タイガ、サクラ、ツバサの三人は動き出したニルヴァーナを追っていた。時間はすでに夜になっていた。
「どこに向かってるんだろ?」
「さあな、でも止めなきゃいけないのは確かだ」
ツバサを頭に乗せたタイガがそう言うと、三人は7本ある内の一番後ろの足に近づいた。
「でも、どうやってアレに乗るの?足に乗ろうにもすぐに地面を離れちゃうし、ツバサも二人を同時に運んでは飛べないし...」
サクラの疑問にタイガはニッと笑って答える。
「サクラ...前に教えた壁歩きは覚えてるよな?」
「え?」
時はアカネビーチから帰って少し後、タイガはマグノリアの外れの森にサクラとツバサを呼び出した。
「こんな所に呼び出してなんなの?タイガ」
人型に変身したツバサが聞くと
「二人に魔力の使い方の修行をさせようと思ってな」
「何をやるの?」
サクラの問いにタイガが答えたのは
「木登り」
「「......はあ?」」
「ただの木登りじゃない。手を使わないで登るんだ」
百聞は一見にしかずといった感じでタイガは実際にやって見せた。彼は腕を組んだまま近くにあった木の側面を垂直に歩き出した。
「すご~い!!」
「ウソ!?全然落ちない」
やがてタイガは木の枝の下に逆さまに立つ。
「魔力を足の裏に集中させろ。ただし、魔力量が少なすぎると吸着力が失われずり落ちるし、逆に多すぎると木の表面や壁を弾いてしまう。自分の体重に合わせた魔力量を維持するんだ」
そう言ってタイガは木から下りる。
「これができるようになれば、ツバサやハッピーがいなくても壁を走って高い所へ行ける。それに、ジャンプの瞬間に足に魔力を集めれば跳躍力を上げられるし、パンチの瞬間に腕に魔力を集めれば攻撃力を上げられる。そのコツを掴むための修行だ」
そしてサクラとツバサは修行によって壁歩きを憶えた。その後も水面を歩く修行も行った。こちらは魔力を足から常に放出しなければいけない為、修得はそれなりに苦労した。
そして時は現在。
「覚えてるけど、それが何?」
するとタイガはサクラを脇に抱え、足に魔力を溜める。
「え!?ちょ、タイガ!?」
「跳ぶぞ!!」
タイガは高く跳び、ニルヴァーナの足に着地した。そしてサクラを脇から下ろし、二人は壁歩きの要領で中央にある街のような所に向かって足の上を走り出す。するとニルヴァーナは再び歩き出し、タイガは突然フラつく。
「う...」
「タイガ?」
「そういえば...これ...乗り物...」
「ちょっと!!!しっかりしてー!!!」
「動いてるけど、乗り物じゃないから!!!そう思い込んで!!!」
サクラとツバサがそう言うも、タイガの顔色は悪くなる。
「キ...キモチ悪い...」
「こ、これタコの足だから!!!生き物の上なら平気でしょ!!!」
「いや...タコは森にいないし...そもそもコイツの足7本だし...」
「「何そのこだわり!!?」」
タイガの妙なこだわりにサクラとツバサのツッコミが飛ぶと、タイガの足取りはどんどん遅くなる。
「う...」
「はぁ...しょうがないなぁ」
ツバサは
「!?」
「タイガ...久しぶりにボクと夜空の散歩でもどう?」
「ああ...付き合うぜ、相棒!」
そしてタイガはサクラに言う。
「サクラ!お前はそのまま行け!!エルザが近くにいる。あいつと合流するんだ」
「分かったわ!!」
サクラは言われたとおり中央に向かって走って行った。それを見送ったタイガとツバサは
「大丈夫かな?サクラ...」
「あいつなら大丈夫だ...それよりツバサ、あっちへ飛んでくれ」
タイガが指さした方を見ると、空中で炎が動いてるのが見えた。おそらくハッピーに運ばれたナツが飛びながら戦っているのだろう。炎が見えた方へとタイガとツバサは向かう。
タイガとツバサが向かってる所では、ナツとハッピーが
「ど...毒を食べてるの...かなぁ」
「か...体に悪そうだな」
すると毒霧を食べ終えたコブラが攻撃しようとする。
「毒竜の...」
「ブレス!!?」
「マズイよ!!!」
「咆哮!!!」
「ぐああああああ」
「うわああああああ」
ナツとハッピーはコブラの口から放たれた毒のブレスに包まれる。ナツを掴んで飛んでいたハッピーがガクッと少し落ちる。
「どうしたハッピー!!!」
ハッピーはふらふらと高度が下がっていく。
「しっかりしろって!!!オイ!!!」
「オイラ...なんだか...体がうまく、動かなくて...」
「気にすんなっ!!!オレもだから!!」
「気にしよーよ、そこは!!」
「毒竜のブレスはウイルスを体に染みこませる。そして徐々に体の自由とその命を奪う」
コブラの言うようにナツの体力は徐々に奪われていく。
「うぐぐ...くうう...」
「このブレスをくらった瞬間、てめえらの敗北は決まって...!!!」
コブラの言葉の途中で何かに気付き体を屈める。ツバサに運ばれていたタイガが光を纏った蹴りをくらわせようとするが振り返ることなく避けられた。
「てめえの動きは聴こえてた」
「タイガ!!」「ツバサ!!」
攻撃を避けられたタイガはナツの隣に並ぶ。
「どうしたの?ナツ...顔色悪いよ」
「どこぞの
タイガがそんな冗談を言うが、すぐにその顔色の理由を察する。
「毒か...それにこの魔力、こいつ
「よく解ったな...しかし
「旧世代だぁ?」
「オレは自らの体内に竜の
「じっちゃんが言ってたアレか」
「ラクサスと同じだ!!!こいつ...本物の
ハッピーの発言にコブラは
「本物?元々
「イグニールはいるっての!!!」
(もしかしたら
ドラゴンの存在を否定されたナツは叫ぶが、タイガは冷静に何かを考えていた。
「いねえよ!!!
「ぐぅ...体が...」
そう言いながらコブラが迫ってくるが、ナツは全身に毒が回ってきたのか、動けなくなっていた。するとタイガが
ひょい
ナツを掴んで飛んでいたハッピーを引き剥がす。
「「え?」」
「!?」
突然のタイガの行動にナツとハッピーだけでなく迫っていたコブラも止まって驚く。
「「交代だ」」
タイガとツバサは笑ってそう告げると、ナツはニルヴァーナの方へと落ちていった。
「あああぁぁーーー」
「ナツーーー」
叫ぶハッピーにタイガは言う。
「ハッピー、毒でつらいだろうけど、ウェンディを探せ」
「?」
「この街っぽい所のどこかにいるよ。コイツの相手はボクらがするから」
「早くナツのトコへ行ってやれ。今のアイツは毒+乗り物でまさに無能だからな」
「タイガとツバサってたまに酷いよね...でも、ありがとう...実はオイラ、高く飛ぶの限界だったんだぁ...」
ハッピーはフラフラとしながら、ナツの落ちた方へと飛んでいった。そしてタイガは改めてコブラを見る。
「待たせたな...戦闘再開だ」
「フッ...」
コブラが笑ったその瞬間、二人は前に飛び出す。
「「はあーーっ!!!」」
そして互いに光や毒を纏った拳をぶつける。すかさずタイガは蹴りを放つが、コブラは難なく避ける。その後もタイガの攻撃をコブラは全て避け、二人は距離を取る。
「コイツ、何で...」
「ボクらの動きが分かるんだ?...か?」
「「!?」」
ツバサの考えを言い当てたコブラの発言に、タイガとツバサは驚く。
「オレの魔法は毒の滅竜魔法だけじゃねえ。相手の動きや考えを聴くこともできるんだよ。まさか、一日に二度も同じ説明するとは思わなかったぜ」
コブラの説明を聞き、タイガは何かを考える。
「ぷっ...うはははっ、な...中々面白ぇギャグだな。さっきの
タイガが考えを聴いたコブラは腹を抱えて爆笑する。
「ツバサ、どうやら本当みたいだぜ」
「何を考えたの?」
「後で教えてやる」
ツバサはコブラの魔法に興味を持ったのか、目を瞑って考えてみる。するとその考えを聴いたコブラの顔が青ざめる。
「!!?...おい、さすがにそれは引くぞ...恐ろしいネコだな...」
「何考えたんだ?お前」
「知りたい?」
「いや...やめとく...」
そして改めてタイガはツバサに運ばれて、コブラに突っ込む。
「バカが、お前等の動きは...!?」
「ハァッ!!!」
タイガの突き出した拳をコブラはとっさに腕で受け止める。避けることができなかったのだ。
(!?...コイツ)
「ハァッ!!タァッ!!!」
「ぐっ...がぁっ...」
その後のタイガの攻撃もコブラは避けられず、くらってしまう。キュベリオスが尻尾で攻撃しようと振ると、ツバサが急上昇することでそれを避ける。普段のコブラなら、ツバサの考えを聴いて追撃できたはずなのに、それができなかった。
(何故だ...コイツ等...心の声が聴こえねえ!?)
「ハァッ!!!」
続いてタイガが繰り出した回し蹴りをコブラは腕で受け止めた。だが、
「!?...う!?」
突然タイガの体に痺れるような感覚が襲い、動きが一瞬鈍った。以前から時々このような症状があったが、戦闘中に出るのは初めてだった。
コブラもいつまでもやられている訳ではなく、毒を纏った両腕を構える。
「
「光竜壁!!!」
タイガは光竜壁でコブラの攻撃を防ぐがその勢いは強く、後ろに押されてしまう。
「なるほどな......
「ご名答...こんな事もあるかと思って、覚えといたのが役に立ったな。ついでにツバサとサクラにも教えといて良かった」
タイガは以前覚えた閉心術を使いコブラの「聴く魔法」に対抗していた。これにより、動きを読まれることなく五分五分に戦えたが、閉心術の最中は大技が出せない為、決め手にかけていた。その弱点にコブラはすでに気付いていた。
「だったら...キュベリオス...」
するとキュベリオスは大きく息を吸い込むと口から毒の霧を吐き出しタイガとツバサを包もうとする。
「ツバサ!!」
タイガが指さした方を見るとまだ毒に覆われていないすき間があった。ツバサはそこが閉じる前に毒の空域から出ようとする。そしてそのすき間から二人が出た瞬間、彼等の横から大きく口を開けたキュベリオスが迫っていた。
「「!!?」」
「終わりだ」
コブラがそう言った瞬間、タイガは自分の背中からツバサを離し、敵とは別の方へ投げる。
「タイガ!!!」
ツバサが叫ぶとキュベリオスがタイガの左腕に噛みついた。
「ぐっ...」
「コイツの毒の強さは知ってるよなぁ、せいぜい苦しんで...!?...離れろキュベリオス!!!」
コブラの言葉より早く、タイガが光を纏った拳をキュベリオスの
「てめえ...何で?...」
「聴こえてるんだろ?...足から魔力を放出して見えない足場を作ってるんだよ。だからこれは飛んでるんじゃなくて、立ってるんだ」
「そっちじゃねえ...」
タイガが空中に立っている理由は既に分かっていたが、コブラにとってはそれよりも疑問に思うことがあった。
「てめえ何で...キュベリオスの毒が効かねえ!?」
そう、キュベリオスに噛まれたはずのタイガの左腕にはエルザの時のような毒が回っている様子が無かった。
「簡単だ...ケムラーにバランガス、セグメゲル。毒を持つ怪獣とは何度か戦ったからなあ。ある程度の毒には耐性ができてるのかもな。さすがに毒竜の攻撃はヤバイかもだけど...!?」
タイガは笑いながらそう言うが、またも体が痺れるような感覚が襲った。あまり長くは戦えないことを悟った彼は最後の攻撃の構えをとる。
「それじゃ、こういうのはどうだ?」
「!?...マズい!」
タイガの考えを聴いたコブラはとっさに避けようとするが、気がつくと腹部にタイガの拳をくらってしまった。光の速さで移動し攻撃したのだ。
「ぐはぁっ!!」
「いくら相手の動きが分かっても、そいつが避けれないぐらい速けりゃ意味ないよな」
そう言うとタイガはコブラを蹴り上げて自分も更に高く跳ぶ。キュベリオスは二人を追って高く飛ぼうとするが
「はああぁぁーーーっ!!!」
手に魔力で作ったハンマーを持ったツバサの攻撃にニルヴァーナへと叩き落とされた。
「キュベリオス!!!...!?」
コブラは動揺するが、自分の上にいるタイガが月を背に両手に魔力を溜めていた。
「光竜波!!!」
「ぐああぁぁーっ!!?」
タイガの光竜波をくらったコブラはキュベリオスと同じくニルヴァーナの街へと落ちていった。そしてタイガは空中に足場を作る力もなくし落下しそうになったが、ツバサに掴まれて落ちずに済んだ。
「やったねタイガ」
「ああ...ツバサ、サクラの所へ飛んでくれ」
「わかった」
タイガ達はサクラと別れた場所に向かって飛んで行った。
というわけで、今回はここまで。
ちなみに今回タイガが披露した空中に立つという技は「BLEACH」の死神達がよくやるアレです。
捕捉するとタイガは壁面、水面、空中全てで立てるが空中では長くは立てない。
サクラとツバサはまだ空中では立てません。というかツバサは元々飛べるから空中で立てなくてもいいような......