ルーシィは
「はぁ」
そんな彼女にミラが話しかける。
「あら?元気ないわねルーシィ、どうしたの?」
「お金ない......」
「お嬢様のセリフとは思えないわよ」
「違います!!!あたし家のお金なんて一銭も持ってきてないんですよ!!!」
ルーシィは頬杖をついて話し出す。
「高額の仕事行ってもナツは火吐きまくるわ、グレイは凍らせまくるわ、エルザは...ああーーーっ!!特にエルザがーーー!!!」
「ちょっとルーシィ、大丈夫?...」
「とにかく...皆がいろんなもの壊しちゃうから、報酬額減らされちゃうしさー」
そう言って振り返ったルーシィの視線の先では、ナツとグレイがどこからか持ってきたビリヤードで遊んでいた。しかしその遊び方は、球を付いて破壊した数を競うというかなり間違ったものだった。
「あの通り、物を壊す事に悦を感じてるんじゃないかしら」
「そんな事ないと思うけどナー」
「はぁ...うちのチームはこんななのに...」
ルーシィが向けた目線の先には、タイガ達トライスクワッドの三人が自作のカードでポーカーのような遊びをしていた。
まずはツバサが手札を出す。
「ボクはコレ...『ボブ』『ゴールドマイン』『ガジル』『エリゴール』『ナツ』...ギルドマスターと
続いてサクラが
「甘いわねぇ...『バルゴ』『アクエリアス』『キャンサー』『グレイ』『リオン』...黄道十二門と造形魔導士のフルハウス」
そしてタイガは
「残念だったな...『エルザ』『ラクサス』『ミストガン』『ギルダーツ』そして俺『タイガ』...
「「......負けたーーー!!!」」
「うし!!次の仕事の打ち上げはお前ら持ちな」
「どういうルールよ...アレ」
よく分からない遊びにルーシィは呆れていた。
「あーん!!このままじゃ、今月の家賃払えないよぉーーっ」
「じゃあ、とっておきの仕事紹介しちゃおうかなー。すっごくルーシィ向きだし、何かが壊れる心配もないやつ♡」
「え?」
そうしてルーシィ達はマグノリアより商業が盛んな大きな街オニバスにやって来た。トライスクワッドの三人も今回は手伝いとして一緒に来ていた。
「列車には、もう二度と...乗ら...うぷ」
「ナツ、着いたよしっかりして」
ナツがいつものごとく乗り物酔いでダウンし、ハッピーが介抱する。
「なるほど...客足の遠のいている劇場をオレたちの魔法を使って盛り上げてくれって話なんだな」
「光に炎、氷...劇の演出には丁度良いかもな」
「そーゆー事♡面白そうでしょ?」
「しかしだな...コホン...あー、あー、あー」
「あたしたちがお芝居する訳じゃないから...てか発声練習!!?」
仕事の内容は舞台の演出のはずだが、エルザは出演する気なのか発声練習を始める。
「あたしたちの仕事はあくまで演出。ナツが火出したり、タイガが光を出したり、あたしがリラの詩で情感出したり、素敵な舞台になりそうじゃない♡...小説書いてればいつか舞台化するもんね!!うん!!今のうちに演出の勉強しとくのも悪くないわ」
そして一行は大きな劇場へと到着した。
「おお!」
「立派なトコだね」
すると建物の柱から一人の男がひょっこりと顔を出す。
「あのぉー、
彼こそが今回の依頼人、シェラザード劇団座長のラビアンである。
「はい!!演出ならあたしたちにまかせてください!!」
「それがですねぇ...ちょっと困ったことになってしまいまして...」
「?」
ルーシィ達は建物の中に入り話を聞くと
「「えーーー!!?役者が全員逃げ出したぁ!!?」」
ルーシィとハッピーが驚く。
「ハイ...ありがとうございます」
「何が!!?」
「公演する舞台が不評につぐ不評...やがては役者たちも私の劇に出る事を恥に思う始末......脱サラしてこの道に飛び込んだのが30年前...夢を追う私に妻は愛想をつかし出ていきました...私に残された道は、もうこれしかないというのにっ!!!本当にありがとうございます!!!」
「礼を言うトコ間違ってるよ」
どうやら「ありがとうございます」は彼の口癖のようだが、どうも使いどころが間違ってることをタイガが指摘する。
「そういう訳で、せっかく来てくださったのですが、舞台は中止なのです。ありがとうございます」
「フン...何かと思えばそんな事か......役者ならここにいるではないか」
なんとエルザは舞台に出る気でいた。彼女の周りは何故かキラキラ輝いている。
「えーーー!!?」
「か...輝いてる!!!」
「言っとくけど、俺は何もしてねえぞ...」
「発声練習しておいて正解だったな」
(そんなに役者やってみたかったのか...)
「みなさん...」
「そうね...なんか面白そうかも」
「火吐く野菜と火吐く果物!!!オレはどっちをやりゃいいんだ!!?」
「そんな役絶対ないよ」
「お前がやるなら、燃える木だろうな」
「サクラならお姫様かもねぇ、妖精戦姫だけに」
「いやいや、あたしがお姫様なんてそんな...」
「アンタの夢はこんなトコロじゃ終わらせねえよ」
ルーシィ達のその言葉にラビアンは目に涙を浮かべる......が
「まあ...やらせてやってもいいかな...チッ...素人が...」
その涙はすぐに引っ込み、聞こえるように小言を言う
「そこは「ありがとう」って言わねえんだ」
「帰っていいかな?こんな態度なら俺達帰っていいかな?」
グレイとタイガがそう言っている間、例の舞台の台本を読んでみたルーシィは
「それにしてもひどい台本ね......」
「ハイ...ありがとうございます」
そこは「ありがとう」って言うんかい
本番まで一週間、彼等は稽古に明け暮れたり、舞台のセットを作ったり、ビラをまいたりで大忙し。しかし、なんやかんや皆乗り気で楽しそうだった。
「応援団の方がいらしてますよ、ありがとうございます」
「「「「「「「「応援団?」」」」」」」」
「よ!!」
応援団としてやって来たのは、マカロフとミラ、評議員のヤジマ、マスター・ボブにマスター・ゴールドマイン、ガルナ島の面々等、ナツ達やタイガ達に関わりのある人達、他にもトライスクワッドが初仕事で訪れた町の町長父子と先日の迷子騒動で出会った赤ちゃんのユリとその両親まで来ていた。
それらの顔ぶれにルーシィは
「ツッコミどころ多すぎ!!!」
「そろそろ本番ね頑張って!!」
「芝居なんざ、久しぶりじゃのぉ~」
「招待感謝スるよマー坊」
「おひさ~、元気してた?」
「冷やかしに来てやったぜ」
ミラ、マカロフ、ヤジマ、ボブ、ゴールドマインはそれぞれ激励?を送る。
「てか何でアンタがいんのよ?偽サラマンダー」
「久しぶりだなマイケル」
「ボラっすよ。アニキの熱い拳に心打たれて、もう強引なグラビアアイドルのスカウトはやめたんすよ」
「え?アレってそんな話だったの?」
「え?何だと思ってたんすか?」
「いや...その...」
「ルーシィがエロいこと考えた」
ナツやルーシィと会話しているボラという男は二人が初めて出会ったときに一悶着あったのだが詳しくは原作漫画やアニメの第一話で。
「君はガルナ島の」
「ルルです。その節はお世話になりました」
「で、いつになったら月を壊してくれるのですかな?」
「えっと...ツッコんだ方がいいのかしらねぇ」
本来の悪魔の姿に戻ったガルナ島の村長がルーシィにすごむ。
「本番楽しみにしてます」
「お兄ちゃん達が劇をやるって聞いて応援に来たよ!!」
「ありがとう!楽しみにしてろよ」
タイガは町長の息子と拳を合わせた。
ツバサはゆりかごに乗っている赤ちゃんに話しかける。
「ユリちゃん!!久しぶり!!!」
「ばーーー!!!」
「この子、サクラさんに会えるって聞いてから今日を楽しみにしてたんですよ」
「そうなんですね。客席で見ててね、ユリ」
「だーーー!!!」
サクラとツバサはそれぞれユリの小さい手に握手した。
「本番前にどっと疲れが...」
個性的な応援団にルーシィはまだ本番前なのに疲れだした。
そして迎えた本番当日
「おおお...こんなに客が入るなんて初めてですよ。ありがとうございます」
「キャーーー♪リラもこんな大勢の前で歌うの初めて~」
「あとは成功させるだけね」
舞台袖から見ていたラビアンは歓喜し、ルーシィの呼び出した琴座の星霊リラも張り切っていた。そして幕が上がる。
「遠い~遠い~昔の事~♪西国の王子は敵国の姫に恋をした~♪」
【なんてキレイな声なんだ】
【うっとりするわ~】
観客達はリラの歌声にうっとりした。ちなみに解りやすいようにモブ観客のセリフは【】で表現します。
「西国の王子は~♪姫を助けに~死の山へ~♪」
【え...!!?姫...なんか捕まってたの!!?】
西国の王子として登場したのはエルザだった。その凜々しい姿に観客達は一瞬本物の王子かと思ったが
「わ...わ...わわ...わ...我が名はフレデリック~。ひ...姫...た......たた...たす...助けに...ました!!」
【何だアレ!!!ガチガチじゃないかー】
エルザの演技は緊張ゆえか超ガチガチだった。発声練習までして張り切っていたのに、いざ本番となるとコレである。するとドレスを着て縛られたルーシィが吊されて降りてきた。
「ああ......助けてくださいフレデリック様。私は
【あの...って言われても...誰!!?】
すると今度はグレイが出てきた。
「我が名はジュリオス。姫を返してほしくば、私と勝負したまえ」
【おまえも誰だよっ!!!セインハルトはどうなったんだーー!!?】
「くらえ氷の剣!!!」
グレイは氷の剣を構える。
【すげー】
【どうやったんだーー?】
「な...な...なんの...私...に...は...10の剣が...ぁる」
エルザも対抗して魔法で剣を出す。
「ぐわー」
【なんか知らねーけど弱ーーーっ!!!】
「フレデリック様、ありがとうございます」
「ヤ...ヤンデリカ姫...たくさん...子供をつくりましょう...30人くらい」
【気が早ぇよフレデリック!!!】
すると倒れたグレイが
「まだ終わってないぞ...私には最強の下僕、ジュリオス四天王がいる!!」
【ボスもうやられただろ!?】
【四天王出てくるの遅くね?】
「やあ...お嬢さん」
「ひぃ!!」
黒いスーツを着たツバサがルーシィの背後からアゴを肩に乗せるいわゆる「闇の仕草」を行い登場した。
「良ければオレと一緒に夜明けのコーヒーでもいかがかな?」
すると次にスーツを着てステッキを持ったサクラが登場した。
「あ~~!だ~~~!」
「そう、サクラお姉ちゃんよ~」
サクラの登場にユリは大喜びだ。
「まったく...相変わらずの節操なし、そんなだからいつまでもライバルに勝てないのだよ」
「なんだと」
ツバサはルーシィの肩から下りてサクラと睨み合う。
「君は下がっていたまえ、あの王子にエンドマークを打つのは私だ」
「お前さんが下がれよ、なんならあの王子の前にオレの蛇心剣の錆になるか?」
今度は片側が白、片側が黒という変わった服を着て風船を持ったタイガが登場した。そして彼は風船を放し
「ケンカするなら二人とも下がりなよ、王子の始末は四天王最強の私に任せて...」
その一言に二人はケンカを止めタイガの方を向く。
「聞き捨てならないなぁ、こんな小説家気取りよりはオレの方が強いと思うが...」
「はっ、自分は影でこそこそやってる白黒野郎が最強とは笑わせる」
「それを言うなら何度もライバルに負けてるこじらせ剣士こそ最強とはほど遠いねぇ」
すると三人はおでこを擦り合わせて激しく睨み合う。ちなみにツバサは
「どうやらあの王子の前に始末するのは君たち二人だねぇ」
「いいだろう、この際誰が最強かはっきりさせようか」
「まあ、勝つのはオレだけどなぁ」
三人はおでこを擦り合わせたまま舞台袖へと消えていった。
【四天王仲悪いのか?】
「トレラアルティガイザー!!!」
「ペダニウム・メテオ!!!」
「蛇心剣抜刀斬!!!」
ドカーーン!!!
「やっぱトライスクワッド...カッコイイーー!!」
町長の息子は以前自分を助けてくれたトライスクワッドの演技に興奮して目をキラキラ輝かせていた。
グレイはふらつきながらも立ち上がり
「喜ぶのはまだ早い!!!いでよ!!!四天王最弱にして、我が最強の下僕のドラゴンよ!!!」
【最強?最弱?どっちだよ!?】
舞台の背景が左右に別れ、奥から現れたのは
「やっと出番か!!ぐぉがぁあっ!!がおおぉ!!!」
大きなドラゴンの着ぐるみを着て、口から火を吐きまくるナツだった。ちなみに黒子の格好をしたハッピーが吊り上げて運んでいるため、まるで浮かんでいるような演出だった。
【オオオオオ】
「うんうん」
観客の反応にラビアンは喜ぶ。
「オレ様は全てを破壊するドラゴンだぁ!!!」
そこへ舞台袖に下がっていたタイガが現れ
「待っていたよ!!!...我が友よ...」
【友達!?...どんな展開?】
「こうなったら手を組むしかない」
「オ...オウ...それは...たのも...しい」
何故か敵同士であるハズのグレイとエルザが共にナツと戦う展開となった。
【おまえが呼んだんだろーが!!!どういう展開だぁー!!!】
「私があいつを足止めします!!」
【オイオイ...何言ってんだ姫ー!!!】
姫であるルーシィまで参戦することになり、観客は困惑する。
「二人は逃げてください!!」
「オウ」
「た...助かったぞー」
【逃げるんかいーーーっ!!!】
【おい...コレ...ひどくねーか?】
【ハンパじゃねえ...】
「着ぐるみの分...重いなぁ......」
ハッピーが着ぐるみの重さに疲れてくると
「あ」
「が!!?」
ナツを吊り上げていたロープを放してしまう。
ズシィン
「!!!」
落下したナツは舞台のセットの一部を壊してしまった。
そして
ボォ
ナツの口から出ていた炎が、ルーシィの衣装に燃え移った。
「きゃあああーー!!!グレイ助けてーーー!!!氷!!!氷!!!」
「おし!!アイスメイク...ぶごっ」
スパパパパッ
「ひぇあーーーっ!!!」
エルザはグレイを蹴り飛ばし火の付いたルーシィの衣装を切り刻み、自分のマントをかぶせた。
「姫...だ...だだ...大丈夫...です...カナ」
「ヘタなくせに役に入りすぎーー!!!」
「痛ぇええーーーっ!!!」
起き上がったナツが口から炎を吐いて舞台を燃やしだした。
「よさねえかナツー!!!」
カキーーン
「ぎゃあああ」
「こ...こうな...タラ...ぜ...ぜぜ...全員成敗いたす!!!」
「もうめちゃくちゃーーーっ!!!」
ルーシィがそう叫んだ瞬間
「なら...オレ達も参戦といこう...」
「我々の力を見せてつけてやろうか...」
「これでエンドマークだ!!」
舞台袖からツバサ、タイガ、サクラの三人も飛び出し、舞台上はまさに大乱戦となった。
「しかも...すごくやな予感...」
ガラララーン
ルーシィの予感通り、劇場は舞台と観客席だけを残し崩壊した。
「やっぱりーーー!!!」
「あ~らら~」
「何でこうなるんじゃ」
「マー坊...
「あらあら」
「月の呪いですじゃ~~!!!」
【あははは】
【いいぞーっ】
【ブラボー!!】
【あははっ!!!】
【こんなの見た事ねぇー】
ルーシィの心配とは裏腹に観客達には大ウケだった。舞台の上ではすでにグレイが戦闘不能になり、ナツを振り回すエルザがトライスクワッドと戦っていた。その様子を見てルーシィも笑顔になる。
「すばらしーい!!!」
ラビアンは演劇のウケの良さに大喜びだった。
それから一週間後
「げはははっ!!!まさかこんなに大ヒットするとはよぉ。大根役者のくせしてやるじゃねーか」
どうやらルーシィ達が出演した舞台「フレデリックとヤンデリカ」は空前の大ヒットだったようだ。そしてこの日の公演のチケットも完売した。
「グズがぁ!!!とっとと準備せんか!!!今日も始まるぜ!!!」
「オイ...いい加減報酬よこせや」
「一日3公演はキチすぎんぞ......」
「キャラ変わってるし...」
ナツ達は連日の公演に疲れ切っていた。
「もうコイツらとは仕事しねぇ...」
「「そうしよう...」」
タイガ達は疲れ切った顔でそう決めた。
「あー、あー、あー」
エルザはまたも発声練習している。本番でのことを覚えてないのだろうか。
「はやく帰りたい......」
ルーシィ達が帰れたのはまだまだ数日先のことだった。
という訳で3人が演じた役は、ツバサは「ウルトラマンオーブ」よりジャグラスジャグラーを、サクラは「ウルトラマンジード」より伏井出ケイを、タイガは「ウルトラマンタイガ」より霧崎をそれぞれモデルにしてみました。
分かりやすく書けてましたでしょうか?
次回はロキの話、ルーシィとサクラが活躍するかも。