東方空高下界 〜リキエルとヴェルサスが幻想入り〜   作:バームクーヘン

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どうも、第6話です。いよいよ、2人のスタンドの登場です。(ほんの少しですが)


第6話 能力と「スタンド」

 

「戦闘か…。」

ヴェルサスの瞳には、興奮という色は全く混じっていなかった。

 

「リキエル、一旦落ち着いたらどうだ。その、「能力」って奴も、俺たちは全く分かってない。霊夢に教えてもらった方が良い。」

諭すように呟いた。

 

 

「…それもそうだった。教えてくれ、霊夢!俺たちがここで生き残っていくためには、それをることも必要なんだ。」

 

夢がさめたような反応を一瞬だけ見せ、また夢を見始めた。

 

「…あなた、変わってるわね。子供みたいに目を輝かせてまで「能力」の事を知りたいなんて。」

 

やれやれ、というような様子で霊夢が目を伏せる。それはヴェルサスも同じだった。

 

「とりあえず、実際に見せた方が早いわね。私の能力は「空を飛ぶ程度の能力」よ。」

 

自分の能力を手短にこちらに伝えると、霊夢の体は紐で釣りあげられるようにして垂直に上に上がり、一定の高さに達した時、ぴたりと上昇するのをやめ、空中で静止した。信じられなかった。生身の人間が、「スタンド能力」も使わずに空中飛行していたのだ。

 

「すげえ...」「嘘だろ...あり得ねえ。」

二人は語彙を失い、ただ宙に浮かぶ霊夢の姿を見ていることしかできなかった。

 

「どう?これが私の能力。 単純にこうやって空を飛んだりすることだけじゃなくて、もうちょっと色んなことができたりするのだけどね。」

円を描くようにして飛んでみたり、急ブレーキをかけた車のように、急停止をしたりしている。

幻想郷には、こんなような能力を持った者たちが、まだまだいるのだと思うと、やはりここは無茶苦茶な場所だと思い、何より自分たちのこれからが心配になってきた。

 

「で、どうなの?結局、あなた達は「能力」を持っているの?」

 

少々気迫に押されていたが、我に返り、

 

「俺たちは「能力」は持たないが、「スタンド能力」ってものなら持ってる。」

「ああ。今の所、俺たちだけが持っていると思っている。」

 

「ふーん、スタンド能力?またこっちのものとは違ったものなのね?」

(スタンド…今まで出会った事の無いものだわ。ここでしっかり知っておかないとね。)

 

霊夢はあっけらかんと受け止めているが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のであろう。博麗の巫女の責任感、そしてその強さが垣間見えたような気がした。

 

「じゃあ、実際にそれを見せてみてくれない?私がいま空を飛んでいる所を見せているように。何ができるのか、それが重要よ。」

 

「あー、分かった。ヴェルサス。」

「オーケー。一緒にスタンドを出せってことで会ってるよな?」

 

(よーく見ておかないと。2人の能力、拝見させてもらうわ。)

 

霊夢は一瞬も見逃すまいと、じっと鋭く2人を見つめていた。

 

「いくぞ!」

「ああ!」

 

 

 

 

 

「スカイ・ハイ!」

「アンダー・ワールド!」

 

 

 

 

 

 

子供向けのヒーローの必殺技のようなものを叫んだが、何も現れることなく、何も起きなかった。

 

「…何よそれは。必殺技を叫んだだけ?そういうのはいいから、さっさと「スタンド」ってものを見せてみなさいよ。」

若干引きつつも、自分にスタンドを見せるように促す。

 

「いいや、霊夢。既に出してるぜ、俺の「スカイ・ハイ」はな。」

「それを言ったら、俺の「アンダー・ワールド」もだな。」

 

「むー? 特に何もないわよ?」

 

ヴェルサスがハッとなったように、いぶかしげな表情をしている霊夢の方向を見た。

「これは伝え忘れていたことなんだが、「スタンドはスタンド使い以外には見えない」んだ。だから、スタンド能力を持っていないお前には見えていないんだぜ。」

 

「スタンド能力と能力は多少の差異があるって事ね、。。」

 

スタンドは、すでに出現していた。その能力の語源を表すように、それぞれのすぐそばにいた。

 

リキエルのスタンドは、彼自身の右腕に装着されるような形になっている。頭はプテラノドンのような形で、胴体は足がとても長く、それを巻き付けたカブトムシのようなものだ。

 

ヴェルサスのスタンドは、人型の形をしていた。全身が薄青く、目は金色のレンズのスコープのようなもので覆い隠されていて、鼻や口、耳の無い妖怪のような面構えをしている。筋肉質な体の頭の部分には、黒い切れ目のような模様が入っており、本体であるヴェルサスと瓜二つになっている。

 

2人には見えているが、霊夢には見えていない。スタンドの特性の1つ。「スタンドはスタンド使い以外には見えない」。

 

「一人一人の人間の性格や見た目が違うように、スタンドだって1人1人違う能力を持っている。それを今から見せてやるぜ。」

 

ヴェルサスが、自分がしてもらったように、簡潔にスタンドの特性の説明をし、

 

「アンダー・ワールド!」

と、再び自身のスタンドの名前を声高らかに叫ぶ。

 

アンダー・ワールドは霊夢のすぐ目の前に向かい、そこで「穴」を掘り始めた。

 

「ああっ、ちょっと!石畳が壊れたんだけど!?」

 

霊夢には、突然石畳がえぐれ、めくれて、ひとりでに穴が掘られている、何かしらの怪異にしか見えなかった。

 

「こ、これはッ!」

 

穴を掘るのにはさほどの時間はかからず、数十秒ほどで、最終的に、人が入れるような大きさの穴になった。全く底が見えない穴だった。

 

「ヴェルサス、これは…」

リキエルがヴェルサスに尋ねる。彼もまた、「アンダー・ワールド」の能力を理解できていないようだった。

 

「ん…そうか、お前も見るのは初めてか。」

一時的に同じ病室に集められたとはいえ、いくら何でもスタンド能力の見せ合いはしなかった。それどころか、あの時は自分達が「スタンド使い」だという事すら気づいていなかった。

 

「霊夢、リキエル、よく見ておいた方が良い。今アンダー・ワールドが掘り起こした「穴」をな。」

 

能力の特性上、ヴェルサスにも何が起きるか分かっていなかった。

 

3人が注意深く見ていると、穴から這い出てくるようにして何かが穴から出てきた。それは、人間だった。

黒い三角帽に、黒系の服には白いエプロン。セミロング程の金髪を持つ少女。

 

「霊夢本人ではない…知り合いか?」

 

「ええ。あれは「霧雨魔理沙」。分かりやすく言うと、魔法使いだわ。ちょっと前にここに遊びに来たばっかりなのよ。」

 

掘り起こしたのは、「霧雨魔理沙」という少女であった。

 

(穴の深さ的に、ソイツがここに来たのは数時間前、ということになるな...)

 

「ふう、穴から出てくるのは大変だったぜ。服が汚れなかったのが幸いだな。」「よう!霊夢。遊びに来たのと、お茶でも飲みに来てやったぜ!」

 

魔理沙と呼ばれる少女は、快活な喋りで、こちらへ歩いて向かってくる。

 

「って魔理沙!()()()()()()()()()()でしょ...?」

 

「ついさっき出した?まさか、また同じやり取りをしているのか?」

違和感を感じた2人は呆然としている。

 

「フッ…そうだな。これが俺の「地面の記憶を掘り起こす能力」だ。」

 

「「地面の記憶を掘り起こす...?」」

 

リキエルならまだしも、スタンド能力を今ここで初めて見た霊夢には、全く理解が追い付けていない。

 

「アンダー・ワールドは地面の記憶を掘り起こし、それを”再現”できる。それは、俺でさえも変えることができない「絶対的なもの」だな。もしも戦う時があるなら、”穴の中に相手を放り込む”って戦法が主になりそうだ。」

 

「こっちにも再現したものを引っ張ってこれるって訳か...」

「自分が、過去の記憶を基に再現されたものっていう意識はあるらしいがな。」

 

「過去の事象を再現することができる...探偵とか、そこら辺の職業には向いているんじゃない?」

 

なんとなく、能力の形はぼんやりと掴むことができていたようだ。

 

そうこうしているうちに、一通り先ほどまでのセリフをしゃべり終えた魔理沙は、突如としてボロボロと体が崩れていった。

「魔理沙!?あなた、体が...!」

 

「安心しろ、それはあくまで”過去の魔理沙”だ。アンダーワールドで再現したものは、再現し終えたら消えていく。」

 

2人は難解な能力に戸惑いつつも、何とか受け入れようとしていた。

 

「…これじゃあ私もスタンドを使えるようにならないと、理解できる気がしないわね…」

 

「霊夢、ヴェルサスのとは違って、俺のスカイ・ハイは単純だと思うぜ。多分な。」

一応保険をかけておき、早速霊夢に能力を見せようとしていた。

 

「よーく目を凝らしてみろよ。そうしないと、俺の「ロッズ」は見えないからな。 いや、そうしても、見えるか見えないかだな。」

 

「ロッズ...?ヴェルサス、リキエルはいったい何のことを言ってるの?」

 

聴いたこともないような言葉が再び登場したので、ヴェルサスに聞くことにした。こういう時に外来人に尋ねるのは、よくあることだ。

 

「ロッズか...聞いたことがあるぜ。”未確認生物”って奴になるな。ネットでやたらと盛り上がってたような...」

 

ロッズ。アメリカや、日本で存在が噂されている未確認生物。人の目には映らず、ビデオカメラにだけその姿をとらえることのできる程の超高速の速さで飛び回り、一本の杖”ロッズ”のような形をしている。生体、繁殖、進化、その全てが現在はあまり解明されていない、謎の生物である。

 

「ロッズっていう生き物なのね。となると...分かってきたかも。スカイ・ハイの能力。」

 

「俺も当てが付いた。あいつの能力は…」

 

「ロッズを操る能力!」

 

未確認生物を操る。一見すると訳の分からないワードに思えるが、能力を使う者の前では、そんな常識はかなぐり捨て、今すぐに吸収していくべきだ。

 

 キィ―――――ン

 

何かから発せられている音だった。飛んでいる最中の飛行機のような、空を素早く切る音だった。

 

「やはりだ!ロッズたちはここにも生息していたぞ!」

 

リキエルは嬉々とした表情で言い、さらにロッズのスピードを上げていく。ギュンギュンと速くなり、線を描くようにして飛んでいた。

 

「おおおおおっ これはッ!」

 

「ロッズ...なんてスピードなのよ!」

 

飛び回る何かにどんどん萎縮していく。

 

「どうだ...。これが俺の能力!「ロッズたち」を操ることができる!」

 

予想が的中したが、その喜びに浸っていられる状況ではなかった。

 

「そしてこのロッズたちには、1つ、特性がある!」

 

その時、ヴェルサスの体に異変が生じた。

 

ムグシャア、と指の方向が狂い始めた。

 

「ああッ うああああああッーーー!?」

 

「ヴェルサス!?これはッ!」

 

目の前で起きた異変に、動揺を隠しきれない。

 

「すまないな、ヴェルサス。ほんの少しの時間だけ、ロッズたちの餌になってもらうぜ。分かるか?ロッズたちが餌にしているのかが?」

 

「ああ、今ので分かったぜ。ウイルスや物理的な力を加えたりしてるんじゃあねえ、”俺の体温”だ!それを奪ってこんな状態にしやがった!」

 

ロッズは”動物の体温を奪って生きているようだ。

 

「お前の体温はじきに戻るだろう。もうロッズを操作するのはやめておいたからな。」

 

リキエルがスタンド能力を解除し、ロッズたちはどこかへ飛び去って行ってしまった。

 

「あなた達にしか、見えない、使いこなせない能力ねえ...」

 

霊夢は小さく呟いた。

 

ふっと、霊夢が閃いたかのように顔を上げ、2人に声をかける。

 

「ねえ、2人とも、今後もし、ここで「異変」が起こったのなら、私たちと一緒に戦う気はない?」

 

「「異変?」」

 

またまた初耳の言葉が出てきた。マニア向けのビデオゲームのように、次々と専門的な用語が出てきて、すぐには追いつけない。

 

「異変。ここでは、妖怪や神がたまに暴れたり、面倒事を起こしたりするのよ。それが「異変」。博麗の巫女として、異変解決は当然の役目なのよ。」

 

やはり、どうしても”戦闘”という言葉に引っかかり、2人は考え始めた。

 

《small》「俺たちの成長に繋がるなら、参加してみるのも良いんじゃないか?」

「あー...だが、いつ起こるかも分からないんだぞ。リスクはデカいだろ。

 

「俺たちの成長にも繋がるし、みんなを助けてやれるんだからな。俺たちに戦わないという手は無い。」

聖人のように、真っ当な理由を語ったのがリキエル。

 

「…はっきりいって、戦闘には不安は抱えてるがよぉ~、俺たちがその”異変”を解決したんなら、きっと注目されて、有名になれるだろ?それなら、別に悪い気はしないな。幸せへの道がグッと近まるような気がするぜ。」

やや、自分の欲望や不安も交えて語ったのが、ヴェルサスだった。

 

志にこそ対極のように思えるが、「成長のため」、「幸せを掴むため」という目的は、2人の心の奥底にはっきりとある思いだった。

 

霊夢は驚いたまま固まっていて、またすぐに元の鋭い目に戻った。

…ま、、冗談のつもりで言ったんだけど。とりあえず、異変解決には協力してくれるってことになるわね。もしもそういう事が起こったのなら、すぐに連絡をよこすわ。」

 

「分かった。」「ああ。」

 

再び戦いの道へと足を踏み出していくことに、覚悟をもう少しだけ固める必要があった。これからに対しての不安も溢れそうになり、ますます自分たちは奇妙な人生を送っているな、と思っていた。

だが、せっかくならここでの冒険を楽しみ、成長しながら、絶対に運命に打ち勝ち、幸せになるという思いは燃えていた。

 

 

 

 




かなり文章量が増えました。スタンドの描写はしっかりできているでしょうか?
次回、第7話、「人里へ行こう」です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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