【完結】不知火フリルは【おもしれー女】   作:ロウシ

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これで一旦終了となります


黒毛和牛上塩タン焼680円

 

1.

 

 

「結局、さ」

「どしたの?」

「いやあ、変わらないんだなあって」

「なにが?」

「んー、やってること」

「そうだね」

「結局ここに来て、ベンチに座って、ご飯食べたりしながらだべってる」

「もっといちゃいちゃしたい?」

「したくないと……思ってると思う?」

「思わないかな。レインくんえっちだもん」

「ズバッと言うね」

「心に届けることに、もう遠慮はなしだよ」

「前々から遠慮してないでしょ」

「どひゃー、バレてたかあ」

「ひさびさね、それ」

「うん、私も今思い出した」

「思い出になっちゃったかー」

「もう私の一部だよ」

「ちくしょー、いちいちかっこいいなあ」

「ふふん」

「もっと、劇的に、なにかが変わるもんかと思ってた」

「断ってたらそうだったかもね」

「断る気があったの?」

「ううん、一〇〇パーセントなかったよ」

「断言しちゃうんだ」

「するよ? だって、私レインくん好きだもん」

「……いや、その、まだちょっと現実感がないなあ……ふぎっ?」

「ほらほら痛いでしょ?」

「いででででで!? ほっぺたつねらないのいでででて力込めすぎあででででで!?」

「冗談を言う悪いお口はおしおきしないとね」

「いだでででで……ふう、あー痛かったあ……」

「目が覚めた?」

「顔が近いよ」

「近づけてるから」

「目を逸らせないね」

「そらしてもいいよ。たとえ眼が会わなくても、私の瞳の中に、今、レインくんがいるのは真実だから」

「哲学的だね」

「ありのままだよ」

「すごいなあ、フリルさんは」

「いくらでも褒めてくれていいよ」

「無限に褒められるよ、今はね」

「ちゃんと言葉にできるんだ」

「うん。言葉にするとね、フリルさんはもっともーっと輝くからね」

「星のように?」

「違うよ」

「太陽みたいに?」

「それとも違う」

「じゃあ何かな?」

「『不知火フリルのように』だよ」

「健康にいいでしょ?」

「そのうち癌に効くようになるだろうさ」

「もっと輝かせてね」

「約束するよ」

「うん」

 

 

2.

 

 

「とりあえず、おれ、就職することに決めたよ」

「進学しないんだ」

「やっぱり大学はお金かかるからね」

「自分で選んだんだね、いい子いい子」

「ああ、自分で選んだよ。だから、もっと褒めてほしいかな?」

「自信がついた?」

「それはまだまだだね」

「じゃあお預けだ」

「ふふ」

「お預けが嬉しいの?」

「楽しみが先に伸びた」

「幸せを待つ時間は幸せだもんね」

「いや、今この瞬間が幸福だよ」

「私は足りないかな」

「それでこそフリルさんだよ」

「もっと幸せにしてね」

「違うよ」

「違うの?」

「共に、永遠にさ。幸福を与えるだけの人生なんて、おれは死にたくなっちまう」

「うーん、確かに。言われてみれば。それは私も嫌かな」

「今まで通り愚痴を吐いていいし、今まで通りくだらない話もたくさんしたい」

「変わること、変わらないことだね」

「そうさ、それが大事なんだ。きっとね」

「不知火フリルは、どんなに背伸びしても不知火フリルだもんね」

「果たしてそうかな?」

「……あー、あー……!!」

「ふふ、そういうこと」

「そういうことかあ、レインくんてほんとえっちだよね」

「なんでそうなる!?」

「だって、そうなるってことは、そういうこともしたい、ってことでしょ? 私と」

「それは……したく……いや、した……い……したいです……」

「ほら、えっちじゃん」

「まあ、おれも健全な男子高校生だからね」

「でも良かった。わかってたけど、私にそういう魅力がないとか思われてたらショックだったかも」

「心にもない顔だよ」

「うん、冗談だもん」

「そういうフリルさんも可愛くて好きだよ」

「そういうところだけ?」

「いやもう全部好きだよ。オールタイムナンバーワン」

「恥ずかし気もなく言っちゃうね」

「言葉が想いに追いつかないからね、いちいちつっかえてたらパンクしちゃうのさ」

「手を握ってくださる?」

「もちろん」

「おっきいね」

「ほっそいなあ」

「カッコいいよ」

「綺麗だよ」

「ごつごつしてて灼けてるんだね」

「陶器のように白くて細長いね」

「男の子だね」

「女の子だね」

「色々違うんだね」

「だから、重ねると楽しいんだよ」

「でも、この手の所有権は、今は半分私にあるから」

「わあ、海賊みたいな物言い」

「だから傷付いたら泣いちゃうかも」

「男の子には勲章だよ」

「もう、バカなんだから」

「……言いたいだけでしょ、それ」

「バレたかー」

 

 

3.

 

 

「そうだ、ひとつだけ約束しよう」

「なに?」

「お互い、毎日、なんでもいいからラインに送ろう」

「なんでも?」

「うん、なんでもいいよ。会話にならなくてもいいから」

「繋がりを保つため?」

「ズバリその通り。結局、今はこうして学校だから自然と顔を合わせられるけど、卒業したらその限りじゃないでしょ?」

「そうだね。流石に毎日顔合わせはできないかなあ」

「おれはいいけど、フリルは無理でしょ」

「いっそレインくん一緒に住む?」

「流石に冗談きついよ」

「うーん、半分ぐらい本気なんだけどな」

「マジ!?」

「例えば私の部屋の隣に住むとか」

「無理だよ。流石におれでもタワマンの家賃は払えないもん」

「私が出す──じゃあ、納得できないよね」

「この歳でヒモは勘弁。まだおれも二〇前だよ?」

「軽率だったね、ごめんなさい」

「お気持ちだけ受け取っとくさ」

「でも、本当の本当に困ったら、頼りにしてね」

「なるべくメーワクかけたくないけどね」

「迷惑じゃないよ、助け合いだから」

「……わかった。ほんとにヤバくなったら、まず一本連絡を入れさせてもらうね」

「というかその気配を察知したらバズーカ片手に乗り込むから」

「ワイルドすぎない!? なぜバズーカ……?」

「ランボーコマンドーダイハード、どの設定がいい?」

「フリルってさあ、B級好き?」

「この業界でB級嫌いな人いないよ」

「言い切るね……いや、そうかも」

「B級がなければA級もC級もない」

「Z級は?」

「割と好き」

「好きなんだ」

「結構出てみたさあるよ。血みどろでチェーンソー振り回して空飛ぶサメと戦ってみたいもん」

「フリルがやるとお客さん入るだろうなあ〜それ」

 

 

4.

 

 

「駅前にフリルがびっしり並んでた」

「あ、もう張り替えされたんだ」

「足止めちゃったよ」

「その心は?」

「美人すぎる」

「他には」

「愛が溢れてたまらなくなった」

「通ってよろしい!」

「ありがたく」

「私もね、最近メイクさんに言われるよ」

「どんなこと?」

「『最近、目に見えて綺麗になったね』、って」

「あー、やっぱわかるんだなあ、プロには」

「『恋をしてるんでしょ?』って言われたから……」

「言われたから?」

「『違います、愛しているんです……犬を』って答えておいた」

「お、おう……」

「なかなかいい返しだったかと」

「いや……うん、良い返しだと思うよ、うん」

「歯切れが悪いなあ」

「なにか、うまい言い訳を考えなきゃね」

「だよね。正直、そう言われた時ドキッとしちゃった」

「……そういうとこにスリルは覚えないでね」

「うん、でも、言われてみると改めて、さ」

「?」

「愛しくなって、たまらなかった」

「…………」

「手を、重ねても?」

「もう重ねてるじゃん」

「うん、そうだったね」

「心を重ねても?」

「臨むところだよ」

「ふふ、嬉しい」

「おれもだよ」

「幸せだねえ」

「おれもだよ」

 

 

5.

 

 

「愛してる」

「知ってる」

「愛しすぎてる」

「まだ足りないよ」

「強欲だね」

「肉食系なの」

「食べきったら飽きちゃうかな?」

「まだこれからだよ」

「そうかな?」

「まだ、私、レインくんのカッコつけたところしかしらないから」

「……そりゃそうだ」

「私だって、公私は別」

「まだみたこともないフリルがいるんだ」

「そうだよ。レインくんが見惚れるほどの不知火フリルが、まだ眠ってる」

「自信満々だね」

「もちろん。もっと好きにさせてあげる」

「パンクしそうだよ」

「お互いさまだよ」

「お揃いだね、フリル」

「お揃いだよ、レイン」

「…………」

「……あと、一年かあ」

「うん、フリルと学校で会えるのも、あと一年さ」

「あの時出会えて良かった」

「運命だったね、あのタイミングが」

 

「……そういえば、聴きたかったんだけど」

「ん? なに?」

「結局、あの時私のパンツ見たでしょ?」

「────見ました」

「ふふ、やっぱり」

「つつくなよう。言っとくけど完全に不可抗力だからな、あれは」

「わ、久しぶりに顔が真っ赤」

「あのなあ、思い出すと────」

「──────ごちそうさま」

「ふ、不意打ちはやめろよお……」

「据え膳食わねば武士の恥、いただいちゃった」

「……あの時もそうだったけど、おれ、やられてばっかりだなあ」

「ふふ、ごめんなさい。レインくんおもしろいから」

「フリルも大概おもしれーひとだよ」

「わ、やっぱりお揃いだ!」

「そっかあ、変な人同士だったかー」

「ん」

「ん?」

「じゃあ、そっちの番」

「ターン制!?」

「その代わりに、誓ってね」

「誓うって……」

「男の子からやるんだよ、色々と誓ってね」

「大雑把だなあ」

「はやく、誰か来ちゃうかもよ」

「……わかったよ」

 

「────」

「────」

 

「これからもよろしくね」

「こちらこそ」

 

「……ふふふふふふ」

「大好きだよ」

「私もだよ」

 

「幸せになろうね」

「共に、永遠にね」

 

 

 

【不知火フリルは【おもしれー女】 完】

 

 




これにて一旦幕を下ろします。
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