東方空高下界 〜リキエルとヴェルサスが幻想入り〜   作:バームクーヘン

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第10話 宵闇の妖怪、弾幕勝負の目的 その②

先に弾幕を撃ってきたのは、ルーミアの方だった。

 

ほおずきのように紅い弾幕を展開し、霊夢に向かって一直線で撃ってくる。

 

(やっぱりそこらへんの妖怪程度の実力だわ。さっさと終わらせましょうか)

 

弾幕の点と点で繋がっている直線の間に入り込み、挟まるようにして回避した。

 

(このまま突っ切って、全部の弾をアイツに当ててみせる!)

 

直線を通り抜けようとすると、目の前には緑色の壁があった。

 

それは、ルーミアがすでに打ち出していた弾幕で構成されていた。例えるならば、まるで鋭利なトゲのついた壁が迫ってくるようなものだった。

 

「くっ!」

 

すぐさま壁に弾幕を撃ちこみ、弾幕の力を打ち消し、相殺して体一つがやっと入るような隙間を作る。

 

「攻撃だけじゃなく、防御も兼ねた弾幕よ。」

ルーミアは得意げに言う。その様子は、人間の子供のような無邪気さすら感じさせるものだった。

 

「妖怪の脳みそでよく考えたわね。」

 

霊夢が皮肉を挟み、ルーミアは再び赤い弾幕を一直線状に打つ。今度は線の本数が大きく増えていた。

.

 

「この量は…隙間に入って回避はできなさそうねッ!」

 

すかさず、左に移動し、体に当たってしまうギリギリで避けていく。

 

霊夢は常に弾幕を撃ち続けているが、細かくルーミアも動いているため当たらない。

 

「まずは1つ目...くらうと良いわ!」

    

「夜符 ナイトバード」

 

水色の弾幕が撃ちだされ、弾が並んで壁状になる。

そのすぐ後に、青色の弾幕が撃ちだされ、これも弾が並んで壁状になった。

 

ケーキのように何層にも重なって迫ってくる弾幕の壁は、霊夢でも打ち消しきれない。

 

「さっきの技を連続で行うわけね。」

  「だけど、さっきの技を何回やっても同じよ。私にすべてかわされてしまうだけ!」

 

すると、霊夢は壁へ一直線に向かっていく。自滅行為のように思えるが、狙いはそこではない。

 

「このまま相殺なんかしないわよ。狙ってるのは…。」

 

「飛んで火にいる夏の虫ってところね。そのまま大人しくくらいなさい。」

 

すると、()()()()()()()()()

 

近づいてくる霊夢と、壁の距離が近くなればなるほどに壁に隙間がひとりでに空いていく。磁力で引き寄せられる砂鉄のように、霊夢の体だけを避けるようにして通り過ぎて行った。

 

「おかしいわね。こんな隙間は大きくしていないのだけれど。」

どこかあっけらかんとしたような態度で、自身の弾幕が破られたことをあまり気にしていないルーミア。

 

「あんまり興味なさそうだけど、教えてあげるわ。あなたの弾幕の弱点。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「連続で壁を作ろうとした結果、妖力温存のために少ない弾数で打ち出し、壁状にする。そしてそれを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、最初に見えるものと比べて、弾と弾の間の隙間が広がる、と私は見たわ。」

 

鋭い分析、指摘。博麗の巫女としての経験が染み出た、めったに聞けない言葉。しっかりと聞いていればアドバイスとして生かせそうなものだが、一方の妖怪側は、全く聞く耳を持っていなかった。

 

「そーなのかー」

 

やはり、掴めない。

 

 

「隙あり!」

 

霊夢がルーミアに向けて撃った弾幕が、ボゴボゴとルーミアに直撃した。

 

 

「ちょ、痛いわね!私が感心している時でしょ!?」

 

「考察を褒めてくれてありがとね。でも、この勝負、()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事よ!」

 

容赦なく、上からの目線で、霊夢は弾幕を撃ち続ける。

 

「!これだから人間は!」

 

ルーミアは左に避けるが、極小の弾幕がそばを(かす)めた。

 

「!」

 

「ある程度は自動追尾してくれるのよ。あんたにはかすり傷程度にしかならないだろうけどね。」

 

人間に一杯食わされ、緩んでいた表情が歪み始めた。そして、一気に高度を上げ、急上昇した。

 

 

「あなたを食べてもいい人類かと思って見くびってたわ。そろそろ終わらせましょう」

 

戦闘の終わりを告げる宣言をするルーミア。

既に手の内には、妖力の塊があった。

 

「あなたの言うとおり、すぐに終わらせてやるわ!」

 

霊夢も弾幕をルーミアに向けて撃とうとしていた。

 

が、打ち出す直前、霊夢は、すぐそばを、白い色の、細い糸のようなものが通っていることに気が付いた。

 

(何よ?これは。糸?それにしては、ピンと伸びすぎている感じがするわ。)

 

糸が何本も伸び、霊夢の体と並行する形になる。

 

「挟まれたような形になったわね。」

 

「その体制になっても冷静に独り言をさえずる余裕があるのね」

 

「こんなもの、私の手刀でも簡単に切れそうだもん。」

 

再び、ルーミアがニタ、と口角を上げ、笑った。

 

「そんな悠長なことを言っていられるのも今のうちだわ。」

「くらえ!」

 

ルーミアが前方にまっすぐ腕を伸ばした。

 

すると、糸が変化し、たちまち太くなっていった。

 

「?これは…レーザー!?」

 

霊夢が糸と思い込んでいたものは、極限まで細くなった、レーザー型の弾だった。

 

()()()()()()()()()()()()()霊夢を挟み込もうと近づいてくる。

 

「まずいッ!」

 

焦りを見せるも既に遅く、霊夢の脇腹をレーザーが掠った。

 

「くうッ、やってくれたわね…」

格下の妖怪に一枚下手の状態になり、感情の動きが激しくなる。  

 

「どうかしら?余裕綽々で挑んだ相手に、一杯食わされる気分というのは?」

 

「…全然、どうってことは無いわね。初めに言ったでしょ?」

「あんたなんか、戦いの糸つにも入らない、精々準備運動くらいだって。」

 

「準備運動で負傷するなんて、今まで聞いたことがないわね。」

 

「念には念をって奴よ。」

 

能力戦だけではなく、口頭での戦闘も熱を帯びていた。

 

「さあ、その傷をあっという間にえぐって、動けないようにしてやる」

「これでおしまいよ。正真正銘のさよなら。」

 

「闇符 ディマーケーション」

 

ルーミアは自分を囲うように弾幕を展開し、それを霊夢の方向のみならず、全方位に向けて撃つ。

 

向かってきていた弾は、2つの弾が交互にクロスするような軌跡を描いていた。

 

「簡単な弾幕ね。重なり合った後の直後、隙間が空いたタイミングで通り抜ける!」

 

瞬間、霊夢が弾幕の間を通ったかと思うと、前方から青い弾幕群が向かってきた。

 

「なっ!?」

 

霊夢は避けたが、その後ろにもあった青い壁に追われ、さらに右に避けるようにする。

 

「あなたとの戦闘で、少しは学ばせてもらったわ。自動追尾よ」

 

「私の技術を盗んだ、って訳ね。」

 

自動追尾弾だが、円状に放たれる弾幕のおかげで、大きく動いて避けようにも、避けられない。壁の切れの部分で、霊夢は少しのダメージを負っていた。

 

「私は技術を吸収することを覚えたわ!」

「そして、もともと自分の技術だったものに対して、やられるのよ。新しく更新された私の技術でね!」

 

「くう...」

 

弾幕に囲まれた霊夢は動けなくなり、壁に正面衝突するのを、待つだけだった。

 

「新しい知識を吸収し、それを自分の技術として利用する...私たちと同じように、考えることのできる生物ってのは、どんどん知識を入れて行って、成長していくものだわ。」

 

「だけど残念なことに、覚えられる知識量ってのは、生物によって限界が決まっているものなのよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いきなり何を言い出すかと思えば、生物学の話?そういう話は私の専門分野でもないし、魔法使いや医者にでもした方が、より知見を深められると思うわよ?」

 

無慈悲にも壁は霊夢に迫り、完全に逃げ道を絶たれた。

 

 

 

 

「答えは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢の眼前に迫っていた壁は、突如として分散し、一つ一つの弾に分かれ、霊夢の横を通り過ぎて行った。

 

「何ッ!?」

 

「古いものから忘れていくのよ。」

 

霊夢は手から弾幕を放ち、ルーミアに直撃させた。

 

「うがああああ」

 

「そして、また同じ過ちを繰り返す。知識がなくなっちゃったんだもの。」

 

弾幕をくらった痛みで、空中でじたばたとするルーミア。

 

「あなたの場合、自分の弾幕の弱点が抜け落ちたみたいね。聞いてたみたいだけど、頭には入ってなかったみたい。あら、相槌も打ってなかった?」

 

「うう、う、うわあ!」

 

ルーミアは霊夢を球状の闇で覆い、完全に視界を奪う。

 

霊夢に背中を向け、一目散に逃げるように飛行していく。

 

「よし、よし、よし、こ、ここは何とか逃げられる...」

 

 

 

「追い詰められたら目隠し?それはやめておいた方が良いわね。」

 

霊夢は真っすぐに、弾を撃った。明後日の方向に撃たれた弾は、

 

 

「カハッ」

 

ルーミアの頭に直撃した。猟銃で駆られた鳥の如く撃ち落とされ、地面の方向へ落ちていった。

 

完全に勝ち誇った表情で、霊夢は呟いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私の弾が、自動追尾だってことも、忘れてたみたい。」

 

先ほどの勝ち誇り顔はなくなり、すぐに冷静さを取り戻した。

 

「さて、魔理沙たちを追いましょうか。」

 

服の塵を払い、身だしなみを整えると、先ほど被弾した右の脇腹が目についた。

 

「あっ、この傷どうしよう。あれだけ言った分、魔理沙に言ったら確実に小馬鹿にされるし、...そこら辺の木にぶつかったって言えば、何とか信じてもらえるかしら。」

 

息をつく暇もなく、霊夢は魔理沙一行を追い、館の方に飛んで行った。

 

 

 

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