【推しの娘】 〜Trance Stars Family〜 作:かにみそスープ
「オッス、ブッチョさん! ブッチョさんも私のマラソン企画を応援してくれてるの? ありがとね!」
「ちがっ……ええい、邪魔だ! そこを退けっ!」
マリン、四宮、早坂から逃げ切った経理部長は、非常口から裏路地へ飛び出し、念の為に入り組んだ経路を渡って一先ず追手を振り払うと、そのまま表道に出て人混みに紛れて逃げようとしていた。
しかし放送中止をしたとはいえ直前までは生放送をしていた。集まった人だかりは「はい、そうですか」と霧散して消えるわけがない。
疑問と困惑によって足を棒にして立ち続けるしかなく、人の壁に阻まれて遠回りを余儀なくされ、最終的にはマラソン企画を続行していたアイに絡まれるという彼にとって大変都合の悪い展開になっていたのだ。
「退けるわけないですかぁ。今はマラソン企画中。私の走りで地球は救われるんでしょ? 『アイは地球を救う』って言うでしょ?」
「24時間テレビのフレーズを出すな、局が違うんだから……! それに今は放送中止だ、色々あってな……」
「それ本当? 生放送なのに? まだフィナーレまで数時間もあるのに、放送に穴開けて大丈夫?」
大丈夫なわけないだろう。SNSで困惑があり、間も無く電話が殺到してテレビ局は混乱に陥るだろう。
問題が表層化を余儀なくされたら、テレビ局が今まで隠していた闇がすべて浮き彫りになる。その最悪を防ぐために、熱りが冷めるまで家にも帰らず、銀行の明細から場所を特定されにくくするために、こうやって寄付金の一部と情報媒体を忍ばせているのだ。
マリンが映像をインターネットに流していることを考慮していても、これが最悪の中の最善。情報をどこかに隠しさえすれば、立証できる問題は過去にも及ぶ『寄付金の横領』だけであり、そうであれば犠牲になるのは最悪彼自身とその周囲の家族だけである。腐った上席が、腐ったことに手を出してしまったというだけのよくある不幸話で片付く。被害にあったテレビ局は非難されつつも以降注意とコンプライアンスと情報リテラシーの改善を言われ、騙された募金者は可哀想という形に落ち着くのだから。
「ところで膝とか脹脛とかは平気? 私も三十路になったから分かるんだけど、運動が問題なくできるのって贅沢なんだよね。還暦のブッチョさんだと骨とか擦り落ちない?」
「……これでも週二でジムに通っている。十年以上前に生活習慣病を患ってな。と健康維持のために頑張っている」
「ああ、皮下脂肪とか内臓脂肪ってやつだねぇ。内臓脂肪はまだいいんだけど、皮下脂肪が23%いってて、もうグラビア撮影するには太腿とかの下腹部辺りの贅肉が目立ってしょうがないよ。モデルなら全然現役だけどね♪」
「ところでなんだ、さっきから口にしているブッチョって。何を思ってそのあだ名をつけたのだ?」
「仏頂面の部長さんだからブッチョさん。ゆらちゃんがそう呼んでたよ」
いい加減無駄話から解放してくれ、と彼は思いながらも、思いは届かずにランニングというよりジョギング同然の軽い走りのままアイは話しかけてくる。
還暦の痩せ細った足腰でもついて行けるほどのスピードで調整しているあたり暇つぶしや雑談ではなく、尋問をするために話しかけてきたのが透けて見える。いつもは嘘が本当か分からないように立ち回るというのに、今だけは意図が透けて見えるあたり杜撰というか目的が明確で彼は思わず舌打ちをしてしまいそうになる。
「ほらほらそういうとこ、そういうとこ。仏頂面よくないですよぉ? スマ〜〜イル」
「そろそろ解放してくれ。私は忙しいんだ」
「へー忙しいんだ。どんな風に? どんな用事で? 生放送の穴埋めとか、関係者各位の謝罪とか? すぐに対応するためにすぐ動けるだなんてすごいねぇ。不思議だねぇ」
——誰からの入れ知恵だ? と彼は即座にアイの思考を見抜いた。
長年テレビ局にいるから、アイの活躍はデビュー初期から現在まで詳細を把握している。思考などの機微やクセみたいなものまで、ある程度思考を読み解くことができるほどに。
だからこそ今のアイは誰かの入れ知恵で動いてることは明白だった。アイの嘘や建前が分かりやすい時は、自分の意思ではなく他人の意思で嘘をつく時だ。誰かからこう言うように指導あるいは誘導されている時は、分かりやすい嘘に聞こえたり、嘘にボロが出やすいことを知っている。
…………
……
『そうそう! ご飯といえば、この間ウチの子が——』
『じゃなくてウチの子猫がね! 休養中に飼い始めたんだけど——』
……
…………
それこそ産後の復帰初のテレビ番組で、迂闊に子供のことを洩らして強引に隠したように。
これだって当初は斎藤社長から「子供のことは絶対バラすなよ」と言われた外付けの嘘だったからこそ溢れてしまった本音。本当は誰かに「私は子供を産んだんだよ」と言いたいのに言えないからこそ、分かりやすい嘘の皮を被った『暴露欲求』が発露する。それがアイの生き方だった。
その矛盾で、拷問のような生き方で息をするように芸能界を生きてきた。本当は「助けて」とか「愛してほしい」とか普通の気持ちがあったはずなのに、その言葉を口にしたいと思った時には心が「助けて」「愛してほしい」という物を忘れてしまい、言葉に出すことができなかった。だから嘘というベールで取り繕って、彼女はできる限りのSOSを流し続けた。
そういう生き方をしてきたからこそ、自分の意思として、彼女自身が『本気の嘘』を吐こうと思った時、彼女の嘘は掴みどころがなく、傷一つつかない完璧なアイドルとなる。
彼女が売れっ子になったキッカケ。彼女が本当の笑顔を知った日。
馬鹿馬鹿しいことだが、自分の赤子が自分のライブでオタ芸を披露した時に見せた時のように。
——子供達を守りたい。子供達に未来の選択肢を与えたい。
——だったら秘密にしないと。子供がいるなんて本当を漏らしてはいけない。
——隠し切る この秘密だけは。
——そのためなら嘘を吐こう。「愛してる」って嘘を積み重ねよう。
——これこそ私なりの愛。
——嘘は、とびきりの愛なのだから。
「まさかとは思うけど、悪いことしてないよね〜〜? テレビ局ってきな臭いこといっぱいあるもんね〜〜」
アイは笑みを浮かべる。母としての、アイドルとしての、女の子としての笑みではない。魔性の『女性』としての笑みを浮かべる。
その今まで見たことない笑顔を見て、彼は背筋が恐怖で固まった。年齢としては相応ではあるが、その笑みと『似た笑顔』を持つ人物が脳裏に過ったしまったから。
——こいつ、もしかして。そういうことなのか。
——アイに入れ知恵をしているのか、誰なのか。
——いや、あり得る。アイが大きな変化をする時は大抵いつも碌でもないことが起きているのが当然だ。
——田舎娘が都会の女の子になれたのは『恋』を知ったから。
——未熟なアイドルが母親になれたのは『愛』を知ったから。
「まあ、そういうことなら仕方ない。お帰りはあちらからです♪」
あまりの驚愕と恐怖に、無我夢中で彼は逃げ出した。
アイが指し示された道へと一心不乱に。夜ですら眩しいはずの都会の中央だというのに、一寸先には闇しかない裏路地へと安心を求めるように。
今のアイは『普通の人間』として生きるにはおかしいことをしている。普通を目指すなら、平穏な日々を求めるなら、そんなことをする意味がない。
だけど直感でわかる。ここまで長い間芸能界の舞台の提供者として数多くの人々の機微を目の当たりにしてきたからこそ、直感は確信だと疑うことはなく思考を馳せる。
——あの感覚は知っている。あの魔性染みた微笑みの裏にある光を知っている。
——御神木のような尊大で慈愛に満ちていて、妖艶なのに幼稚な微笑みは、間違いなく『アイツ』譲りのものだと。
…………
……
「さてここらでチェックメイトだ。大人しくしてもらおうか」
だが、一方通行の裏路地。その最果てで一人の男性が立ちはだかっていた。
ほどよく筋肉がついた背が高い男性だ。地毛なのか染めているのかは不明だが金髪であり、また目付きは一般的な尺度で言えば悪いと言えるだろう。客観的に見ればとても威圧的であり、第一印象は「怖い」という印象を持たれても不思議ではない。
「この寄付金はしっかりと正しい使い方となる場所に戻させてもらう。元々俺たちは『ある事件の真相』を追うついでに、『寄付金の横領』を止めるために立ち回ったに過ぎないからな」
男は野晒しにされて朽ち果てる寸前の室外機へと腰を置く。
紡ぐ言葉に荒々しさはない。至って冷静であり、声色だけで男がどれほど知的で、その知識を得るのにどれほど努力を研鑽してきたのか伺えるほどだ。
「世の中綺麗事だけで丸く収まるわけがない。諦めという名の妥協も時には必要だ」
「……何が言いたい?」
まだ二十代半ばにも満たないはずだ。恐らくは大学を卒業して一年ほどでしかないはず。
社会的に見ればまだまだヒヨッコの子供でしかないのに、発せられる言葉ひとつひとつが重みがある。成熟しきった達観さもあり、生まれ持った何かが違うことを如実に感じ取れる。世間一般的に言えば、それが歪みであり『個性』という形で崇めながらもどこか馬鹿にして呼ばれるようなものだ。
「ここから先は穏便な取引といこう。それを呑んでくれれば、情状酌量の余地があるとして幾分か罪を軽くしてやる」
「断ると言えば?」
彼だって泥に塗れてでも守りたいものがあった。家庭を持ったからこそ、親を支えようとしたからこそ、夢や真実なんかよりも現実を選ぶしかなかった。
守りたい現実がある。そこだけは絶対に譲れない。どの口が、どの立場が人々は口にするだろうが、そんな泥に塗れた現実の中でも家族と親だけは守りたいのだ。何も知らない人々達に罪はないのだから。罪と罰があるというのなら、それを秘匿している自分だけを罰して欲しい。もしも自分以外を巻き込むのなら、即刻交渉を決裂して逃げ出そうと彼は言葉の奥に留めておく。
「もちろん断れば真相を流すだけさ。伊井野と大仏が色々と動いてくれたから、物的証拠はたらふく集めている。無駄に長く牢屋に入るのは嫌だろう」
それはどうでもいい。長く入るのは別に問題はない。どうせ満足には動けない体だ。刑務所で大人しくいるのと、縁側でノンビリと日向を浴びて過ごす。どちらも退屈な日々には違いないのだから。
だからどうでもいい。自分のことはどうでもいい。守るべきは身勝手だが、家族の平穏だけなのだ。
「お前の家族には極力迷惑をかけないようにする。バッシングも受けないようにする。その抱えるテレビの裏側だって表に出さないようにする。お前は横領の罪だけを糾弾されるだけでいい」
「……本当にそれだけでいいのか?」
「それでいいさ」と男は室外機から身を下ろして手を差し伸べる。慈悲や優しさとして差し出された手ではない。「これで手打ちにしてやる」という遠回しな意思が込められてるのを、彼は敏感に感じ取った。
「『業務上横領罪』の示談といこう。遡ることになるから、額は多いだろうがな。いくらだ?」
「……2000万近くある。そこに返済とかを上乗せした額を合わされば3000万や4000万はくだらないだろうな」
「良心的だな。横領したのは年単位で割れば100万ほどと考えれば、規模としてはまだ小さいと言える」
あまりにも普通な態度に彼は度肝を抜かれた。内心では「どうしようもないだろう」と思いながら口にしたのにも関わらず、金髪の男は顔色一つ変えず、むしろ「その程度か」と言わんばかりに余裕を見せつけるほどに。
「それくらいならお安い御用だ。俺には金がある。こういう事態を穏便に済ませるための金がな」
男は自分のスマホを見せつけた。液晶に映る巨額の単位に、彼は目を点にして驚くしかなかった。
間違いなく桁違いの額があった。個人が自由に扱っていい金額ではない純粋な金の暴力がそこにある。冷静になって桁数を数えれば数えるほどに、冷静さは失われていくほどの巨額と驚愕がそこにはあったのだ。
——デジタル表記の『1,000,000,000』という数字は、つまりは『10億円』を意味していた。
「お、お前……何者なんだ……!?」
「しがない若社長だ。ちょっと良いところから投資を受けただけのな」
どう深く見積もっても、大学卒業してから数年が限界だろう。あえて年を重ねたとしても二十代半ばがやっとであり、その年代でスマホ片手に10億円を持てるとは到底思えない。
まさかこいつも四宮や藤原みたいに上流階級の人間なのか。だがしかし、こんな奴は見たことがない。顔もそうだが、スマホの画面として掲示された銀行に登録されているカタカナ表記の名義を彼は確かに見たのだ。
——『カ)シロガネセイヤク』という銀行名義を。
——『白銀製薬』なんて会社は、彼には聞き覚えがなかった。
「いいか? 示談としてお前が払うべき金が俺が全額建て替えてやる。それで金の問題は解決だ。もちろん後で返してもらうが、その利子代わりとして交換条件を一つだけ提示する」
男は「それは」と前置きをして話を続ける。二人にしか聞こえないような囁くように耳打ちで話す。
言葉が繋がるたびに彼は目を見開いていく。男が口にするのは光と闇が詰め込まれた願いだ。過去の清算を望み、未来への遺産を残すために奮闘しようとする心。その在り方を形にするための舞台を整えてほしいという願いを、確かに男は口にしたのだ。
「……そんなことでいいのか?」
「そんなことでいい。俺にとって、かぐやにとって、そして『ある事件の真相』を追うためには、芸能界の扉を叩かないといけないからな」
「それでいいのなら……私も助かるよ」
こうして彼は出頭することになった。自首という形で警察署に自らの足で向かっていったのだ。
あまりにも呆気ない幕切れ。だけどどこにでもいる悪人が、どこにでもある罰を受けながら穏便に済ますには、これぐらいの落とし所にしとかないと最小限に収まらない。男は少しばかり「もっとドラマティックにやりたかったんだけどな」と思いながらも、自分でも少々情けない終わり方くらいが丁度良いのだろうと納得して手元にあるUSBメモリへと視線を落とした。
「……これが芸能界が隠していたかった闇の一部か。この中に『上原清十郎と姫川愛梨の無理心中』の他に『劇団ララライ』に関わる何かがあるといいんだが……」
彼は、金髪の男性に芸能界に闇を濃縮した情報だけを残していった。
これも交換条件の一つ。表には出さないが、その中にある一部が自分が探し求めるものがあるかもしれないと説得して譲渡してもらった物。
即座にUSB端子に変換ケーブルを通して、男は自分のスマホに情報を写していく。情報量としては映像•画像•テキストと媒体は様々で容量が重いが十分も掛からずに全部の情報を移し終えると、一息ついて男は視界の端に映る女性へと声をかけた。
「これで良かったんだろ『有馬かな』——」
その名前を呼ばれると同時、路地裏の物陰へと赤い髪、自信家で童顔といった特徴が目立つ少女が姿を見せた。
それは満場一致で万人が指を示す有馬かなに他ならない。物陰見せる憂いが帯びた表情はどこか月に隠れる太陽のように不可思議な魅力があり、月明かりの下ということもあってか、どこか神秘的で年齢不相応の蠱惑さが見え隠れするほどに幻想的だった。
「大仏所長の人脈もすごいわねぇ。アンタみたいなキレ者もそうだけど、どうやったら四宮とか藤原とかの経済的、政治的な大物と関係持てるのかしら? 子役時代に枕営業や接待なんかできるわけないんだし、それこそ子役やめてから自力で掴んだのかしら。だとしたらすごいバイタリティだわ」
「大仏とは先輩後輩関係ってだけだ。『秀知院学園』は知ってるだろう?」
「あのボンボン共が集う成金学校のこと?」
「芸能人の卵がポコジャカ集まる『陽東高校』も大きな差はないだろう」
「言われてたらそうね」と有馬は赤い髪を靡かせながら金髪の男に近づき「ありがとう」と乱雑に言いながら、USBメモリをくすねた。
その動作に男が驚くことはない。元々そういう取引だったからだ。わざわざ事態を大きくしたのは、二つの目的が重なり、二つの目的を満たすために共同戦線を貼ったという理由がある。そのための報酬として有馬かなは『芸能界の闇』を詰め込んだ資料を求め、その一部を閲覧したくて男もまた協力したのが実情だった。
「こんな物を天才女優様が欲しがるとはな。芸能界を生き残るには、お偉いさんのお気に入りになって微温湯に浸かる方が良いと思うが?」
「私には私なりにやらないといけなきゃいけないことがあるのよ。岩でも掘り出さないと解決しないような厄介ごとをね」
「まあ」と有馬はバカにするような男に視線を向ける。
本当は頼りたくはなかったんだけど言わんばかりに不満げに。だけど遠いところに視線を向けて「頼らなくてよかったけど」と言いたげに不満があるような、でもどこか満ち足りた雰囲気で口にする。
「あかねなら、もっとスマートに特定して穏便に済ませられたと思わなくもないけど。あいつの洞察力と情報収集能力、そんじゃそこらの探偵より遥かに上なんだから」
「……あかねって、あの『黒川あかね』か」
「ええ、そうよ。一応彼氏の立場は持ち上げとかないと」
金髪の男性は何かを思い出したようにスマホのページへと目を通す。
そこに映るのは『東京ブレイド』の舞台で刀鬼役を務めた時のインタビュー記事やら子役時代からの黒川あかねのプロフィールが記載されていた。
かなりの高偏差値。趣味は料理に読書に役作りのための国立国会図書館を通うこと。特技は勉学と演技ぐらいしか取り柄がないといっているが、割と変な特技を多数持ってたりと、常識人でありながら変人であり天才という、男からすればどこかシンパシーを感じるような印象を受けた。
「……確か、かぐやが選抜したのは『星野マリン』だったよな」
そのシンパシーで彼はあることは思い出し、スマホで出したPDFのタブを開いては閉じてを彼は繰り返す。
かたや星野マリンは情報が少ない。少なくはあるが、男勝りで思春期なのに女の子らしい色気なし。ポンコツだのなんだの変なあだ名が付けられているが、本質的にはミステリアスで自分のことを必要以上に表に出さない人だと、かぐやは口にしていたことを男は思い出す。同時にかぐやが「どこか自分と似ていて、揺れ動いてるように見える」とシンパシーを口にするほどに。
「なるほどなぁ。これは面白い。いや、この二人じゃないと頼めないことだな」
男がシンパシーを感じた『黒川あかね』——。
かぐやがシンパシーを感じた『星野マリン』——。
どういう因果かは分からないし、分かることもないが、男は確信を持った。
この二人を『主役』にすれば大丈夫だろうと。自分とかぐやがしたいことをこの二人なら成し遂げることでき、自分達が『告白』したい全てを表現しきってくれると。
「しかし無駄に大立ち回りさせたわね。アクアだけじゃなくて、ルビーもアイも巻き込んじゃって……いったい何をしでかすつもりなのかしら」
有馬が溢した言葉に男は息を飲み込んだ。
有馬は「なにその態度」と文句を垂れようとした時、男は不思議そうな声で告げた。
「——星野アイが動くなんて俺達が建てたプランにはないぞ?」
「……なんですって?」