【完結】不知火フリルは【おもしれー女】   作:ロウシ

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もうちょっとだけ続くんじゃ


イケナイ太陽

 

1.

 

 

「レインくんて几帳面だよね」

「いきなり何をおっしゃるのかこの子は」

「うん、だっていつも同じ時間に私より先にここにいるし。本を広げて待ってるじゃん」

「こないだ、いなかったばかりなんだけど」

「風邪は、別」

「別かあ」

「うん」

「……まあ、そう見えてるなら、おれもいっぱしに演技ができてるってことなのかな?」

「演技? レインくんって宇宙人だったの?」

「発想が斜め上すぎない!?」

「月まで吹っ飛ぶこの衝撃! クラスメイトは吊るされた宇宙人……というには、背が高すぎるかな」

「制服の丈でばんじゃーいしないの!」

「大丈夫だよ、ギリギリ見えないように計算してる」

「おれのハートが死ぬ! ってそうじゃなくて! ひとり暮らしバイト漬けの男子高校生が、自分の部屋を片付けられてると不知火さんは思うワケ?」

「いや全ッ然だね。ベッドの下とか……うん、乱雑に積んでそう?」

「小学生か!! 今どきベッドの下に、その……隠さんわ!!」

「何を隠して積んでるかは言ってないけど?」

「うぐ、ハメられた……」

「どや」

「だ、だいいちおれ、昼飯だって購買のパンかコンビニ弁当ズボラ飯だぞ? 几帳面とは縁遠いわ」

「でも、こーやってくだらないことでも、いちいち反応してくれるよね」

「……そりゃあ楽しいからね。不知火さんと話すの」

「ふふ、そうなんだーそうなんだー」

「なぜ二回言うし。そりゃあ駄弁るのイヤならとっくに場所変えてるよ」

「ふふん、それはよかった」

「……最近お疲れ?」

「普通の女子高生よりは」

「だろうなあ」

「でもタレント活動は楽しいよ」

「天職ってヤツかね。テレビの向こうの不知火さん、輝いてるもんなあ」

「それに、最近は思ってたより普通の学生生活もできてる」

「そらよかった」

「うん、ありがと」

「なんで今お礼?」

「わからないならいいよ」

「わかってるよ」

「……いちいちずるいなあ、レインくんは」

「それだけカッコつけてるってことだよ、不知火さんの前ではね」

「ふふ、じゃあ、やっぱり演技してるってことだね」

「なかなかのもんでしょ?」

「比較対象ないからわかんないかなー」

「そりゃそうだ」

 

 

2.

 

 

「舞台版『東ブレ』の主人公役の人、月9でも主演もやってんだね」

「姫川さん? すごい人だよ」

「この人も鏑木Pの推し組なん?」

「ううん、姫川さんはララライの看板俳優」

「看板!? つまり……最強ってこと!?」

「その解釈は新しいね。でも、姫川さん帝国演劇賞の最優秀男優賞受賞してるし間違いじゃないかも」

「おお、よくわからんがめちゃくちゃ強そうだ! ……てか当たり前に知り合いなんだね」

「……レインくん、本当に私の出てるドラマ観てないんだね」

「あ、いや。そっかあ、不知火さんのドラマも月9だもんね……」

「ドラマ観れないわけじゃないよね? 最終回だけとはいえ『今日あま』観てくれたし」

「別に、ドラマが嫌いとかそう言うわけじゃなくて」

「なくて?」

「その……なんか、イヤでさ」

「私が演技してるのが嫌?」

「いや、そうじゃないんだけど……」

「…………」

「な、なんでちょっとドヤ顔なんだよ」

「いやあ、そういうことかーと思って」

「ち、ちげぇし! たぶんそれちげーし!」

「レインくんて、ほんと健全な男子高校生だよね」

「ちげーもん! ニヤニヤはやめろって!」

「照れ顔だけでおにぎり一〇個はいけそう」

「それは流石に食べ過ぎだよぉ!?」

「うんうん。それで、姫川さんがどうしたの?」

「くっそお、健全な男子高校生の心を弄びよってからに」

「はいはいごめんなさい」

「ここまで心が乗ってないてへぺろも珍しいわ」

「不知火フリルのてへぺろ自体が役得案件だよ」

「うぐ、そう言われちゃあそうかも」

「えっへん」

 

 

3.

 

 

「そういや、不知火さんこれ食べたことある?」

「なになに? どひゃー、おっきなおにぎり」

「それまだひっぱるのかよ……」

「ここ以外では言ってないよ」

「そうかいそうかい。で、それ知ってるかい?」

「知ってるよ。おにぎりでしょ?」

「うーん、マジなのかボケなのかわかりにくいなあ」

「包装が良い意味で雑……もしかして手作り?」

「手作りではあるがコンビニだよ」

「そっかあー」

「不知火フリルに手握り食わせようってほど、おれは命知らずじゃねーんで」

「お腹に入れば一緒だから、気にしなくて良いのに……もぐ」

「食うの早くね!?」

「おにぎりは食べるためにある」

「うぐ、そりゃあそうだが……もちょっとさあ、『これなんだろ?』みたいなさ」

「レインくんなら、もぐ、教えてくれるでしょ?」

「うーんこの信頼……そいつは『ばくだんおにぎり』だよ」

「ばくだん……」

「そ」

「知ってるよ。食べたらドカンと行くヤツだね」

「語感で全てを測ろうとしている!?」

「冗談」

「ホントかなあ」

「ほんとほんと。それで、どういうおにぎりなの?」

「すげーなあ一文で矛盾してやがる」

「言葉って面白いよね」

「面白いのは不知火さんなんだよなぁ」

「どや、もぐ」

「ばくだんおにぎりってのは、いくつかのおかずをぎゅうぎゅうに詰め込んだ、でっかいおにぎりのことだよ」

「そのまんま」

「それが良いんだ。シンプルでわかりやすい。おかげで一個で二個三個分の満足感があるのだよ」

「ふうん、おかわり」

「早くね!? ちゃんと噛んでる!?」

「噛んでる噛んでる。美味しかった。おかわりはマジの冗談」

「ほんとかなあ」

「でもこれすごい、本当にお腹膨れちゃうね。これにスパイスチキンがあれば満足できそう」

「うーん、さっきから言葉が一文ずつ矛盾してるけど、気づいてないのかなあ」

「言葉の乱れは若者の特権である、by不知火フリル」

「それは言えてる」

「ふふ」

「お茶いるかい」

「そうね、ありがたくいただきます」

 

 

4.

 

 

「今日はこねーか……」

 

 

5.

 

 

「おう、おひさ」

「うん、ひさしぶり」

「最近お仕事忙しいみたいだねえ」

「それもある」

「と言うと?」

「ここ最近ルビーが寂しそうだったから」

「友達想いだね、不知火さんは」

「あの子、とっても素直だから」

「アイドルやりながら、そういう子も珍しいんじゃない?」

「うん。私もそう思う」

「じゃあ大事にしてあげないとね」

「……レインくんて、たまにおじさんみたいだよね」

「はは、まあ並のタメ年よりは、太く短い人生送ってる自負はあるよ」

「……芸能界ぎらいの話?」

「…………」

「安心して。私から聞くつもりはないから」

「大したことでもないけどね」

「うん。それでも、話したくないことを無理やり話して欲しくないよ」

「……ありがとね」

「どういたしまして」

「…………」

「…………」

「…………ねえ」

「…………なに?」

「なにか面白いこと言って」

「無茶振りがすぎない?」

「一生懸命考えたけど、私じゃ思いつかなくて」

「一生懸命考えてくれたのか、ありがとう」

「そういう言葉は……まあ、たまにはこういうのもいいかな」

「そもそもスネに傷持ちなんて、そっちの業界だと珍しくもないでしょうに」

「ユーチューバーなんかもそうだよね」

「うぐぅ! ……いいもん! ぴえヨンとMEMちょ……もとい『B小町』はおれを裏切らないから……!!」

「私も裏切らないよ」

「………………!!」

「どうしたの、顔背けて」

「あ、い、いや。その……」

「その?」

「い」

「い?」

「イケメン、すぎ、る……だろ……ッ!!」

「……ふっふっふー。ほらほら、顔をよく見せてちょうだいな」

「やめ、マジで……やめて……ッ!」

「……!」

「あ、も、もう昼休み終わりだね! おれ戻るから、じゃあね不知火さん! またね!!」

「……うん、またね」

 

 

「…………」

 

「……ガン泣きじゃん」

 

「これは、まずい事になったかなあ……」

 

 

 

 

 

 

6.

 

 

「何事もなかったかのようだね」

「実際何もなかったし」

「結構シリアスじゃなかった?」

「過ぎ去れば等しく過去なりや」

「昨日なんだよねー」

「光陰矢の如し」

「強いんだね、レインくんて」

「言ったろ、タメ年の並より太く生きてるって」

「すごいね、すごく芸能界向きのメンタルしてる」

「やめとくれ。一般人だからこそ保てるもんだよ、これは」

「はあ、よかった」

「何が?」

「ううん、自分勝手な意見」

「気になるぞ」

「嫌われたかと思ってた」

「でも、今日も来たじゃん」

「うん、謝りたくて」

「別に気にしてないよ」

「うん、でも、ごめんなさい」

「……不知火さんて、ほんと真面目だし素敵だよね」

「そうかな? 当たり前にやらなきゃいけないこと、やってるだけのつもりなんだけど」

「それができるヤツって、たぶん世の大人の中にもそうそういないと思う……てか、思ってる。おれはね」

「……うん、そうかも」

「そうだよう」

「…………」

「あ、そうだ。予定空いてる日とかある?」

「……!!」

「なんで絶句顔なんだよ……」

「いや、想像だにしなかった言葉だったから」

「そこまで!?」

「天地が裂けた気分」

「おれの誘いはアルマゲドンか何かか」

「うん、うん。大丈夫、落ち着いた」

「今の一瞬がいちばんドギマギしたよ、おれ」

「それで、私のオフがどうかしたの?」

「ん? いやあ、ほれ」

「え、これ……」

「『東ブレ』の初日チケ二枚取れたから、一枚やろうかと」

「初日とれたの?」

「たまたまだよ。予約サイト覗いてみたら朝イチのやつがたまたま空席あっただけ」

「……あれ、これ、私デートに誘われてる?」

「違うよ。席は全然別だし一緒に観ようってわけじゃない」

「……へぇー」

「でも、不知火さんは推しも押されぬ不知火フリルじゃない。スケジュール的に無理ならクラスメイトの『東ブレ』ファンに売りつけようかと……」

「いく」

「即決!?」

「チケットもったいない」

「いやスケジュール……」

「今その日の午前だけでも開けてもらえるように、マネージャーにライン送った」

「行動力!!」

「こういうのは早い方がいいの」

「そりゃそうかもだけど、すご……いやマジでやべーわ」

「あ、返信きた……うん、大丈夫っぽい」

「そっか、ならコイツは無駄にならずに済んだワケだ」

「楽しみが増えたわー」

「まあ、向こうで合流なんてヤボはしないんで、各々で楽しもうや」

「ふふ、そうだね」

 

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