東方空高下界 〜リキエルとヴェルサスが幻想入り〜 作:バームクーヘン
薄々勘づいていたのであまり驚かなかったが、これが現実的であるとは言えない。
「
「…で、八雲さん、で良いな。この幻想郷について、詳しく教えてください。俺達はまだここにきてあまり長くはないです。」
「リキエルの言う通りです。八雲さん。私たちはまだまだこの世界について分かってない。これからここで過ごしていくのには、まずは基本的な情報が必要です。」
リキエルが尋ね、ヴェルサスはそれに乗っかるようにする。
「あなた達には少し理解が難しくなりますが...それでもよろしいでしょうね?」
「もちろんです。」「はい。」
二人は、ほんのわずかな小言でさえも聞き逃すまいと思った。
「いいでしょう。あなた達が分かりやすいよう、こちらも極力、専門的な用語などは簡略化させてもらいます。」
「この幻想郷ですが、主に人々に忘れ去られたもの、つまり「幻想となったもの」が行きつく場所です。だからここでは、妖怪もいます。妖精もいます。神様だって、霊だっていますよ。「空想の生き物」といった方が分かりやすいかしら。それも全ては、人間が忘れ、否定し、力が弱まったから、ここに来たのです。」
妖怪、神霊。ファンタジーのものだと思っていたが、今の話を聞いている限り、なんでも受け入れられてしまう。
「この場所は、「日本」という国の、山奥のどこかに位置しています。何も知らない人間が入ってこないよう、2つの結界を張っています。1つは「幻想と現実の結界」、もう1つは、「博麗大結界」というものです。
「日本…聞いたことがあります。アジアの島国ですね。」
「俺たちはそんなに遠いところに飛ばされてきた、って訳だな。」
「あら、そういえばあなた方は外国人のようですね。なら、日本をあまり知らないのかしら? 基本的に、日本古来の文化に基づき、文化は形成されています。人里などに行ってみれば、それは分かりやすいかもしれませんね。」
「なるほど……丁寧に説明していただき、ありがとうございます」
「これで、ある程度は安心して過ごしていけそうです。」
感謝を伝え、半分空元気のような言葉を吐く。まだ混乱しているようだ。
「ところで、まだあなた達のお名前を聞いていませんでしたね。教えてくださいませんか?その牛柄の服のあなたは…」
「リキエルです。」
「私はヴェルサスと言います。」
「ご丁寧に、どうもありがとうございます」
話せば話すほど、見た目と話し方、雰囲気の捻じれ具合に戸惑ってしまう。
「これまでにも、幻想郷を知らない一般人が、迷い込んでしまったこともあるのです。周辺の樹海で自決をしようとした人や、遭難してきた人たちがそうですね。しかし、あなた達のような事は初めてですわ。何せ、1人が突然空から降ってきて、その後にもう1人も後から降ってきたんですもの。」
「リキエル、これは、、、」
「ああ、先に降ってきたのが俺で、後から降ってきたのがヴェルサスです。」
自分たちが鳴り物入りでここに行き着いた事に驚きつつ、辿ってきた事実を、紫に述べる。
紫は一切驚くようなことはなく、落ち着いた受け答えをした。
「突然時計の秒針が遥かに速く進み始め、宇宙空間に放り出され、ここに落ちるようにして来た、という訳ですね? ふむ、、、そのような事例は、私の経験上では、一切心当たりがありませんわ。」
「やはりそうですよね。体験した俺にも、まるで分からなかった。不可抗力のようでした。すみません、こんな訳の分からないようなことを話してしまって」
「いえ、どうもありがとうございます。ここの方が、さらに訳の分からない経験をするでしょうから。」
「では、最後にお2人に1つ質問をさせていただいても構いませんか?」
2人はゆっくりとうなずいた。これから何か恐ろしいものが行われるような、重苦しい雰囲気に、辺り一帯は支配されていた。
「あなた達は、これから幻想郷で「
((・・・・・・・・・・))
少しの思考を巡らせ、辺りには沈黙が走った。この質問にどう答えるかによって、この先の運命が大きく変わってしまうような、そんな重苦しさを感じた。
先に口を開いたのは、リキエルだった。
「俺は・・・・この幻想郷で「成長すること」を目指し、これから過ごしていきます。」
紫は興味深そうに眼を大きくさせ、尋ねた。
「なるほど。…それでは、あなたの思う「成長」とは何でしょう?」
リキエルは一切考えもせず、自分の心の奥底にあった、信念に応じて答える。頭でわざわざ理屈を考えて口に出す必要はなかった。それだけで充分だった。
「俺の求める「成長」とは、「精神の成長」だと思っています。かつて、とある宇宙飛行士が「月」へ行ったのは、人間の精神が、地球を超えて成長したからだと俺は考えました。そして俺がたどり着いたのは、最も大切なことは、、「成長して、祝福される」ことだという考えでした。だからこそ、俺はここでも成長をし続けたいのです。出会いや別れ、時には何かと戦うこともあるかもしれません。俺は、それを通して成長していきます。」
「……ここではかなり珍しい考え方のようね。自身の成長……ねぇ。どこかの巫女とはかけ離れた考えだわ。」
紫は深く目を閉じ、誰かに思いを馳せるようにして呟いた。
すぐさま、ヴェルサスが続けた。
「私は…自分で言ってしまうというのも癪ですが、ここに来る前は、とても不幸な人生を送っていました。」
「あら、そうなのですね。それは可哀そうに。」
紫は一応相槌を打っていたものの、共感はせず、どこ吹く風で、他人事のように受け流しているように見えた。
「だからこそ、私の中には激しい上昇志向があります。「
「やはりあなた達は、これまで来た外来人の中でもかなり珍しいようですね。決して揺るぐ事の無い信念を持ち、この世界で自分なりの生き方をこんなにも早く見つけている。」
「幻想郷はすべてを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ。あなた達もじきにここでの生活に慣れていくことでしょう。そして、これからの幻想郷をどのように変えていくのかが楽しみですわ。」
(やはりこの女、只者じゃなかったみたいだな。)
(何百年もここにいるみてえな語りだな、、、いや、それもあり得る話だ)
2人は目の前の存在に、圧倒されていた。もうこれ以上、紫に何かを尋ねるつもりも無かった。
「リキエル、ヴェルサス、お話ができて良かったわ。それでは、またどこかでお会いしましょう。」
そういうと、再びスキマが現れ、開き、その中に入っていき、紫は姿を消した。
「…紫さん、この世界じゃあかなりのお偉いさんらしいな。」
「ほんと、そうだな。改めて考えると、めちゃくちゃな世界に来たみたいだぜ。神霊とか、妖怪とか、信じられないもので溢れている。」
ヴェルサスは、自分たちが巻き込まれてしまった奇妙な世界へ、期待と不安を向けていた。
「まあいいさ、とりあえず、ここから出るのが最優先だ。紫さんがいなくなった、もう何も問題なくこの森を脱出できるはずだぜ。」
「…ああ。今度は、生き延びられるといいがな…」
2人は、再び茂みをかき分け、外へ向かった。とりあえず、どこか人のいる場所へ出向きたかった。
最近は予定が立て込んでいて、さらに不定期更新に磨きがかかりそうです。
ようやく森を抜けそうです。長かった…
次回、第5話「博麗神社の巫女」です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!