ディミトリの妹になっちまった   作:上代わちき

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最終回です。


暗花の章 最終回

 

 

 

 

 

 

◆◆十五話

 

◆1

 

 やあやあ、イエリッツァの妹のアルだよ。

 今節はアリアンロッドの攻略だ。

 

 同盟の一件は片付き、後は教団を保護する王国を吹っ飛ばすだけだからねぇ。

 打倒王都フェルディアのため、重要拠点の城塞都市アリアンロッドを攻略するわけだ。

 

 

 

 主な作戦は、俺こと死神騎士があえて正面衝突して場を蹂躙し、後続や別動隊を動きやすくさせる奴だ。

 まぁ早速やっていこう。

 

 

 

◆2

 

「俺とお前の強さ……どちらが上か、知りたくないと言えば嘘になる」

「……五年前なら、俺も同じことを思ったかもね」

「だが……まさか、こんな形で知ることになるとは……!」

 

「フェリクス……! く、お前の仇は、私が必ず……っ?!」

「防いだ、か」

「なぜ、ですか。……なぜ、貴女が裏切ったのですか……アルトリア様!!!」

「俺が俺であるため。……楽しいよ、帝国での生活は」

「ふざけないでいただきたい! ……貴女には、こちらに戻っていただきます。たとえ、残りの腕や足を切り落としてでも!」

 

 

 

◆3

 

 

「アルトリア様……!」

「フェリクスとロドリグは死んだ。……グェンダルも、あの忌々しい女も、別動隊が殺す」

「私に、投降しろと、言うのですか……!」

「いや、その顔を見たら言う気をなくしたよ。……お前も、俺の鎌の錆びになれ。イングリット」

「やっと……やっと、私の名を呼んでくださるのですね…………本当に、残念です!」

 

 

「なぜ、ですか。……なぜ、私達を裏切ったのですか…………ぅ」

「…………死ね」

 

 

 

◆4

 

 

 いやぁ……流石に顔見知りを殺すのは堪えるね。

 それが幼馴染なんだから、なおさらだ。

 

 あ、ちなみに原作通りアリアンロッドは闇うごことアガルタさんの光の柱で崩壊しました。

 流石にこれに関しては大したことは何も出来なかったよ……。

 悔しいな、わかっていても何も出来ないのは……。

 

 

 

 

「少しいいか、アル」

 

 おや、どしたのイエリッツァ。

 お茶なんて持って。

 

 

「たまには、二人で飲もうかと思ってな」

 

 お、そっちからなんて珍しい。

 いいぜ、作法も何もない奴なら付き合おう。

 

 

 

「課題追加、だな……」

 

 なんのことやらー。

 

 

 

◆5

 

 

「菓子を食いすぎだ……」

 

 いいじゃん、俺甘いの大好きなんだよ。

 

 

「甘党なのは俺もなのだぞ……まったく」

 

 

 

 

 ……。

 それで、どんなお話?

 

 

 

「いや、本当に大したことはない……。ただ、そうだな……帝国遊撃隊のみんなとは、どうだ……?」

 

 

 ん?

 そうだねぇ。

 

 ここ最近、ベルと一緒に料理したねぇ。

 なんか俺の料理が見てられないとかなんとか難癖付けられて、さ。

 宿題増えちまった。

 

 

「ククク、確かに料理できないのは問題かもな……」

 

 宿題と言えば、フェルディナントからの奴はクリアしたぜ。

 いや、乗馬に関するものだけだけどさ。

 

 

 

「ああ……お前も、死神騎士として各地を巡っていたからな……俺から見ても、乗馬は問題ないだろう……」

 

 そういやペトラからの宿題、終わってないなぁ。

 流石に弓は殆ど使わないからなぁ。

 

 

「お前の場合、闇の魔法ですべてなぎ倒すからだろう……。ドロテアはどうなのだ……」

 

 今更聞くことかよ。

 今度は踊り子の服を着せられたよ……。

 

 後、もっとおしゃれしなさいって……。

 

 

 

「お前、深窓の令嬢みたいな面して中身は少年だからな……そうなるだろう……」

 

 あれ、俺の口調ちょっと移ったか?

 

 

 

「……リンハルトと、カスパルは?」

 

 露骨に話題変えたなお兄ちゃん?

 ……というか、イエリッツァも知ってるだろ。

 

 なーんか五年前の時点で俺もあの二人の輪に取り込まれて、さ。

 男三人で色々やったよ。

 いや、俺は中身だけ男だけど。

 

 

「知っている……カスパルと背の高い傭兵とやらの模擬戦についてあれこれ談義していたな……」

 

 おうよ。

 俺の案もリンハルトの案も、案外吸収するのが早いからなーカスパルはー。

 

 何より、俺の義手を知ってしまったせいか暗器の類に理解があるのがよかった。

 

 

「想像したものより随分強かになったな……。ヒューベルトは?」

 

 うーん。

 テフで気が合ったぐらいか。

 

 

 

「待て。それはそれで気になる。お前、甘党ではなかったのか」

 

 いや、そうだけどさ。

 ああいう苦い奴も、たまには飲みたくなるってだけだ。

 

 

 

「皇帝……エーデルガルトは?」

 

 それこそ今更だ。

 ……今日も添い寝だよ。

 

 妹と添い寝が当たり前だなんて、困ったお姉ちゃんだよ。

 

 

 

「まったく、あの皇帝は。……だが、だからこそお前はそのようになったのだろうな。……今にして思えば、『俺』としても五年前の有り様は酷かった」

 

 

 ……なぁ、イエリッツァ。

 

 

 

 

「なんだ」

 

 あの時、聞きそびれたけどさ。

 死神としてのあんたは、俺をどう思っていたんだ?

 

 

 

「……うまく言葉にはできないが。はじめは安堵だったな……」

 

 安堵?

 

 

 

「俺のような者は、俺だけではなかった……理屈ではないところで、そう確信した……」

 

 そっか。

 

 

 

「だからこそ……あの有り様からここまで戻ってきたお前には、心底失望したが……同時に、期待もした」

 

 死神は、戦いをこそ求める人格だ。

 だから失望はなんとなくわかるが……期待?

 

 

 

「俺も……戻れるのではないのか、というものだ。……目に入るものを殺すばかりでは、生きるのも面倒だからな……」

 

 ああ、そういう……。

 

 

 

「その結果……面白いものを得た」

 

 面白いもの?

 

 

 

「なぁ、気づいているか……しばらく『私』が出ていない。意外にも『俺』が主人格として、馴染んでしまったらしい。よりにもよって死神の側である俺が、だ」

 

 ……え。

 

 

 

「不思議なものだな。あるいは『私』の理性が『俺』の一部として、統合したか……。それとも『俺』が『私』になったのか……。こんなにも、俺が俺としてこうも理性的に在れるとは思わなんだ」

 

 え……そういうことあんの?

 

 

 

「今だから言うが、エミールとしての『私』は昔のお前のことをかなり嫌っていたぞ……。死神を見ているようだからな、当然だ……」

 

 ……。

 

 

 

「だが『俺』は……今は、お前と共に在るのが楽しい。お前との稽古……命を奪わない程度の逸楽でも、生きられるようになってしまった……。お前が、俺の刃を悉く受け止めるせいか……」

 

 それが、あんたの二重人格や殺人癖をそういう形で治すきっかけだったっていうのか?

 

 

 

「さて、な。……お前の更生や成長を喜んでいたのは俺ではなくエミールの筈だったが。……かりそめの兄妹として過ごすうちに、気づけば俺もお前の存在に癒されていたかもな……」

 

 そっか。

 ……そっか。

 

 

 

「なぁ、アル。……お前は、必ず生きてくれ。……お前がいてはじめて、私は、俺は……亡霊でも死神でもない、ただのイエリッツァであれるのだからな」

 

 

 ……全部終わったら、二人でシャーベットを食いに行こうぜ。

 それなら、約束したげる。

 

 

 

「ああ。……絶対だ」

 

 

 

 

 

◆◆最終話

 

 

◆1

 

 

「退け、メルセデス」

「駄目よ。私は、この道を歩むと決めたから。貴方だって、そうでしょう?」

「……そう、だな。俺は、俺のためにお前を殺すと決めた。たとえ、それが『エミール』を殺すことを意味するのだとしても」

「……貴方」

「俺は、妹を得た。……奴がいる限り、俺は俺のままこの地獄を生きられる。エミールがいなくとも、俺は人間であれる。……故に、退かぬのならお前は死ね」

「こんな時だけれど……よかったわ。エミールじゃないのが残念だけれど、貴方の綺麗な笑顔を見れて……」

「……ありがとう、メルセデス」

 

 

◆2

 

 

「アルトリア様…………なぜ、なぜ陛下を……俺達を、ファーガスを裏切ったぁぁああ!!!」

「何度同じことを言わせる……。俺が、俺であるためだ……」

「キルベルトさんを殺してか?! フェリクスも、イングリットも殺してか?! ……ふざけるなぁ! 陛下はあんたを生かせと言ったが、それはできねぇ。あんただけは、絶対に殺してやる……!」

「できるといいね、シルヴァン」

 

 

 

◆3

 

 

「意外。……アネットがここにいるだなんて。てっきりフェルディアで待ち構えているかと思った」

「何言っているの。……貴女は、父さんの仇よ……。陛下の意思なんて、知らない。私は、貴女を殺す……!」

「シルヴァンもそう言って、俺に殺されたよ。……俺は、死にたくない。たとえどれだけの屍を積み上げてでも、俺は生きる」

「貴女が帝国の将として殺した人達も、シルヴァンも、フェリクスもイングリットも! 父さんも……同じことを思った筈よ!!!」

 

 

 

 

◆4

 

 

 

「アル……アル……」

 

 久しぶりだね、ディミトリ。

 やっと、殺してあげられる。

 

 シルヴァンも、アネットも。

 同じところで待ってる筈だよ。

 

 ドゥドゥーも先生達に倒されて、メルセデスもイエリッツァがおさえて、教団の援軍もカスパル達が倒した。

 

 

 後は、お前だけだ。

 

 

 

「アル……アル……どこだ……アル……」

 

 酷い有り様だな……もう、俺を認識できないのか?

 

 

 

「殺す……エーデルガルトも、先生も、死神騎士も…………全部、殺し尽くしてやる……!」

 

 なら、話すべきことはないか。

 バイバイ、お兄ちゃん。

 

 

 

 

 

「そうしたら、帰ってきてくれるよな……アル……! また、一緒に……!」

 

 

 

 

 

◆5

 

 

 やあ、ディミトリの妹になっちまったアルトリアだ。

 今は、もうイエリッツァの妹だけどな。

 

 なんなら、もう全部終わったよ。

 

 

 

 シルヴァンも、アネットも。

 ドゥドゥーもメルセデスも。

 ディミトリも。

 

 もう死んだ。

 

 

 

 フェルディアの戦いも勝利に終わり、アッシュもレアもセイロス教団も吹っ飛んで、帝国によるフォドラ統一も済んだ。

 ……アガルタとの決戦も、昨日のことのように思い出せる。

 

 そうだ。

 もう、全部終わったんだ。

 

 

 

 

「アル!」

 

 いや待って、抱き着かないでお姉ちゃん。

 流石にここでそれは暑苦しい……。

 

 

 

「まぁ、この真夏だしな……」

「でも、エルがはしゃぐのも無理はない。久々にみんなで集まれたもの」

 

 

 

 いや、俺は今も定期的にお姉ちゃんとの添い寝継続中……。

 

 

 いやあ、まぁ、はい。

 流石にそれは口にしないでおきます。

 

 

 

 

 

「そういうわけで、遊ぼうぜ!」

「うん、そのために海に来たんだからさ」

「ほら、アルちゃんも水着に着替えましょ。せっかくかわいいの選んだんだから」

「はい、気合こめて、選びました!」

「ベルも気合入れました! ぜひ着てください!」

「ははは! たまには存分にはしゃがねばな!」

「本来私はこういうのは好みではありませんが……くく、今日ばかりは野暮はなしとしましょう」

 

 

 あぁ、眩しいなぁ。

 

 

 

 

「俺も付き合うぞ」

 

 おや、イエリッツァもかい?

 

 

 

 

「ああ。……体を動かした後のシャーベットは、格別だからな」

 

 

 そうかい。

 そりゃ、楽しみだねぇ。

 

 

 

 

 

 

◆6 

 

 

「まだだ」

「まだよ」

 

「あんただけは」

「貴女だけは」

 

「絶対に殺す!!!」

「絶対に殺す!!!」

 

 

 

 

◆7

 

 

「どこだ……アル…………墓参りと…………みん、なの、説教が……待ってる……」

 

「アルの好きな、シャーベットが……溶け……」

 

「アル…………アル…………アル…………」

 

 

 

 

 

 

「アル」

 

 ん、どしたのお兄ちゃん。

 

 

「はしゃぎすぎだぞ。アルの好きなシャーベットが溶けてしまう」

 

 おっとそいつはいけねぇ。

 急いで食わなきゃ。

 

 

「まったく……相変わらずだな、アル」

 

 

 

 

 

 

 




蒼月ルートが「ディミトリの妹」という厳しい現実に立ち向かう話なら。
紅花ルートは「イエリッツァの妹」という優しい夢に溺れる話です。

筆者としては、これをイメージして書きました。
……ちょっと思ったのと違う仕上がりになったような気もしますけど。



筆者の上代わちきです。
この度は、紅花ルートもお楽しみいただきありがとうございました。
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