東方空高下界 〜リキエルとヴェルサスが幻想入り〜 作:バームクーヘン
いよいよ、物語が動き出しそうです。
この森に来てから、2度目の目覚めを迎えた。朝を迎えるのは初めてだった。
「ん……。」
ヴェルサスは起き上がって、背筋を伸ばした。
リキエルは、もう既に目覚めていて、自分が起き上がるのを待っていたようだ。
「おはよう、ヴェルサス」
「……おはよう。」
兄弟らしい朝の掛け合いに、なぜか異様に照れくさくなってしまったようだ。
もう既に、朝食のようなものが準備されている。
「これが朝食なんだよな?リキエル。」
「そうだ。ケモノ肉と、そこら辺の木の実だぜ。俺が今まで食べてたから、ある程度はいけるぜ」
彼が今までどのような人生を送ってきたのかはあまり知らないが、何かこういう分野のものを学んでいたりしたのだろうか。もしも機会があったら尋ねてみることにした。
「さて、腹ごしらえも済んだことだし、いよいよこの森を脱出しよう。」
「早く人のいる場所に行きたいぜ。」
いよいよ、自分たちが一晩過ごした森を出ることに決めた。特に持ち物もなく、この身一つだけで来たため、すぐに出発した。
朝を迎えているはずだが、不気味な樹木が空を覆うように伸びているため、薄暗い。まっすぐと一本道が広がっていて、右の方には赤い実のなる木が、左には黒い実がなっている木がある。雰囲気も相まってか、2人は十分に用心しながら、森を進んでいた。
「ところで、ここってどこだと思う?」
「さぁな……見当もつかねえ。少なくとも俺たちのいたアメリカじゃあない。」
「もっともだな。もしかしたら、国とか地域を移動したんじゃなく、
「世界線?パラレルワールドって奴か?」
パラレルワールド。並行世界。そんなものが、この世には存在しているのだ、という話を最近聞く。自分はこの世界ではなく、別の世界から来た人間だと主張する者とか、そこから持ってきた、とても貴重なものだ、とか、あまりにも馬鹿馬鹿しいと思っていたが、今の状況的に、これも受け入れざるを得ない。
森の景色は中々代わり映えしないもので、まっすぐと一本道が広がるようになっていて、右の方には赤い実のなる木が、左には黒い実がなっている木がある。
「この世界にも、俺たちのようなスタンド使いっているのか?」
「中々いるとは考えられないけどな…案外探せば見つかるかもしれない。ほら、《スタンド使いはスタンド使いに引かれ合う》っていうだろ」
「誰の言葉だ、それは?」
リキエルの勝手な言葉を、ヴェルサスは半分冗談、半分真実として受け取っていた。
事実、自分たちは皆スタンド使いであるし、戦った空条徐倫たちもそうだった。
この森を進んでいくと、もしかしたらスタンド使いに出会うかもしれない、とうっすらだが思っていた。
森の景色は中々代わり映えしないもので、まっすぐと一本道が広がるようになっていて、右の方には赤い実のなる木が、左には黒い実がなっている木がある。
「なあ。何かこの森、変じゃないか?」
「何だ?」
リキエルは何か異変に気付いたようで、足を止めた。
「何って、、、、普通の森だろう。それ以外になにかあるのか?」
ヴェルサスが尋ねる。自分たちの身に何が起こっているのか。まだわかっていない。
「・・・確かに。」
少しの沈黙を空けて、ヴェルサスは理解した。
いくら代わり映えのしないような森でも、こんなにも張り付けられた絵のような、全く同じ景色にはならないはずだ。木々も同じ、道の広がりも同じである。
「それなら…」
ヴェルサスは近くに落ちていた2本の木の枝を、バツ印の形にして地面に置いてみた。
「これが目印になるな。道はないが、無理やり横に逸れて移動するのもアリだぜ。」
「オーケー、左の茂みを抜けていこう。」
二人はかき分けるようにして茂みの中を通り抜けた。
「よし、抜けられたぞ。」
「辺りには赤い実が付いた木も黒い実が付いた木もねえ。違う場所に行けたぞ。」
なんとか迷宮を抜けられたことに安堵した。目の前に広がっていた一本道を進んでいく。
ベキョッ
歩き始めてすぐに、足元から、何かを踏み潰してしまったかのような音がしたので、足元を見てみる。
そこにあったのは、先ほどバツ印の形に置いておいた2本の枝だった。
「「!?」」
「さっき置いた枝じゃあねえか!!なんでここにあるんだ!?」
「また同じ場所に行きついたってことか…?」
あまりにも不自然な森の進路に戸惑う二人。やがて一つの結論に行き着いた。
「リキエル、これはお前がさっき言っていたことだが…」
「ああ、間違いないぜヴェルサス。この現象は…」
「「新手のスタンド攻撃だ」」
2人で声を合わせ、この現象はスタンドによる者だと推察し、臨戦態勢をとる。地形を生かし、いつ襲い掛かってきてもおかしくはない。
自分たちのスタンドは近接の戦闘には向いていないものの、それでも、攻撃するしかない。じりじりと、背中に毛虫が這うような緊張が立ち込める。
すると、またしても不可解な現象が起き始めた。
「おい、あれを見ろ!ヴェルサス!」
ヴェルサスが目を向けた方にあったもの、それは、”スキマ”だった。空間がぱっくりと割れるように、スキマが開いていた。数多くの目がついているようで、その全ての視線が自分たちに向けられているようであり、非常に気味が悪い。
(あの大きさ、形状、高さ的に、何かが出てくる気がするぜ…そしてソイツが俺たちを仕留めようとしてるな!)
ヴェルサスは、突然開いたスキマの考えを巡らせていた。
「やるしかねえ...!」
いつでもスタンドを出して、攻撃できるようにしていた。
しかしながら、その予想は下を行った。「拍子抜け」という意味でだ。
そのスキマの中からは、一人の少女が姿を見せた。
フリルドレスを身に纏った、金髪ロングで、赤いリボンが付いた頭巾のような帽子を被っている。
(なんだこいつ、、、ただならぬ風格を感じる...)
(見た目は落ち着いた様子の少女らしいが、それ以上の貫禄だな...。)
「お二人共、ようこそお越しくださいました。この幻想郷に。」
「...どうも。」
「幻想郷?」
リキエルはとりあえず軽く挨拶をしておき、ヴェルサスは頭の中に疑問符を浮かべる。
「私は、八雲紫《やくもゆかり》と申しますわ。まずはこの場所、いや、この世界についての説明をしておきましょうか。」
突然目の前に現れた少女、紫は、見た目にはそぐわないであろう丁寧な口調で、淡々と話していく。
「ここは「幻想郷」。主に忘れ去られたものが流れ着く場所です。でも、稀にあなたたちのような、何か特殊な方法でここに来る者もいますわ。」
「やはりだな。ここは…」
「ああ。俺たちのいた世界じゃなさそうだ。」
2人は、自分たちがいた世界とは違う世界に来てしまったことを確信したのだった。
次回、第4話「幻想郷の賢者 その②」です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。