【推しの娘】 〜Trance Stars Family〜   作:かにみそスープ

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★第四十二話★ 若手芸能人は語りたい

「今週も皆様、こんばんは。司会役の『西東北(にしとうほく) (みなみ)』です」

 

「進行役の『春秋(はるあき) 冬夏(ふゆか)』です」

 

 収録一つ目。若手芸能人が集まって座談会を行うといった午後10時ぐらいからやってそうな番組のアレだと思ってもらえればいい。

 というか芸名とはいえ司会・進行役の二人とも名前すげぇな。『東西南北』と『春夏秋冬』のアナグラムとか攻めてやがる。愛久愛海(アクアマリン)の俺が言えたものじゃないけど。

 

「今回はヤングタレント諸君に集まっていただきました~~。それでは各々一言ずつどうぞ!」

 

 女子アナウンサーである冬夏さんの進行のもと、カメラがある人物へと向けられた。

 割と高身長で黒髪の眼鏡。その人物の名を俺はよく知っている。一応は血の繋がってる従兄弟なわけだし。

 

「好きなのは可愛い子。どうも、姫川大輝です」

 

「いきなりぶち込んできおった!?」

 

 そしてこの男、意外と実はバラエティ適性が高いのである。なにせ月9俳優だ。あまり積極的にメディア露出しないが、一度出たら強烈で痛烈で印象を残せる手段ぐらいいくつも持ち合わせている。

 ダウナーな雰囲気があってクールでミステリアスなイメージが先行しがちだが、残念ながら根っこからの女好き。蓋を開ければ、どこに出しても恥ずかしい俗物が公共電波に放たれる——という良い意味でも悪い意味でもイメージ戦略を根底から破壊する輩なのだ。

 

「好きなのは美男子・美少女。不知火フリルです」

 

「君も乗っちゃうかぁ!? 最近の子は自己主張がしっかりしとるわ」

 

「オフレコでお願いします。事務所は清楚系ミステリアスで売り出してるので」

 

「オンエアされるわ! カメラの前で口にした時点で!」

 

 もちろん姫川が滅茶苦茶にした空気を同じ月9俳優でマルチタレントとして実践豊富なフリルが見逃すはずがない。意図も容易く、そして歪んだ空気を自分のものにした。

 

 

 

 ——流石だな。場慣れしたやつ特有の武器を振るってくれる。既にあの二人の独壇場になっている。

 

 

 

「はい次や次! 今人気のケンカップルのお二人さん!」

 

「はい、最近あかねと別れました。有馬かなです」

 

「いいえ、別れてはいません。黒川あかねです」

 

「どっち!?」

 

 

 

 姫川とフリルの一番槍特攻に対抗するには、当然同レベルのネタに強さが必要になる。一人がダメなら二人で、有馬とあかねのコンビプレーで場を均しにいくのはある意味当然と言える。

 

 

 

「姫川さんと同じく好きなのは可愛い子。どうも、鴨志田朔夜です」

 

「それは周知の事実やろ」

 

「好きなのは……からあげ、です? 鳴嶋メルトです」

 

「一周回ってまともなのが不気味やわ~~」

 

 

 

 

 ——最初からやりたい放題しやがって。こっちは既にアウェーな雰囲気に呑み込まれそうで冷や汗が出そうなんだぞ。

 

 

 

「はい、というわけで『東京ブレイド』の舞台化で話題になった主演陣にお越しくださいました~~。ですが今回はスペシャル回。続いてはこちらの方々、自己紹介をどうぞぉ〜〜!」

 

「嫌いなものはピーマン。星野マリンです」

 

「こっちそういう流れかぁ~~」

 

 だったらこっちは対比戦法で行かせてもらおうか。同じ土俵で戦うなんて無理だからな。お前らが生んだ空気を利用させてもらう。

 

 好きなものを言われたら嫌いなもので応えるのがセオリーなように。山と言ったら川。ツーと言ったらカーみたいなもんで。

 

 

 

 ……もしかして今時の子って『ツーカー』通じなかったりする?

 

 

 

「嫌いなのは口が軽い人。どうも、星野ルビーです!」

 

「重い! 内容が姉と弟で正反対に重い! けど明るいのが怖いっ!」

 

 

 

 そういえばコスプレ炎上の時にそういうこと言ってたなお前。メイヤさんを上手く扇動することで、漆原Dを落とし込んだ時に。

 

 

 

「嫌いなものは回線が弱いBluetoothイヤホン。熊野ノブユキですっ!」

 

「森本ケンゴです。嫌いなものは周波数帯域が狭い音響機器です」

 

「地味! そして普通! いやルビーの後だと全部霞むんやけど!」

 

 でも分かるなぁ。そういう部分、地味にストレスが積み重なるよな。100均ショップに売ってそうな無線イヤホンなんか、満員電車や新宿や横浜みたいなデカい駅についたら音途切れること多い。音域も幅狭いと高音域とかがノイズ混じりになるときもあるくらいに。

 

「嫌いなものはささくれ。鷲見ゆきです」

 

「ネタと称して無理矢理してくる人が嫌いだったりするMEMちょです~~!」

 

「女子の嫌いってマジ感あって怖いわ〜〜。あっ、でもMEMちょはちゃうか」

 

「いやいや!? 私も女子ですよ!?」

 

「誰も女子には言及してへぇやん!! 自爆すんなや!!」

 

 今年で18歳と約84ヶ月を生きているもんな。人生色々と嫌いなものが見えてきて酒と一緒に吐きたいお年頃だもんな。

 

「たくっ、これで自己紹介は終わ——」

 

「嫌いなものは黒川あかね。どうも有馬かなです」

 

「嫌よ嫌よも好きのうち。嫌いなのはかなちゃん。黒川あかねです」

 

「二度刺すなや! 確かに二人とも『今ガチ』出演してるけど!」

 

「っ……ぷっ」

 

 これは想定外なノリで思わず吹いてしまった。やっぱやろうと思えばあかねもバラエティ力あるだろう。

 

「見てみぃ! クールキャラで売ろうとしてるマリンちゃんのツボに入っとるやん!」

 

「いやぁ、マリンちゃんポンコツだよ? 私たちが出演したシーズンの最初見ました?」

 

「そうやったわ! この子元々『真面目系ポンコツ末っ子タイプの俺っ娘』で有名になった子だったわ!」

 

 だけどおかげで『今ガチ』組の空気もいい感じに生まれてきた。姫川とフリルが先駆けた雰囲気が調和され、互いにとって話しやすい場面へと作られていく。

 

 まあ、もちろんこれも司会役のタレントが中堅レベルに売れてるだけあって場の調整が上手いという側面もあるが……。

 こういう逸材が転がってるのが芸能界だ。実力揃いの粒揃いはゲストの俺たちだけじゃないってことだ。

 

「最初から推しとキャラが強いメンツやね〜〜。おかげで最初から見所満載でスタッフ困りますわな。じゃあ、巻き感覚で行きましょう!」

 

「はい。というわけで最初のお題はこちらになります!」

 

 進行役の指揮のもと、司会席の後方にあるモニターからテロップが表示される。

 話のお題は『最近ハマってる趣味』だ——。漠然としてるが故に、無尽蔵に広げることができ、同時にそれが落とし穴となる。

 

 収録時間は限られている。その中で繰り広げられる『自由な会話』というのは、最も演者を苦しめる『不自由』にしかならない。

 周知された事実には価値がなく、つまらなければ放送されず、長ければカットされ画面に映らず、短すぎても画面に映る時間が減るだけ。単純で漠然としてるが故に、出演者のトークセンスが如実に出るお題が『最近ハマってる趣味』というものだ。

 

「さあ、若手のマイブームは気になるところですねぇ。黒川さんはどないな趣味をお持ちで?」

 

 そして、この状況下で先陣を切らされるのは無茶振りにも近い。

 その標的になったのが黒川あかねだ。バラエティとかの経験は浅いが、果たして今のあかねは乗り越えることができるのか。

 

「私は昔から『料理』かなぁ。最近だとイタリアンとか勉強中だったりします」

 

「イタリアン料理! 今だとインスタ映え〜〜とか言いながら色々とアレンジができるでしょ? 黒川くんはどんな色物を?」

 

「無難に作ってますよ。海鮮パスタにバジルソースで和える感じで。あとは少しオリーブオイルを混ぜたりとかで濃厚さを増したりする程度で」

 

「十分プロやないか。こりゃ男子の胃袋掴んでモテるでしょ」

 

「モテません! だって男子ですよ、私!?」

 

「せやったわ」

 

 だが、あかねは見事に自然体のまま往なしてみせた。

 というか今のあかねは自然体こそ一番の武器と言える。今のあかねは中性的な見た目ではあるが『男性』である以上、こういう女子力というか家庭的な一面を見せるだけでキャラとしても世間としても好印象になるんだから。

 

「有馬さんはどうなん?」

 

「私ですか? 私が最近ハマってるのは……」

 

「いやいや。黒川くんの料理は食べてるん?」

 

「話のお題どこいった!」

 

「おっと、うっかりしとった。で、有馬さんがハマってるのは?」

 

「ハマってるというほどじゃないけど、ここ最近は『競馬』を意識しちゃいますよ。やっぱ苗字が苗字なので」

 

「せやね。有馬といったら『有馬記念』! 最近だと『ウマ娘』のブームで若年層にも認知されとるからな〜〜。みんなは好きな馬とかおるん?」

 

「馬とか言われても、俺は興味ないんで知ってるの『ディープインパクト』とか『ナリタブライアン』くらいっすねぇ」

 

「最近だと『パンサラッサ』とか『イクイノックス』とか聞くけど、それ以外は俺も知らないかなぁ……」

 

 しょうがない。競馬に興味ない時は本当何も分からないもんな。馬ごとの違いとか特に。

 

「残りの皆様方はどうなん? 競馬にハマってる芸能人とか多いし、何なら所有してる人もおるから知人から知ってる人もいるんとちゃう?」

 

「ママは名前もあってか『アーモンドアイ』とか好きみたいですよ。ちなみにボク自身は『オグリキャップ』かな!」

 

「オグリ! いやぁ有名どころやけどルビーくんの世代じゃないのによく知っておるなぁ……」

 

「なんか、よく分からないけど聞き馴染みのある声なんですよねぇ」

 

「声優さんと知り合いなんか?」

 

「全然。だけど声がどこかで聞いたことあるような、ないような……知人にいたような、いないような……知ってるような、知らないような……」

 

 さりなちゃんの時代に聞いた覚えのある声ってことか? 体感時間的には彼此30年以上前だから昔過ぎて覚えてないぞ? 

 

「意味わからんわ! お姉ちゃんはどうなん?」

 

「俺はウマ娘なら『ライスシャワー』かなぁ。顔と声が結構好み」

 

「顔と……」

 

「声が……」

 

「好み……」

 

 なんだこの視線。あかね、ルビー、有馬と三者三様に軽蔑にも近い視線をヒシヒシと感じてくるぞ。競馬だけにヒシヒシと。

 

 

 

「(アクアくん、ロリ顔の年長者が好きなのかな……かなちゃんみたいな)」

 

「(ライスシャワーって、結構あかねさんと声似てるんだよなぁ。まさかその影響?)」

 

「(あのキャラって確か『お兄さま』とか呼んで妹属性持ってるんだっけ? ルビーと重ねてる?)」

 

 

 

「「「(なんかアクア(アクアくん)の潜在的な好みが見えてきてやだなぁ)」」」

 

 

 

 すげぇ失礼なことを考えてそうな顔つきだな、あの三人。若干虫を見るにも近い侮蔑を感じるぐらいに。

 

 

 

「渋い所いくなぁ、マリンちゃん。ライスシャワーって言ったらヒール役として有名な競走馬やで。ミホノブルボン、メジロマックイーンの偉業を阻止したから嫌いな人も未だにいるくらいには」

 

「あっ、マックイーンなら私も知ってますよ」

 

「ゆきちゃん、マックイーン知っとるんか! 結構古い馬やで?」

 

「SNSのファンアートで「パクパクですわー!」とか言ってる可愛い子ですよね!」

 

「それはウマ娘や!」

 

 

 

 しかし、この司会もやるなぁ。伊達に変な芸名をしてないだけあって、話をスムーズに繋げるどころか次々と会話のボールを別の人を渡して行っている。地味だけどこういう才能って意外と制作陣から重宝されるんだよな。『オード○ー』みたいに。

 

 

 

「今ガチ組で盛り上がってるところ悪いんだが、話の主題は競馬じゃねぇよ」

 

「おっと、すまんかったわ姫川くん。じゃあ、その姫川くんがハマってることは?」

 

「酒と女」

 

「クズ男か! てか若手ばかりなんやから未成年が分かりにくい話やめーや!」

 

「でも成人迎えてるの俺と鴨志田とMEMちょがいるからセーフかと」

 

「さり気なく私を成人扱いで話進めないで貰えます!?」

 

 もう周知の事実なんだから仕方がないだろう。前の世界でも『今ガチ』の出演時から疑惑持たれるくらいには結構同世代から外れた話題が多かったし。流石に7歳もサバ読んでるのは若作り頑張りすぎてて普通に驚いたけど。

 

「俺も酒かなぁ。ワインとかビールとかで合うアテが違うから、自分好みの味を探すの結構楽しいんだよね」

 

「だよな。自分に合う酒と摘みを見つけた時のマリアージュは格別でハマるよな」

 

「若いうちだけやで、そんなことできんの」

 

「そうだぞ。年取ると、油っこい物を受け付けなくなるからな」

 

「なんでマリンちゃん分かんねん!」

 

「う、うちの母親がね……」

 

 なんかこの誤魔化し方、アイが「家の子猫がね……」と話を有耶無耶にした時を思い出すな。やはり血の流れは逆らえず、俺はまごう事なきアイの子供ってことか。

 

「アイさんが脂っこい物に受け付けないの意外……。結構色々とテレビで食べてる印象あるのに」

 

「そういう意味ではフリルちゃんもロケで色々食べておりますなぁ。やっぱりハマってるのはそのへんなん?」

 

「私はYoutubeかな。隙間時間にshort動画見るの結構良くて」

 

「分かるわぁ〜〜。自分もロケ中の移動時間はアプリポチポチして時間潰しておりますもん。『ポケモンG○』とか『プロ野球スピリッ○』とかで。けど前に雑誌か何かのインタビューとかだと、動画関係に夢中とか言っておらへんやろ?」

 

 この人、ゲームだけでなくゴシップにも結構精通してるな。話の引き出しがマジで多くて、一度肯定から入るから話し方に嫌味もなければ皮肉も感じない。明らかにイジリ待ちの会話以外は水のように流しきってくる。

 

 

 

 ——空気を作ったのは姫川達でも、その空気を流動させてるのは間違いなくこの司会役『西東北 南』だ。こんなのが当然のようにいるのが芸能界の怖いところだ。

 

 

 

「『今ガチ』でMEMちょが出てるのを切っ掛けで色々なの見始めて……あっ、もちろんMEMちょさんの動画は全部投稿日に見てます」

 

「~~~~っ!!」

 

 すごい自己肯定感高まりまくってる表情だな。ここまで成人ネタで弄られまくりで、Youtuberとして話を振られるのがよっぽど嬉しいと見える。

 

「MEMちょ嬉しそうやね〜〜。そんなフリルちゃんが推してるMEMちょの動画で好きなジャンルとかあるん?」

 

「『テーブルゲーム』とかかな。美男子・美少女がワチャワチャと楽しそうに遊んでるのが、みんな可愛くて……」

 

「女子の可愛いって色々な意味ありますからなぁ~~。けど『テーブルゲーム』って色々ありますが、フリルの一推しとかあるん?」

 

「定番だと『人狼』とか『ブロックス』とかありますけど……。今一番遊びたいのは『ワードウルフ』かな」

 

「なにその『ワードウルフ』ってのは? 今ここでやれるん?」

 

「簡単ですよ。必要なのは『会話』だけですから」

 

 そこからフリルは饒舌にルールを話し、抜けている点はMEMちょが補足をして番組が編集しやすい区切りを作っていく。元々MEMちょは『YouTube』でセルフプロデュースをしている以上、こういう『編集点』を作るのは大の得意だよな。

 

 というわけで滞りもなく説明は終える。

 簡易的な説明だったのがワードウルフとは要は話のお題が振られるが、そのお題は全員同じではない。1人だけ似ているが全く別のお題を振られ、その別の話題の人が『少数派(人狼)』となって、話し合いに参加して上手く擬態して最後まで人狼だと悟られずにゲームを終えれば人狼側の勝利になる。そういうものらしい。

 

 もっともこのゲームで肝になるのは、その『少数派(人狼)』は本人でさえも把握できないということ。

 逆説的に『多数派(村人)』も自分が人狼なのかどうか不明であり、曖昧な会話をして仲間を作る、あるいは人狼を炙り出して見事に的中したら村人側の勝利というやつだ。

 

 

 

「面白そうやん! せっかくだからやってみましょう!」

 

 

 

 嘘だろ。こんなの台本にないぞ。いや、正確には『何かしらのレクリエーション企画』はやるということになってたけど。そのために話しやすい円形のテーブルで一席ごとに小型カメラが設置されてるけど。

 

 あの話の最中でアドリブでぶち込んできやがったぞ、この司会。フリルから出てきた話題を最初から織り込み済みだったと言わんばかりに。

 

 

 

「じゃあ一度セッティングがてら10分ほど収録休憩入りまーす!」

 

 

 

 編集点を作るという意味や『ワードウルフ』に必要な話題を決めるために収録は一度休憩となって、制作陣は制作陣でテキパキと動き出し、タレントはタレントで各々のマネージャーと話し合い、番組での立ち回りを話し合っている。自分の売り方に間違いはないのかと緻密に。

 

 

 

「加藤D。ゲーム中は自分はどんな風に司会をすればいいですかね」

 

「若い人達に基本任せちゃっていいと思うよ。番組の主題は売れ時のタレントの顔出しだからね。君が話を回すためにタレントに話を振るのはいいけど、君が割って入るのは違うからね。失言みたいな場の空気の調和以外は静観で頼むね」

 

「だったらそう動くとしますわ」

 

「そうだね。ここからは冬夏ちゃんのお仕事。ワードウルフのGMとして動いちゃっていいからね。あの子達は売れ時なんだから、テレビ局としては縁を深めて来年・再来年以降のスペシャル企画でオファーをする際にアドバンテージを得たいんだから」

 

「はい。こういうゲーム、プライベートでもやってるので任せちゃってください」

 

 

 そして司会役と進行役の南さんと冬夏さんは、一転して今までの掴みきれない雰囲気から仕事人としての一面を覗かせる。ディレクターもただ面白いものを撮りたいだけの一筋縄なわけがなく、未来への投資を見越して今後の動きを滞りなく進めるためにどう動くべきか話し合っている。

 

 覗かせる一面だけが、その人の本質とは限らない——。

 南さんも当然、この芸能界で生き残るために『努力』を当然のように続けてきた実力者なのだと改めて実感した。

 

 

 

「……そうだったな。これが芸能界だ」

 

「原石だらけの新人と違って、中堅以上は全員生え抜きよ。全員が修羅場を抜けた連中なんだからこれが『普通』なのよ」

 

 久しぶりに有馬の芸能人として先輩面を見た気がする。こういう時の有馬は心強いというか頼りになる。アイドル成り立てのルビーを任せた時のように。

 そして自分が目指そうとする無謀さを改めて実感する。これですらまだ入り口の途中だというのに、俺が目指そうとしてるのはその遥か先。

 

 

 

「やってやろうじゃないか、星野マリン——」

 

 

 

 この程度、乗り越えずして映画の一つなんか作れるもんか。

 自分が持つ全てを使って、必ず『贖罪』へと辿り着いてやろうじゃないか。

 

 

 

「そうやって独り言してるところ悪いけど、やっぱアンタ中二病じゃない? いい歳なんだからいい加減卒業したほうがいいわよ?」

 

「有馬、あとで表出ろ。叩き潰してやる」

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