でも言うかもしれない。
シュレティンガーのエーデルガルトです。
◆七話
◆1
うぉぉぉ……。
いってぇぇぇ……。
「アルトリア……?」
あれ、エーデルガルト……?
なんで、おれのへやに……?
「ちょ、ちょっと、貴女どうしたのよ?!」
だ、大丈夫……。
ちょっと痛いだけだから……。
「そんな有り様で大丈夫なわけないでしょう?! それに『痛い』って、まさか貴女痛覚も……」
いや、戻ったのは声だけ……。
痛覚は多分戻ってねぇ……。
だって、いたいの、右目と左腕……。
「まさか、幻肢……!」
ぐぁああああ……。
なんで、父さんが見えるんだよ……。
なんで、そこに母さんがいるんだよ……。
今更、幻覚かよ……今更、幻聴かよ……。
「ダスカーの悲劇、なの……?」
わぁってるよ……。
おれだって、好きで生きてるわけじゃねぇ……。
でも、なんでか死ねないだよ……。
死にたいのに、なんでか死にたくねぇんだよ……。
ああ、そうだよ!
俺は、ただじゃあ死にたくねえよ……!
「アルトリア……! アルト……! ……アル!」
何が紋章だよ……。
何が王族だよ……。
何がセイロス教だよ……。
全部関係ねぇことだろうが……。
知ったこっちゃねぇ……俺に押し付けてんじゃねぇ……。
俺は……俺だろうが……!
俺の好きなように、死なせてくれよ……!
「ごめんなさい……あの時、助けられなくてごめん……でも、お願いだから『死にたい』だなんて言わないで……!」
あ……え?
「いいの! 生きてて、いいの! だから、お願いだから……生きて、アル!」
お姉、ちゃん……?
◆2
つーことが昨夜ありました。
我ながらまっっっっじで情けねぇ……。
そもそもなんだよ幻肢痛って。
しかもなんであんな幻覚が見えて幻聴も聞こえるんだよ。
あげく「死にたい」とか言っちまうし……。
あぁ、まさかエーデルガルトに甘えるだなんて……。
なんか俺自身でもよくわからん変なこと言ってしまうし……。
おまけにあの後添い寝までしてもらって……。
今朝本人は「気にしないで」って言ってたけど、流石に昨日のは情けないの一言だわ……。
なんなら「二人きりなら、お姉ちゃんって呼んでいいから」とも言われたけど、流石に気を遣わせすぎだよな。
今度、何かしら埋め合わせしとかないとなぁ……。
「アル」
おや、ディミトリさん。
おはよう。
「声……戻ったんだな」
おうよ。
まぁ色々あったんでなー。
「よかった……本当によかった……」
あーうん……。
まぁ、ありがとう。
「……ところで、他に何か、あったか……? 例えば、その……」
ん?
いや、大丈夫だよ。
別に、なーんもないよ。
「そう、か……」
◆3
「ようアルトリア! おはようだな」
「うん、おはよう……」
「……あれ、なんかあった?」
「昨日、俺……嫌な夢見ちゃって」
「そっか。……なんかあったら、言ってくれ! 俺にできることなら、力になるからよ!」
「そう、だね……。うん、その時はお願い。カスパル」
◆◆八話
「少しいいか、アルトリア」
おや、どしたのイエリッツァ先生。
これからマイクラン戦の反省会なんだけどもー。
「どうせお前だけ敵を殺しすぎた、といったものだろう」
仕方ないだろー……。
上から弓チクしてくんのが悪い。
そういうのに反撃するときに限って闇魔法の射程ガン伸びするし、経験値が偏っても仕方ないと思うんだよなー。
それを知ってか、先生も俺を地雷役として采配するし。
しかも後ろからたくさん援軍出てくるから、そいつらも処理しないといけないし。
知ってるかー。
俺さ、今節の手合わせでも先生と互角だったんだぜー。
「あまりやりすぎるな……。それよりも、だ。お前、馬にも乗るそうだな」
ん、ああ……フェルディナントの勧めでね。
やるだけやってる。
「で、あれば槍も鍛えておいて損はない…………だが、こちらにはそろそろ大仕事があって、直接鍛えてやるわけにはいかなくなる」
…………。
そっか。
「……。それで、その代わりというわけではないが……餞別がある」
おん?
こりゃ、三日月の鎌か?
「本来は知り合いに渡す予定のものだったが、気が変わった。……馬から武器を振るうなら、少しでもリーチが長い槍を扱う方が有利だ。馬に乗るなら、振るい方を覚えておくといい」
……ああ。
ありがとうな、イエリッツァ先生。
「不要なら、鍛冶屋に頼んでその義手に仕込むのも手だ。……どうあれ、武器は多いほどいい」
……ということは、これが最後か。
「…………。この数節、お前とはいくらか交流が多かった」
そうだな。
「その交流は……存外、悪くなかったぞ」
……おう。
俺も、楽しかった。
◆2
「別れは済んだか」
「炎帝、か……。あの娘は、アルトリアは、帝国に取り込んだ方がいい……」
「……よもや、情が湧いたなどというまいな?」
「それは、お前もだろう……」
「…………」
「これ以上はしつこく言わん……。だが、使える武器は多いほどいい。それには、違いないのだ……」
「……だが、それは酷というものだろう…………そうでしょう、アル」
◆◆九話
◆1
やぁ、ディミトリの妹だよ。
黒鷲に転入してだいぶ久しいね。
グロンダーズでは我らが黒鷲の学級が勝ち申した。
最終的には俺とディミトリさんのタイマンで、俺が余裕勝ちした。
いやはや、楽しいねぇ。
なおその次の節ではルミール狂乱戦だ。
ルミール村の村人がなんだかゾンビ化して、他の村人を襲うやつ。
いや、厳密には違うんだがこれがわかりやすいのよな……。
まぁこっちもなんとかなった。
ジェラルトさんからは「ずいぶんやるな、娘っ子。うちの娘とどっちが強いんだが……」と言われた。
まぁレベルは先生と並んでるからね。
あ、そうそう。
白鷺杯はドロテアさんでした。
ふつーに優勝して、何にもなかった。
ただ、思うことはある。
その直後、エガちゃんに五年後にまた集まろうって話をされた。
一応は、みんなに向けての台詞なんだろうが……。
間違いない。
あの時は、確実に俺を指して言った。
……。
『生きて』か……。
……すべては学生ごっこらしいが、あのセリフに関してはマジっぽいんだよなぁ。
そろそろ、選択の時が近い。
いい加減、腹をくくらないとな。
◆2
「ねぇ、ヒューベルト。あの娘を、アルトリアを……どうにか引き込めないかしら?」
「それは……情ですか?」
「……いいえ。あの娘は強い。死神もほめるぐらいに。……手放せば、脅威になるわ」
「ですが、順当に考えれば引き込むのは難しいでしょう。……彼女は、ファーガスの王族です。我々は、彼女に祖国を裏切れと言うことになります」
「そう、よね……」
「脅威ならば、暗殺はいかがでしょう。……以前の彼女ならともかく、今なら隙はあります」
「だめ!」
「エーデルガルト様……?」
「……あの娘は、私が救うべき『弱者』の一人なの。……あの娘のような被害者を、減らすための戦争なの。ここで殺しては、本末転倒よ……!」
「…………」
◆◆十話
◆1
やあ、アルトリアさんだよ。
気が付けば結構時が進んでいるものだ。
……ジェラルトさんって、意外とあっさり生存するんだね。
ちょっとなんとなくモニカへ闇魔法大砲ぶっぱしたらタレスが足止めして、でもベレス先生がモニカさんを攻撃することでジェラルトさんへの攻撃が止まりました。
後はそのまま当人が対応して、奴らが退却して、それでその場は終わりだ。
そのくせ禁じられた森のザラスの禁呪の流れはそのままなの、どういうことなんだろーか。
抑止力? 運命の修正?
まぁ、なんでもいっか。
「そこまでよ」
「ケェッヘッヘッヘ……全員そこを動くな! 聖墓にあるものは、全部帝国軍がいただく!」
さぁて、第一部クライマックスだ。
エーデルガルトとヒューベルトが黒鷲学級ごとセイロス教団を裏切り、紋章石を奪いにかかる。
帝国兵やメトジェイさんが現れて、ベレスや俺達と敵対する。
「あなたはなんということを……ベレス、聖廟を踏み荒らす逆徒どもを滅ぼすのです」
案の定レアさんぶちぎれてる。
ここも原作通りで草。
「アドラステア帝国帝国エーデルガルト=フォン=フレスベルグが命じる。迅速に紋章石を回収なさい。……抵抗する者は、生け捕りになさい」
……あれ?
原作のエガちゃん、そんな文言だったっけ?
◆2
「残念です、エーデルガルト。あなたが聖教会を裏切ることになろうとは」
「……師、アル。やはり、貴女達が立ちはだかるのね」
まぁそれはそれとして制圧はあっさり済むんだけどね。
一応俺も先生もレベル30ちょっとはあるし。
「ベレス、斬りなさい」
「くっ……この小娘さえいなければ……!」
あ、一応メトジェイさんは俺が倒して生かしてます。
ちょっと考えがあるしね……。
奪い返した紋章石も、一応後でレアさんに返すという名目で俺が確保してます。
後は、腹ぁくくるだけだ。
「師……」
…………。
腹、確かにくくったけどさ。
その顔は、反則だろ。
エーデルガルト。
「……ぅお?! 小娘、お前……」
「っ! ま、待ちなさい!」
先生の選択はわからない。
けど、もう行動に移させてもらう。
メトジェイを解放し、紋章石を奴に押し付け、そしてレアを闇魔法で撃つ。
「あ、あなたは……?!」
「アル……?! やめなさい! 貴女がそれをしたら……!」
もう手遅れだよ、エーデルガルト。
今この時を以て、俺はブレーダッドの名を捨てる。
俺は、もうあんたの手先だ。
「アル……」
生きてって、あんたは言っただろ?
じゃあ、俺はそれから逃げるわけにはいかない。
……あんな顔を見せられて、逃げられるわけがない。
「……アルトリア」
「ベレス……あなた……?!」
「師……!」
おや、先生も付き合ってくれるのかい。
最悪の場合、あんたと敵対も覚悟のうえだったんだが。
「君も、エーデルガルトも、生徒だ。生徒を護るのが、自分の役目だ」
そっか。
「二人とも……ありがとう」
「ええ、お二人の決断に、言葉を絶するほどの感謝を……!」
おうおう、後から出てきおってからにヒューベルト。
メトジェイさんに紋章石押し付けて逃がしたから、ちゃんと処理しておけよ。
「そう、ですか。あなたも、「失敗」だったのですね」
そっちはそっちで好き勝手言ってんじゃねぇよ。
ベレス先生はベレス先生だ。
あんたに定義される謂れなんざねぇだろ。
「ブレーダッドの姫よ。失望しましたよ……。あなたまでも、聖墓を穢し同胞を辱めた者達に手を貸すというのですね……!」
失望してんのはこっちだよ。
仮にもフォドラの秩序を作ってる自覚あるのなら、もうちっと過ごしやすくしてもらえんのかね。
あれがだめだの、これはだめだの、とか言っていないでさ。
お前らの影響力があったら、あの紋章特化国家もどうにかできただろうに……。
「アルトリア殿、そこまでに。……白きものが、本性を表しました」
「アル、師! とにかく今は脱出するのよ!」
おっと、とかなんとか言ってたらレアさんが白きものとかいうドラゴン形態になりおった。
流石にレベル30程度じゃ太刀打ちできんわな。
最低でも40ぐらいは欲しいところだ……。
まぁ今は素直に退却させてもらおう。
じゃあな、とっつぁ~ん。
「誰よ、とっつぁん」
「こんな時に、のうてんきですな……くく」
◆2
「追手はまいたようね」
「ここは帝国軍の仮設陣地の一つです。ここで、修道院を攻めるための軍備を整えます」
まぁそんなわけでエガちゃんと一緒に帝国軍と合流しますた。
原作の時は、ここが一番わくわくしたんだよなー。
これから物語の裏側に入るって感じがしてさ。
「それで、確認しておきたいのだけれど……貴方達、本当についてきてよかったの?」
お、エガちゃんと黒鷲学級の絆が深まるイベントだ。
「わたし、帝国、ともにある。同盟する、ブリギット王の孫、です」
「や、やっぱりまずかったですかね? でも、あたしの家、帝国にありますし……先生も、アルトリアさんも一緒だし」
「オレはそれでいいと思うけどな!」
「私は……私の判断が間違っていないと信じたい」
「はあ……ま、貴女と戦うのが一番面倒ですからね……」
「私はエーデルちゃんというより、先生についてきたのよ。……それ以上に、アルちゃんがここにいるのが不思議なのだけれど」
そうだよねぇ。
本当は、みんなエガちゃんが好きだもんね。
ところで、ドロテアさん。
なぜそこで俺に振ったの?
めっちゃ注目されてんだけど。
「アル……本当によかったの……? 私は、炎帝なのよ。……私のせいで、ダスカーの悲劇は起きたのよ……?」
「我々の目的はセイロス教団の打破。ファーガス神聖王国は、教団側に回るでしょう…………貴女は、ファーガスの王族です。我々は、貴女の祖国を敵に回すのです」
くどいぞエーデルガルト。
ヒューベルトも。
……はじめて、なんだよ。
『生きて』って言われて、なのに逃げたくないって思ったのは。
「え?」
その台詞さ、俺にとっては一番言われたくない台詞だった。
死にたいと願って、でも死ねないのはこの世の何にも勝る拷問だ。
俺をこの地獄に留める『しがらみ』ってのは、何よりも悍ましいものだと思っていた。
だから、俺は死にたかったんだ。
「アルトリア……」
でも、わからないもんだよな……。
今は、なんでか知らんが生きたいって思えてる。
だからさ、一緒にいさせてよ。
「ディミトリも……貴女の兄も、敵になるのよ……? それでも……?」
……そう、だな。
正直、ディミトリさんに関しては色々複雑なんだが……。
けど、俺はもうすでに選んだ。
だから、大丈夫。
今日限りで、その未練はおいていくよ。
お姉ちゃん。
「……本当にありがとう、アル」
◆3
「シルヴァン……アルはいたか?!」
「やはり、どこにも見当たりません……教室にも、部屋にも、地下にも……!」
「エーデルガルトを筆頭に、黒鷲の学級も行方をくらませた。先生も含めて、だ…………やはり、お前の妹も帝国の方にいると考えていいだろうよ」
「嘘だ……! そんなはずはない……! まさか……アルを人質にでもするつもりか?!」
「でも、レア様は────」
「やめておけ。……まだ、どうなっているかはわからんのだ。いたずらに猪を惑わせるようなことは、言わないほうがいい」
「殿下……」
「アル……! アル……!」
でも多分ディミトリはこういうこと言う。