魔法少女になりたくて!   作:陰の手下

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実質ストーカーなんじゃないかな、これ

「ねぇ、ボス。ボスの友達、嫌い」

 

「先生が生徒のことを好き嫌いするのはどうかと思うけど」

 

 僕は部屋に窓からやってきたナブラと話していた。最近、やたらとやってくる。

 ナブラの言う僕の友達とは、モブ友達のヒョロとジャガのことだ。細長い方がヒョロで、イモっぽい方がジャガだ。どっちも男爵家の次男で、僕の認める生粋のモブだった。

 

「それでも、いや。変なところ、見てくる」

 

「ナブラはスタイルがいいからね」

 

「イプシロンじゃないし……尻尾とか髪の毛ならいくらでも見ていいけど」

 

「そっか」

 

 イプシロンはスタイルにかなりこだわりがあるようだけど、ナブラはそうじゃないみたいだ。

 代わりだろうか、尻尾や髪の毛は毎日丁寧に整えているおかげかとてももふもふだった。そっちをよく褒めてもらいたがっている。

 

「でも、ボスに褒められると、なんでも嬉しい」

 

「そっか。よかったね」

 

「うん、よかった」

 

 尻尾を振って、ナブラは喜んでいた。

 尻尾で僕は思い出した。

 

「そういえばナブラ。授業で僕の近くに来る時、尻尾で機嫌が丸わかりだから……ちょっと控えてほしいんだ」

 

 先生と親しいモブ。というのは違うだろう。

 ナブラが普通のモブ先生だった場合なら、それでいいかもしれないが、学園では珍しい獣人の先生だ。明らかにネームドキャラ。

 

 陰の実力者として普段はモブに徹するため、ナブラとの付き合いがみんなにバレるのはまずいだろう。

 

「そう……ごめんなさい……。ボスにも、みんなにも、悪いことをしてしちゃってた」

 

 ナブラの耳も尻尾もしゅんとなる。可哀想だが、陰の実力者としてはしかたのないことだ。

 ナブラとの付き合いは長い。僕の陰の実力者ごっこに付き合ってくれる友達として、きっと、言わずとも僕のモブ道を理解してくれたのだろう。

 

「うむ、今後気をつけることだ」

 

「そうだ、ボス。この学園の魔神ディアボロスの遺跡の調査……教団の守りが固く、私一人では力不足。七陰を増員……いや、ゼータあたりだったら一人でもいけるかもしれないけど、少なくとも私一人じゃ難しい」

 

「うむ、そうか」

 

 いやぁ、すごいね。

 ナブラがミドガル学術学園に就職したのも、彼女たちの中では魔神ディアボロスに関係する遺跡がここにあるからということになっているようだった。

 彼女たちにかかれば、どんな普通の施設もディアボロス教団の遺跡に早変わり、というわけだ。

 

「学園に潜伏するディアボロス教団との関係に疑いがある人物をリストアップした」

 

「そうか」

 

 どれどれ。

 剣術指南役のゼノン・グリフィ先生。こっちなんかは、同じクラスのアイザックくんだ。

 学園に通う普通の生徒が、実は悪の秘密結社ディアボロス教団の尖兵か。学園を舞台にした物語では、いかにもありそうな設定だった。

 続いて、ルスラン・バーネット副学園長とリストには書かれているのを見て、僕は目を疑う。

 

「副学園長って、たしかナブラによくしてくれている人だよね」

 

「うん。この間は、マグロナルドの高級バーガー奢ってもらった」

 

「よかったね」

 

「うん、フロート美味しかった」

 

 恩知らずなんじゃないかと僕は思う。それともなんだろう、陰の実力者ごっこのディアボロス教団役として、本人には了承をとっているのだろうか。

 今度会ったときに、それとなく聞いてみようか。

 

「それで、そう。研究の方も順調。今は純スライム製のアーティファクトの製作の佳境に差し掛かってる」

 

「純スライム製か」

 

「例のスライムの形状を記憶して再現する機械を使えば、その場でアーティファクトを展開できる」

 

「それは便利だね」

 

「うん便利。だけど、誰でも使えるのはよくないから、魔力の波長で認証できる技術も開発中。違う人が触ると爆発する」

 

「爆発か、それは派手だね」

 

「うん、とっても派手」

 

 そこまでする必要はないだろう。けれどナブラの研究は、ナブラの自由だ。

 

「学術学園でも、研究はうまくいっているみたいだね」

 

「学園でも……? うん。学園の研究は、昔やった研究を小出しにしてるから、浮いたお金でシャドウガーデンとしての研究ができていいよ?」

 

「え、それって横領じゃない?」

 

「うん、うまくやってるよ。ディアボロス教団を壊滅させるため」

 

 ナブラはどうやら、横領をしているようだった。

 彼女たちは、自分たちのした悪いことを、ディアボロス教団のせいにしたり、シャドウガーデンのためと言ったり、そう言うふうに設定を使うことが多かった。

 

 まぁ、彼女の人生だ。

 別に、研究費を個人的な目的で横領する人生があったっていいじゃない。それを否定するつもりはない。

 ただ、僕が言いたいのは、この件に僕は関係していないということだった。

 

「ん……? 誰か来る。じゃあね、ボス。また明日」

 

 そうやって、ナブラはいなくなった。

 ドアを叩く音がする。こんな時間に来る人間は決まっている。

 

「はいはーい」

 

「シドくんシドくん。明日のこと、忘れてないでしょうね?」

 

「告白の罰ゲームのことだよね」

 

「それはそうと、シド! 頼む、明日の課題見せてくれよ!」

 

 僕のモブ友達のヒョロとジャガだ。

 

「あれ、なにかいい匂いがしません? 女の子がいたみたいな」

 

「んー、しないよー。芳香剤を買ったから、それの匂いじゃない?」

 

 さっきまでいたナブラのジャンプーの匂いだろう。ナブラは髪の毛が長いし、尻尾ももふもふだから、匂いが残ってしまったようだ。

 

「バカ、ジャガ……シドの部屋に女の子がいたわけないだろ?」

 

「ええ、よく考えたらそれもそうですね」

 

 そうして僕はモブ友達と一緒にモブ生活を送るのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 私にとって、衝撃的な出来事があった。

 

「あ、あ、あ、アレクシアおうにょ……」

 

「…………」

 

「僕と付き合って、くらさぁい!」

 

 ボスが同じ学年でミドガル魔剣士学園に通っていたアレクシアおうにょに告白をしたのだ。

 

「わかりました。あなたのような人を待っていました」

 

 そうして、アレクシアおうにょは告白を受け入れていた。

 これは事件だ。すぐさま、私はガンマに連絡を入れ、アルファ様にも連絡を入れ、ちょうどミドガル王都に用事のあったベータと相談をして、結果、ミドガル王国首都のガンマのお店で七陰が集合をかけられることになった。

 

「現在、ナンバーズによるアレクシア王女とシャドウ様の監視は続けられています」

 

「映像」

 

 イータに開発してもらった通信技術と撮影技術により、私たちの目の前には、シャドウ様とアレクシア王女のデートの様子が写っていた。

 

「はぁ、彼の目的はなにかしら?」

 

 アルファ様は困ったようにため息をついた。

 私からみたら、アルファ様はいつもより元気がない。目に見えた変化はないが、私からすれば少し落ち込んでいるように見えてしまう。

 

「あの、下品な女のどこがっ!!」

 

「落ち着きなさい、ベータ。彼も本気ではないはずよ。なにか目的があるはず」

 

「本気で、あの女に惚れた可能性はないわけじゃない」

 

 なんとなく、私は言った。特になにか考えて言ったわけではない。

 

「主様に限って、そんなことは……」

 

「私たちは、そんなふうに言えるほど、ボスのことを知っているわけではない」

 

 ガンマに私は反論する。

 

 ボスは、いつもそうだった。私たちに見えない世界を、ずっと先をみているのだ。

 彼のことを、全て知っているふうに話すのはおこがましいことだろう。

 

「そうよね……。それもそうね……」

 

 アルファ様が、完全に落ち込んだようにそう言う。

 

「アルファ様……」

 

 瞬間、この場のみんながどんよりとしてしまった。私は、余計なことをしてしまったかもしれない。

 

 私たちにできることは、ただ、おうにょとボスのデートを画面越しに見守ることくらいだった。

 

 あ、金貨投げた。

 

「とってきなさい、ポチ」

 

「わおーん!」

 

 瞬間、場の空気が変わった。

 

「主様を犬扱い……!?」

 

「あの女……! シャドウ様をなんだと……っ!」

 

「楽しそう。私もやりたい」

 

「どうして、そこまで……」

 

 ちょっと、周りの雰囲気が怖かった。特にベータがとても怒っていた。アルファ様は、なぜかその落ち込みを増しているようだったし。

 そうして、電車に乗ってアレクシア王女を見送った後、今度は逆方向の電車に乗って、ボスは帰っていく。

 

「調査の結果、わかりました。アレクシア王女は、ゼノン・グリフィとの婚約が成立するまでの時間を稼ぐため、交際を受け入れたという情報です」

 

「なるほど、偽装恋人ですか」

 

 ナンバーズのニューちゃんだったか。その子が報告をしてくれている。

 

「あ、ゼノン・グリフィなら、私の教団容疑者リストに入ってる」

 

「つまり、そう……彼は教団に狙われている可能性の高いアレクシア王女を近くで見張るため、偽装恋人を受け入れたと」

 

「おそらくは」

 

 周りを見渡せば、みんなが安堵の表情を見せているのがわかった。

 

「やっぱり、シャドウ様はあんな下品な女を見初めたわけではなかったんです!!」

 

 ベータに至っては、声をあげて、ガンマと抱きしめあって喜んでいた。

 

「金貨拾ってたのはなんで?」

 

「そんなの、自分をお金に靡く俗物だと勘違いさせるためよ。そうやって、裏の顔を誰にも気取られないように振る舞っているの。犬のフリをするのは予想外だったけれど」

 

「確かに……」

 

 それなら、理屈は通る。

 シャドウ様は、お金に困っているわけがない。ガンマの知識のもとの大半はボスのものだ。それを自分で使えば、たくさん稼げたわけだし、ガンマが困ったときはアドバイスだってしてくれていた。

 そんなシャドウ様がお金に困っているはずがないだろう。

 

 表の顔と裏の顔のつながりがバレないように、徹底する。さすがはボスだ。私もしっかり見習わないと。

 

 そうして、私たちは二週間、教団に関係していそうな王都の施設や、騎士団の人物を調査しながら、ボスとおうにょのデートを見守っていた。

 ちょうど二週間目のことだ。

 

「ちなみに、ゼノン先生の欠点は?」

 

「ないわ」

 

「は……っ! アイス……」

 

 画面を見ていたベータが反応をする。

 おうにょがボスの口にアイスを突っ込んだのを、ボスがおうにょに返していた。

 

「もし欠点のない人間がいれば、それは頭がおかしいか、大嘘つきよ」

 

「なるほど、独断と偏見に満ちた回答ありがとう」

 

「はむ」

 

 おうにょは、ボスから受け取ったアイスを食べる。

 

「あの女!! 偽装恋人の分際で、シャドウ様と間接キスを……!!」

 

 アイスを間接キスでおうにょが食べたあたりで、ベータの苛立ちが限界を超えそうになっていた。

 間接キスくらいで、とは思うけれど、ベータにとっては許せないことなのだろう。

 

 その後、剣についての話をして、二人は決別するように別れる。

 おそらくは、偽装恋人もこれで終わりだろう。

 

 その後、アレクシア王女が、教団の手によって誘拐をされる。

 

「さて、私たちも動きましょう?」

 

「はい、アルファ様」

 

「目的は、今回尻尾を出した教団の構成員の殲滅。さぁ、奴らに報いをうけさせましょう」

 

「わかりました。奴らの悪魔憑きを嘲笑ったその声が、悲鳴に変わる瞬間が楽しみですね」

 

 さて、私もこの二年、なにもせずに過ごしてきたわけではない。

 私の魔法少女セットが火を吹くぞ!

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