我愛羅成り代わりによる四代目風影救済RTA   作:とんでん

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成り代わり、ボッチになる。

 

「────お前が眠りに入ったら、オレ様がお前の心と体を乗っ取りお前ら人間共を皆殺しにしてやる!!」

 

 うかつに熟睡しないことだ、と吐き捨てた。

 大嫌いだと罵倒した心に嘘偽りはなく、幼い人柱力も尾獣の本気の殺意を感じ取ったのだろう。夜に怯え、睡眠を拒絶し、以後深層心理にノコノコ顔を出すことはなくなった。

 それでいい。それが普通だ。

 

(やっぱお前みたいなやつは早々現れねえよ、なあ分福。)

 

 脳裏を過った哀れな老人をかき消しながら、虎視眈々と機会を伺った。ただ窮屈から解放されたい一心だった。

 

「・・・・・・守鶴、久しぶりだな。」

 

 そうして孤立し、監視され、疲弊した人柱力が己が叔父を手にかけた頃。

 限界を迎え、耐え切れずに意識を失った人柱力から主導権を奪って殺戮を繰り広げた守鶴は「んん?」と久方ぶり(と言っても言葉を交わすのがという意味で、文字通り一心同体なのだが)に精神世界に現れた人柱力に首を傾げた。

 

「どうした?独りぼっちになって寂しくなっちまったか?」

「誰のせいだと思っている。」

「ま、オレ様だろうな。」

 

 己は六道仙人の手によって生まれた、誇り高き獣である。人間風情に良いように使われたくはなかった。

 畏怖されるどころか、嫌悪を向けられているなら猶更である。

 

「・・・・・・テマリもカンクロウも、夜叉丸を殺した俺を恨んでる。破壊に巻き込まれた里人は余計だ。父様はじきに暗部を仕掛けるつもりだろうな。」

 

 ケケッと笑い飛ばしてやっても良かったが、守鶴の知る子どもとは随分調子が違う。そこは食って掛かり、恨み言をまき散らすところではないか。

 いやに冷静なのが奇妙で、守鶴は「だからどうしたよ。」と応じてやった。

 

「いや先程お前も言っていたが、独りは寂しいな、と。」

「人柱力なんてどこも同じだろうが、マ、砂隠れは昔から敬意ってモンがねえからなあ。」

「だから友達をつくることにした。俺と友達になってくれ、守鶴。」

「ああそうかい・・・・・・ん?」

 

 分福を思い浮かべおセンチな気分になっていた守鶴は、うっかり聞き飛ばしそうになった単語にんんんん?と首を捻った。もう最大限に捻った。

 なんか今、滅茶苦茶クレイジーなセリフが聞こえたような。「夜叉丸の死後色々考えたのだが、そもそも俺の中には生まれた時から守鶴がいるわけで、厳密に言えば一人であった瞬間は一度もない。」いや聞き間違いだろう流石に、叔父を間接的に殺した相手に友人とかナイナイ。「つまり守鶴のせいで孤立していても、守鶴と友になれば万事解決するのでは?」あれだけ懐いて慕ってた相手を奪った元凶とかナイナイナイナイ。

 

「手始めに「オイ、」“お前”ではなく、友人らしく名前で呼んでくれ。「チョイ、ちょっと待て」改めて俺は我愛羅、四代目風影の次男で一尾・守鶴の人柱力だ。好きな食べ物は砂肝、嫌いな食べ物は甘すぎる物。よろしくな。」

「待てっつてんだろがッッ!!!」

 

 思わずギャンッと吠えた瞬間、うっかりチャクラが放出されて、精神体の人柱力────もとい我愛羅のちっぽけなチャクラは守鶴のテリトリーから吹き飛ばされていった。

 静かになった部屋で、「ヱ?正気?」と尻尾をびたんびたんさせながら、守鶴は思案する。

 

(ひょっとして、叔父貴が死んでおかしくなっちまったのか。)

 

 だとしたら頷ける。ウンウンと納得しながら、守鶴はごろんと寝転がった。

 泣けるではないか。己へ刃を向けた叔父を憎むどころか、彼の死を受け入れずに人知れず壊れてしまったのだ。あのガキは。

 心の折れた人柱力なんて乗っ取るのは容易かろう。久々に暴れた俺も疲れたが、これで外界へのアクセスがしやすくなったと思えば僥倖だ。オレ様も少し休もうと守鶴は目を閉じ────

 

「ビックリした、いきなり友人を外に弾き飛ばすのはどうかと思うぞ、守鶴。」

「どぅわあああああああッ!!?」

 

 ────めっちゃ飛び起きた。

 あろうことか、フーヤレヤレみたいな調子で帰って来たのである。我愛羅が。

 

「おま、お前!勝手にオレ様の空間に入るな!不法侵入だろうが!!」

「?どちらかと言うと守鶴が俺の体に住み着いているのだから、寧ろその主張はこちらがすべきでは。」

「誰が好き好んで手前みてえなガキの体に住むかよ!つーか封印されてんだよ!」

「ふむ、確かに一理あるな。思えば出発点が不本意なのはお互い様か。」

 

 しみじみと頷いた我愛羅の様子が“相互理解”とか“和睦”とかとほど近い空気を醸していたので、もしや言葉が通じるのでは?と期待した守鶴は、次の瞬間「では現状はシェアハウスという感じだな。」と雑に纏められてズッコケた。

 

「ど う し て そ う な る 。」

「“監獄”よりは響きが良いと思うんだが。」

「いや、もうお前・・・・・・だあクソ!もう出てけ!」

「嫌だ。友達が欲しい。」

 

 無駄に真摯な曇りなき眼に見つめられ、守鶴はぶわりと尾を広げた。色々限界だった。

 

「だから、そもそも────オレ様は人間が大嫌いだっつってんだろうがよッ!!」

 

 本日最大の咆哮である。ドッとチャクラが溢れ、暴風となって我愛羅に襲い掛かった。

 荒れたチャクラを落ち着けるため、ゼエハアと呼吸を宥めながら、ようやっと沈黙を取り戻した空間に視線を走らせる。

 

(・・・・・・・・・・・・さすがに帰ったか。)

 

 今頃尾獣の衝撃波をもろに食らったショックで、布団から飛び起きている筈だ。そうして恐怖に打ち震えながら眠れぬ夜を過ごしている、そうであってくれ、頼む。なんなら我愛羅のこの強硬で狂行な「おともだち作戦」は一過性のものであれ。全然三日坊主とかでいい。坊主という単語につられた脳内のイマジナリー分福が「呼びましたかな?」とひょっこり顔をだしてきたがクソジジイてめーもすっこんでろ。

 

「尾獣とオトモダチなんざ、ありえねえさ。そうに決まってる。」

 

 別のジジイ・・・・・・六道仙人の呆れたような面差しがチラついたが、座らぬ腹を抱えた守鶴は、無理やり体を丸めて眠りについた。

 そう────ありえない。獣と人が相容れることなどありえるわけがない。

 

 

「おはよう守鶴、いい朝だな。因みに今日は夜叉丸の葬式だ。とても気まずい。」

「だっかっらァ!来るんじゃねーって言ったろうがあッ!!」

 

 

 因みに、我愛羅の執念はそれはもう凄まじく、全く一過性では終わらなかった上に仕舞いには守鶴も絆されることになるのだが、今はまだ誰も預かり知らぬ話である。

 

 

我愛羅成り代わりによる四代目風影救済RTA

 

 

 前略、ボッチになった。

 

 “我愛羅に成り代わる”というトンチキな来世を慣行中の転生者────前世とかの話は尺の関係でサクッと飛ばすが、そう。ごくごく普通のNARUTO疾風伝を愛読していた成り代わり主は、喪服のまま自室の布団の上で腕組みをした。

 それはもう、難題にぶち当たった賢者が如し厳めしい雰囲気で。がしかし彼の脳内を支配している問題は、忍システムの悪性でもなければ、人はなぜ生まれどこへ辿り着くのかといった哲学的な思考でもない。

 

 そう、ボッチについてだった。ひとりぼっちの略のボッチである。

 

 なんでまたボッチなのかっつうと、己が実母の弟である有能医療忍者系暗殺者夜叉丸くんをぶっ殺し、オデコにめっちゃ目立つ“愛”を飾っちまった後に、前世の記憶を取り戻して頭を抱えるとかいうハイパーうっかりさんをやった結果ボッチなうだからなのだが・・・・・・まあ要は滅茶苦茶原作通りなのだが、そこも尺の関係で割愛。

 

(思ったより、辛い。)

 

 針の筵なのである。控えめに言って。

 原作読んでた時「我愛羅めんどくせー。」とか思ってごめん、これはしんどい。性格歪む。

 

(無視はいい、父親に殺されかけるのは・・・・・・別に元から仲良くないし、オート防御で対処できるから良い。テマリとカンクロウに怯えられるのがしこたま辛い。)

 

 きょうだいたちのことを思い出しながら、我愛羅はフーと溜息をついた。

 と、タイミングよくノック音がし「我愛羅、入るね。」と音の主がドアを開ける。

 

「あ、あの。喪服、我愛羅のもまとめて洗濯しちゃおうかなって…嫌ならいいんだけどさ、良かったら。」

「・・・・・・。」

 

 ふるふると肩を震わせながら、精一杯の笑みを浮かべて話しかけて来たテマリに、我愛羅は無言で着たままだった黒装束を脱いだ。

 その動作に恐怖で体をビクつかせたテマリは、しかし気丈なもので「ありがと、じゃあまたね。」と服を片手に部屋を出て行く。その青白い顔があまりに哀れで、我愛羅は沈痛な面持ちで天を仰いだ。

 控えめにいってドメスティックバイオレンス。俺からきょうだい達への。

 

(テマリもカンクロウも、夜叉丸を慕っていた。そんな夜叉丸を殺したのは俺なのに、弟だからという理由でなるべく普通に接してくれている。)

 

 しかもたかが十歳そこらの子たちがだ。涙がちょちょぎれるどころではない。滝。

 我愛羅の境遇がアレなのはもう仕方ない。ヘイトコントロールに人柱力が使用されている以上、もう我愛羅自身が上役になるか上層の認識が変わるかしなければ、現状は好転しないのだ。

 

 だがきょうだい仲は今からでもどうにかできるはずで、というか彼らの精神衛生を向上させる努力はできる。

 さらにはボッチはボッチでも家族仲は良いボッチにランクアップが可能と、良い事尽くしだ。

 

(でも仲良くなったらなったで、二人に迷惑がかかる。)

 

 否、現在も風影の子息女だとか、我愛羅のきょうだいだとかで色眼鏡で見られている筈だ。

 しかしそこに「化け物の弟と仲良しです!」という設定が付け加えられたらどうか。もっと遠巻きにされて、苦しい目に遭うのでは?

 

「・・・・・・。」

 

 熟考の結果、先程の悲しいほど蒼褪めたテマリの頬に胸を締め付けられた我愛羅は、「怯えられないようにだけしよ。」と決めた。

 そして結局自分のボッチ問題が解決していないことに気が付き、布団に突っ伏す。

 

「やっぱり俺の友は守鶴だけだな・・・・・・。」

 

 独り言のつもりだったが、耳を潜めていたのだろう。『死ね!』という素敵なレスポンスが返ってきた。尾獣特有の泣き声だと思えば可愛いモンである。

 

(ボッチ問題を解決しようと、手始めに守鶴に声をかけてみたが。)

 

 やはり、彼の人間嫌いは根深い。まあ声掛けを継続しているうちに絆されてくれそうなチョロさはあるが、それでもしばらくは孤独だろう。

 嘆息をついた我愛羅は、寝ころんだまま天井へと手のひらを伸ばした。サラサラとどこからかやってきた砂たちが、優しく指の間を撫でていく。

 原作の我愛羅も感じたであろう母の温度が今ばかりは虚しくて、だらりと力を抜いた。

 

(妻を失うことになるとは考えなかったのか。それとも妻の命より里の安全をとったか、忍としては後者が正しいが。)

 

 風影も難儀なものである。妻を死なせて手に入れたものが、尾獣を制御しきれない不完全な兵器一体では、どう考えても割に会わぬ。

 父に辛く当たられるのには、それもあるのやもしれんと我愛羅は思った。

 

「────風影、か。」

 

 そういえば問題がもう一つある。ふと気がついてしまい、こめかみを揉んだ。

 原作によると、もう十年もしない内に我愛羅は風影になってしまう。四代目である父の死と上層部の思惑が重なった結果だが、まあなることには変わりない。

 

 そして我愛羅(成り代わり)、普通に風影なりたくなかった。

 

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ではない。普通に考えて御多忙だからである。なんせあのナルトが、タフで影分身の使い手でド根性なナルトがその仕事量に追われるような職業なのだ。

 どう考えてもブラックな上、まず崇高な志がなくてはなれない職である。そして我愛羅の信念というか目標は「脱ボッチ!」であり、どう考えても里を背負える器ではない。もうちょっとカリスマのある方が頑張ってどうぞ。(あとこれが本音なのだが、人の前に立って話すのが苦手だからあんまり偉い人になりたくない。)

 

(となると、まず父様の死亡を回避しなくてはならないな。)

 

 確か風影は中忍試験の最中に大蛇丸に暗殺された筈だ。が、今から修行したところで期日までに我愛羅が大蛇丸を越えられるとは思えない。

 ならばそもそも大蛇丸と父が手を組むことを阻止し、“木ノ葉崩し”計画自体を無くしてしまうか、と思ったがアレはまたなんか色々国際的で厄介な問題が絡んだ結果ああなっていた気がするので、結局現実的ではなかった。

 ついでにこれは邪な理由だが、“木ノ葉崩し”が無くなると、我愛羅の友人になってくれそうな人第一位とエンカウントできなくなってしまう。そうなればボッチが確定してしまうので、我愛羅はそっと後者の案を見なかったことにした。

 

(伝説の三忍相手に、どう戦うかな。)

 

 ・・・・・・まあでも守鶴が大暴れしたら大蛇丸とて風影暗殺どころじゃなくなるだろうし・・・・・・最悪狸寝入りの術で誤魔化そう。そうしよう。

 

 ひたすら無計画な未来設計をつくった我愛羅は、のそのそと布団を捲って中に潜りこんだ。 

 そろそろ入眠という名の「守鶴とおともだち作戦」の時間である。先ほど罵倒されたが、言われっぱなしは癪なので「可愛い奴め。」くらいは面と向かって告げてやろう。人柱力からウザ絡みされるという訳の分からない状況に戸惑うがいい。そしてあわよくば友達になってくれ、俺の心が死ぬ。

 

「────我愛羅、いるか。」

 

 ガチャリと、再びドアが開いたのはその時だった。

 声で誰か察してしまった我愛羅は、起き上がる気にもなれずに顔だけを戸口に向ける。

 

「眠っているのか。」

「・・・・・・起きている。」

「そうか、なるべく意識を保てよ。守鶴に乗っ取られる。」

 

 短く刈りこまれた赤みがかった茶髪に、厳めしい顔つき。

 風影の装束に身を包んだ男────父・羅砂だ。

 

「夜叉丸の葬儀に出席したそうだな。」

「ああ。」

「・・・・・・調子はどうだ。何か欲しいものがあれば、用立てるが。」

 

 あまりにも会話が下手過ぎてとてもしんどい。若干の沈黙の後聞くのがそれなんかい。

 あーこの人割とマジで俺のこと嫌いっていうか関心ゼロなんだなーっと物悲しい気持ちに浸りながら、我愛羅は「欲しい物、」と反芻した。

 

「・・・・・・生き物。」

「生き物?口寄せ獣か。」

「いや、ペットが欲しい。ヒヨコとか。」

 

 アニマルセラピーと、後は・・・・・・子どもって小動物好きだし、ペットをきっかけにテマリカンクロウともっと仲良くなれないかなって・・・・・・無理かな・・・・・・。

 

「・・・・・・食用か?」

「ペットは食べない。」

 

 失礼な。そこまで飢えてないわ血にも食事にも。仮にも権力者の息子、我愛羅の日々の生活は豊かなのである。ないのは家庭内の平和くらいだ。一番大事なもんが無いんだよな。

 我愛羅の言葉に暫し瞠目した風影は、「分かった、近日中に。」とだけ行って部屋を出て行った。ようやっと睡眠時間を手に入れた我愛羅は、そのまま健やかに守鶴の精神空間に突撃した。五秒ほどで追い出された。悲しい。

 

 

******

 

 

「わああ!可愛いじゃん!」

「次!カンクロウ、次私抱っこ!」

 

 三日後。

 風影邸に、木箱へ入ったチャボが二羽届いた。人懐っこい彼らを腕に、きゃらきゃらとはしゃぐテマリとカンクロウへ、ほんのりと穏やかな気持ちになりながら我愛羅は箱の内側に張り付けてあったメモを握りつぶす。証拠隠滅証拠隠滅。

 なお、メモに記載されていたのは「にわとりを くるしめない しとめかた」なる手書きの解説だった。だから食べないってば父様。

 

「我愛羅、この子たちなんて名前なの?」

「、え」

「だってコイツら我愛羅のじゃん?親父が言ってたぜ。」

 

 言ったんかい。なんて言ったんだ、明日は我愛羅のところへ鶏が届くよって?捌き方の解説メモつきで送りながら?どういう情緒?

 

 我愛羅と同じく、この二羽をペットだと判断したのだろう。家庭環境のせいで年に数度見れるか否かのキラキラおめめで「ねえねえ!」と弟に尋ねる姉兄に、我愛羅は頬を引き攣らせる。

 

 なんとかそれっぽい答えをひねり出さなくては、唸れ俺のネーミングセンス。せっかく冷え切った関係に雪解けの兆しが見えているというに、早く答えねば不自然だろう。

 どう言おう、何て言おう。鳥関連銘菓で饅頭とサブレ、それとも声優ネタでエリザベスとかか?もしくはカルラとヤシャマル・・・・・・はどう考えてもナシ。ペットに死んだ家族の名前つけるのは神経を疑われるがゆえに愚の骨頂────ええい、ままよ。

 

「す、砂肝とボンジリ。」

 

 きょうだい仲は氷河期に突入した。





誤解が解けるまでに三ヶ月かかった。
成り代わりの奮闘は続く。

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