タンク・ガンナー・ガールズ   作:一途一

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二話〜


my name is...

俺の考えた名前を聞いた彼女は目を少し開いて言った。

 

「『雨野緑』…良いセンスをしてますね。気に入りました。」

「それはそうと、君は誰なんだ?あの武装は一体何なんだ?」

「そうですね…指揮権も貴方に移ったことですし、話してあげましょう。」

「は?指揮権?そんな物を貰った覚えはないぞ。」 

 

仕方ないですね。と言わんばかりの雰囲気を醸し出し、人差し指を立てて雨野は話し出した。

 

「まず、私は人工的に作られた物です。生き物ではありますが、暴走しないためのストッパーが掛けられて居ます。名前やコードネームを付けるのはそのためですね。」

 

そのまま人差し指を振り回しながら雨野は説明する。

 

「そして、名前とコードネームには“指揮権の重さ”の違いがあります。彼は偶然そうしたのですね。『義戦』と呼ばれている彼女たちも同じで、きっと誰かが指揮権を持っているはずです。」

 

此処までの話を聞いて一つ気になった事がある。

雨野は人工物、という事らしいが、『義戦』も同じ?つまり…

 

 

「義戦も誰かが作った?」

「正解です。その可能性は高いですね。私についての資料は今まで探してみましたが有りませんでした。あるのはどれも義戦の出現後の資料ばかりです。」

 

それと、と付け加えるように雨野は言った。

 

「私はどうやら狙われているようですね。」

 

 

「え」

 

 

瞬間、家の窓ガラスが一斉に割れ、サッシがひしゃげて倒れてきた。奥の家の屋根の上には戦車砲を構えた、さっきまでの話題に出ていた物…義戦が佇んでいた。

 

「隠していたつもりだったんですが、眠さで頭が回らなかったのかもしれないですね。」

 

雨野は俺の前に出て、こう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たった今から私は貴方専属の人型戦車です。なんなりとお申し付けを、『戦車長(マスター)』」

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

周りに熱が込め始める。目の前にはいつの間にか武装をしていた雨野が居る。

奥の義戦は躊躇なく砲を打ってきた。

 

雨野は片手でそれを防ぎ俺に話しかける。

 

「あの向こうに居るのは日本の74式戦車を基にした義戦−『戰場七四(いくさばななよ)』です。90式や10式程ではないですが正確な射撃が可能です。」

 

「俺はどうすれば良いんだ?」

「…そうですね。一先ず、そこで鑑賞会でもしておくと良いと思います。戦いに置いては私が一番分かっているつもりですから。」

 

瞬間、周りの熱が一気に収束するのを感じた。雨野の方を見ると、砲身の先に魔法陣の様な物を浮かべて標準を定めた彼女の姿があった。

 

「オリジナルに複製品は勝てない。と言いますが、その言葉は複製品を何回改良するまで使えるのでしょう。」

 

雨野は急にクイズを出題してきた。

 

「さあ…十回ぐらい?」

「惜しいですね…五十回です。」

 

刹那、辺りが光と爆音に包まれる。衝撃で家の家具は吹っ飛び、雨野の真後ろに居た俺は後ろに倒れてしまった。

 

「周りの家に危害を及ぼすのはルール違反な気がしたので、少し力をギュッと詰めてみました。」

 

向こうの義戦は砲身の部分にぽっかりと大きな穴を空け、呆然としていた。

 

「今がチャンス、です。逃げますよ。」

 

そのまま強い力で体を引っ張られ、家の扉の外へ強引に連れて行かれた。

 

「反応は他にも多数ありますね…ちょっと失礼しますよ。」

 

そのままお姫様抱っこをされ、雨野は力を溜め込むようにしゃがんだ。

 

「ちょっと待ってくれ、一体何をする気なんだ…」

 

ゴオッッッという音と共に俺の意識は上に引っ張られ、気づけば100mほど離れたビルの上に俺たちは居た。

 

「さあ、話の続きをしましょう。」

「いや話できるか。一体何なんだ!?あのアクションは!?しかも狙われてるって!?何をやらかしたんだ?」

「狙われているからって何かをやらかしたという風に考えるのは良くないですね。」

 

人差し指を振って雨野は話し続ける。

 

「私の任務が終わるのは私が寝た時、という話をしましたね。私は体がとても強いと自負していますが、流石に50年起きっぱなしでは危機管理能力も劣るわけです。」

「つまり?」

「まあ…簡単に言うと情報が漏れて私が生きていることがバレたんでしょうね。今までに何回か義戦と戦いましたが、彼女らは力不足、と言わざるを得なかったですね。身体面でも武装面でも経験は勿論浅いですし、元々のスペックも良いとは言えません。第二次世界大戦の戦車が元になってる私が言うのですから。」

「へぇ…そういえば義戦にはあんたと同年代の戦車を基にした人は居ないのか?」

「居るには居ますが…データベースを見た所、私と同年代の物を基にした人型戦車は退任ということになってました。世代交代ってやつですね。」

 

整理してみると、雨野は50年間起きっぱなしで気が緩んでて、情報が漏れて生きていることがばれてしまったから狙われていて、同年代の戦車を基にした義戦たちは尽く退任ということになっているらしい。情報が漏れた、って結局やらかしてるじゃないか。

 

「あと、次の行動についてですが…」

「次は一体何なんだ?」

「さっきの『同年代』の話です。」

「ああ、それがどうしたんだ?」

 

「彼女らを『救け』に行きます。」

「…もう驚かないと思ったが、とんでもない爆弾を放り込んできたな。」

「ええ、さっきの『同年代』ですが、尽くと言いましたが実際は“ほぼ”です。一つだけだけ残っているのが居ます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手始めにそれを攫っていきましょう。」

 

◆◇◆◇

 

 

場所は変わって二釘省。長官室の椅子には一人の女性が座り、話を聞いている。

 

「それで…『戦車長』からの指示は?」

「引き続き追跡し、確実に排除せよ。とのことです。」

「七四の容態は?」

「砲が故障し、現在は出撃出来ません。かなり綺麗に削られていたお陰で、換装パーツとすぐ接合できそうです。」

「そうか…ありがとう。」

「また何かご報告することが出来た時は伺わせてもらいます、戰場チハ長官。」

「ああ、頼んだ。」

 

報告係が扉を出ていったあと、チハは大きなため息をついた。

 

「はあ…全く。『strv m/42』を捕まえなきゃならないのに他の幼馴染のの奴らは強制収容、私も変な動きをすれば収容され得る状態…」

 

手を額に乗せて天を仰ぐ。

「ああ…逃げたい。」

 

心なしか、少し眠くなってきた。このまま少し仮眠しても怒られはしないだろう。

瞼を閉じ、安眠の世界へ落ちる。

 

 

◆◇◆◇

 

それから30分後、長官室

「何で机に突っ伏して寝てるんだ?」

「さあ?私が知ったことじゃないです。逆に好都合じゃないですか。寝起きドッキリと行きましょう。」

 

そう言って雨野は砲を召喚し、窓に向かって照準を定めた。彼女が耳栓を付けたので、俺も慌てて指で耳栓をする。

砲口からは砲弾がが出ない代わりに爆音の空砲が放たれた。空気が震えるのを人生で始めて身を持って感じ、劈くような耳鳴りが暫く続く。

 

「ぁ゛あああああああああ!!!」

 

机に突っ伏していた彼女も当然目を覚ました。耳栓をしてなかったお陰か、半ば狂乱状態で耳を抑えている。

 

「鼓膜がギリギリ破れない音量で目覚ましを掛けてみました。おはよう御座います。気分はどうですか?戰場チハさん。」

「お前…スウェーデン軍の…」

「それは只のコードネームですよ。今の名前は雨野緑です。以後宜しくおねがいしますね。」

「お願いされてたまるか…!」

 

まだ片耳を抑えながら立って俺達から距離を取った彼女は言葉を放つ。

 

「【兵装】…九七式…!」

 

チハの周りが光りに包まれる。これはテレビで何度も見たお決まりの変身シーンだ。光が収まった頃には、頭に天使の輪のようなものを付け、雨野よりの幾分か細い砲を右腕に召喚した彼女が居た。

 

「貴様らを排除する…一体どうやって入ったのか知らんが相応の報いを受けてもらうぞ。」

「それは出来ませんね。私は貴方の力が必要なんですけど。」

「必要なやつは鼓膜が破れるギリギリの音量で私を起こしたりしない!」

 

砲弾が放たれる。彼女は七四の時よりも軽く弾き、もう一度話しかけた。

 

「今私と戦っても分が悪いですよ?此処に来るまでの廊下をボコボコにしておきましたから。三分は来れない筈です。」

「五月蝿い…一体何の目的だ!」

 

またもや砲弾が放たれるがいとも容易く弾かれてしまう。

 

「これは提案ではありません。貴方の命と引換えにした交渉です。」

 

じりじりと近づいていき、砲口をチハに向ける。

 

「私と一緒に貴方の『同年代』の方々を救けませんか?今二釘省の指揮下に無いのは長官である貴方だけです。退役した後に向かった場所ぐらいは分かるでしょう?」

 

その言葉をきいたチハは、驚いたような顔を一瞬した。次の瞬間、彼女は笑っていた。

 

「はははっ!救ける、か。出来たら良いがな。今のあいつらは名前と目的を失った旧時代の遺物だ。私は近代化をして貰ったが、如何せん負担が大きい。貴様みたいに最初から強ければ問題なかったが、私は所詮量産品の砲を使っているに過ぎない。」

「それはどうでしょう?『同年代』の方々には経験があります。なにせ終戦直前に創られていますからね。製作者の『戦車長』はもう既に死亡していて、鞍替えをしたのは貴方だけです。つまり、今なら誰でも『戦車長』になれる。味方に引き込めるんですよ。」

「…そいつらを集めてどうするんだ。」

「簡単ですよ。革命です。私達は強大で、放っておけばいつか暴走するかもしれない。そのために『戦車長』が存在する。ですが、間違った方向の考えを持っている者にその力を制御する力を与えてはいけない。正しい指揮をする存在である必要があるんです。」

「お、おう…」

 

雨野の発した圧に押されるようにチハは返答した。

 

「さあ、ヒントでも構いません。時間がないです。早く教えて下さい。」

 

継続して発せられる圧に負けたかのようにチハは答えた。

 

「場所は分かるが、日本軍車両を基にしたやつも外国の車両を基にしたやつも世界各地に散らばってる。全部答えるとしたらキリがない。ただ、場所の全てに共通する物がある。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『始まりの地』だ。」

 

 

 

 




雨野緑:最強、すべての義戦の基となっている。自分自身の基になったのは『strvm/42』。
【兵装】は存在しない。砲だけが使える。

???:主人公なのに名前が判らない。雨野が他人の名前はどうでもいいと考えているせい

戰場チハ:様々な形態があるが兵装の老朽化で使えない物が多い。管理しているのは一つだけ。【兵装】の時の頭の輪はアンテナ。服装は軍服を艦これのセーラー服っぽくした感じ。

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