブレードを正確かつ素早く振れるように。ただし一割ほどエネルギー伝達率にも振っておく。

 左腕は反動制御に極振りだ。得物が得物だからな。このあたりこのゲームは左右が別パーツ扱いなのがありがたい。

 脚部は姿勢制御……と言いたいところだが、フレーム強度に八割振る。残りが姿勢制御だ。逆関節の脚部は通常の二脚よりは姿勢制御性能が高く、それはこの細くて頼りない脚でも変わらないので、振るポイントは少なくてもたぶん大丈夫だろう。これと左腕の反動制御を合わせてハンドキャノンの反動をどうにか……できたらいいなあ。

 続いて右腕のブレード。ブレードレンジに六割、威力に四割。

 左腕のハンドキャノンは威力極振り。

 背部と腰のブースターはどちらも出力に極振りだ。燃費? 知らんなそんなもん。

 

 と、ここまできたら次は内装だ。といっても内装は事前に作ってはいない。

 めんどくさかった……というのが無いとは言わないが、内装を作るにはフレームや武器とはまた違った知識やらなんやらが必要だった。自分で作ったやつよりWikiや掲示板で見た既製品のほうが性能が高かったのだ。既製品をチューンしたほうがいい。悲しいけど……。

 というわけでだが、FCS、つまり火器管制システムはロックオン速度が一番速いものを選んだ。そしてロックオン速度に極振りした。

 次にジェネレーターだが、エネルギー出力が一番高いものにしてこれまたエネルギー出力に極振り。

 機体各部の内蔵ブースター――俺が作ったブースターはあくまで追加装備であり、普通はあそこにミサイルとかグレネードとか何かしら武器を積むらしい――つまり本来のメインブースターだったりサイドブースターだったり、姿勢制御用だったりといったものは使用時のエネルギー消費が最も低いものにする。もちろんエネルギー消費に極振りしてさらに下げる。

 ついでに特殊装備として、バリアを張る装置を胴体内部に積むことにした。防御を目的としたものではないので一番小型で一番軽いものだ。消費エネルギーに極振りして極力負荷を抑えることにする。

 このバリアは機体の空気抵抗を低減するために使う。出力は全く求めていない。

 コクピットは前傾して乗り込む、いわゆるバイク式だ。何故って、俺の趣味だ。かっこいいからな!

 ついでにサポートAIも積む気でいる。何故って、俺の趣味だ。俺はAI萌えだからな!

 

「えーっと……AI、AIっと。お、あった。

 へえ、いろいろ選べるんだな。ほぼシステム音声と変わらないものから人格があって会話出来るものまで……まあ人格がある方だろ」

 

 何故って、フレンドとか出来るかわからないからだ。ぼっちでも話し相手が欲しい。

 最近はAIの進歩もすさまじく、感情も再現できたと聞く。都度電源を落とすスタンドアロンのゲームはともかく、24時間サーバーが稼動するオンラインゲームではNPCが実際に生活し、本当にひとつの世界を作っているのだとか。

 おかげでサ終のときに罪悪感がハンパないらしいが。ゲーム自体は終わっても自腹で世界を維持する企業や社員も出てくるレベルだという。

 それはこのゲームでも同じで、この世界のNPCもまた生きている。ここはある種の異世界なのだ。

 俺はそういうゲームをやるのは初めてなんだが、NPCをNPCだと軽く考えて接してトラブったりしないように気をつけたい。彼らの心証が悪くなって依頼を干されたりしたくない。

 ともあれ、サポートAIである。

 

「あ、いろいろ設定できる。じゃあこれをこうして……性格はこう……」

 

 と、あれこれいじくり回すことしばし。

 

「できた!」

 

 性癖を詰め込んだ会心の出来……だと思う。あとは実際に会ってみるまで何とも言えない。

 

「あとはエンブレム、か」

 

 機体の左肩、あるいは胸部、あるいは他の目立つ部位。どこかに貼り付けることで戦場に「俺」を示すもの。

 設定せずに始めることもできる。プリセットもいくつか用意されている。

 が、俺は機体と同じく事前に準備してある。絵が得意な知り合いに頼んで描いてもらったものだ。

 

 有翼の赤いウサギ。リアルな絵ではなく図案化されたそれを、左肩に貼り付ける。

 

 俺のプレイヤーネームの後半はヘーゼルナッツのドイツ語だ。直前に食べたのも理由のひとつだが、俺がウサギ好きだからでもある。

 ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち、その主人公ヘイズル。彼の名の意味はそのまま植物の(ヘーゼル)、それがつける実がヘーゼルナッツだ。

 そしてドイツ語で野ウサギはHaseで、ハーゼルヌスの綴りはHaselnussだ。無論HaselnussとHaseはあまり関係は無いはずだが、両者がヘイズルというウサギで繋がるというのが個人的に運命を感じて好きなのでこの名前にした。

 

「最後に機体名……」

 

 これはもう決めてある。

 こいつは今俺ができる中では最高に速い機体に仕上がっている自負がある。初期機体でありながら今このゲームをプレイしている誰の機体よりも速いという確信がある。

 それでも。ゲームをする中できっと今より改良していける。初期機体を作る段階でこのゲーム最高の機体など作れるような設定はされていない。

 

 だからこそ――こいつは遅い。

 

 お前はもっともっと速くなれる。だから。

 

「お前の名前はラングザームだ」

 

 一緒に限界を目指そう。

 

『機体登録完了。ガレージへ転送します。機体に乗り込むとチュートリアルが始まります。

 それでは良い傭兵ライフを、アドラー』

 

 視界が白で埋め尽くされる。それも一瞬で、視界が戻ると古びたガレージだった。

 見上げれば今しがた組み上げた相棒――ラングザーム。

 

「さぁて、まずは慣熟訓練だ!」

 

 千里の道も一歩から。相棒はクソピーキーな機体に仕上がっているので、慣れるまではまともに動かすことすら出来ないに違いない。

 だが絶対にモノにしてみせる。

 既に開いていたコクピットに乗り込み、始まるチュートリアルをまずはこなしていった。

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 

 

 VRMMOメカアクションゲーム《ASSAULT ARMOR》。

 過去の世界大戦で一度滅んだのち復興をとげた世界を舞台に、プレイヤーは全高一〇メートルほどの人型機動兵器アサルトアーマー、通称AAを駆る傭兵《アドラー》となる。という設定の完全没入型VRゲームだ。

 復興したと言ってもまだまだ人の住んでいない、あるいは住めなくなった地域は多く、国やそれに準ずる勢力の支配者たちは他の勢力の持つ土地や資源をめぐって争いを続けており、そんな世界でプレイヤーたちは傭兵として好きに生き、理不尽に撃墜される。

 世界地図は地球と同じだが、過去の戦争によるものか地形や気象は違ったりもする。何より、国として機能している場所の名前も文化もリアルとは全く異なる。

 

 

 

 

 

 

『滅多に戦闘の無い地域で装甲列車の護衛、こんなに旨い仕事もねえな』

 

『おい死亡フラグやめろや』

 

『つってもこの仕事ももう一〇回目、今までどっかの勢力に襲われたなんてこたァ一回も無い。弾代も修理費もかからねえで丸儲けなんだからよォ、楽で旨いには違いねえだろ』

 

 荒野を行く装甲列車。それに追従する四機のAAは統一されたフレームに統一された武装で、同じ部隊であることがうかがえる。

 ここはとある国の勢力下で、この列車はこの国の街と街を繋ぐ輸送車両。途中どこか別の勢力の下にある土地やどこにも属さない土地を通ることは無いルートで、仮にここまで攻め込んで来る者があればその前に国境の監視網に引っかかるだろう。

 そうなれば護衛のAAにも警告が来るし、正規軍も出る。国境からここまでは数十キロメートルの距離があるので、ここへ辿り着くまでに殲滅されるはずだ。この護衛依頼は万一、いや億が一に備えたもので、だからこそ護衛する傭兵(プレイヤー)たちは弛緩している。

 だがフラグとは回収されるものだ。

 突如コクピットに鳴り響くけたたましいアラート。

 

『て、敵か!?』

 

『騒ぐなよ、国境越えたバカが居たんだろ。俺たちの出番なんて――』

 

 ――一閃。

 

 遅れて巻き起こる衝撃波/耳をつんざくブースターの音/泣き別れる機体の上半身と下半身。

 

 セリフを最後まで言い切れずに、その傭兵のAAは爆散した。

 

『何なんだいったい!?』

 

『何って敵だろ!』

 

『レーダーに敵(いち)! 後ろ――なんだこいつ速い!』

 

 振り向けば、遠方上空をとんでもない速さで旋回する一機のAA。背部についた二基の大型ブースターとマゼンタの装甲が特徴的なそれが襲撃者だろう。

 それは再び機体を彼らに向けると恐ろしい速さで突っ込んできた。先ほど音が遅れたことからおそらく音速を超えている。

 

『速え、がそれだけだ!』

 

『正面から来るなんざ良い的だぜ!』

 

 残った三機はそれぞれ両腕の得物を構えた。全機アサルトライフルだ。それぞれが左右にひとつずつ、計六挺のアサルトライフルから吐き出された弾が敵に襲い掛かる。

 奴は凄まじいスピードだ。弾丸だって追いつけないだろう。

 しかし向かってくるなら話は別。弾丸と奴の相対速度は音速の何倍になるものか。まず間違いなく無事ではすまない衝撃を生むだろう。

 

 ――当たれば、だが。

 

『避けっ――!?』

 

『うっそだろおい!?』

 

 背部の大型ブースターが小刻みに動く。

 弾丸は風や重力の影響を受けるとはいえ、基本的には直進だ。射線から少しでも外れれば決して当たることはない。

 しかしだからと言ってあんなスピードで飛ぶ機体を制御できるものか。少しブースターを動かしただけでも不必要に大袈裟な移動をしてしまうだろうに、奴はほとんど彼らの正面から外れること無く弾丸を回避して見せた。

 そして左腕のバカでかいリボルバーを彼らのうちの一機に向け――発砲。

 胴に命中した弾丸は、奴の速度と発射時の加速が合わさってとんでもない運動エネルギーを叩き込んだ。結果胴は大きく陥没し、弾丸は内部を抉りながら進み――そして機体は爆散した。

 しかし発砲した反動で体勢を崩した奴は、その推力の大きさからか進路を大きくずらした。

 爆散した機体のすぐ横に居たAA。その機体から見て一〇時方向、一〇メートルほど離れた地面に向かって敵は突っ込んでいく。

 スピードを落とさずに左脚で着地/背部左ブースターカット/左脚を軸にその場で回転/右腕レーザーブレード起動。

 ガリガリと地面の削れる轟音を立てて敵機が回る。細い逆関節脚部からは想像もできない強度で回転に耐えた敵はブレードを振り抜いた。

 平均的なAAの身長よりも長い刀身が形成され、最初にやられた機体と同じく胴と脚部のジョイント部分が薙ぎ払われた。上下の泣き別れた機体は上半身が爆散し、脚部だけが残される。

 それをやってのけた機体は回転の勢いそのままに跳躍。残っていた慣性で元々の進行方向へと流されながら逆関節らしく高く跳びあがり、元の向きに戻ったところで再び背部のブースターを稼動。またも音速を超えつつ旋回する。

 最後に残ったAAの搭乗者は嫌な汗をかきながら急いで機体を敵に向けた――が、国境方面より飛来した何かに貫かれて爆散した。

 

 さて一方、襲撃者たるマゼンタの機体――ラングザームのコクピットに収まるカシュ・ハーゼルヌスはご機嫌だった。

 

「よーしよし、今日も絶好調だな」

 

『左脚部、フレーム負荷大。今の回転は不要だったと思いますが』

 

「やったほうがカッコイイじゃん」

 

『修理費が嵩みますよ』

 

「大丈夫大丈夫、この依頼けっこう報酬良いから」

 

『今回の報酬は姉様と折半だと記録していますが』

 

「うっ」

 

 ナルと名付けた女性人格のサポートAIが溜息をついた――もちろん音だけだが――のを聞いてなんとなくばつが悪くなったが、そうしている間にも状況は動く。

 一応レーダーを確認して敵がもう居ないことを確かめると、カシュは装甲列車を追った。護衛達が戦っている間に速度を上げて一目散に逃げ出していたが、ラングザームが追いつけない道理は無い。

 

「そんじゃ仕上げといきますかねぇ」

 

 装甲列車を追い抜いたところで背部大型ブースターをカットし、それぞれ外側に向ける。それがエアブレーキの役割を果たし減速、腰のブースターと各所の内蔵ブースターで常識的な速度の飛行をして、装甲列車の進路を塞ぐためにレールの上に着地した。

 装甲列車とはいえ一〇メートルもの金属の塊であるAAと衝突すれば脱線や破損は免れない。ラングザームが超軽量機だとしてもだ。

 ゆえに、自棄になって道連れにしようとでも思わない限り急ブレーキをかけることになる。火花を散らしながら減速したそれはラングザームから三メートルほど離れた位置で停車した。

 

『あー、聞こえるか。五分やる。死にたくない奴は列車を降りて離れろ』

 

 右腕を列車に突きつけ、出力を調整してレーザーブレードを展開する。

 列車の鼻先ギリギリまで伸びて、少し焦がした。

 

『はいよーいスタート。降りるなら急げよ』

 

 今回の依頼はこの列車の破壊。ここからが本番であり、護衛の撃破は必要だったとはいえ余計な労働だった。

 列車自体を見逃すという選択肢は残念ながら無い。

 次々降りていく乗員を見下ろして待つこときっかり五分。離れきれていない者も居るが、それを斟酌する必要はない。時間はたっぷり与えたのだから。

 

『時間だ。破壊する』

 

 先程護衛のAAを撃ち抜いたのと同じものが先頭車両を襲い、機関部が爆発し大破。次々に飛来するそれによって後ろの貨物車両も貫かれ、中身によっては爆散。線路にも少なくない被害が出ている。

 謎の砲撃がやんで、目標がしっかり壊れたのを確認してから、ラングザームは跳躍し大型ブースターを起動。来たときと同じく音速を超えて飛び去っていく。

 

『おにい、どうよ』

 

「おう、ナイスキル」

 

 国境の向こうに待機している僚機からの通信に答えながら、機体のエネルギー配分を巡航モードに変える。武装やFCSのエネルギー供給をカットし、ブースターと姿勢制御にほぼ全てのエネルギーを回す状態だ。

 

『へっへー。じゃ、報酬は約束通り山分けね』

 

「もちろん」

 

『姉様、この人報酬のこと忘れてましたよ』

 

『うん、そうだと思ったから言った』

 

「辛辣ぅ……」

 

 項垂れながらも機体は進む。

 途中で正規軍と思われる部隊の上空を通過し対空射撃を受けたが構わず飛び続け、速やかに国境を離脱した。

 

 

 

 




【Tips】自作パーツの名称
 プレイヤーが自作したパーツには製作者が好きな名称を設定できる。ひらがなカタカナ漢字アルファベット等好きにつけられるため、「T-ANK-α3」のような実際の型番っぽいものをつけるプレイヤーも居れば「アユノシオヤーキ」のようにネタに走るプレイヤー、なんとパーツ名にルビを振れる仕様なので「凍てつく氷柩(ゲリドゥスカプルス)」みたいにはっちゃける者まで様々居る。
 ただし、プレイヤーに撃破された場合機体を構成するパーツのジャンク品が確率でドロップする仕様(元の機体からパーツが失われるわけではない)であるため、手に入れたプレイヤーにその名前が見られてしまう。また、パーツを複製してマーケットに流すなどする場合にもパーツ名の変更はできずそのまま他のプレイヤーに表示されるため、ネタに走りすぎると青春の酸っぱい思い出として夜中に襲い来ることになるだろう。
 一例として、プレイヤー名カシュ・ハーゼルヌスが自作したパーツの名称を以下に記す。彼は一週間悩んだ末ネットの海を漁りまくって良さげな名前を選出した。

フレーム
頭部:SPEEDWELL-H
胴体:SPEEDWELL-B
右腕:SPEEDWELL-A/R
左腕:SPEEDWELL-A/L
脚部:SPEEDWELL-RL

武装
右腕:LB-180 CLAIDHIM
左腕:RC-458 TATHLUM
背部:AB-340 AENBHARR

 なお、ゲームサーバー側のデータ管理の都合によりパーツ名無しにはできない。そのため空欄にするとシステムが勝手に名前をつける。





 というわけでだいぶアーマードコアな本作、今回は導入であっさりですが、続きも特に山とか谷とか無いのであっさりです。
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