【推しの娘】 〜Trance Stars Family〜   作:かにみそスープ

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お気に入り500件突破と、総合評価900pt超えありがとうございます。
1ヶ月先まで(7話分くらい)予約投稿しておりますので、気長にお付き合いくださいませ。


★第十一話★ カップル

 収録3日目——。

 

 公式が提供しているアカウントの反応や、ネットの掲示板などの反応からして今現在の推定順位はこんなところね。

 

ーーーーーーー

 1位 ゆき

 2位 あかね

 3位 マリン

 4位 ノブユキ

 5位 ルビー

 6位 MEM

 7位 有馬かな(私)

 8位 ケンゴ

ーーーーーーー

 

 やはり基本的な視聴者層が若者であること。視聴者が青春よりもラブコメ所望ということ。以上のことからラブコメの中心にいるゆきが一番高い。

 

 あかねも前の収録で見せた謎の特技で、普段『今ガチ』を見ない層が入り込んできて独占している。もちろんこの話題性に惹かれ、中心となる視聴者である女子高生があかねの魅力に気づいた固定ファンも少しはいる。

 

 アクアだって初日のポンコツっぷりが起爆剤となって注目を浴び、そんな中でも頑張る『俺っ娘』というのがお姉様がたの琴線に触れたのか、男性だけでなく女性からも人気が高い。

 

 だから『視聴者層ごとのシェア率』という意味ではアクアとゆきが一番手硬いと言える。この二人が上位から落ちることはまずない。そういう意味ではアクアとペアになりがちなルビーも中央に居続けるだろうから手強い。

 

 あかねは今のままだと落ちる可能性が濃厚。所詮は一回のバズりで上がっただけの一時的な人気。持続的なコンテンツの供給がないと、そのまま話題性を失って手に入れた新規層がどこかに行く。

 

 となれば獲物にすべきはアクアとルビーということになるわね。

 手堅い二人ではあるけど、同時にここが弱点でもある。

 

 アクアとルビーは二人で一つ。つまりはある程度人気が高まれば『同じ層のファンのシェアを奪いあう』という共食い状態が始まる。

 となればファンの絶対数は増えずに『人気が伸び切らない』という状態にもなるだろう。このままの戦い方だと、まず間違いなく『一番』は取れない。

 

 だから私が返り咲くチャンスはまだある——。

 

 ふふっ、日陰人生は慣れてるわよ。それに打開策も既に見出してる。

 この状況を打開するには、あかねのバズり動画で増えた視聴者層を分析し、まだ固定ファンとなっていない層を取り込むこと。

 

 俗に言う『ブルー・オーシャン』という事業戦略みたいなものね。この辺りは資産運用の知識でノウハウはあるわ。『レッド・オーシャン』——既にいる固定ファンを奪い合うのは、あまり賢い戦略とは言えないもの。

 

 となれば市場調査を開始するしかないわね。ジャブ感覚でどういう感じがウケがいいのか、実戦で試す必要がある。

 1クールということは3ヶ月。3ヶ月ということは12週間。収録は1週間に1回。前と違って人気が多種多様で評判もいいから、スペシャル回も確定していて1時間拡大版、しかも放送回数1回分拡張という『2日間2時間放送』というネット配信だからこそできる強気な時間配分を行うほどに。そのスペシャル回には『イベント企画』を行う予定だから、そこが一番掻き入れ時となる。

 

 そのスペシャル回を行うのは番組の折り返しである6回目の収録。つまり大体1ヶ月後ということだから、ここを目安に入念に準備を始めましょう。

 

 

 

「……ってわけ。まあカモよ、カモ。乗せやす過ぎてカルガモよ」

 

「お前本当一言多いよな。口が緩いんだからチャックでも付けといたほうがいいぞ」

 

「アンタにだけ言われたくないわよ、海物語が」

 

 

 

 ——6位 有馬かな

 

 

 

「……というわけなのよ、ほほほ」

 

「口の悪さ矯正したいのは分かりますけど、それはそれで気持ち悪いですよ、ロリ先輩」

 

「後で校舎裏来いや、ションベン小僧」

 

 

 

 ——5位 有馬かな

 

 

 

「……というわけ。本当にマヌ……いやなんでもないわ」

 

「かなちゃん、私は口悪いほうが好きだよ? あまり無理しないでね?」

 

「人の努力をドブ川に叩き落とそうとしてない?」

 

 

 

 ——5位 有馬かな

 

 

 

 伸びないっ!? 思ったより伸びないっ!? ルビーを超えることはできたけど、これ以上は壁が厚くて伸び切らないっ!

 いやっ、伸び悩む理由はわかってるんだけど! 私の口の悪さが原因なのは分かってるんだけど!!

 

 

 

 ——『自分の悪いところ直そうとするのは共感できるけど……ちょっとリアルで、今ガチだと場違いな印象がある』

 ——『可愛いけど声の主張が強いよね。私は好きだけど好き嫌い別れそう』

 ——『あと地味に口悪い。僕はこういうタイプ好みではあるけど』

 

 

 

 ……このままじゃあ、炎上一歩手前ね。私に関心を向けてる声は多くなってはいるけど、これは『悪い注目』というやつだ。

 批判自体は大きくないし、本放送そのものであかねみたいな怪我を起こして炎上みたいな明確な起爆剤がないから燃えてはいないけど、一部界隈では小火騒ぎ程度にはなってる。

 スルーしたいところだが、この小火騒ぎには敏感にならないといけない。『ハインリッヒの法則』とか『氷山の一角』というやつで潜在的に同じことを思ってる視聴者は必ずいる。立ち回りを意識しないと燃料を巻いて炎上騒ぎだ。それだけは絶対に回避しないと。

 

「ところであかね。お前他に変な特技とかないよな?」

 

「ないよ。…………ない、よ?」

 

「ありそうだな。言え」

 

「目隠しルービックキューブができます」

 

「それは十分変な特技だな」

 

 それよりもあかねとアクアが手強いっ!? てか、あの二人が結託しているって言えばいいのかな!? あの二人を推してるファン層が独立してるせいで、互いが絡むだけで導線となって『新規をシェアし合う』という相乗効果で伸びてるっ!? 今じゃ二人とも『ゆきノブ』と番組の柱となっているじゃない!?

 

 ……想定外だったわ。表向きの収録は普通なんだけど、あかねがバズった影響で、製作陣もチャンスと思い、SNSで番組映えしなくて没にしてた『不採用の映像』まで見せるようになってしまった。そこには何気ない裏側での会話も含まれている。

 裏側まで見せるようになれば、普段の空気とかも脚色が入りつつも視聴者の目に止まる。定点カメラだから絵面的な変化はないけど、出演者は収録中は常にピンマイクを付けてるから音声自体は拾えている。

 

 

 

「(バッテリー切れそうだから充電器)ちょうだい」

 

「いいけど(ケーブル端子の種類は)どんな?」

 

「(ケーブルタイプは)C」

 

 

 

 裏側ではあまりにも自然体な空気。しかも言葉が歯抜けのせいで、側から聞いたら『アレ』な話をしてると連想してもおかしくないのに、その如何わしさ全く感じさせない清涼感。

 SNSでは『熟年夫婦』とも称された『あかアク』のカップリングは幅広い年齢層に浸透し、その合計値で若者層が大半を占める『ゆきノブ』のカップリングに拮抗するほどの人気を見せた。

 

 その理由は明確だ。視聴者は『ラブコメ』は見たくあるが『ラブ』にもいくつか種類がある。極端に言えば『恋』と『愛』という極端な二つに。

 

 恋は流動的なもの。愛は静動的なもの。要は『不安定』と『安定』という考え方だ。

 ゆきノブは前者。あかアクは後者。今の番組の支柱はそんな風に成り立っている。この二つの瓦解を狙わなければ、この『リアリティショー』の流れはもう大きく変わることはない。

 

 

 

 つまり求められるのは『悪女』ムーブってわけね、こんちくしょー。

 

 

 

 番組側がしてほしい趣旨は理解している。一度それとなく言われた。

 狙うならまだ隙が多い『ゆきノブ』に介入して、三角関係で番組を盛り上げてほしい。『あかアク』はその恋愛バトルとは外側にある癒しとして今後は番組で映したい。というニュアンスのアドバイスを。

 

 そりゃできなくもないわけよ? 『ゆきノブ』に参入しようとする悪女や泥棒猫の役割自体は。

 だけどそれは炎上案件にリーチをかける予感もある。ゆきは頭いいから『そういう個性』だと私の口の悪さを受け入れて番組的な笑い話に変えてくれる信頼はある。

 

 問題はノブユキのほうだ。『裏表ない性格』だからこそ、私の口の悪さを『そのまま受け取る』ということも十二分にありうる。そうなったら…………うん、放火待ったなしね。

 もちろんそうなったら全面的に悪いのは私。ノブユキは悪いやつじゃない。むしろ良いやつ。これは絶対だけど、それはそれとして私と性格が致命的に噛み合わないのも目に見えてる。藪蛇はつつかないに限る。そうなっちゃうと『ゆきノブ』の関係性にも亀裂が入りかねないし。

 

 やっぱ後腐れとかなく、テレビ受けという意味では三角関係を受け入れてくれるのは『あかアク』になっちゃうわよねぇ。

 

 …………でもプライドが拒否したくて堪らない。

 だって私が向かう相手って、つまり『黒川あかね』になるわけでしょ?

 

 するわけないじゃない。あかね相手にそんな小っ恥ずかしいこと。

 だって前の世界ではライバルよ、あかねとは。

 

 そんなことするわけ——。

 

 

 

 …………

 ……

 

 

 

 収録6回目前半——。スペシャル回の前半である『花火大会』の収録。

 各々が自分のイメージカラーに寄せた浴衣を着て、各々持ち寄った花火を楽しみ、各々持ち寄ったお菓子を食べ合い、そして最後はキャンプファイアで輪になって囲みながら、これまでの総決算を簡単に話していく。というのが大まかな流れとなる。

 

「あかね〜〜♪ 線香花火ちょうだ〜〜い♪」

 

「え? いいけど……」

 

 私は見事にプライドを半分捨てた——。

 けれど最後まで捨て切ってはいないわ。どんなに頑張っても『画面に映らないと意味がない』んだから、こうやってあかねにアプローチ(ビジネス上のね?)をして映ろうとするくらいはいいじゃない。等価交換というやつよ。

 

「そこまで落ちたか、有馬かな……」

 

「え〜〜♡ 有馬わかんな〜〜い♡」

 

「キモ」

 

 マイクに入らないレベルの小声で直球ストレートの罵倒はガチ過ぎて効くわ。やっぱりこういう『ぶりっ子』で悪女しようとするのはダメね。今までの活動イメージとも違うし、普通に自然体でいくしかないわ。

 

「でもこうして囲んでさ、駄菓子食って花火するなんて……やったことなかったんだぁ」

 

「そうだな。俺達は『芸能人』だ。学業なんて二の次である以上、年相応の『学生』みたいなことなんて無縁だったからな」

 

「思えば私たちの関係性って結構歪なんだよね……。こうやって普通に遊んでるだけでも贅沢に感じる」

 

 ……本当に贅沢なことよね。こんな風にまた一緒になれる時間があるなんて。

 

「じゃあ、ちょっと番組の趣旨にもあってるし聞くか。今までの一番嬉しかったことってなんだ?」

 

「私はアクア君達とまた会えたことだよ。これ以上に嬉しいことがあると思う?」

 

「気が合うわね。逆に聞くけどアクアはどうなの?」

 

「…………アイのことに決まってるだろ」

 

「素直じゃないな〜〜」

 

「だね〜〜。本当は私達と会えたことも嬉しいくせに」

 

「うるさい! アイのことに関しては本当だ。勝手な憶測を立てるな」

 

「お〜〜い! 『ボク』を仲間外れにして何話してんの?」

 

 この声はルビーね。テレビ用の一人称でこっちに来るってことは……カメラもこっちに注目しようとしている状態か。

 

 だったら仕方ない。番組用に映えるシーンでも提供するようにしましょう。どうやって自然にラブコメを演出しようかしら。

 

「……なあ、あかね」

 

「なに?」

 

「今の俺たちの関係って……何だろうな」

 

 ……番組での一幕なのに、結構直球に聴くわね。

 これは本音半分、というわけでもなさそう。多分『本音が溢れた』っていうほうが正しい。自分でも口にしてからようやく気付いたって感じに、アクアは瞬きを止めた。

 

「巷じゃ『おしどり夫婦』とか『熟年夫婦』って感じに言われてるけどさ……俺としてはそうは思えない。『今のあかね』をそういう風に見ることができないんだ」

 

 言葉の節々から本音が見える。言葉の表層をそのまま受け取るだけなら、自分の中で生まれたあかねへの『好き』が友達としてなのか異性としてなのか整理がつかない思春期特有の乙女心に聴こえる。

 

 だけどアクアが口にしてるのは互いへの問答でもある。

 体と心の不一致からくる不安定さ。アクアは元々男なのに女の子になって、逆にあかねは女から男の子になってしまった。だとしたら自分の好きという感情だって解釈が変わってしまう。どんなに取り繕うとしても変わらずを得ない。

 

 要は『同性を好きになれるのか』——。

 冗談とはいえ茶化してたのが申し訳ない。こんなにも深刻に悩んでいたなんて……やっぱ私ってダメね。人の気持ちなんて全然分かってない。

 

「もしあかねも『今の俺』をそう見てるなら……『私』はどうしたら」

 

「ダメだよ。そうやって委ねようとするのは」

 

 だから見守るしかできなかったけど、アクアの様子がおかしくなったことを見落とすはずがない。見落とせるわけがない。

 

 私だって気づけるほどの不安定さから溢れ落ちたアクアの弱気な部分——。その弱さを、あかねは即座に受け止めて親身になって返した。

 

「前にも言ったよね。そういうのは互いに自立し合った者同士じゃないと意味がないって。その答えは長い目で決めよう。今焦ることじゃない。番組の雰囲気で流されて出た答えは、きっと後悔することになる」

 

「……そうだったね。うん、そうだった。……うん、きっとそうだな」

 

 なによ。アンタ達、私が知らないところで結構進んでたんじゃない。私が割り込める余地なんてどこにあるのよ。

 

 ……なんて納得できたら良かったんだけど。

 その問いをそのままそっくり返したい気分だわ、黒川あかね——。

 

 

 

 …………

 ……

 

『……何やってんの』

 

『ああ、有馬か。オレに何のようだ』

 

『だから! 何やってんのか聞いてんのよ!』

 

 ……

 …………

 

 

 

 自分の身に何があったのか——。『あの後』どうなったのか、忘れたとでもいうの? 

 いや、忘れたなら忘れたでいいわ。だって『あの後』なんてないんだから。全部なかったことになったんだから。

 

 だったら思い出さないほうがいい——。

 あの後なんて知らない方が絶対幸せで、知ったところでどうにもならないんだから。

 

 そんな『日も当たらない話』なんて——私だけが知っていればいい。だって『アクアの復讐』を知らなかった私ができることなんて、『みんなが知らなくていいもの』を抱えることくらいだもの。

 

「俺、変だったな。急に『私』とか言って」

 

「私は好きだよ。そういう可愛いアクア君も」

 

「なんだよ。お前は私とかいう俺が好きなのか」

 

「今は男女逆転カップルとかいうジャンルもあるんだから、一度くらいはそういうシチュエーションで遊ぶのもいいと思わない?」

 

 

 

 ——まずい。二人の距離は近すぎるし、アクアが内包する『不安定』な部分の正体を私は理解してしまった。

 

 その『正体』に気付いたら——『あかねの方が先に壊れてしまう』ということも理解してしまった。

 

 

 

 ダメだ。小っ恥ずかしいとか、プライドとか言ってられない。

 アクアが好きとかの気持ちは今は置いておくしかない。

 

 今のままだと、今の距離感だと——。

 あかねはきっと気付いてしまう。思い出してしまう。『あの後』のことを必ず。だってあかねは聡明だもの。

 

 だから引き離さないと——。アクアとあかねを——。

 

 

 

「……アクアとは付き合わない方が身のためよ」

 

 

 

 まずい——顧みずに言葉を出してしまったせいで、これは『収録中』だってことを忘れてしまった。

 

 落ち着け——落ち着け——。

 言葉は刃物かもしれないけど、知識は武器だ。何とかして言葉と流れを再構想して番組向けにしないといけない。

 

 

「……なんで?」

 

「なんでって……そりゃ、その……」

 

「流石のかなちゃんでも限度があるよ。ちゃんと説明して」

 

 

 

 言わなきゃダメ!? でも言わなきゃ言葉が続かないっ! 番組として破綻しちゃうじゃない!!

 

 

 

「あー……その……なんていうか」

 

「なんていうか?」

 

「その……えっと……」

 

 

 

 言おうとすると悔しさとか悲しさやら、何やら意味わかんない感情が漏れそうになる。感情が昂りすぎて、泣き慣れすぎて価値もない涙が滲み出てくる。

 

 止まれ止まれ止まれ——。

 あかねにここまでの弱みを見せようとするな。今すぐ止まりなさい、有馬かな。こんな涙、演技力で無理矢理でも止めなさい。

 

 

 

「……大事だから」

 

「…………え? かなちゃんとは思えない単語が聞こえてきたんだけど、もう一回言ってくれる?」

 

「大事なのよ!! あかねもルビーもアクアもっ!!」

 

 

 

 言っちゃったーーっ!? 大体本音ではあるけど言っちゃったぁーーっ!? 自分で何言ってるのか分かってるの!?

 ええい、なすがまま! こうなったら吐き出せるだけ吐き出させてもらうわっ!!

 

 

 

「そりゃ口汚く色々言い争ったりもしたけど……! 私は不器用で純粋じゃないから、あんな風に接することしか分からなかったけど……みんなといた毎日は好きだった……そんな毎日が変わるのが……っ。また……っ」

 

 

 

 あー、まずいまずい。言葉も涙も止まらない。流石にここまで言うつもりはなかったのに。

 終わった。私のイメージ終わった。今までどの面下げて口悪く言っていたのに、ここに来てこんな気持ちを溢すなんてキャラがブレブレで好感度最底辺な上に、絶対ドン引きされる。

 

 

 

「かなちゃん……」

 

「だからその……端的にいえば大好きなのよ。文句ある?」

 

 

 

 あかねと目が合う。恋に落ちる5秒前、とでも言いたげな気まずくも甘酸っぱい雰囲気が立ち込める。

 

 ドクンドクン、と鼓動が早くなっていく。一粒の涙が足下に落ちる音が、時間を刻む砂時計のように静寂の長さを物語る。

 

「そんな気持ちを持ってたなんて、嬉しいよ——」

 

 私の想いに応えるためか、あかねは顔と顔を急接近させてきて——。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けど、音響スタッフさんから声が大きくてノイズにしかなってないから『大事だから〜〜』以降の部分を『もう一度お願いします』って指示出てるよ」

 

「アッパー入れて脳イカせるぞゴラッ」

 

「へぶっ!?」

 

 

 

 ——耳打ちで収録事情をぶっちゃけてきた。

 

 

 

 折角の私の気持ちをリテイクとか舐めてんのか。こんなもん軽く拳が出ても誰だって理解してくれるだろう。これは私に非がない。

 

 その日、意図せずに私とあかねのカップリングが巷で話題になってしまった。手を出したことが引き金となって。

 

 ——ただ炎上という意味ではなく。

 

ーーーーーーーーー

『だからその……端的にいえば大好きなのよ。文句ある?』

 

『そんな気持ちを持ってたなんて、嬉しいよ——』

 

『へぶっ!?』

ーーーーーーーーー

 

 映像をちょいとリテイクとカット編集をしたもの。それが放映された内容がちょっとアレだった。

 

 流れとしては私が長い大胆の告白は定点カメラでダイジェストで最後の部分だけ放映。そしてあかねは私の気持ちを受け入れて耳打ちをしている。

 その際の音声は編集でカットし、私の言葉も同時にカット。そしてカメラアングルを利用して背面から撮ることで、私の表情と口を映さないようにし、まるで『耳打ちをされて照れて手を出してしまった』みたいな映像に早変わりした。

 

 となると視聴者が私に抱いていた『悪い注目』は一転することになる。

 

 今までの口の悪さは好意の裏返し。素直になれない有馬が、自分なりに好意を、まだ『好き』だとも解釈できてない気持ちを伝えようと頑張っていたものだと視聴者は勝手に受け入れ、勝手に妄想を始めた。

 

 結果生まれたのが『あかかな』——。

 それは『ケンカップル』という属性が与えられ、一転して上位争いに食い込む人気カップルへと浮上することになる。

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