東方空高下界 〜リキエルとヴェルサスが幻想入り〜   作:バームクーヘン

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第5話 博麗神社の巫女

茂みを掻き分け続け、抜けた後に広がっていたのは、石畳の階段だった。幅の狭い小ぶりなもので、相当年月が経っているのか、所々小さなヒビが入っている。

 

「これは…階段じゃねえか。どこに続いてるんだ?」

 

「俺たちは行く当てもないからな、最終的に人里に着く事を目標として、しばらくここら辺をうろつくのもありだろう。」

 

リキエルの自由な発想には、やや呆れが生じているものの、とりあえず階段を最後まで登り切らなければ、何も起こるはずはない。出会いとか広いものとか、もしかしたら何か自分たちにとって良いことが起こるかもしれない、という期待を込めて登ることにした。

 

 

 

 

 

階段を上り続け、およそ15分。階段の道の目的地はかなり高地にあるようで、足の疲労はじりじりと重くなっていく。気を抜いてしまったら、紐のようにシルシルとほどけ、バラバラになってしまいそうな足に鞭を打ちながら、階段を上り続け、見えてきたのは、とある1つの神社だった。

 

「日本の"神社"ってやつだな。」

「お目にかかるのは初めてだぜ。」

 

 

赤い鳥居を抜けると、右の方には手洗い場、左はどこかへ続くような道になっている。正面には本殿が見える。至って普通の神社のようだ。といっても、神社に訪れるのはこれが初めてなので、この神社が並大抵のものと変わりないものだとは限らないのだが。

 

「中国のエッセンスが入っているな。」

 

日本は自国の文化を、他の国から取り入れた文化と合体させて発展させてきたのだという。この本殿も、どこかの国の文化を受けて造られたものだろうか。

 

「その建物の裏にも、何かありそうだな。」

 

リキエルはそれは何かを確かめてみたかったものの、とりあえず今は神社内の人を探してみるのが先決だと思い、我慢していた。

 

「あら、どうも。参拝客の方かしら?」

 

後ろから声を掛けられたので振り向いてみると、1人の少女が少女が立っていた。

 

黒のまっすぐな髪には、真っ赤なリボンが結ばれている。リボンと同じく赤い巫女服を着ていて、腋や肩が露出しているような形になっていた。こちらを茶色の目がしっかりと見つめている。

 

ようやくヴェルサスと八雲紫以外の人間に出会えた喜びと、鋭く見つめてくる眼差しの緊張に、咄嗟に言葉が出なかった。

 

「....」

 

「何?違いました?いるのよねえ、こうやって何もせずただここに来たって言うだけのやつ。」

 

ここの神社の巫女だったようだ。このまま不審者と同然の扱いをされてしまう訳には行かない。

 

「…俺の名前はリキエル。」

「……ヴェルサスだ。」

 

辺りには気まずい沈黙が流れている。時を巻き戻して、もう一度やり直さなければいけないな、と思うほどには。

 

「いきなり名乗ったわね…不気味だわ...。あんた達、何しにここへ来たのよ?」

 

かえって状況を悪くしてしまったようだが、ここで引くわけにはいかなかった。八雲紫以外で、初めて出会った人間。ここで話さず、何も情報を得ないという選択肢はない。

 

「いいっ、いきなりの登場のような形ですまない、俺たちはつい昨日ここへ来たばかりだ。」

リキエルはややヤケクソになりながらも、自分たちがこの世界の外から来た者だと、簡潔に説明しておく。

「あ、ああ。八雲さんに幻想郷の概要を聞かせてもらったばかりなんだ。」

ヴェルサスは慌てて、それに付け足すようにして話す。

 

「八雲…紫に大体は話してもらったみたいね。いつもここで幻想郷の説明するの面倒くさかったのよね…手間が省けて良かったわ。

 

(八雲さんのことを下の名前呼びで呼んでいる。こいつも何か重要そうだ。)

(随分と態度がでかいな・・・・神父みたいで少しムカつくぜ…。)

 

リキエルは独自の考察を、ヴェルサスはかつて自分の恨みを買った人物と少女を重ね合わせ、勝手に腹を立てていた。

 

「こっちからも自己紹介しておきましょう。私の名前は「博麗霊夢」。この博麗神社の巫女をしているわ。」

 

やはり、この神社の巫女だったようだ。

 

「で、前にいるのがヴェルサス、その後ろはリキエルで良かったわね。それで、何のためにここに来たの?やっぱり、元の世界に帰してくれとか、そこらへんでしょ、良いわよ、すぐにやっ「いや、その必要はないぜ。」

 

リキエルが真っ向から突っぱねるようにして答えた。

 

「あー? あなた達は外来人。このままここに居続けるわけにもいかないから帰してくれってことではないのね?」

 

「そういうことになるな。俺たちは、もう元の世界に帰るわけにはいかない。」

 

「どうしてよ。第一、あなた達にはどこにも行く当てがないじゃない。それに、ここから出て夜になったら、そこら辺の妖怪たちに喰われて死ぬってのが定石よ。」

 

「ぐっ…確かに。いきなりかくまってくれる場所なんてないし、それに、妖怪に喰われて死ぬ...?」

ヴェルサスは、自分の体に鋭い恐怖が走ったのをひしひしと感じた。

「ああああ...俺はこんなところでも不幸なのか…!?」

死の危険性が見え、混乱してしまう。彼の体には、汗が噴き出ていた。瞼がストーンと落ち、何も見えなくなった。

「うおおお 俺の瞼がァァァァ また落ちてきたァ...あの時と一緒だァ」

 

「リキエル!」

 

(あの動揺から起きるあの症状...あれはパニック障害だ!まずい、これ以上の悪化を止めなくてはッ!)

 

「ええ。紫から聞いたでしょ、妖怪や神霊だってここには居るの。まず普通の人間では抵抗できずに喰われていくだけよ。」

 

(この女、かなりハッキリと言うみたいだ…死の危険性までチラつかせてきやがったな。)

 

霊夢の淡白な対応に、2人とも少しずつ精神が削られていた。

 

「悪いことは言っていないわ。あなた達を助けるためよ。「幻想郷は()()を受け入れる」。それはとても理不尽なことよ、分かってる?これは善意で言ってるの。変なこと言わないで、大人しく自分たちのいた場所へ帰るのが、最適解ってやつじゃないの?」

 

その時、ヴェルサスの中の何かが激しく燃え上がった。

 

(このヴェルサスが次にやるべき事は!「俺たちの思いをこの巫女にぶつけること」だッ!)

 

「リキエルの言うとおりだ。霊夢、俺たちは元の世界には帰らない!」

ヴェルサスが霊夢の言葉を無理やりかき消すようにして話す。

 

「…あんたらねえ。 じゃあ理由を聞くわ!どうして幻想郷に居たいのか、なぜここに執着するのか、聞かせてもらおうじゃない!」

 

もはや一触即発の状態だった。

 

「俺たちは「幸せ」を掴むためにここに来た。もうそこに居場所はない。決して自分たちから望んできたわけじゃないが、せっかく新しい環境に来たんだ。とことんやってやるつもりだ。死ぬことだって覚悟はしてるさ。」

 

「ヴェルサス...!」

リキエルは、自分について来てくれた男の熱い想いに、心を打たれた。

 

「俺の未来は俺が決めるッ!もう誰にも邪魔はさせねえ! リキエルとオレの二人で幸せを掴むと決めたんだッ!」

 

「ヴェルサス...。」

 

突然、霊夢はハッとなった。この言葉から、霊夢には、ヴェルサスだけではなく、リキエルの、2人分の思いが伝って来た。「覚悟」だ。この2人には、これからどんな敵にも立ち向かう覚悟があると。絶対に幸せになってやるという激しい「上昇志向」を、そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()程の勢いを。

 

そして、いつのまにか自分の心も突き動かされていた。

 

「…はあ、もうこれ以上言ったって、あなた達は引く気は無いみたいね。自分の意見を押し付けた私にも非はある。悪かったわ、ごめんなさい。」

 

ヴェルサスはふと我に返り、自分の言動を振り返ってみる。たちまち自分の勢いそのままの言動に恥ずかしくなり、慌てて口から言葉を継ぎ接ぎするかのように出した。

 

「す、すまない霊夢さん、つい熱くなってしまったみたいだ。」

 

「何も謝ることもないわよ。あと、霊夢で良いわ。呼び捨てよ。あんまり堅苦しくなっても困るでしょ。」

 

霊夢は感心したような様子で、

「全く珍しいわね。帰るか帰らないかでちょっとした口論になるなんて。あなた達の「覚悟」、この身で感じることができた。これからきっとうまく行くわよ、ヴェルサス、リキエル。」

 

(勢いだけで言ってしまった事が、何故か認められてしまった。少し不思議だ。)

 

なんとか事が収まり、安心したのも束の間、霊夢からとある質問が投げかけられた。

 

「でもやっぱり、人里とかに定住をせずに、いろいろな場所を巡って過ごしていくなら、ここでは能力がないと生き残ることすら厳しい。流石にあなた達は持ってないでしょ?」

 

「能力?」

ヴェルサスの言葉で立ち直ったリキエルは、ここで初めて聞く言葉に興味を示していた。

 

「そう、「能力」よ。ここの住人の一部は、何かしらの特殊能力を持っている。そして、それを生かした戦闘を行うのよ。」

 

「戦闘...!」

リキエルの瞳には、空条徐倫との戦いの時のような、燃え上がるような興奮が浮かんでいた。

 




次回、第6話「能力と「スタンド」」です。
いよいよスタンドが登場しそうですね。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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