【完結】不知火フリルは【おもしれー女】   作:ロウシ

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正夢

 

1.

 

 

「レインくんてやっぱり巨乳好き?」

「ごばっ!? ごほごほ! ……げへえっ!?」

「わ、大丈夫?」

「だいじょばない、ずずっ……」

「私、そんなに変なこと言った?」

「変なこと言ったよ」

「私らしくなかった?」

「……いや、めちゃくちゃ不知火さんらしかった」

「じゃあ驚き過ぎじゃない?」

「予測可能回避不可能だよ……」

「ふーん。それで、レインくんはやっぱり巨乳が好き?」

「『やっぱり』ってなんだよ」

「男の人って基本的におっぱいおおきな方が好きでしょ?」

「偏見〜! ちょっと奥さん偏見がすぎますわよ」

「そう? 私はおっぱい大きい子好きだけどなあ」

「うわぁ肉食だあ」

「ちっちゃくても好きかな」

「雑食だったわ」

「好き嫌いはだめ」

「そういう問題かなあこれ?」

「それでそれで、レインくんは巨乳派? 貧乳派?」

「その人に合ってたらなんでもいいよ」

「それはつまんないなあ」

「異性の友だちに、おっぱいの好み知られたいと思う?」

「私は言ったよ」

「しまったハメられてた!!」

「ふふふ、気づいた時には手遅れなのさ」

「……一応聞いておくけど、なんでいきなりそんな質問したの?」

「同じクラスの子に寿みなみさんて、おっぱいの大きい子がいるの」

「へ、へえー……」

「Gあるんだって」

「……高校生?」

「えちえちでしょ?」

「肩凝りそう」

「顔赤いよ」

「照れ隠しぐらいさせてよぉ」

「レインくん、素直だよねえほんとに」

「グラビアとかやってそうね」

「ドンピシャだよ。性格も可愛いし顔も声も身体も最高」

「うわあこれセクハラだあ」

「本人の前では言ってないよ」

「聞かされるおれの身がやばい」

「反応しちゃう? えっちだなあ」

「健康優良男子高校生に、日本が認める超美少女の口からGカップ女子高生へのセクハラ発言聞かされる身にもなって」

「……興奮する?」

「不知火さん疲れてる? 保健室いく?」

「ちょっと眠いかも。膝かして」

「だめ。嘘でしょそれは」

「バレたかー」

「美乳が好きだよ、おれは」

「ほうほう、またうまいことかわすね」

「本音だよ」

「……そうなんだ」

「うん」

「でも今目の前にGカップ現役グラビアアイドルピンク髪エセ関西弁母性たっぷりややむっつりの女子高生が現れたら?」

「属性の大渋滞だね!?」

「頻繁に交通事故起きてそうだよね」

「それ、対面したら男子高校生の処理能力超えすぎててバグるんじゃないかなあ、それ」

「そういうものかな」

 

 

2.

 

 

「ちなみにルビーはどう思う?」

「ルビーさん?」

「うん。ほら、クラスメイトだし」

「あ、そっかあー。いつも『深堀り』で画面越しに観てるけど、よく考えれば今この瞬間もこの学校にいるんだよなあ」

「最近は忙しくて早退欠席も多いけどね」

「売れてるもんね。ナントカ賞も取ってたし」

「新人賞だね。今いちばん勢いがあるタレントがもらえるやつ」

「ほえーすごいな」

「予想外の伸びだよ。でも、ルビーのセンスならいずれこうなってたとも思う」

「そっか、忙しいのか。それで最近負の気配消えてんのね」

「うん。忙しいと、誰かを憎む暇も体力もなくなっちゃうからね」

「誰かを憎めるってのも、大概暇だからこそなんだよなあ」

「忙しいとそれどころじゃなくなるよね、良くも悪くも」

「実感こもってんなあ、不知火さんが言うと」

「まあ私はお姉ちゃんのやってるゲーム、横から見る程度には余裕があるけどね」

「それはいいゆとりだよぅ。てかお姉さんいたの?」

「うん。実は私妹キャラなのでした」

「そうなんだね。全然気づかんかった」

「割と言われる。しっかりしてそうだし、お姉ちゃんっぽいとか」

「でも言われてみると歳下感あるなあ」

「同い歳だよ」

「知ってるよ」

「でも私が妹だったら嬉しい?」

「気を使うかもしれんし、もっと距離感近いかもしれんし」

「お兄ちゃんお兄ちゃん、あたま撫でてー」

「うぐはうっ!?」

「わ! 大丈夫……?」

「ごめん無理……」

「お兄ちゃん鼻血拭いてあげるねー」

「やめなさい味をしめないの!」

「ごめんごめん。でもひょっとしてレインくんロリキャラに弱い?」

「なんでそうなるんだよ……」

「ふむふむ、有馬かなさんもそういえばロリキャラ系だし……ぶつぶつ」

「不知火さーん? おーい帰っておいでー?」

「うーん、でも私ロリ系とかガーリー系はあんまり似合わないんだよなあ」

「なんのこっちゃか知らんが、不知火さんなら大抵のものは似合うでしょうよ」

「フリフリのドレスとかでっかいピンクリボンでも似合う?」

「……………………」

「男の子ってさ」

「な、なに? 心持ちジト目になって……」

「結構ファンシーなの好きだよね」

「いや、不知火さんがごりっごりのロリ系着てるの想像すると、その、ね……」

「……?」

「ごめん、いえない……」

「えーっ、気になるなあー」

「ごめんマジで無理恥ずかしい」

「ふふ、何を想像したのかねワトソンくん。その反応は、私がただロリロリ服を着ただけの妄想ではないだろう!」

「ひええやめてー!」

「こらこら眼を見て話しましょうか」

「お、押し倒されるー!?」

「今日のフリルは肉食系」

「そんな番組タイトルみたいな……っ! 不知火さん力強くね!?」

「マルチタレントは身体が資本だよ……こう見えてしっかり鍛えてる」

「とにかくこの体勢は色々ヤバいから!」

「そうね、やめておくわ」

「あれ? あっさり?」

「と見せかけてバカめーとうっ!!」

「わあっ!? しまった油断したあっ!!」

 

 

3.

 

 

「走り込み強化してる」

「そうなの?」

「不意打ちとはいえ力で負けたの悔しい」

「私って意外と策士でしょう」

「油断させるのが上手すぎ」

「そりゃあお仕事でやってるからね」

「くう、意外と野生的なんだよなあ」

「強い私も見て欲しかった」

「それにしたって、やり方はあるでしょ」

「せっかくだから強い刺激で一生残る記憶を植え付けたい」

「不知火さんのことを忘れるなんてありえないよ」

「……うん。そうだと嬉しいな」

「あ、なんか辛い過去持ち?」

「特別なことじゃないよ。誰にだってあること」

「出会いと別れ?」

「そう。人って、少し離れてるとあっという間に疎遠になるでしょう?」

「あーまあ。小中で仲良かった友達とか、今ほとんどどこいったか知らないなあ」

「次第に忘れていくの。名前を忘れて、顔を忘れて、声を忘れて……最後にはその人がいたことも忘れちゃう」

「…………」

「どんなに大切だって思ってても、薄情だよね」

「忘れることは先に進むことだよ」

「そうなのかも」

「そうだよ。それを不知火さんが教えてくれたじゃないか」

「……そうね」

「不知火さん……」

「でも、私は大切な人には私を忘れてほしくない。その人にとってオンリーワンになりたい」

「確かに。忘れたくない人っているよね」

「私はレインくんのこと忘れたくないよ」

「…………!」

「だから、それをなんとか繋ぎ止めようと、毎日色んなことを考えてるんだよ」

「……まあ確かに、不知火さんからしたら、ごくごく一般人とのコネって却って大事だろうしね」

「違うよ」

「え?」

「私、レインくんを忘れたくない」

「──そっか」

「ここは、居心地がいいもの」

「うん。おれもそう思うよ」

「…………ねえ」

「ん?」

「肩、かして」

「……いいよ」

「よろしい」

「……おちつく」

「…………正直言っていい?」

「なに?」

「心臓破れそう」

「……じゃあ、これは忘れられないね」

「へへ、そうだね」

「うん、私も忘れない」

 

 

 

「忘れないよ、レインくん」

 

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