東方空高下界 〜リキエルとヴェルサスが幻想入り〜 作:バームクーヘン
処女作です。文章力には自信がないので、あまり期待を込めず、軽い気持ちで読み進めていただければ幸いです。
日も落ちてしまった夜。静寂であり、木の葉が擦れ合ったり、虫が移動するような、わずかな環境音すらも聞こえない。今にも何かか出現しそうなおどろおどろしい森の中に、仰向けの姿勢で倒れている男が一人。
ゆっくりと起き上がり、自分の体を見たり、触ったりしている。自分自身が信じられないようで、混乱しているようだった。
男の名は《ドナテロ・ヴェルサス》という。彼は、自分では気が付けない、荊棘のように絡んだ、複雑で数奇な運命に巻き込まれてしまった者の一人であった。
「俺は……」自分自身の記憶が今、はっきりと頭の中に映し出されていく。
自分は空条徐倫達との戦闘に負けた。相手よりも精神的に未熟でありながら、能力を把握する事もなく、一方的に勝てると思っていた、自分の最大の誤算であり、敗因。
しかし、ただやられただけではない。ヴェルサスはその時点で、徐倫側にも、自分を救い出してくれた、いや、《利用していた》プッチ神父側にもつかず、中立派になった。神父からウェザー・リポートのDISCを奪い、ウェザーの記憶を再び取り戻させた。
それは、自分が誰よりも早く、天国へ到達するためのものだった。おかげで、一瞬だが空条承太郎のDISCも手に入れることができた。
しかし、その絶頂は続かなかった。それすらも神父に利用され、空条徐倫達から逃れるために、最終的に身代わりになって死んだ。プッチは生き残り、今もどこかで逃亡しているのだろうか。全てはもう自分には分からないことだった。
自分は最後まで幸せをつかめずに死んでいった。自分のことは、《天国に行くためだけの駒》だとプッチが思っていたことに気付いたのは、意識が闇に飲まれる前のほんの少しの間の時間だった。
「畜生…」惨めな自分の死に様を思い出し、無性に腹が立ってきた。もちろん、都合よくこき使ってくれた神父に対しての怒りもあった。
「俺はあの時確実に、ようやく幸せをつかむことができた…だが、それすらもあのクソッタレ神父に邪魔された」
ゆっくりと足を前に踏み出し始めた。体を動かしたのは、ただ、何かしなければいけないという感覚だけがあったからだ。目的や、行きたい場所などなく、動きたいだけ。倦怠感と無力感に挟み込まれ、揺さぶられるような感じがした。
「ここは何処なんだ?何故こんな所に居るんだ?少なくともフロリダではなさそうだ」
「今はいつなんだ?2012年だったよな?」
ひたすらに、自問自答を繰り返していた。死んだと思っていたら、突然いつかもどこかも分からずに飛ばされてしまったのだ。何も考えずに行動するよりかは、はるかに気が楽になるだろうと思った。
すっかり夜になった森の中では、ぼんやりとした木の影しか見えない。何者かに襲われたら、間違いなく多大な被害を受けるだろう。ヴェルサスの体に、本能から送られた電流が走ったような気がした。
暫く歩き続けると、森の奥で焚き火をしている男性を発見した。炎に背を向けて座っていた。後ろ姿がはっきりと視認できた。
黒髪のドレッドヘアー、一度見たらなかなか忘れることができない、牛柄のつなぎのような服。
そして、何よりも、首元のあたりに、《星の形のアザ》。これは、自分にも全く同じ位置にある、身体的特徴の1つだった。ヴェルサスの中で、その男の像のピースがジグソーパズルのようにパチパチとはまって、やがて自分が知っている一人の人間が出来上がった。
次回 第2話「再会、その記憶」
更新は未定です。
それでは、これからよろしくお願いいたします。