【推しの娘】 〜Trance Stars Family〜   作:かにみそスープ

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〜第6章〜 【告白ロマンス】
★第五十二話★ Trans Silver Family


 これはある女性の『告白』の話。

 彼女は月夜でさえも及ばないほど絶世の美しさがあった。月影のように儚くも、夜のように掴みどころがなく狡猾な一面があった。それこそ月の満ち欠けのように、彼女の魅力は人によって移り変わり虜にしていた。

 

 誰もが目を奪われる夜職の女帝。

 花魁道中とはこれである。現代であるにも関わらず、彼女が歩く先々では常に彼女を求める男——否、客がいた。

 

 お猪口一杯を注ぐだけで百万という大金が動く。中には彼女の気紛れに当てられて自らの身を滅ぼす者もいた。

 彼女が言の葉を紡ぐだけで、まるで歌でも聴いたかのように酔い溺れる者もいた。

 

 届かない。届くはずがない。届くわけがない。

 人間というのは地べたに足をつけて月を見上げるしかない。そこにあると分かっていて手を伸ばし、恋焦がれるように求めても指先に掠ることもなく見上げ続けるしかない。

 月の光によって伸びる自身の影だけが、月から与えられるもの。それだけあれば十分だったのです。本来であれば。

 

 

 

『貴方の子供です。この家の子にしてください』

 

 

 

 だけど手が届いてしまった者がいた。

 月円から欠け落ち、零れ落ちた一粒の流星が、ある男の手に触れてしまったのだ。

 

 当然、周囲から大きな反発があった。穢れた女を一歩たりとも我が血筋に踏み入れさせるなと。

 男はある大企業の資産家だったのだから甘い言葉、抗えない関係で迫り寄って騙そうとする者がいることは当然知っている。過去にもそうやって近寄ってくる女狐がいた経験だってある。

 

 そういう時はいつだって突っぱねた。

 女狐の『嘘』を、自身の誇りと血筋という『本当』で尽くを退け、それでも引かぬ身の程知らずには相応の報いを与えてきた。

 

 今回も真なる言葉を連ねて追い払えばいい。いつも通りに。当然のように。

 だけど男は予感があった。もう彼女の満ち足りた月光の笑みは見れないのだろうと。女の輝きはあと一年も満たないうちに新月のように消え去り、人知れず星々の闇に溶け込んでしまうのだろう。

 

 ならば——男にできるのは、その月が消えうるところを最後まで見届けることだと確信した。

 

 

 

『この子は間違いなく俺の子だ』

 

 

 

 これはそんな『始まり』を紡ぐお話。

 男女と呼ぶにはあまりに歪な関係。それでも確かにそこには『命』があった。

 守り抜きたい命があったから彼は嘘をついた。彼女は嘘を受け入れることで命を守り抜いた。男女としての交わりなどなく、確かにそこにある心の繋がりで男女は命を紡いだ。

 

 人はそれを何と呼ぶのか。この場では無粋なことであろう。

 言えることはたった一つだけ。男は女に惚れていて、女は男のことを信じていた。

 

 ふたりだけの最後を描くためにも、少年少女は演じようとする。見飽きたドラマに全てを乗せて。

 

 

 

 嘘も燃え尽くして、夢にして。

 ぜんぶばらまいて、星にして。

 

 

 

 ——さあ、愛を告げよう。白日の下に。

 ——ファーストキッスは終わらないのだから。

 

 

 

 …………

 ……

 

 

 

「改めまして自己紹介を。私は『白銀かぐや』といいます」

 

「白銀……。あの『白銀製薬』の白銀か?」

 

「ええ。その白銀で大丈夫です」

 

「お姉ちゃん、何その白銀製薬って?」

 

「昔お世話になった製薬工場だよ。片田舎だとこういう融通を聞かせてくれる製薬会社は重宝するんだよ。宮崎は物流においては結構アレだからな」

 

「九州地方だもんね……。飛行機もコストかかるし……悪天候の影響も受けやすいもんね……」

 

「ルビーもそういう世知辛い部分を理解してきたな」

 

「てへへ」とルビーは愛くるしい笑顔を浮かべる。これが自分の顔と瓜二つじゃなければ、素直に可愛いと言えるはずなんだけどなぁ。

 

 なんて呑気に思いつつも、視界の片隅では『白銀かぐや』が驚きを隠せずに瞬きを忘れてるご様子だ。

 これは当然の反応と言えるだろう。この話は僕が医者だった時の話になり、20年近く前にもなる。芸能人とはいえ、年齢的には高校一年の若造である俺が知ってるなんて驚いても無理はない。

 

「……マリンさん。貴方は白銀製薬についてどこまでご存知ですか」

 

「本当簡単なものだよ。ある夫婦が二人三脚で会社経営をしていて、あるミスだかポカだかをやらかして離婚したとかなんとか。それで業績不振になったとかそんな程度だ」

 

 って、俺が研修医として働いてた頃にいた来院してくれた世界的名医『田沼正造』先生が言っていた。

 確か当時は難病患者がいて移動さえもリスクが高いから、医者本人が宮崎に赴くほどだったから印象に残っている。曰く「年頃の恋愛模様は驚きの連続だね。子供も作っちゃうくらい」と遠い目をしていたのを覚えてるくらいだ。思えばこの言葉はアイにもブッ刺さってるな。

 

「……でも白銀製薬って随分前にそれで合併という形でなくなったような……」

 

「まあ、その白銀製薬の関係者ではあります。というか現社長の……」

 

 そこで彼女は口を酸っぱくして言い淀んでしまう。

 言いたくないというよりかは、口にするには勇気や覚悟がいるという感じの間だ。いったいどんな関係者だというのか。

 

「……妻ですっ!!」

 

「妻ぁ!?」

 

「おーっ! お嫁さんっ!! 女子の理想だねぇ!!」

 

 突然のカミングアウトにビックリするしかない。あとそこで乙女心を全開にするなルビー。今世は男だろ。

 今はそういう差別は良くないという施策があるのは知ってはいるが、自分の顔でときめいた顔を見るのは色々と辛いんだよ。

 

「……というかちょっと待て。確か僕の記憶に間違いがなければ、白銀製薬は『四宮財閥に吸収された』って経緯だったはず。ということは、君はその社長に見合い結婚的な感じで……? いやでも年齢的には許嫁による先約……?」

 

「ち、違いますっ! 私が白銀を名乗ってるのはまた別口です! 確かに四宮財閥が白銀製薬に迷惑をかけたのは事実ではありますけどっ!! 純然なお付き合いの下、正式に愛を結んで育んでおります!」

 

「すごい小っ恥ずかしいこと言ってるよ、お姉ちゃん! こっちまで恥ずかしくなるくらい!」

 

「まあそれならそれでいいんだけど……」

 

 四宮は古い家系だから、そういう江戸時代あたりに残ってそうな慣習の下に政略結婚した被害者だと思ってしまった。望まない結婚とか家庭が壊れる大きな要因だからな。

 

「というか『白銀』に関しては大事なことではありますけど、今はここに来たのはビジネスですっ! 今は資産家の一柱である『四宮かぐや』としてのお話になります!」

 

「そういえば挨拶周りだったな。母さんも呼ぼうか」

 

「いえ。星野アイさんは菓子折りと共に済ませております。できれは『黒川あかね』さんと『有馬かな』さんとも顔合わせをしたいのですが、今はご一緒でしょうか?」

 

「ナチュラルに私省かれてる……」

 

「もちろんルビーさんにも挨拶しますよ。ところで先ほどのカメラマンとかミドジャンについて私はご存知ないのですが……?」

 

「いやいや! あれは私の勘違いというか何というか……そう! ちょっと私って記憶に混乱を来すタイプのアレだから!」

 

「そのまま雑談よろしく。あかねと有馬を呼んでくる」

 

「オッケー。頼りになるねぇ、お姉ちゃんは」

 

 まあ割と洒落にならない言い分だな、記憶の混濁については。半分で事実ではあるのだから。

 

 なんてことを頭の片隅で思いながらも、かぐやさんの希望に沿ってあかねと有馬のところに行き、俺が一言「二人にも挨拶したいってさ」と言うと、二人は女子特有の「あー」という興味あるのかないのか、それとも考えてるのか考えてないのかよく分からない相槌を打つ。

 

 しばらくすると「しょうがないか」と言いたげに重い腰を上げると、服のシワを叩いて玄関口まで一緒に赴いてくれた。やっぱこの二人、仲悪いけど波長合うところは合うだろう。

 

「どうも初めまして。この場では『四宮かぐや』としてご挨拶をさせていただきます」

 

「……四宮ねぇ。まあ一応初めましてかしら。私は有馬かな。今後ともよろしくね」

 

「かなちゃん、知り合いなの?」

 

「ウチの事務所の所長さんとの付き合いで名前だけ知ってるのよ。それに私だって元々ルビーと一緒にいたから、名前自体は聞き覚えあるし」

 

「ミドジャンのこと?」

 

「ミドジャンのこと」

 

「相変わらずミドジャンでのルビーさんの仕事と私が結びつかないのですが……」

 

「気にしないでください。自己紹介が遅れましたけど私は黒川あかね。アクアくんと一緒に挨拶があるって聞いていますけど……」

 

「苺プロから既に聞いてると思いますが、あなた方4名には『あるオファー』があったと思います。その件でご挨拶に来ています」

 

「あったっけ、お姉ちゃん」

 

「そのための打ち合わせ前の挨拶だろ。覚えてないのか」

 

「私とかなちゃんには来てるよね」

 

「そうね。『ドラマの撮影』の打ち合わせね」

 

「知らないんだけど。初めて聞いた」

 

(((アクア(俺)の顔でアホやってると可愛い(嫌だ)なぁ)))

 

 何故か俺とあかねと有馬でとんでもないすれ違いを感じた気がする。

 

「ええ。その『ドラマの撮影』は四人全てが出演することになってます」

 

 ルビーが「本当に知らない」と驚愕の表情を見せているが、これでよく『アクアの代わりになる』とか言えてたな。俺だったらこんな顔しないぞ。

 やっぱりルビーにそういうの向いてなかったんだと思うと、あの宮崎の一件で互いに心の膿を抉り出したのは思い返せば良かったことなんだと改めて実感してしまう。おかげで俺の醜態がアイのアカウントでばら撒かれてることにはなっているが、それは目を瞑っておく。

 

「主演はそこにいる『星野マリン』さんと『黒川あかね』さん——。二人には『ある男女の営み』を演じていただきたいのです」

 

「夫婦関係ってこと? だったら先輩とあかねさんの方が適役じゃない? わざわざ世論に逆らってカップリングを作るなんて、色々と面倒なこと起きるよ。CP論争って不毛で汚くて醜いから」

 

 言い方をもう少し柔らかくしろ、と言いたいところだがこういう面があるのがルビーというものだ。ただのアンチに粘着質に絡むくらいには口汚いところがあることを久しぶりに思い出したぞ。

 

「…………それこそ打ち合わせで話すべきことでしょう。当日、私が案内をさせて『彼』の前にお連れしますので」

 

 そこでかぐやさんは一礼をして星野家から去っていった。

 天に座す満月へと向かっていくような気品と儚さと満ちた背中は、それこそ竹取物語に出てくる月に帰る『かぐや姫』のようであった。

 

 

 

 …………

 ……

 

 

 

 後日、とある会員制のレストランの個室にて。

 俺たち四人とかぐやさんを入れた合計五人は、ドレスコードを意識した上質なスーツやらドレスやらを纏って入店する。ヒールを履いてるのもあって歩きづらく、ルビーにエスコートされるむず痒さが凄いのだが慣れていないものは慣れていないのだから仕方ない。

 有馬からは「顔だけはルビーとアイだから似合ってるわね」と褒めながらも俺がドレスを着るという構図に笑っていたのが嫌に印象的で少しムカつく。そしてあかねからの「ヒールは元々男性が履くものだったから気にしなくていいよ」というフォローで空しくなったのは内緒だ。

 

「お連れしましたよ、社長(・・)

 

「悪いな、かぐや。本当は俺が出向きたかったが、年度末の法人税とかの金銭周りで忙しくてな。銀行と信用金庫の違いとかも見せつけられて、改めて石上には助けられたと実感するよ」

 

「石上くん会計として頑張ってくれましたからね。私と社長の卒業後は会計技術を継承するために、ExcelとPowerPointで運用書を作るくらいには」

 

「石上様々だな。ところでいつも言ってるが、人前で社長(・・)と呼ぶな。いつも通り名前で呼べばいいだろう。俺とお前が夫婦関係なのは周知の事実なんだからな」

 

「……それもいつも言ってますが、人前だからこそ社長の名前呼びはしません。社長の名前を呼ぶのプライベートだけにしたいので」

 

「毎回思うが、右手で左頬を触るのはなんなんだ?」

 

「お気にせず。仕事とプライベートは分けたい主義なので」

 

 かぐやさんと楽しそうに話す目の前の男性は非常に目つきが悪い。お世辞にも愛想や愛嬌が良いとは一見ではいえない。

 だけど怖いという雰囲気は微塵にも感じない。あの目つきの悪さは忙しさから長期的な寝不足だろうか。目の下には疲労が抜けきれず、まるで俺が医者の時にいた同僚みたいに涙袋という言い訳も効かないクマが深く染み込んでいた。

 御行(みゆき)と呼ばれた彼は若干髪質が荒れた金色の前髪を整えると「座りたまえ」と一言案内され、俺たちは彼が座る席の向かい側へと腰を置いた。

 

「では自己紹介をさせてもらう。俺は『白銀製薬』の現社長『白銀御行(しろがねみゆき)』という。まだまだ小さな会社だが今後とも何かあればご贔屓に」

 

「アクアくん、どうしよう。こういう人って業界人的には信じていいのかな」

 

「イケイケの若社長とか借金と隣り合わせのケースとか結構あるからな。何とも言えない」

 

「番組の貢献よりも、スポンサーの宣伝的な意味かぁ……今日あまみたいな裏がある感じの」

 

「そうね。赤字覚悟でネットドラマやバラエティに予算出して、芸能人と関係深めるやつとかも結構いるもの。そういう類の可能性が高いわね」

 

「ちょっと待てよ! 有馬は俺のこと知ってるだろっ!? 大仏からの経由とはいえ三度は話しているだろう!?」

 

「そのうち二回は電話越しの簡単な打ち合わせで、実際に会った一回もちょっとだけでしょうが。白銀さんがそういう胡散くらい感じの立場は知らなかったわよ」

 

「早速四面楚歌だぞ。呼んだ側のこっちがアウェイってどういうことなんだよ!?」

 

「ふふっ。相変わらずお可愛いこと」

 

「ええい、こうなったら単刀直入に行こうか。借金まみれの若社長だという先入観が植え付けられる前にな」

 

 白銀社長はそう言いながら席の陰からある物を取り出した。

 それは黒鉄色にコーティングされた防水性と耐久性に優れたアタッシュケースだ。大きさとしてはそれなりであり、それこそ金融機関がATMで何かしらの作業をする際に見るものと同じくらいだ。

 

 そう——『金融機関』が使いそうな入れ物なのだ。

 だとすれば中にあるのも当然『金銭』に値する物だ。そしてその予感は見事に的中することになる。

 

 

 

「今ここに『2億』ある。もちろんすべて本物の現金だ」

 

 

 

 大金だ——。札束が一つ二つで済む話じゃない。

 札束がブロック感覚で積み重なっている。多すぎるせいで逆に希少価値がないんじゃないかと麻痺してしまうほどに。だけど今そこにある大金は紛れもなく事実だ。

 

 2億? これが2億円だと? 改めて目にすると目眩でも起こしてしまいそうだ。

 俺が映画制作をしようとどうしようか年単位でどれぐらい途方もない時間を注ぐか頭を抱えてる中、この白銀御行という男は片手間に『2億』という大金を叩きつけてきやがった。

 

 

 

 しかし——。それは序の口でしかなかった。

 

 

 

「驚くなよ。さらに2億、そして2億、ダメ押しに2億——!!」

 

 積み重なる。積み重なる。驚きと困惑と興奮が積み重なっていく。

 言葉通りに並ぶ四つのアタッシュケース。同様に収められるのは2億という大金だった。

 

「ここまでが『四宮』の長男、次男、三男——。そして俺の最愛の妻である『四宮かぐや』としての合計8億円だ」

 

「四宮の長男から三男まで……?」

 

 驚きと困惑の連続に脳が追いつかない。この男はいったい何を言っているんだ。

 というか何で四宮の兄弟達が顔も見せず、この白銀御行という男にこんな大金を託しているというんだ。

 

 何が何だか分からない。理解が追いつかない。

 理解が追いつかないからこそ、これから行う白銀御行の最後の一手にも、ただそういう事実だけを受け入れて眺めるしかなかった。

 

 

 

「そしてこれで——!!」

 

 

 

 最後に積み重ねられたアタッシュケース。それも当然『2億』だった。

 

 

 

「俺個人、白銀御行としての分も含んだ『10億円』を成功報酬としてお前たちに資金援助をしたいんだ」

 

「……10億」

 

 

 

 改めて見直しても間違いなくすべて現金だ。触らずとも見てわかる。何年この業界でこういう類の物を見てきたと思っている。

 おかげで、わざわざ監視カメラも何もない個人情報の秘匿については厳重な会員制レストランを選んだ理由がやっとわかった。この大金を見せるには人前や声が聞こえるような場所ではダメだ。

 

 四宮を名乗る女性がいるのもそうであるが、こんな大金をこんな無防備で見せるには相応の場所を確保してないと難しい。

 

 そして同様にこれは信頼の重さを形にしたものである。白銀夫妻が、俺達四人に対する。

 金は人を容易に狂わせる。もしも俺達四人が先見性のない自分の利益だけを求める守銭奴だとしたら、四体二という数の暴力で強奪することを躊躇なく行っただろう。按分するだけで2億5000万という生涯年収に一瞬で手が届いてしまうのだから。

 

 だけど白銀夫妻は俺達四人はその類を行使しないという確信があるからこそ、こんな最低限のセキュリティだけで10億という資金を見せてくれたんだ。

 

 

 

「こちらで色々と調べさせてもらった。身辺調査とかは藤原と伊井野の得意分野だからな」

 

「伊井野、藤原……。伊井野は苺プロがお抱えになっている『伊井野ミコ弁護士』で、藤原は生放送でいた『藤原千花』さんってことか」

 

「ああ。特に伊井野からは事実確認でお世話になった。マリン、お前は映画を作る気なんだろう。どんな作品かまでかは知らないが、それが告発とか、懺悔とか、そういう類の物だということは理解している」

 

「……ああ。それについては間違いはない」

 

「そんなお前だからこそ、この10億を託したい。今回話す『ドラマの打ち合わせ』で、俺達が望む作品を手掛けることができたのなら、この金を星野アクアマリンに融資すると誓おう」

 

 

 

 冗談でも嘘でもない。鋭い目付きが、より一層眉を細めて獣でも食い殺さんと、こちらの思いへと食らいついてくる。

 

 

 

「頼むっ! この通りだ!!」

 

「私からもお願いします。これは『白銀かぐや』としてのお願いです」

 

 

 

 挙句には頭さえも下げてきた。白銀夫妻は深々と、縋るように、祈るように、あるいは拝むように。

 そこまでする必要はどこにもない。この10億という金で、既に白銀御行の誠意と信頼と覚悟は証明しているというのに。

 

 ……ここまでされたら断れる理由がない。

 元々ビジネスである以上、よっぽど悪どいことじゃなければ断る気がなかったとはいえ、このレベルになると逆に申し訳なさを感じてしまいそうだ。

 

 だから聞くしかない。言葉を紡いで、白銀夫妻が手がけて欲しいドラマというものを。

 

 

 

「……どんなドラマを作って欲しいんですか」

 

「決まっている——。お前に俺たちが原案を作った『四宮家の告白』を手がけて欲しいんだ」

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