1.
「結局、さ」
「どしたの?」
「いやあ、変わらないんだなあって」
「なにが?」
「んー、やってること」
「そうだね」
「結局ここに来て、ベンチに座って、ご飯食べたりしながらだべってる」
「もっといちゃいちゃしたい?」
「したくないと……思ってると思う?」
「思わないかな。レインくんえっちだもん」
「ズバッと言うね」
「心に届けることに、もう遠慮はなしだよ」
「前々から遠慮してないでしょ」
「どひゃー、バレてたかあ」
「ひさびさね、それ」
「うん、私も今思い出した」
「思い出になっちゃったかー」
「もう私の一部だよ」
「ちくしょー、いちいちかっこいいなあ」
「ふふん」
「もっと、劇的に、なにかが変わるもんかと思ってた」
「断ってたらそうだったかもね」
「断る気があったの?」
「ううん、一〇〇パーセントなかったよ」
「断言しちゃうんだ」
「するよ? だって、私レインくん好きだもん」
「……いや、その、まだちょっと現実感がないなあ……ふぎっ?」
「ほらほら痛いでしょ?」
「いででででで!? ほっぺたつねらないのいでででて力込めすぎあででででで!?」
「冗談を言う悪いお口はおしおきしないとね」
「いだでででで……ふう、あー痛かったあ……」
「目が覚めた?」
「顔が近いよ」
「近づけてるから」
「目を逸らせないね」
「そらしてもいいよ。たとえ眼が会わなくても、私の瞳の中に、今、レインくんがいるのは真実だから」
「哲学的だね」
「ありのままだよ」
「すごいなあ、フリルさんは」
「いくらでも褒めてくれていいよ」
「無限に褒められるよ、今はね」
「ちゃんと言葉にできるんだ」
「うん。言葉にするとね、フリルさんはもっともーっと輝くからね」
「星のように?」
「違うよ」
「太陽みたいに?」
「それとも違う」
「じゃあ何かな?」
「『不知火フリルのように』だよ」
「健康にいいでしょ?」
「そのうち癌に効くようになるだろうさ」
「もっと輝かせてね」
「約束するよ」
「うん」
2.
「とりあえず、おれ、就職することに決めたよ」
「進学しないんだ」
「やっぱり大学はお金かかるからね」
「自分で選んだんだね、いい子いい子」
「ああ、自分で選んだよ。だから、もっと褒めてほしいかな?」
「自信がついた?」
「それはまだまだだね」
「じゃあお預けだ」
「ふふ」
「お預けが嬉しいの?」
「楽しみが先に伸びた」
「幸せを待つ時間は幸せだもんね」
「いや、今この瞬間が幸福だよ」
「私は足りないかな」
「それでこそフリルさんだよ」
「もっと幸せにしてね」
「違うよ」
「違うの?」
「共に、永遠にさ。幸福を与えるだけの人生なんて、おれは死にたくなっちまう」
「うーん、確かに。言われてみれば。それは私も嫌かな」
「今まで通り愚痴を吐いていいし、今まで通りくだらない話もたくさんしたい」
「変わること、変わらないことだね」
「そうさ、それが大事なんだ。きっとね」
「不知火フリルは、どんなに背伸びしても不知火フリルだもんね」
「果たしてそうかな?」
「……あー、あー……!!」
「ふふ、そういうこと」
「そういうことかあ、レインくんてほんとえっちだよね」
「なんでそうなる!?」
「だって、そうなるってことは、そういうこともしたい、ってことでしょ? 私と」
「それは……したく……いや、した……い……したいです……」
「ほら、えっちじゃん」
「まあ、おれも健全な男子高校生だからね」
「でも良かった。わかってたけど、私にそういう魅力がないとか思われてたらショックだったかも」
「心にもない顔だよ」
「うん、冗談だもん」
「そういうフリルさんも可愛くて好きだよ」
「そういうところだけ?」
「いやもう全部好きだよ。オールタイムナンバーワン」
「恥ずかし気もなく言っちゃうね」
「言葉が想いに追いつかないからね、いちいちつっかえてたらパンクしちゃうのさ」
「手を握ってくださる?」
「もちろん」
「おっきいね」
「ほっそいなあ」
「カッコいいよ」
「綺麗だよ」
「ごつごつしてて灼けてるんだね」
「陶器のように白くて細長いね」
「男の子だね」
「女の子だね」
「色々違うんだね」
「だから、重ねると楽しいんだよ」
「でも、この手の所有権は、今は半分私にあるから」
「わあ、海賊みたいな物言い」
「だから傷付いたら泣いちゃうかも」
「男の子には勲章だよ」
「もう、バカなんだから」
「……言いたいだけでしょ、それ」
「バレたかー」
3.
「そうだ、ひとつだけ約束しよう」
「なに?」
「お互い、毎日、なんでもいいからラインに送ろう」
「なんでも?」
「うん、なんでもいいよ。会話にならなくてもいいから」
「繋がりを保つため?」
「ズバリその通り。結局、今はこうして学校だから自然と顔を合わせられるけど、卒業したらその限りじゃないでしょ?」
「そうだね。流石に毎日顔合わせはできないかなあ」
「おれはいいけど、フリルは無理でしょ」
「いっそレインくん一緒に住む?」
「流石に冗談きついよ」
「うーん、半分ぐらい本気なんだけどな」
「マジ!?」
「例えば私の部屋の隣に住むとか」
「無理だよ。流石におれでもタワマンの家賃は払えないもん」
「私が出す──じゃあ、納得できないよね」
「この歳でヒモは勘弁。まだおれも二〇前だよ?」
「軽率だったね、ごめんなさい」
「お気持ちだけ受け取っとくさ」
「でも、本当の本当に困ったら、頼りにしてね」
「なるべくメーワクかけたくないけどね」
「迷惑じゃないよ、助け合いだから」
「……わかった。ほんとにヤバくなったら、まず一本連絡を入れさせてもらうね」
「というかその気配を察知したらバズーカ片手に乗り込むから」
「ワイルドすぎない!? なぜバズーカ……?」
「ランボーコマンドーダイハード、どの設定がいい?」
「フリルってさあ、B級好き?」
「この業界でB級嫌いな人いないよ」
「言い切るね……いや、そうかも」
「B級がなければA級もC級もない」
「Z級は?」
「割と好き」
「好きなんだ」
「結構出てみたさあるよ。血みどろでチェーンソー振り回して空飛ぶサメと戦ってみたいもん」
「フリルがやるとお客さん入るだろうなあ〜それ」
4.
「駅前にフリルがびっしり並んでた」
「あ、もう張り替えされたんだ」
「足止めちゃったよ」
「その心は?」
「美人すぎる」
「他には」
「愛が溢れてたまらなくなった」
「通ってよろしい!」
「ありがたく」
「私もね、最近メイクさんに言われるよ」
「どんなこと?」
「『最近、目に見えて綺麗になったね』、って」
「あー、やっぱわかるんだなあ、プロには」
「『恋をしてるんでしょ?』って言われたから……」
「言われたから?」
「『違います、愛しているんです……犬を』って答えておいた」
「お、おう……」
「なかなかいい返しだったかと」
「いや……うん、良い返しだと思うよ、うん」
「歯切れが悪いなあ」
「なにか、うまい言い訳を考えなきゃね」
「だよね。正直、そう言われた時ドキッとしちゃった」
「……そういうとこにスリルは覚えないでね」
「うん、でも、言われてみると改めて、さ」
「?」
「愛しくなって、たまらなかった」
「…………」
「手を、重ねても?」
「もう重ねてるじゃん」
「うん、そうだったね」
「心を重ねても?」
「臨むところだよ」
「ふふ、嬉しい」
「おれもだよ」
「幸せだねえ」
「おれもだよ」
5.
「愛してる」
「知ってる」
「愛しすぎてる」
「まだ足りないよ」
「強欲だね」
「肉食系なの」
「食べきったら飽きちゃうかな?」
「まだこれからだよ」
「そうかな?」
「まだ、私、レインくんのカッコつけたところしかしらないから」
「……そりゃそうだ」
「私だって、公私は別」
「まだみたこともないフリルがいるんだ」
「そうだよ。レインくんが見惚れるほどの不知火フリルが、まだ眠ってる」
「自信満々だね」
「もちろん。もっと好きにさせてあげる」
「パンクしそうだよ」
「お互いさまだよ」
「お揃いだね、フリル」
「お揃いだよ、レイン」
「…………」
「……あと、一年かあ」
「うん、フリルと学校で会えるのも、あと一年さ」
「あの時出会えて良かった」
「運命だったね、あのタイミングが」
「……そういえば、聴きたかったんだけど」
「ん? なに?」
「結局、あの時私のパンツ見たでしょ?」
「────見ました」
「ふふ、やっぱり」
「つつくなよう。言っとくけど完全に不可抗力だからな、あれは」
「わ、久しぶりに顔が真っ赤」
「あのなあ、思い出すと────」
「──────ごちそうさま」
「ふ、不意打ちはやめろよお……」
「据え膳食わねば武士の恥、いただいちゃった」
「……あの時もそうだったけど、おれ、やられてばっかりだなあ」
「ふふ、ごめんなさい。レインくんおもしろいから」
「フリルも大概おもしれーひとだよ」
「わ、やっぱりお揃いだ!」
「そっかあ、変な人同士だったかー」
「ん」
「ん?」
「じゃあ、そっちの番」
「ターン制!?」
「その代わりに、誓ってね」
「誓うって……」
「男の子からやるんだよ、色々と誓ってね」
「大雑把だなあ」
「はやく、誰か来ちゃうかもよ」
「……わかったよ」
「────」
「────」
「これからもよろしくね」
「こちらこそ」
「……ふふふふふふ」
「大好きだよ」
「私もだよ」
「幸せになろうね」
「共に、永遠にね」
【不知火フリルは【おもしれー女】 完】
これにて一旦幕を下ろします。
たくさんの評価、お気に入り、感想ありがとうございました!