【推しの娘】 〜Trance Stars Family〜   作:かにみそスープ

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★第十五話★ 夜遊び

 とりあえず片寄さんとはパーキングエリアで一度別れて、機会があえば現地でも会おうという感じで旅は続行。

 

 ルビーと交代しながら時間も更けていき、現在時刻は17時を超えたところ。明朝に出たこともあり、累計走行時間としては10時間ほどである。

 

 ただいまの現在地は『島根県』だ。

 大阪まで高速道路を利用できたから、結構余裕を持ってここまで来れたが、田舎というのはここからが地獄だ。山道走ったりして、場所によっては大型車は通れないから遠回りせざるをおえないルートも増えていく。コンビニなんかあったら儲けもんと、とにかく利便性が悪すぎるのが田舎道だ。覚悟の準備をするしかない。

 

「夜ご飯の準備しないとね〜〜。豪勢にバーベキューにでもしよう」

 

 その前に明日の英気を養うために晩御飯だ。

 キャンピングカーを泊める先はすでに決めてある。ちょっと山奥のキャンプ場。そこは宿泊・持ち出し・テント・キャンピングカー・屋外での着火OK・シャワートイレ完備と充実した施設。そこをキャンプ地として今日は過ごすことになる。

 

「ママ! スペアリブ食べよう! とにかく肉っ!!」

 

「野菜も取れよ。タレントは体力仕事なんだから栄養バランスはしっかりとな」

 

「ママとしては焼きもろこしも外せないと思うなぁ」

 

「「一理ある」」

 

「焼きもろこしといえば醤油だよね〜〜。焦げた醤油の香ばしさが食欲を唆るっていうか……」

 

「は? 単純に焼いたモロコシの上に塩かけるのが一番だろ?」

 

「は〜〜!? アクア、そんなお子様な食べ方してるんですかぁ〜〜!?」

 

「おぉん? ルビーこそ塩の旨さを知らない馬鹿舌か?」

 

「きのこたけのこ論争みたいになってるけど、ママはどっちも好きだよ……。あっ、仕事ないんだからニンニク食べないと勿体無いよね」

 

 

 …………

 ……

 

 

「いやぁ〜〜、星空眺めながらバーベキューはいいものだね〜〜」

 

「ママが薪拾い、火種造り、火起こしまでスムーズにこなし過ぎて怖い……」

 

「YouTuberの『キャブ●イ』さん繋がりで何となく覚えたからね」

 

 流石大御所同然の有名人、交友関係は幅広い。テレビだけでなくYouTuberまで繋がりがあるとは。そのうち何人が友人と呼べるかは分からないけど。

 

「さて、たらふく食べたことだし……私がこの旅行をした理由でも話そうかな」

 

「宮崎に旅行した理由? なんかのイベントの下見?」

 

「宮崎名物の肉巻きおにぎり食べに行くとか? 母さん、米大好きでしょ?」

 

「え、なにそのおにぎり。初耳なんだけど。着いたら食べよう」

 

 いつまでもどこにいても変わらない星野家。

 意地を張り合うこともあれば、遠慮なく言葉を刺しあうこともある。あるいは新しい発見があれば素直に感心をする。

 

 毎日が刺激の連続。それが星野家の在り方。

 だからアイの唐突な思いつきに呆れながらも笑ってついていく。今日も今日とて家族というアルバムを満たし、積み重ねていくために。

 

 

 

「宮崎に行く理由……『お墓参り』なんだ」

 

 

 

 なんて考えたところでアイとは思えない単語が飛び出してきた。

 墓? 墓参り? つまり『死んだ人』に会いに行くってこと? どこの誰に?

 

「あー、アクアの前世……せんせこと『雨宮吾郎』のってこと?」

 

「それもあるんだけど……」

 

 

 

 そういえば一応俺死んでるんだ。前の世界であかねに一度俺の死体を見つけてもらったことで割り切ったから考えてなかったけど、そういえば『雨宮吾郎』という人物は一応死んでるんだった。

 

 けどアイの表情はそれだけじゃないと暗に語っている。吾郎だけじゃなく『もう一人』いると。

 

 

 

「——『さりなちゃん』だよね。ルビーの前世」

 

 

 

 ルビーの顔が驚愕に染まる。一度だってアイには口にしたことないルビーの前世の名前。

 ルビー本人が「推しのアイドルに認知されるなんて太々しい!」とかしょうもない理由で黙秘を続けていた名前。それが突如としてアイの口から溢れた。

 

 

 

「どうして私の名前を……?」

 

「結構苦労したんだよ。私の出産担当してくれた女医さんがセンセ繋がりでちょっとずつ話すことも多くなってね……」

 

 

 

 そこからアイの話は弾んでいく。

 アイの事件発覚後、雨宮吾郎の話で何度か話し合ったこと。子供達には内緒で隠居生活をしていた『壱護社長』に頼んで宮崎で聞き込みを行ってくれたこと。

 

 どうやら相当の苦労があったらしい。吾郎に関しては医者ということですぐに特定できたが、その『吾郎が医者として診ていた患者』については該当範囲は多くて絞り込めない。

 そして田舎特有のローカルコミュニティに馴染むのに何年も掛かったことを。そこでようやく『診ていた患者の中で死亡した人達』の話を聞き出すことはできた。

 

 後は虱潰し。特徴は『吾郎が診ていた患者』『当時10代前半』『B小町ひいてはアイの熱狂的ファン』ということ。

 それだけの情報だけで壱護社長は『宮崎全土』を渡り歩いてきたらしい。そして『ある連絡』が数ヶ月前に入ってきて、時期とか帳尻を合わせて今に至るという。

 

 

 

「じゃあ壱護社長があの事件から姿を見せなかったのって……」

 

「うん。センセとさりなちゃんのお墓を探してもらってたんだ。社長さん、意外と人情強いから結構頑張ってくれたんだよ」

 

「根気よくやってくれたな……」

 

「私と社長、一応は里親関係だよ。娘のワガママを聞いてくれるパパってことで納得できるでしょ」

 

「それにセンセの人柄は社長も知ってるし」とアイは付け足してくれる。

 確かにアイの担当医として社長とは何回か話をしている。赤子時代にバリバリのプロデューサーとして走り回ってた時や、アイ死亡後の憎悪に囚われた時とは違う、本当に『一人の親』として心配する社長の姿を。

 

 そうだよな——。あっちが社長の素だよな。

 アクアの復讐を駆り立てた社長はあくまで失言でしかないし、そもそもアイが死んだからこそ社長だってあんな暴走してたんだ。

 

 だったら——納得するよな。

 アイの妊娠にも真摯に受け止めて、時間がある限り一緒にいてくれた父親の鑑のような社長こそが本当の姿だと。

 

 

 

 ——ただアイが『お墓参り』するためだけに、社長は尽力してくれた。僕とさりなちゃんの墓を探すという何の損得もない行為を何年も。

 

 

 

「理由は分かったけど、なんで今更この時期に一緒になんだよ。俺の墓くらいはとっくに分かってたんだろう?」

 

「だって今は『お盆』だよ? それにセンセだけ贔屓して多く行くのだってさりなちゃんが嫉妬しちゃうでしょ?」

 

 するのか? 自分で自分の墓参りするという体験自体が特殊すぎて想像ができない。

 

「てか、その二人がここにいるのに墓参りする必要ある?」

 

「それはそれ、これはこれ。今のセンセとさりなちゃんは『星野アクアマリン』と『星野ルビー』なんだから。私の出産に立ち会ってくれた恩人と、恩人の大事な人くらい面倒みたいじゃん」

 

「立ち会う時にはもう死んでたけどな」

 

 うーん、自分の墓参りをするとは奇妙奇天烈な。

 というかギャグ漫画じゃないか? 「何で死んでるんだよ俺!」みたいな感じでおかしいことになるぞ。

 

「もちろんセンセやルビーがいいって言うなら一緒に行くんだけど……自分の墓を見たいなんて思わないでしょ? そん時は私一人で行くんだけど……」

 

「大丈夫だよ。私もせんせにはお世話になったんだし、墓石ぐらい綺麗にしないとね」

 

「ありがとうね、ルビ〜〜♪ 一緒にピッカピカにしようね、墓石」

 

「墓石綺麗にしないとね。せんせのは特に」

 

「墓石墓石って連呼するな。なんかブルーな気分になるだろ」

 

 実際死んでるのは事実ではあるんだけど。

 

 

 

 …………

 ……

 

 

 

 バーベキューの片付けも終え、シャワーも浴び終わり(もちろん一人ずつ順番に利用した)、時間も時間なので23時ぐらいには就寝。このまま今日と同じように明朝に起きて出発。そして宮崎に到着するのが当初の予定だ。

 

 だが旅というのは予定通りにいかないのが鉄板だ——。

 

 ルビーの鼻提灯でも出てるんじゃないかと思ってしまうほどに、綺麗に響く寝息をBGMに僕は目が覚める。いや、目を覚ますように意識した。

 

 時刻は深夜2時。サッシ窓から映る外を光景を見て、予想が当たってしまったことに溜息をつくしかない。

 

『街灯と街の風景が流れている』——。

 流れ変わる景色は街から自然へ。あるいは田舎道の砂利道と川。やがては人工物の長い長い高速道路に合流し、夜を駆けていく。

 

 キャンピングカーからこんな光景が見える答えなんて一つしかない。

 

 背筋を伸ばし、肩を回して体の起床スイッチを起動させる。

 そして濃いインスタントコーヒーに角砂糖を何個か入れたのを二つ作ると、ブランケットを羽織って運転席へと向かった。

 

「寝ろよ、母さん」

 

「あちゃー……起こしちゃった?」

 

 やっぱりだった。アイは深夜の公道を一人で運転していた。

 車用ドリンクホルダーには空っぽになった缶コーヒーが一つ。苦手な無糖ブラックであり、本腰入れて頑張ろうとしているのがハッキリと分かる。

 

 まったく……母さんは本当に完璧主義者なんだか、ズボラなのか分からない。そういうところが家族として愛しいとは思ってはいるが。

 

「カフェインは摂りすぎると利尿作用でトイレに行きたくなる。長丁場になる運転だと行きたい時に行けなくて漏らすから、気持ち早めに休憩取れるようにしとけよ」

 

「デリカシーの侵害ぃ〜〜」

 

 信号機の三原色が順番に灯り赤になる。アイの運転は速度は出していても状況の判断が早く、極力車体を揺らさないために早めにアクセルから足を離して慣性だけで停車位置に止める

 その間に僕はアイのドリンクホルダーを差し替えて新しいコーヒーを置いておき、信号機が青となると同時に会話を再開させた。

 

「で? 深夜走行する理由ってなんだ? 聞かなくても分かってはいるが」

 

「あはは……深夜ってトラックの運ちゃんくらいしかいないから、速度出しやすくて距離稼げるんだよね」

 

「気持ちは分かるけどな。僕だって元々は免許持ちだし」

 

「そういえばセンセ、私と同じ30代……いや、もしかしなくても私の方がもう歳上……!?」

 

「累計なら僕も60歳間近だから、あんま気にしない方がいい。したくない」

 

 それを考えたら精神と肉体が適合することを理解しても、あまり成長しない僕自身の不甲斐なさにちょっと傷つく。

 

「センセも免許持ってたんだし、当然車持ってたよね? どんなの?」

 

「高給取りである以上、ある程度見栄は必要だからな。クラウンだよ」

 

「できる男って感じだね〜〜。モテる男の御用達だ」

 

「コスパ悪いけどな。それにファミリー車でもないから、こういうのには向いてない」

 

「つまりデート用だと。センセってプレイボーイだね」

 

 何やかんやで30年近く前の話だ。モテた時の栄光を自慢げに話すほど哀れな中年男性はいない。特にひけらかすこともなく、静かに頷いて流しておく。

 

 そのまま夜のどうでもいい会話は続いていく。

 ラジオを垂れ流すような、特に何の意味も実りもない会話。親子としての普通の会話。

 

 学校での成績やら交友関係やら。若干愚痴気味なような自慢気味なような業界話。ちょっとユニークでエグみを感じなくもない下ネタ話。オチと韻を踏んだ小粋な笑い話。

 果てには深夜テンションに任せて、ちょっと風変わりなルールを交えたしりとり遊び。何故か五七五で返す謎会話。なんちゃって声優感覚で声を変えて芝居がかったセリフを交わす。

 

 

 

 少しずつ心が絆されて、自分の素が漏れていく。

 ほんの少しだけ貼っていた『見栄』という名の『嘘』が剥がれていく。『本当』の自分が表に出てくる。

 

 

 

 その緩みを見逃すような目(アイ)を——

 その揺らぎを見落とすような愛(アイ)を——。

 その瞬間を見過ごすような母(アイ)ではない——。

 

 

 

「ねぇ、マリン。なんか悩み事でもあったら聞くよ。こんないい旅、夢気分の状態じゃないと言えないこともあるでしょ」

 

 アイはこういう時は本当鋭い。というより聡明というべきか。

 前の世界でビデオを監督に預けてたこともそうだが、学がないだけで地頭自体は決して悪くない。

 だからこっちの心の機微を敏感に感じ取ってくる。僕が弱ってるところをサラッと見抜いてくる。見上げれば迷い人を指し示す星のように。

 

「……タイミング狙ってただろ」

 

「本当は宿泊先の温泉とかで、親子水入らず裸の付き合いで聞く気だったんだけどねぇ。良い感じのチャンスを逃さないのが元・売れっ子アイドルの秘訣♪」

 

「やめろ。本当やめろ。推しの裸とか神聖すぎて見たくない」

 

「いや、私の妊婦のお腹見てる時点で割とセンシティブのライン超えてるよ?」

 

「……言われてみれば確かにっ!?」

 

 推しの妊婦姿を見てる時点で裸の付き合い以上に恥ずかしい物を見てしまってるのでは!? いや見てしまってるっ!!

 

「それにおっぱい飲んだでしょ?」

 

「あーあー! 知りませんねー、そんなことー!」

 

「じゃあ授乳。もしくは母乳」

 

「表現をエグくしようとするなっ! 認めるからっ!!」

 

 これ以上僕の辱めを深めようとするなよっ!

 

「ほれほれ〜〜。マリンちゃん、悩むごとがあるならゲロっちゃいな〜〜」

 

「脇見運転するな。泥酔野郎が道路で寝てる時もあるんだからな」

 

「はいはい。もちろん話したくないなら話さなくていいからね」

 

「じゃあ話さないでおく。これ以上恥の上塗りをしてたまるか」

 

「マリンだって年頃だもんね」

 

「年頃というか、僕は君より歳上で大人だ。先生として社会的に死ぬような真似はできん」

 

 大体推しのアイドルに弱いところ見せられるか。アイだって30代と言っても、僕としてはまだまだ子供みたいなもんだ。子供なら大人の僕がしっかりしないといけないんだ。

 

「それならそれでもいいんだよ。『センセ』じゃなくて『マリン』として言ってるなら」

 

 その言葉が引き金に、心の中にいる私が鳴き吠えた。

 僕の中にいる『私』が吐き出して、泣きたくて、叫びたがってる。甘えたくて甘えたくて仕方ない弱気な自分。「どうすればいいの」って、ずっと泣きじゃくってる自分。

 

 

 

 ——そうだった。母さんはこの話になってから、ずっと私のことを『マリン』ってずっと呼んでくれていた。ずっとずっと『私』のことを知りたくて、母さんは話しかけてくれていたんだ。

 

 

 

「ごめん……話させて」

 

「いいよ。可愛いマリンの頼みだもん」

 

 

 

 あぁ——。母親に甘えるってこういうことなんだ。何より嬉しくて涙が出てくる。

 こぼれる。あふれる。口から思いのすべてを吐き出す。私の迷いを。俺の罪を。僕の不甲斐なさを。

 

 それでもアイはただ優しく聞いて頷いてくれた。

『私』を見つけてくれた。『俺』を受け入れてくれた。『僕』を認めてくれた。

 

 そこで一つ。心に刺さっていたほんの小さな『罪』という名の痛みが抜けた。

 

 

 

 そうか——。やっと一歩目が分かった。

 贖罪への道を、アイが示してくれた。

 

 

 

 ——『知ってもらう』ことだ。

 ——アクアを。マリンを。アクアマリンのすべてを『僕』以外の誰かに知ってもらうことなんだ。

 

 

 

「……スッキリした?」

 

「……悪い、僕らしくなかった」

 

「いいんだよ。親なら子供の力にならないと」

 

 アイは強い。本当に強い母親だ。

 自分が恵まれない子供だったのに、不器用なところもあってちょっといい加減なところもあるし、計画的なんだか無計画なんだか不安になるところはあるが、子供に対して真摯に向き合う強くて優しい母親だ。

 

 だから庇護ばかり受ける関係になりたくない。こんな悩みなんてもうアイにしないように強くならないといけない。

 

 でもまだ甘えたいという私がいる。俺がいる。僕がいる。星野アクアマリンが餌に群がる雛鳥のように鳴き続けている。

 

 私は何をすればいい。俺はどうすればいい。僕は何ができるんだ。教えてほしい。教えてくれ。

 

「僕が僕(アクアマリン)でいられるにはどうすればいい? アイはどう思う?」

 

「難しい話はよく分からないけど『アクアの復讐』を何とかしたいってことなんだよね?」

 

「…………うん」

 

「それ似てるんだよね。私の生き方と」

 

 似ている? アクアマリンとアイの生き方が? いったいどこに?

 

 

 

「何が『嘘』で、何が『本当』なのか。それが分からなかった私の『愛』に」

 

「『愛』と『復讐』が似ている?」

 

「そこじゃなくて。センセのは私と逆で『本当』が『嘘』になった『復讐』ってことでしょ?」

 

 

 

 ——その考え方はなかった。

 

 言われて再認識すれば確かにそうだ。元々『存在した復讐』が本当だった以上、それが『存在しない復讐』へと変化したら嘘ということになる。

 

 だったらアイのやり方を真似ればいいのか——。

 嘘となってしまった復讐を、本当にすればいいのか——。

 

 

 

 ……………………どうやって???

 

 

 

 いつか嘘が本当になると願って、愛を口にしてきたアイ——。

 いつか嘘が本当になると願ったとして、復讐をどうしろと???

 

 アイが『吉○沙○里』直伝タックルでギャグみたいに流したように、復讐もギャグのように流せばいいのか? 毎日毎日復讐を口にして、何かに復讐を宿すような復讐の復習ルーティンみたいにしろと?

 

 

 

「オェ…………」

 

 

 

 ダメだ。しょうもない流れで、一瞬でも忘れそうになってしまった影響で吐きそうになった。『忘れるな』と罪悪を覆い被さってくる。コメディやギャグで半端に流すな、中途半端な答えを出すなと『自分』が言っている。

 

 ——そうだ。これでいい。答えを焦るな、早まるな。

 ——あかねが言っていたじゃないか。流されて出た答えは、きっと後悔することになるって。

 

 

 

「車酔い? 一旦落ち着ける場所で止めようか?」

 

「とりあえず深夜テンションに任せるのは良くないことは分かっただけだから、アイは気にしなくて良い」

 

 

 

 まだ焦る必要はない。贖罪への道は長い。千里の道も一歩から。それこそ今の僕たちみたいな宮崎に着くまでの長い道のりのように。

 

 

 

 ——明けない夜はない。『太陽』が昇り、日の出が見えた。

 

 

 

「ちょっと私だけ仲間外れにしないでよぉ〜〜! 何二人で話してんのさぁ〜〜!」

 

「ママと僕しか分からない大人の話♪」

 

「そう、内緒♪」

 

「え? どんなディープな話したの???」

 

 

 

 大人二人組の夜遊びはお終い。悩み事もお終い。

 ここから先は普通に一家団欒、微笑ましい朝の時間。

 

 適当なコンビニで駐車し、夜の冷たさを朝日が照らす少し早い朝ごはんを堪能する。

 三人仲良く肉まんと緑茶。そこに各々好きに手に取ったおにぎりを一つ手にする。

 

「やっぱおにぎりは……ツナマヨだよな」

 

「——は? 普通おかかでしょ?」

 

「ちょっとそれはママでも聞き逃せない話かな〜〜? 明太子が一番だよ?」

 

「ツナマヨだって! コンビニおにぎりで一番売れてるってこと一番美味しいってこと! つまり不動のセンター! おにぎり界の一番星だっ!」

 

「はぁ〜〜!? ただ一番売れてるだけでしょっ!? ミーハー!? アクアってミーハー!? 味の美味しさならおかかでしょ!?」

 

「明太子! 誰がなんと言っても明太子!! こう……すごく美味しくて美味しい!」

 

 

 

 そして少しの仮眠と数時間の運転の末に、僕達は辿り着いた。

 生まれ育ち死に——再び生まれた場所『宮崎』に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——カラスの鳴き声は まだ聞こえない。

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