【完結】不知火フリルは【おもしれー女】   作:ロウシ

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らいおんハート

 

1.

 

 

『や、メリークリスマス』

「いや、それこの前言ったじゃん」

『いちおう』

「……メリクリ」

『あ、略してる』

「悪いかい」

『ううん、最近の若者っぽくてよろしい』

「なんじゃそら」

『いま何してる?』

「バイト終わって家で飯準備」

『ほんと、美味しそうな匂いが……』

「匂いは届かねえだろ」

『バレちゃったかー』

「そっちは仕事中じゃないのか? ごとごと音がしてるけど」

『うん、移動中だもん』

「移動中?」

『バスの中、撮影のクールタイムかな』

「電話しちゃまずいんでは?」

『なにが?』

「いや、ていうか仕事中にスマホいじれんの?」

『移動中だもん』

「スタジオ跨いでんの?」

『うん』

「てかあれ? 不知火さんてこの時間まで働いていいの? 年齢的に」

『質問が多いなあー』

「労基違反はダメゼッタイ」

『これがラストだよ。というか、テレビ観てないの?』

「適当に音楽番組流してる」

『○○チャンネル、私出るよ』

「○○チャン……んん……? もしかしなくても生放送?」

『もしかしなくとも生ライブだよ』

「電話してていいの!? ま、周りに誰もいないよね!?」

『スタッフさんとかいるけど、問題ないよ』

「いやいやいや、本番前に異性にお電話はマズいっしょ!」

『……言われてみれば』

「不知火さん大丈夫?」

『声』

「声?」

『うん、頑張れなさそうだったから、レインくんの声聞きたかったんだと思う』

「……大丈夫そうかい?」

『うん、元気出てきた』

「そりゃよかった。今チャンネルつけた」

『ちゃんと観ててね』

「それで不知火さんが頑張れるなら、お安いご用さ」

『むふ』

「ニヤけてる?」

『ううん、頑張る』

「頑張れ」

『うん』

 

 

2.

 

 

「レインくんおひさ」

「うん、久しぶり……会うのはね」

「ごめん、ほぼ毎日電話してたね」

「電話自体はいいよ、別に。ラインだと記録残っちまうし」

「電話も通話記録残っちゃうけどね」

「それでもラインの画面よりは流出しないでしょ」

「くあ……ん、そうだね」

「眠そうだね」

「眠い」

「忙しい?」

「今年入って、もう去年比の倍は働いてる」

「ええ……働きすぎでしょそれは」

「お仕事あるのは嬉しい、くあ」

「身を崩しちゃ本末転倒でしょ」

「それも……そう」

「早退したら?」

「ううん、今日は一日学校にいれるから……」

「無理しちゃダメだよ」

「そうだ、レインくん肩貸して」

「肩? うおおっ!?」

「うーん、良い弾力」

「ちょ、ダメだって! これは流石にダメ!!」

「そうだね」

「ほっ」

「膝貸して」

「そういう!? あ、ちょっとまっ……!!」

「うむうむ、よきかなよきかな……ぐう」

「誰かに見られたら大問題だよこれ!?」

「レインくん」

「不知火さん」

「うるさい」

「す、スンマセン……」

「見られてもいいや」

「よくな」

「いい」

「…………ッ!」

「むにゃ……ぐぅ」

「……………………!!」

「…………………………」

「…………こういうのって、普通逆じゃね?」

「膝枕して欲しいの?」

「起きてた!?」

「気持ちいいけど、心臓の音がうるさすぎ」

「あ、ご、ごめん……!」

「…………でも、嫌いじゃないよ」

「ひ、ひいー悪魔だ、悪魔がおる」

「良い心地」

「ひいいーっ」

 

 

3.

 

 

「アクアさんの番組知ってる?」

「知らん」

「『深掘れ☆ワンチャン!!』、ネットTVでやってるバラエティ」

「ふーん、どんな内容なの?」

「一般人がよく知らない仕事や趣味を対象に深掘りしていこうって番組だよ」

「あー、『知らない世界』的なアレね」

「それのアングラ版かな? 競馬場で一番大負けした人を探したり、AVにモザイクかける人達に取材したり、ブラック企業の一発芸大会に潜入したりするんだ」

「えいッ……! な、なかなかギリギリなチョイスだね」

「不知火フリルのAV発言」

「こら、やめなさいな」

「レアだよ」

「レアはレアでもその、あれだよ」

「顔真っ赤だね」

「やかまし」

「ふふ、可愛いなあレインくんは」

「そういう不知火さんは、たまにおじさんみたいだよ」

「心におじさんを飼っている女子高生は意外と多いと思うよ」

「うーん誤解と偏見まみれ」

「そうでもない」

「そうなのかなあ」

「現役女子高生が言うんだから間違いない」

「そっかあ、知りたくなかったなあそれ」

「それに対してアクアさんが『人の心ないんか?』って感じにクールにぶった斬っていくの」

「あーやりそう。あの、アクアくんそういうのキレッキレだよねたぶん」

「そうそう、アクアさん刺さるセンスしてるんだよね。見てて面白い」

「なかなかマルチだよね、アクアくん」

「そうだね、ファッション誌のモデルなんかもやってるみたい」

「みたいってゆーか、いまや学校近くのコンビニの雑誌コーナーのひとかどだよ」

「それは知らなかった」

「なんていうか、すげえなあ」

「うん。この調子なら、思ってたより共演するのも近いかも」

「在学中に共演てコトになれば、ちょっとした話題性もあるだろね」

「ルビーも順調みたいだし、星野兄妹恐るべし」

「……B小町は、なあ」

「どうしたの?」

「いや、なんかなあ」

「歯に物が詰まった言い方してる」

「ちょっと、歪んできてない?」

「────!」

「いや、MVおれも観たんだけどさ」

「すごかったね、あれ」

「うん、すごいはすごいんだけど」

「けど?」

「おれは、怖いなって」

「怖い?」

「なんていうか、ルビーちゃんからは憎しみを感じると言うか……」

「……そう」

「あ、ごめん。たぶんおれの勘違いなんだけどさ」

「ううん。たぶん、レインくんの感想は鋭いと思う」

「そうかなあ?」

「教室では変わらないから、MVのはそういう演技だと思うけど……私もあのルビーからは負の感情出てると思う」

「だよね。なんていうか、感じるのが深い悲しみと強い憎しみなんだよね」

「人の目を集める要素ではある」

「うん、古今東西の芸術作品とは切っても切れない感情だ」

「薄ら黒いものに、人は惹かれちゃうからね」

「良く言えばミステリアスな奥行きなんだろうけど……ぶっちゃけヤバい時のおれを観てるみたいでさあ」

「……レインくん女装してたの?」

「ちげーよ!? おれの言葉のどこをどう受け取ったらそうなるの!?」

「高身長女装男子ってバズりそうだよね」

「気持ちはわからなくはないけどちげーからね!?」

「むむ、必死の否定。疑惑は深まった」

「深まったのはおれの心の傷だよ!?」

「あらら、ごめんなさい」

「棒読みじゃん」

「ある意味レアかも?」

「あえての棒読みだこれー!?」

「まあ冗談はさておいて」

「うん。冗談抜きに、ちょっとルビーちゃんのメンタル心配になってるよおれ。勝手にだけど」

「じゃあ、私が気をつけて見ておく」

「……言っとくけど、おれは不知火さんも心配してるからね」

「嬉しいな」

「冗談じゃないからね。最近仕事仕事で学校にこれてないでしょ」

「うん、でも出席は計算してるよ」

「わかってるよ。おれが心配なのは、不知火さんの身体と心だよ」

「それは大丈夫」

「ほんとかなあ」

「ほんとだよ、レインくん」

「なんで名前呼んだし」

「うん、なんでだろうね?」

「まあいいけど、減るもんでもないし」

「うん、むしろ増えてるよ」

「何が!?」

「ふふ」

「な、なんなんだよお、いったい」

 

 

4.

 

 

「なーんか、チグハグに感じる」

「何が?」

「『深掘れ』のルビーちゃん」

「そう? ルビーって教室でもあんな感じだよ」

「マジかー、いや確かにB小町チャンネルでも図太く天然系で通ってるけど」

「どこがチグハグなの?」

「なんていうか、『深掘れ』だと言動に計算を感じる」

「それは鏑木Pの知恵じゃないかな」

「『深掘れ』もあの人なんかい!!」

「そうだよ。だからアクアくんがいきなりレギュラー取れたんだと思うし」

「ドラマに舞台にバラエティって、鏑木Pは鏑木Pでマルチすぎるだろ……」

「プロデューサーも色々だからね、鏑木Pはかなりマルチな方」

「うーん、なら杞憂かなあ」

「てか『深掘れ』観てるんだね」

「不知火さん観てるんでしょ? だったらおれも観るよ」

「…………ぼそ」

「ん、なんか言った?」

「何も」

「ネットTVだから回線さえ繋げりゃスマホでも観れるんだねえ。便利なもんだ」

「こないだ総編集だったけど、観た?」

「ルビーちゃんがリポる前の回でしょ? 観た観た」

「どれが一番好きだった?」

「んー、色々」

「私が例に出した中では?」

「ブラック企業の一発芸大会」

「……!!」

「いや、ノリノリでマイクに応える上司の後ろで目が死んでる部下の人ら、悪いんだけど笑っちゃうよね」

「上司の『みんな楽しんでくれるようにしてます』に対するアクアさんの『全員目が死んでますけどね』がストレートすぎて心にスーッと効くんだよね」

「それ。マジでぶった斬りすぎてヤバかったわ」

「対して上司の『こんな時まで仕事が気になってんですよコイツら、仕事大好きすぎて困っちゃいます笑』が余計に心無さすぎてヒエッてなるんだよねえ」

「アクアくんと違ってアッチは天然だろうしなあ」

「当の上司はそれでイキイキとしてるからね、天職ではあるんだろうなってのがクるんだよね」

「おれも、就職は考えてやらねえとなあ」

「……そう言えば、レインくんは結局どうするの?」

「卒業したら、ってハナシ?」

「うん、この前は、その……」

「そうだなあ、まだ白紙」

「白紙なんだ」

「そりゃあね。元々は親父探しに全国回ろうと思ってたけど、取りやめちゃったからなあ」

「でも、バイトは変わらず入ってるんでしょ?」

「ちょっと頻度は落としてるけどね。まあ、金はあって損はないし」

「そうなんだ、白紙なんだ」

「うん、良くも悪くも不知火さんのおかげだよ」

「……余計なことしちゃった?」

「いやあ、全然」

「そう、ならよかった」

「金は貯まってるし、東京残るか地元に帰るか、そのぐらいは決めておかないとなあ」

「帰っちゃうの?」

「まだ未定。とりあえずここら一年で現場入って色々覚えたから、選り好みさえしなけりゃ地元帰っても仕事は困らないだろうし」

「そっか」

「気持ち的には勉強して進学も悪くないんだけどね。やっぱ大学は金かかるし、ここそもそも偏差値低いからなあ」

「そうだね。レインくんならもっと良いとこにも入れたんじゃない?」

「でもそれだと不知火さんとは向こう側とこっち側の関係だっただろうし、おれは親父への憎しみを募らせて、人生をドブに捨ててたよ」

「私って、もしかしてすごいことやってるかな?」

「たった一年……いや、現在進行形でひとりの人間の人生を変えてるんだ。もしかしなくてもすごいことやってるよ」

「ふふん、めためたに褒めてもいいよ」

「うん、ありがとう。遥か未来まで感謝してる」

「……ズルいね、レインくんは」

「不知火さんがすごすぎるからね、それでバランス取ってるつもり」

「これからもよろしくね」

「こちらこそ、不知火さんの友だちでいれて光栄だよ」

「友だち」

「うん、友だちさ」

「ま、今はそれでもいいかな」

「?」

 

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