「ユウ兄ちゃん!此処が、私達が通っているデュエルスクール、遊勝塾だよ!」
「ほぉ、此処が。アユよ、案内ご苦労であった。礼を申す」
ゲンによってカードを奪われていた赤毛の少女――アユを助け、カードを取り返したユウは、改めてそのお礼をしたいというアユの案内で、彼女が通っているという遊勝塾へとやって来た。
其処は塾と銘打ってはいるものの、見た目は学習塾というよりは武術道場やスポーツジムと言った方が良い物、一体デュエルの何を学ばせる積りなんだと疑問を抱いたユウだったが、アユを待たせる訳にもいかないのでそのまま中へと入った。
其処で、
「ゆ、
「お、俺と同じ顔!?」
「…然程驚く事でもあるまい、この世には己と同じ顔をした者が3人いると言うではないか」
「それドッペルゲンガーじゃないか!?ゆ、遊矢何処か体調に異変とか、あべし!?」
「ちょっとお父さん!気持ちは分かるけど落ち着いて!」
何時もより来るのが遅いアユを案じたのか、探しに向かうべく入り口に集まっていた塾関係者と遭遇、ユウの姿を見るなりその場は驚愕に包まれ、それに対するユウのツッコミも逆効果だった。
とはいえそれも無理はない、塾関係者の1人であろう、トマトを思わせるカラーリングの髪が特徴的な少年――遊矢の顔が、ユウにそっくりだったのだから。
「え、えっとね、この人はユウ兄ちゃん!私を助けてくれたの!」
「ユウだ。偶々通り掛かった縁という物だが、改めて礼をしたいとの事で、折角だから立ち寄らせて貰った。この後に取り立てて臨むべき用事も無き故に」
「そ、そうだったのか!俺は此処の塾長の
「私はその娘の柊
「俺は
「俺は
そんな状況に面食らいながらもユウの事を紹介するアユ、それはユウと遊矢がそっくりである事を一旦置いておくには十分な物だったのか、落ち着きを取り戻した彼らもまた自己紹介をしつつ、アユの一件にお礼を言いつつ、どんなデュエルスクールなのか、どんな事を教えているのかを尋ねるユウの疑問に答えていった。
が、
「む?アクションデュエル?」
「え、アクションデュエルを知らないのか、ユウ!?」
「すまぬが、聞いた事も無い。如何様なデュエルなのだ?」
その中で取り上げられたアクションデュエルという単語に聞き覚えの無かったユウが思わず尋ねると、そんな反応をされるとは思わなかったのだろう、またも驚きの声が上がった。
「アクションデュエルは」
「待て、遊矢。百聞は一見に如かずという言葉もある、実際のデュエルで体感して貰うのはどうだ?相手はこの男権現坂が務めよう。アクションデュエルに一日の長がある遊矢達がそれを笠に着る訳にも行くまい」
そんなユウに対してアクションデュエルの説明を始めようとした遊矢だが此処で、遊矢達と同年代とは到底思えない大柄な体躯にリーゼント、白を基調とした学ランに鉄下駄、赤い鉢巻等の応援団を思わせる服装の少年――昇が実際のデュエルを交えて伝える事を提案、それは受け入れられた。
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『それじゃあ始めるぞ、2人共』
『アクションフィールド・オン!無限の地平線!』
「コートが、草原に?」
アクションデュエルを行うにあたり、遊勝塾内に設けられた専用のデュエルコートへと移動したユウと昇、2人が入室したのを受けて、赤を基調としたジャージに某テニスプレーヤーを思わせる言動が特徴的な遊勝塾塾長――修造と、その娘である少女――柚子が何かしらの設備を操作した直後、殺風景だったデュエルコートが一瞬にして無限に広がる草原と化した。
「この様にアクションデュエルを行う際、予め専用のフィールド魔法を発動してデュエルを行う。そのフィールド魔法を発動すると共にコート内にリアルソリッドビジョンで出来たフィールドが展開され、あちこちにアクションカードというアクションデュエル専用のカードが設置される。それ故アクションデュエルは、此処の様な専用の設備を備えたデュエルコートで行うのだ」
その光景に驚きを隠せないユウに、昇はアクションデュエルの説明を交えながら答えていく。
「アクションカードは拾った者が使える魔法・罠カードだ。と言っても罠の方のアクションカードはアクショントラップと言って、強制発動される物だが。一方で魔法の方のアクションカードはアクションマジックと言い、相手ターンでも手札から使える速攻魔法みたいな扱いで使えるぞ。それと予め専用のフィールド魔法を発動する関係上、其々のデュエリストがフィールド魔法を発動する時は永続魔法として使うルールとなっている。張り替えによる例外処理が起こってはならぬから、との事だそうだ。普通のデュエルからの主だった変更点はこの位だが、他に質問はあるか?」
「大事ない。詳細なる説明、礼を申し上げる」
その説明はアクションデュエルの「あ」の字も聞いた事が無かったユウにも分かりやすく、ルールをすんなりと理解した彼は早速やろうと言わんばかりにデュエルディスクを構えた。
「では行くぞ、ユウよ!戦いの殿堂に集いし
「如何した急に?」
「アクションデュエルの開始を告げる口上よ。実際は一フレーズ毎に交代で口にするが故、覚えておくと良い。モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクショーン」
「「デュエル!」」
先攻 Noboru LP 4000 VS 後攻 You LP 4000
「俺のターン!先攻はドロー無し。
まずは墓地に魔法・罠カードが存在しない事で『超重武者ビッグワラ―G』を守備表示で特殊召喚!」
超重武者ビッグワラ―G
効果モンスター
地属性
機械族
レベル 5
守備力 1800
こうして始まったユウと昇によるアクションデュエル、その際に昇が口にした発言に多少面食らったユウではあったものの、それがアクションデュエルを始める上での口上と知り納得、その一挙手一投足を見逃すまいと視点を固定しつつも、デュエル開始と共にフィールド内にばらまかれたアクションカードを狙って動き出す。
そんなユウの動きにも我関せずと言わんばかりにその場から動かない昇が最初に呼び出したのは、草鞋を思わせる形状のロボット。
「機械族モンスターをアドバンス召喚する時、ビッグワラ―Gは2体分のリリースとして使用出来る!これによってビッグワラ―Gのみをリリースしてアドバンス召喚!動かざること山の如し。不動の姿、今見せん!『超重武者ビッグベン―K』!」
超重武者ビッグベン―K
効果モンスター
地属性
機械族
レベル 8
攻撃力 1000
そのロボットを生贄としてフィールドへと君臨したのは、源平合戦の時代に源義経の従者として活躍した武蔵坊弁慶をモチーフとした武者型のロボット。
「召喚したビッグベン―Kの効果発動!
ビッグベン―Kを守備表示にしてターンエンド!」
超重武者ビッグベン―K 攻撃表示(攻撃力 1000)→守備表示(守備力 3500)
Noboru
LP 4000
手札 3
モンスター
3:超重武者ビッグベン―K(守備表示)
魔法・罠カード なし
「…それだけで良いのか?」
「うむ!本当に強い男は、無駄に動かんものよ!」
「そ、そうか。我のターン、ドロー。
まずは『
宵星の騎士ギルス(制限カード)
効果モンスター
闇属性
機械族
レベル 4
攻撃力 1800
アクションカードを手にするべく走りながらも、昇が見せるデュエルタクティクスはどの様な物か一瞬たりとも目を離す事無く見続けていたユウだったが、蓋を開けてみればアクションカードを取りに行くでも無く、最上級モンスターを1体守備表示で出しただけ、魔法・罠カードのセットも無しという状況に戸惑い、思わずそう聞いた。
そんな疑問に対して自信満々にそう答える昇だがそれは手札事故を隠すハッタリでは無い、昇が用いる『超重武者』モンスターカードは、墓地に魔法・罠カードが無い事を条件に効果を発揮するモンスターが多い、それを活かす為に昇のデッキは魔法・罠カードが一切入っていない『フルモンスター』デッキとなっているのだ。
そんな、自分にとって相性最悪な昇のデュエルスタイルに気づき、何時もの様な展開は望めないと痛感したユウだったが、ならば別ルートで盤面を整えるのみと切り替え、神の力によって生まれ変わった機械騎士――ギルスを呼び出し、
「召喚したギルスの効果発動。
デッキから『紺碧の
次に我のフィールドにギルス以外のモンスターが存在しない事で、ギルスのもう1つの効果発動。
互いのフィールドに星遺物トークンを1体ずつ守備表示で特殊召喚する」
星遺物トークン
闇属性
機械族
レベル 1
守備力 0
その能力によってギルスの妹――イヴと思しき霊体が双方の場に現れた。
これによって突破口が開けたユウは展開を開始する。
「続いてビッグベン―Kの眼前にカードをセットし、同じ縦列にカードが2枚存在する事で『紅蓮の機界騎士』を攻撃表示で特殊召喚する」
紅蓮の機界騎士
効果モンスター
光属性
サイキック族
レベル 7
攻撃力 2300
「墓地の紺碧の機界騎士を除外し、紅蓮の機界騎士の効果発動。対象は同じ縦列のビッグベン―Kだ。
効果でビッグベン―Kを破壊する」
「させん!その効果にチェーン、手札の『超重武者装留ファイヤー・アーマー』を捨てて効果発動!対象はビッグベン―Kだ!
ターン終了時までビッグベン―Kの守備力は800下がるが、戦闘及び効果では破壊されなくなる!」
超重武者ビッグベン―K 守備力 3500→2700
その折、赤いオーラを放つ騎士がそのオーラを強大化させ、昇の場にいる機械武者を破壊せんと飛び掛かって斧を振り下ろしたが、その間に炎を模したデザインの装甲が出現、攻撃が阻まれてしまった。
「防がれたか…
ならば永続魔法『星遺物へ至る鍵』を、貴殿の星遺物トークンの眼前に発動。対象は今除外した紺碧の機界騎士だ」
星遺物へ至る鍵
永続魔法
1:このカードの発動時に、除外されている自分のカードの中から『ジャックナイツ』モンスター1体または『星遺物』カード1枚を対象に出来る。その場合、そのカードを手札に加える。
2:自分フィールドに『ジャックナイツ』モンスターが存在する限り、そのモンスターと同じ縦列で発動した相手の罠カードの効果は無効化される。
「星遺物へ至る鍵の、カードの発動時の効果で対象とした紺碧の機界騎士を手札に加え、同じ縦列にカードが2枚存在する事でそのまま攻撃表示で特殊召喚する」
紺碧の機界騎士
効果モンスター
光属性
サイキック族
レベル 8
攻撃力 2400
これによって現状のユウが、眼前の機械武者を除去する術が無くなってしまい、それを避けて勝負を決める術も持ち合わせていないのでこのターンでの決着は不可能となったが、ならば次のターンに向けて盤面を整えるだけだと言わんばかりに更なる展開を行う。
「紺碧の機界騎士の効果発動。対象は紺碧自身だ。
此奴を右端に移動し、空いたモンスターゾーンに『紫宵の機界騎士』を攻撃表示で特殊召喚する」
紫宵の機界騎士
効果モンスター
光属性
サイキック族
レベル 8
攻撃力 2500
「紫宵の機界騎士の効果発動。対象はギルスだ。
此奴を次の我のエンドフェイズまで除外し、デッキから『蒼穹の機界騎士』を手札に加え、カードを1枚セットしてターンエンド」
「ターンエンドと共に、ファイヤー・アーマーの効果で減少したビッグベン―Kの守備力は元に戻る!」
超重武者ビッグベン―K 守備力 2700→3500
You
LP 4000
手札 1(蒼穹の機界騎士)
モンスター
2:星遺物トークン(守備表示)
3:紅蓮の機界騎士(攻撃表示)
4:紫宵の機界騎士(攻撃表示)
5:紺碧の機界騎士(攻撃表示)
魔法・罠カード
2:セット
3:セット
4:星遺物へ至る鍵
手札こそたった今サーチしたばかりの物のみだがモンスターは4体でそのうち3体は攻撃力2000を上回る上級モンスター、セットカードも3枚と一見すると万全に見えるユウの盤面ではあるが、それを目の当たりにしても昇の表情は余裕その物な事から、この状況をひっくり返したり、何ならそのまま勝利したりする術があるのだろうとユウは気を引き締め、新たなるアクションカードを直ぐに入手出来る場所へと歩みを進める。
「俺のターン、ドロー!このまま押し通させて貰おう!
手札の『超重武者装留ダブル・ホーン』の効果発動!対象はビッグベン―Kだ!
この効果によってダブル・ホーンは装備カードとして対象のモンスターに装備させる事が出来る!
カードの位置は…『爆導索』の可能性も考慮し、俺のフィールドにいる星遺物トークンの背後としよう」
そしてそれは昇も同じ、プレイングミスが切っ掛けとなって状況をひっくり返されては堪らないと、何時もの癖で機械武者のカードの後ろに装備カードを置こうとするのを押し留め、既に埋まっている3枚全てが表側表示になっている縦列の魔法・罠ゾーンに置いた。
因みに昇が、もしかしたらセットされているかも知れないと口にしたカードの内容は以下の通りだ。
爆導索
通常罠
1:このカードと同じ縦列全てにカードが存在する場合、セットされたこのカードを発動出来る。その縦列のカードを全て破壊する。
「では行くぞ、バトルフェイズに入る!
ビッグベン―K自身の効果によって、俺のフィールドの超重武者モンスターは守備力を攻撃力として扱い、守備表示のまま攻撃出来る!
更にダブル・ホーンを装備したビッグベン―Kは2回攻撃出来る!
まずはビッグベン―Kで紅蓮の機界騎士を攻撃!」
「早速だがアクションデュエルの持ち味とやら、使わせて貰おう!
アクションマジック『回避』発動!対象はビッグベン―K!」
回避
アクションマジック
1:フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターの攻撃を無効にする。
「回避の効果で、ビッグベン―Kの攻撃を無効にする!」
「初撃は防がれたか、だが一発は通させて貰おう!もう1度ビッグベン―Kで紅蓮の機界騎士を」
此処で決めると言わんばかりの昇の宣言と共に突入したバトルフェイズ、装備カードによって頭に牛の角を生やしたかの様な姿と化した機械武者が赤き光の騎士へと突進するが、寸での所で騎士が回避、だが機械武者も逃がしてなるものかと急ブレーキを掛けつつ態勢を入れ替え、再び突進しようとしたが、此処で事件は起こった。
『な、何これ!?きゃぁ!?』
「む!?如何した柚子!?」
「アクションフィールドが、歪んで…?」
管制室からの声と共に爆発音がした直後、フィールドを形成していたリアルソリッドビジョンが歪み出し、やがて消失してしまったのである。
フィールドを形成していたリアルソリッドビジョンの消失、それ即ちアクションデュエルの続行が不可能となったという事、よってこのデュエルは水入りとなってしまった。
尤も今はそれ所じゃない事態に陥ってしまったのだが…