【完結】不知火フリルは【おもしれー女】   作:ロウシ

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ハネウマライダー

 

1.

 

 

「逆転したなあ」

「逆転したね」

「アクあか、やっぱりごぼう抜きしたねえ」

「拮抗さえしなかったとは、この不知火の眼を持ってしても……」

「それ節穴の代名詞! てか不知火さん例えがいちいち古くね?」

「レインくんならわかってくれると思ってる」

「どういたしまして」

「ふふん」

「でもさ、黒川さんもすごいけど、アクアくんもやべーわやっぱ」

「そうだね。天才アクアさんと、怪物黒川さんって感じ」

「どっかのお笑いコンビのあれでしょ、それ」

「うん。どこかのお笑いコンビのあれだよ、これ」

「ふたり、これから本当に付き合うの?」

「しばらくはそうだね。番組が関わらない範囲での交友関係はそれこそ自由だけど、流石に番組終了即破局しましたーじゃあ、『今ガチ』の立つ瀬がないから」

「大変だなあ芸能界。交友関係ひとつとっても仕事になっちまうのか」

「でも、それが次につながるものだよ」

「あー、アクアくんがそもそもそれっぽいもんね」

「お仕事で培った関係の延長が、次の仕事に繋がるのは芸能界に限らないよ」

「そりゃそうだ。さすが不知火さん」

「こう見えて私、売れっ子だからね」

「どう見ても、不知火さん売れっ子だよ」

「もっと褒めてもいいのよ」

「おれなんかじゃ、褒める言葉が足りねえさ」

「うーん、六〇点」

「キビシイなあ」

 

 

2.

 

 

「今日はなんの本読んでるの?」

「三角関係の果てに心中エンドになるハナシ」

「うわ、カロリー持ってかれそう」

「『こころ』ダイエットてか? 夏目漱石もこれにはびっくり」

「古典文学って、割と容赦ないよね」

「漱石の書き物って、当時基準だとライトノベルらしいけどね」

「それ聞いたことある」

「新しいものが業界に入り込むと、何かと難癖つけられて、貶されるもんだよねえ」

「身に染みるなあ」

「芸能界なんて流行り廃りの最前線だもんね」

「その分、一度軌道に乗ればしばらくは安泰だけどね……問題起こさなければ」

「やめろよぉ、ついこないだも推しユーチューバー炎上したんだよぉ」

「あらら、ごめんなさい」

「もうおれ、ぴえヨンとMEMちょしか信用できねえ……」

「私は?」

「ユーチューバーじゃねえし」

「確かに!」

「我真実に至り! みたいな顔しないの」

「で、ぴえヨンさんって、覆面系筋トレユーチューバーの人?」

「そーそー。一見ふざけた筋トレ紹介してんだけど、てか見た目がもうふざけてんだけど、やってみるとガチでブートキャンプなんだわ」

「やったんだ……」

「……言っとくけど、覆面ブイパン一枚ではないからね?」

「がっかり」

「どういう意味よ!?」

「そういえば、ぴえヨンの動画にルビー出てたよね」

「ああ、観た観た! 有馬かなと一緒にアイドルやるアレでしょ!?」

「…………ルビー、どうも自分が芸能活動できてないことに負い目を感じてるっぽくて」

「まあ、芸能科にいて、周りの人間が仕事ガンガンやってりゃあね。ましてや不知火さんと友達なんだもの。焦る気持ちにもなるんじゃない? 知らんけど」

「口癖?」

「割と。知らんけど」

「私、むしろ業界人の方が気を使うんだけどなあ」

「へいへい、ここにいるのは名もなき一般人ですぜ」

「ふふ、落ち着く」

「お世辞と受け取っとくよ」

「うん、ありがと」

「どういたしまして」

 

 

3.

 

 

「『東ブレ』の舞台がドリームチームな件について」

「あー、もぐもぐ。あれすごい、ごく。よね、ここ最近……もぐもぐ、バズった人たちかき集めてるもぐ、感じ」

「食べるかしゃべるかどっちかにしなさいよ」

「話しかけたの、もぐ、レインくんだよ?」

「ぐうの音もでねえ。てかおにぎり好きなの?」

「好きだよ」

「ふーん」

「ヘン?」

「いや、変じゃねえよ。ただ、悪い意味じゃなくて、不知火さんならもっと豪華なもの食べれるんじゃないかと」

「おにぎり、食べやすいから気に入ってる」

「ああー、ここでも仕事の影響かあ」

「うん。おにぎり、かさばらないし、サッと食べれるし、おかずは入れられるし、いい事しかない」

「コンビニとかでもまず間違いないしね」

「そういうこと、ごちそうさまでした」

「いつも美味しそうに食べるよね」

「ギャラ発生しちゃいそう?」

「お茶は買ってある」

「ん、大変よろしい」

「どうも。んで、『東ブレ』の舞台、これも鏑木P? の仕事なん?」

「十中八九。有馬さんとか黒川さんとかアクアさんとかメルトくんが入ってる時点で間違いなく鏑木P案件だと思う」

「メルト?」

「ほら、『今日あま』の」

「あ、あー! あの子ね、『今日あま』の主人公役の子かあ……」

「声のトーン露骨に落ちたね」

「いや、だってよお。これ、メルトくん? の公開処刑にならね?」

「舞台はテレビと違って補正が小さいからね。役者本人の演技がモロにでちゃうのはそう」

「なおさら処刑場じゃん」

「うん。でも、『今日あま』から九ヶ月経ってるし、流石にあのままって……ことは……ないと……おもう?」

「無理やりなフォローの果てに疑問系と来ましたか」

「うん、正直私もかなり無理目に思うけど、逆に言えばメルトくんの演技がアレ以下になってるとは思えないから」

「あ、それもそうか。あそこが最底辺なら、あとは上手くなるしか道はないよなあ」

「それに、本当に伊達だけのハリボテな人なら、鏑木Pが可愛がってないと思う」

「有馬かなをずっと使ってた人なんでしょ? おれも、鏑木Pの見る目はすごいと思うなあ」

「……有馬さんのこと、ずいぶん贔屓してるよね」

「だね、鏑木Pって人……」

「違う、レインくんが」

「幼い頃の偶像って引き摺るもんよ」

「……そうかな、そうかも」

「不知火さんだって、現在進行形で誰かの脳を焼いてるかもね」

「うん、ちょっと怖いかな」

「なんで?」

「この業界、綺麗なことばかりじゃないから」

「……ごめん、へんなこと考えさせた?」

「いいよ。ただの事実だし」

「いや、マジでごめん」

「………………」

 

 

4.

 

 

「なあ、こうしてるのって大丈夫なのか?」

「? 何が?」

「いや、よくよく考えると、芸能界で第一線張ってるクール清楚系美少女が、学校で一般人男子学生とふたりきりでだべりまくってること」

「うーん、毎日一緒ってわけじゃないし」

「そりゃあそう。でも、頻度は高くね?」

「そうだね。学校じゃ、昼休みにルビーや南さんいない時、だいたいレインくんといる気がする」

「うーむ。やっぱりマズい気がするぞ」

「そうでもないよ。私、学生だし。学校で友達と昼休みに、健全にだべってるだけだよ」

「でも、メディアとかに流されると……」

「学校って公的機関だよ。いくらマスメディアでも敷地内に押し入るなんてできない。そんなことしてまでスクープ取れたとしても、出版社側が訴えられる」

「でも、身内のリークとかはあるだろう」

「だとしても、私、レインくんとは何もしてないよ。一緒に買い物したり、ご飯食べに行ったりも、キスも抱き合ったりも、手を繋いだりさえしてない」

「……いや、そりゃあそうだけどよ」

「あ、そう言えばこの間俳優の堂山くんからDM貰った。ご飯いこって」

「堂山? ……誰? いいひとなの?」

「遊んでるって有名な人」

「ダメじゃん!!?」

「うん、だから行かないよ」

「いっちゃダメだよ」

「いかないよ。でも、ほら、こんな程度の話なら、ちょっと掘ればいくらでも出てくるんだよね」

「こわいなー芸能界こわい」

「だから、学校で健全に女子高生してる私が、とやかく言われる筋合いないでしょ?」

「そういうことなのかなあ」

「そういうことなんだよね、たぶん」

「たぶん!?」

 

 

5.

 

 

「『東ブレ』の舞台、レインくん観に行くの?」

「あーうん。ちょっと興味ある」

「私はだいぶ興味ある」

「……読書感想文?」

「もち。でも強制はしないよ」

「うーん。でも、不知火さんが観に行くっていうなら、おれも観に行くかなあ」

「自分で決めるべき。って言いたいけど、観に行くきっかけになるなら私でもいいかな」

「興味の導線てヤツだよね。MEMちょが『B小町』……新生『B小町』のチャンネルに繋いでるみたいな」

「あ、やっぱり『B小町』はチェックしてるんだ」

「そりゃあね。ぴえヨン動画で観て以来、気になってるよ。ルビーちゃんも有馬かなも同じ学校の生徒だし、ルビーちゃんはアクアくんの妹なんしょ?」

「アイドルMEMちょも推せる」

「わかる、いいよね」

「いい」

「実はおれちょっと前のアイドルフェス行った」

「それは初耳。完璧にハマってるじゃん」

「いやあ、生MEMちょ観れるなら、と思ってさ」

「ふーん、私は生フリルだよ」

「知ってるよ!? いや、身近すぎてありがたさがわかってないと言われりゃ、その通りだけど」

「もっとドギマギしてもいいよ」

「美人は三日で飽きる」

「ちえ、口がうまい」

「まあ、今のところ生不知火フリルに飽きてるってのは全くないけどね」

「……レインくんてキザだよね」

「どういたしまして。でさ、応援席にアクアくんいた」

「アクアさんいたの? ……まあいてもおかしくないでしょ、ルビーは妹だし、MEMちょも有馬さんも共演してたんだし」

「いや、それが超真顔で全員分のサイリウム手にキレッキレのオタ芸やってた」

「超真顔で?」

「超真顔で、表情筋凍ってた」

「全員分のサイリウム持って?」

「BASARA持ちしてたよ」

「……推せるなあーアクアさん」

「ちょっと面白すぎだよね」

 

 

6.

 

 

「……今日はいないのね」

 

 

7.

 

 

「学校休んでた」

「風邪引いてた?」

「まあそんなトコ」

「季節の変わり目だもんね、気をつけなきゃ」

「ガクッとくるよねー特に最近季節感めちゃくちゃだし」

「バイトとかは大丈夫なの?」

「一日二日休んだ程度じゃ誤差だよ」

「そ、ならいい」

「心配してくれてありがとう」

「いつもの光景と違うからびっくりした」

「たまにはいいんじゃない?」

「うん、正直ひとりご飯も久しぶりだった」

「おれの方は、結構そういうの多いけどね」

「うん、私も最近忙しいからね」

「そりゃあそうだ。不知火さんは今をときめく若者のカリスマじゃん。今、駅地下の化粧品のポスター、不知火さんでしょ」

「うん、おかげで駅地下歩くとびっくりしてた」

「なんで? 誇らしくない?」

「だって、聞いてたとは言え駅地下の壁に自分の顔写真がおっきく載ってるんだもん」

「あー、そりゃあビビるっていうか、恥ずかしいよね」

「美人すぎて足が止まっちゃった」

「高度な自画自賛だった!?」

「写りいいでしょ?」

「元が良すぎるからね、そりゃあそう」

「レインくんて、ほんとキザだよね」

「この前聞いた」

「ふふ」

 

 

8.

 

 

「へえー『東ブレ』の舞台って、その、噂の劇団ララライがやるのかあ」

「そうだよ。黒川さんの所属してるとこ」

「ちょっと調べたけど、かなり大手? というか老舗? っていうか、すごいとこじゃん。黒川さんて、そこの期待のエースなんだってね」

「『今ガチ』の豹変ぶりも納得でしょ?」

「納得できすぎ。そりゃあ舞台の人間……しかもそこのエース格が本気で演技しちゃったら、他の出演者ぶっちぎっちゃうよ。本職の中の本職じゃん。いっそずるいわ」

「逆にいうと、黒川さんぐらい舞台ですごい人でも、テレビにでなきゃいけないってことでもあるんだろうね」

「あー……あーあーあー! うわ! えっぐいなそれ」

「でも、そのおかげでララライは今度の『東ブレ』の舞台を勝ち取ったし、鏑木Pと繋がりができて有馬さんとかアクアくんをキャスティングできたんだと思うよ」

「すげえなあ、全部繋がってるんだ」

「もちろんララライ自体が一流の劇団なことも大きいと思うけど」

「そうかも。じゃなきゃあ『今日あま』のプロデューサーが『東ブレ』の2.5次元化やります! なんて打ち出したら非難轟々だろうしなあ」

「『今日あま』も大人気漫画だけど、『東ブレ』はまたひとつ桁が違う人気だからね」

「……何年か前にさあ、世界規模で大人気の少年漫画が実写化してコケたじゃん」

「……ごめん、どれのこと?」

「犬棒並の打率だったわ」

「ヒント」

「ハリウッドでエヴォリューションしたヤツ」

「もう答えじゃん。でもあれ、意外と観れるヤツだよね」

「そこは同感……だけどよ、あの映画公開してから、監督やら脚本やらプロデューサーやらは、毎日のように世界中のファンに電凸ストーキング殺害予告とかされててさ」

「気持ちはわからなくはないけど、やっちゃダメなやつ」

「でさ、謝罪文出して収めようとしたけど、却って火に油注いでさあ」

「私も読んだけど、アレは謝罪文も悪いと思う。『お金欲しさにやりました』は一周回って男らしいよね」

「そうなんだよねー嘘も方便だろうに。アレじゃあファンも怒るよ」

「レインくんは?」

「激おこです」

「まあそうよね」

「そうなんですよ」

「でも、鏑木Pはそういう人じゃないと思うな」

「うん、おれもまさにそれを言いたかったの」

「鏑木Pが本当に原作がどうでもいい人なら、ララライも協力してくれないよ」

「ま、そーいうことだわな。つまり、何が言いたいかっていうと」

「いうと?」

「すっげえ楽しみってこと」

「そうだね」

「その後の感想語りも含めてね」

「……うん、私も楽しみ」

 

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