東方空高下界 〜リキエルとヴェルサスが幻想入り〜   作:バームクーヘン

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第11話 湖上の氷精 その①

霊夢の元を離れ、再び館の方へ向かっていた3人。

 

どこか寂しげな表情を浮かべ、飛ばしている魔理沙。

空を飛ぶことができないながらも、何とか全力の走りで食らいつくリキエルとヴェルサス。

 

(霊夢があの妖怪と戦ってるんだ、私たちは一刻も早く館に行かなきゃいけないぜ!)

 

(妖怪...もっとおどろおどろしいものだと思っていたが、見た感じは華奢な少女、という感じだった)

 

(ホントはもうだいぶキツいが、あいつが今戦っている以上、弱音なんてはける状況じゃねえ…)

 

3人の思いは、それぞれ交差しているが、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

という思いは、重なり合った軸のように、一致していた。

 

体を動かすことだけに必死で意識を集中させ、全く口を開かない3人。先ほどまで神社で和気あいあいとした会話をしていたことが嘘のようだった。

 

「なあ、魔理沙。お前は、紅霧異変について、何か考えたことはあるか?誰が企てたとか、それに協力したやつとかよ」

 

ちょっとした雑談を振ったつもりのヴェルサスだったが、場の雰囲気に押され、割と真剣な話題を振ってしまった。

 

デリケートな話題に対し、少しはたじろぐと思ったが、魔理沙はこちらを向き、少しはにかみながら話した。

 

「そうだな、霊夢の言ってたことから推測すると、おそらく異変の首謀者は、お前たちと同じように、近頃ここに越してきた奴だろうな。さすがにちょっと前だろうが。」

 

聞いていた2人は、さらに魔理沙に対し、疑問を投げかけた。初めての異変解決、ほぼ外部者のようなものなのにも関わらず、自分たちがここの古くからの住人で、これまで何回も異変の解決に関わってきているようにも思えた。

 

「何も言わずに突然起こしやがったんだろ?相当我が強い、失礼な野郎がやってるんだと思うぜ。俺はそういう奴が大嫌いだ

 

過去の経験から、異変の首謀者が自分の嫌いなタイプだと考えているヴェルサス。

 

「お前の考えは正しいのかは分からないが、まともな考え方だと思う、ヴェルサス。我が強いってこと、それに...」

 

くるりと360度、辺りを見回し、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、おそらくかなりの難敵だと、俺は考えた。」

 

ヴェルサスの言葉から、自分の考え方を広げたリキエル。

 

「お前たち、なんか慣れてるな...?ま、スタンド持ってるからそういう事例には詳しかったりするのか?」

 

2人は顔を見合わせ、しばらく考え込んだ後、魔理沙に向けて言った。

 

「いいや、俺たちはスタンドで戦ったことは、たった1回しかない。しかも負けてるからな。」

 

「…最もだ。」

 

魔理沙はキョトン、とした表情になり、

「マジかよ…」と呟いた。

 

 

 

 

しばらく進み続けていると、辺り一帯は、異変のものとは違った、白く霞んだ霧に覆われていた。

 

「見た感じ普通の、何の変哲もない霧だな。」

 

「ただでさえ辺りは暗いのに、これじゃあ進みづらい!」

 

2人をたしなめるように、魔理沙が口を開いた。

 

「落ち着け、牛柄、金髪。ここは霧の湖に近いって事だ。元々霧がかかってるんだよ。最も、妖怪もたくさん住んでるとこだけどな。」

 

霧の湖に近づいてきているという暗示だったようだ。

 

しかし、そんな雰囲気を打ち壊すように、右前方から緑色の弾が向かってきた。先頭は依然変わらず魔理沙だったので、真っ先に受ける形になる。

 

「こんな状況で弾かよ!」

 

魔理沙は星形の弾を打ち出し、ぶつけて相殺した。

 

「これが弾幕か...くらったらひとたまりもねえな。

 

「今の視界じゃ分が悪いぞ、魔理沙。急いでここを抜けよう!」

 

弾が飛んできた方向を見ると、霧の中におぼろげなシルエットが浮かんでいた。

ぼやぼやとしていて顔を見ることはできないが、緑色の髪を持ち、青と白のまじったようなワンピースのようなものを着ていた少女だった。

 

「何も言わないのかよ...!」

 

3人と並行するように飛行し、弾を撃ってきていた。

 

「だめだ、これじゃあ進めないぜ!2手に分かれるぞ!」

 

辺りには、弾幕を撃ちあう音だけが響いた。

 

「「何だって!?」」

 

2人の思いががっちりと重なり合った。まごうことなき”焦り”の感情だった。

 

「先に行くのはお前たち2人だ!そのまま館へ行け!」

 

弾幕勝負、それ以前の問題だった。

さっき自分たち自身で口にした通り、2人は、人生において戦闘をしたのは1回切りだった。どちらも、空条徐倫と、その仲間たちとの戦闘だった。

 

その出来事の前後にも、スタンドを使って何かをしたこと自体が無かった。

 

つまり、()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことと同義だった。

 

「おいちょっと待て魔理沙!?俺たちは戦闘に関してはド素人だぞ!?そんな奴らをこのまま行かせてもいいと思ってるのかよ!」

 

ヴェルサスは焦りを見せ、魔理沙に言葉を投げる。

 

一方、魔理沙は緑髪の少女に向けて、連続して弾を撃っていた。

しかし、突然少女の姿は見えなくなり、星形の弾たちは真っすぐに飛び去って行った。

 

「どうやら瞬間移動が使えるらしい!もうしばらくかかりそうだ!早く行け!」

 

こちらを向こうともせず、箒から降りて立ち止まった。

 

「…もうしょうがねえ!ヴェルサス、俺たちが行くぞ!」

 

ヴェルサスの襟を引っ張り、無理やりに魔理沙から引き離した。

 

「うわああああ!待ってくれえええ魔理沙あああああ」

 

 

 

 

 

 

 

霊夢、魔理沙、次々と味方が離れていく。単純に考えてみれば、戦力は半分にそぎ落とされた。

 

館に向かっているのは、幻想入りしたばかりの男2人。「スタンド使い」であることを除けば、ただの一般人だった。

 

「チクショウ!どうしていつもこんな立場に追いやられなきゃならねえんだ!」

 

自分の怒りをブチまけているヴェルサスは、走ってさほど経っていないのにも関わらず、汗で顔がびしょびしょになっている。怒り、不安、焦り、様々な感情が混濁したものが体表面に現れていた。

 

「だ~か~ら~、これは仕方がないことなんだよ!いい加減弱音を吐くのをやめろ!」

 

またか、と思いながらも、ヴェルサスの愚痴を受け止めているリキエル。

気づけば、この短時間で、注がれる水と、グラスのような、奇妙な関係が形成されていた。

 

「霧の影響も考えられるが、全員が全員俺たちの事を襲ってくるとは限らない。

とにかく、館へ急ぐんだ、それまでには、霊夢も俺たちと合流するはずだ!...恐らくだが」

 

気の良いことを言いながら、しばらく走り続けていると、突然樹木が開け、景色が見えてきた。

 

霧がかった湖だった。斧を投げ入れたら、女神の2,3人は簡単に出てきそうな湖だった、

 

「き、きれいだな。…俺たちが迷い込んだ場所とは、比較対象にもならない。」

「間違いねえ…フロリダの海と、タイマン張れるぜ、こりゃあ。」

 

日本古来の風景の広がりに、2人は感嘆していた。この時点で、少しだけ幻想入りしたことを嬉しんでいたようだ。

 

 

すぐさまヴェルサスは、湖に近づき、水面を上から見下ろすようにした。

自分の顔が反射し、はっきりと映し出される。頬の汗が滴り落ち、そこから波紋が広がった。

 

活力を取り戻した表情になり、リキエルに声をかけた、

「ここらで休憩しようぜ、もうだいぶ前から限界が来てた。」

 

館の方を向き、その後に湖の方を向いたリキエル。

「ま、キツいのは俺もお前も同じだ、ここで水飲み休憩でもするか。」

 

嬉々とした表情に変わり、ヴェルサスは手で湖水をすくった。

 

自身の手相一本一本が見えそうなほどに、透明できれいな水だった。

そのまま口に持っていき、のどに流し込んだ。

 

「ああッ、そういえばそれ湖水だぞ!大丈「ブエッ、ボハッ、ゴホッゴホッ」

 

ヴェルサスは口の中の水を、池に戻してしまった。

 

「…言わんこっちゃないな」

 

いまだにむせているヴェルサスの元に立ち寄り、背中をさすってやった。

 

「体に悪いかも、って言おうとしたんだが、遅かったな。ごめん。」

 

「ごボッ、そういう問題じゃねえぞ、リキエル。俺がむせたのは、そうじゃない。」

 

触ってみろ、とでも言うように、クイックイッと湖水の方を指さした。

 

「オーケーだ。」

 

躊躇なく指を突っ込むと、すぐさま指を引っ込めてしまった。

 

それは、反射的な反応によるものだった。

熱いものに触れた際、そのままやけどになるのを防ぐため、手を引っ込めてしまうように、危険を察知した時の、無意識の行動だった。

 

今回のケースは、例えの真逆だった。

 

「つ、冷たい!なんだ!この水は!?」

 

あまりにも水が冷たすぎたので引っ込めてしまったのだ。

 

「ああ。その通り、いくらなんでも水が冷たすぎるんだ!だから、反射的に吐き戻しちまったんだよ!」

 

「おかしい…ここらの気温は、寒い、までとはいかないように感じるぞ!」

 

これだけでは、ただ水を飲むことに失敗した、間抜けな男のようにしか見えないだろう。

しかし、それすらも繋がってしまうような、異変が、2人の目の前で、起こり始めていた。

 

ピキピキピキピキ

 

「おいッ!あれを見てみろッ!」

 

リキエルが目にしたのは、()()()()()()()()()()()だった。

ついさっきまで真水だったのにも関わらず、もう巨大な氷塊に変化している。

 

「これは…!間違いない、「能力」か「スタンド」だ!」

 

ここまできたら、いくらなんでも2択に絞られる。

 

幻想郷の住人が持つ、特殊な「能力」と、一部の者だけが持つ、「スタンド」だ。

 

 

 

2人が思考を巡らせていた矢先、またもや災難が押し寄せた。

 

吹雪だった。吹雪が、ゴオゴオと激しく吹き付けていた。

 

「うおおおおおおおおッ」

「ど、どういう事だ...瞼が...開けられない!」

 

目元まで凍らせてしまうほどの、激しい吹雪。そんな轟音の中を通り抜けるが如く、声が聞こえてきた。

 

「あんた達、こっちを見なさい!!」

 

無茶をしつつ、声のした方を見ると、霧の中に混じってうっすらと、全身水色、頭の一部分は赤いらしい少女が、宙にふわふわと浮いていた。

 

「新手の能力か...!」

 

リキエルの腕には、スカイハイが装着されていた。

 

 

 

 

 

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