1.
「眠い……」
「大丈夫?」
「ね、眠い……」
「どうしたの本当に……ふらふらしてるよ?」
「最近バイト増やしてる」
「部活は?」
「まあ、そっちはほどほど」
「せっかく入ったのに?」
「ウチ、別に全国行くようなとこでも強化クラブってわけでもないし、毎日行かなくてもそれはそれでいいのよ」
「ふーん……まあ、それでレインくんが納得してるならいいかな」
「くあ……」
「でも、そのあくびの量は気になるよ」
「休んだほうがいいよ、かい?」
「それは…………」
「少しは気持ち、わかってくれた?」
「……いじわる」
「その言葉は甘んじて受け入れるさ」
「釘刺しておくけど、あんまりいじわるされると辛いから」
「不知火さんが無理してそうなのが、おれには辛いよ」
「……ずるい」
「でも、止めたりはしない……くあぁ、よ」
「ちゃんと寝てる?」
「寝てるよ、一応」
「嘘ばっかり、クマ出てるよ」
「疑り深いなあ……むにゃ」
「寝てるか確認するよ?」
「確認?」
「夜になったら毎日ラインする」
「あんまり……変わらなくない?」
「いっぱい送るよ?」
「うん? ……うん?」
「既読スルーしたらギルティ」
「じゃあ読まないよ」
「じゃあ既読がつかなくてもギルティ」
「デッドオアデッドじゃん!?」
「うん、どっちに転んでも有罪。寝て、ちゃんと」
「……お金、必要なんだ」
「……何かあったの?」
「色々とね」
「聞いちゃいけないこと?」
「聞かれても答えないこと」
「……じゃあ聞かない」
「そうしておくれ」
「代わりに聞くことがある」
「なにを?」
「それは、不知火フリルを裏切らないことだって、言える?」
「……聖書の上に手を置いて、神に誓って、言えるよ」
「……ならいい」
「納得いってないよね」
「うん。だけど、私はレインくんを信じてるから」
「……大丈夫。不知火さんをがっかりはさせないつもりだよ」
2.
「ねえ、レインくん」
「なに、不知火さん」
「呼んでみた」
「だけ?」
「だけ」
「不知火さん」
「なに、レインくん」
「別に、呼んだだけだよ」
「だけ?」
「だけ」
「…………」
「…………」
「……フフ」
「……へへ」
「風、気持ちいいね」
「だから、制服でばんじゃーいしないの」
「大丈夫だよ、計算してるから」
「気が気じゃないよ」
「まだ、ドキドキしてくれる?」
「いつだってドキドキしてるよ」
「そっか」
「そうだよ」
「嬉しいな」
「おれは恥ずかしい」
「照れてる」
「照れてるよ」
「だろうね。うむうむ、目の保養になってる」
「おれ、もしかして顔真っ赤?」
「ネタバラシしていい?」
「びっくりする話?」
「レインくん、私と話す時、いっつも顔が赤いんだよ」
「……えっ、マジで?」
「嘘だよ」
「嘘かい!!」
「半分は」
「えっ!?」
「なんちゃって。引っかかったね」
「────」
「レインくん?」
「あ、いや」
「いや?」
「ごめ、ドキドキしてて……」
「…………」
「に、ニヤニヤすんなよう」
「ごめん、表情をコントロールできなくて」
「不知火フリルが?」
「私だって、その……」
「不知火さん」
「どうしよっかなあ、なんだかとても恥ずかしいことをしてしまった気分……」
「大好きだよ」
「────!!?」
「わ! 大丈夫かい!?」
「ごめん、腰が抜けそう……で」
「うん、おれ変なこと……」
「好きって」
「へ?」
「今、大好きって」
「え──誰が?」
「いや、レインくんが、いま、私に向かって……」
「──え!? こ、言葉に出てた!?」
「……出てた?」
「あ、いや!? 出てたっていうか、そうじゃなくって……」
「ライク?」
「ひゃい!?」
「ライクorラブ?」
「……そ、それは」
「どっち?」
「ら……ラブです」
「…………」
「…………」
「しまらないなあ」
「ご、ごめん」
「つい出ちゃったってことは、いつも思ってたの?」
「うん……」
「いつも、どう思ってたの?」
「誘導尋問は、ひどいよ」
「もう一回聴きたいな」
「……好きだよ」
「違うよ、それは」
「大好きだよ」
「……うん、私もだよ」
「え?」
「これからもよろしくね」
「あ? あ、うん。あ、い……」
「ねえ」
「な、なに?」
「だっこしてちょうだい」
「えっ?」
「ハグして。ぎゅっと」
「ええ、ええええ!?」
「してくれないの?」
「いや、いきなりすぎ……」
「そう、じゃあ私からやるね」
「うわあ────っ!」
「うるさいでしょ?」
「…………!!」
「私も、ずっと、こうだったんだよ」
「──なんだ」
「なに?」
「こんなとこでも、お揃いだったのかあ……」
「そうなんだよ。実はね」
「そうなのかあ」
「私だって、普通の女子高生だよ。女の子なの、恋だってするし、ドキドキもするよ」
「うん──知ってる」
「むしろやりすぎる分普通じゃないかも」
「うん、そんな感じだよね、不知火さんは」
「……もう、下の名前で呼んでいいんだよ」
「いやあ、それはちょっと」
「嫌なの?」
「理性が飛びそうになる」
「倒れたらお膝を貸してあげようかな?」
「アライブオアアライブだねえ」
「健康になれるよ、不知火フリルの膝枕は」
「寿命が延びそうだ」
「存分に延びてね」
「……これ」
「なんだろう、私に?」
「うん、受け取ってください」
「空けてもいいの?」
「空けてもいいけど、バレないようにね」
「……わあ」
「お値段は聞かないでね」
「これ、ひょっとして──」
「バイト、頑張りましたので」
「……つけても?」
「いいけど、ちゃんと他所でははずしてね」
「つけていただけるかしら?」
「……かしこまりました、お嬢様」
「…………」
「…………どう?」
「ちょっと緩いかも」
「うん、予想通りだね」
「それ、さ」
「いいよ」
「そういうこと、だよね」
「そうだよ、やましい意味で捉えてもらっていいよ」
「ねえ」
「なに?」
「私、どうしよう、ねえ、どうしたらいいのかな?」
「──泣いてるの?」
「笑ってるの」
「綺麗だね」
「もう。こんな時も、キザだね」
「素直な感想だよ」
「でも、まだ、言葉を受け取ってない」
「そうだね、おれとしたことが、言い忘れてた」
「フリルさん、よければおれと付き合ってください」
次回(一旦)最終回
追記
感想で述べられている本作の時間軸に関して、一応まだ映画編始まってない(つもり)です。
時期ズレの件諸々でボカして(というかズレて)ますが、次回一旦最終回なのも原作本編の進展次第でお話が(いくらでも)作れるし、万が一のために先のお話を作らない(ここでこの作品の話は終わってるよ、という)選択肢も取るためです。
(まあ作風的には映画編の前後どちらでも良いっちゃ良いんですが)
ご了承ください。