七陰列伝の第04話です。
基本、カゲマス準拠です…。
今回は、上中下の3部作の中となっています。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。
そして、シドと七陰の距離感が違います。
──これはそんな「if」の物語──
──それは、『深淵の森』を探査している時のことだった──
…おや、これは……、ひょっとすると……、七陰にわかるかしら……
私が、常時行っている魔力粒子を使用した魔力探査に引っ掛かりを感じるようになってから、~10分くらい進んだころのことだった。
最初に感じ取ったのは、やはりイプシロンだった。
「…なにか、妙な違和感を感じる!?」
「…私にも、かすかに感じられているわ。何かこう……シャドウ・ゲート*1を初めて通過した時のような、空間が捻じ曲げられている感覚よ。」
ようやく感じ取れたようね、イプシロン。魔力探査をやってみて。……感じることはできる?
「やってみます──。」
イプシロンが、魔力粒子を周囲に飛ばして探索を開始する。
「おそらく……、方向感覚を、強力な魔力結界によって狂わされているようです。」
「誰かが、我々の進む邪魔をしている、ということ!?」
「…つまり、この『深淵の森』の核心へと、私たちが近づいている……ということでもあるのかな。」
「ゼータの言う通りよ。私たちは正しく道を進んでいて ──妨害しようとする、何者かが存在している……そういうことね。」
大・正・解!!
「…こっちの方から、強い奴の匂いがするのです。」
「ワンちゃん、隊列を崩さない……」
「メス猫、お前には分からないですか!?」
ゼータも、気息を調え、
「…これは……、確かに、この先に……何かいる! だけど、この感じ方は……主、アルファ様!」
「ゼータがそこまで焦るとなると、極めて危険な存在、ということかしら?」
ではこれからどうする、アルファ。シャドウガーデンの総指揮はあなたよ。
「だったら、このまま進んで、その強い奴を倒してやればいいのです!」
そう言うと、デルタは前?に向かって走り出した。ゼータも慌てて追いかけていく。
「2人とも! 今すぐ戻ってーー」
「…ここはあえて先行してもらいましょう。私たちの意図的に狂わされている方向感覚を信じるよりも、2人の野生の勘に先導してもらう方が、より確実でしょうから。」
ふむっ、重ねて聞くわよ? どうする、アルファ?
しばし逡巡したあとでアルファは答えた。
「…初めからあなたに頼る、というのも、何か違う気がするの。
いいわよ。しばらくアルファに判断を任せるわ。
「ですが、この先にどんな存在が待ち構えているのかわかりません!」
ガンマも迷っているようね。
「ガーデンの新天地を探す私たちに、後退の2文字はないわ。けれども……、ラムダは、ガーデンの構成員を連れて今すぐ森の入り口まで引き返して。報告を待ちなさい。」
「アルファ様……!」
「今回の相手は、どうも想像以上に強力な存在よ。私たちとシャドウ以外では、太刀打ちすらおぼつかないでしょうから。」
「…了解いたしました。直ちに撤退いたします。」
「気をつけて。……私たちは、デルタとゼータの後を追うわ!」
「皆様……、ご武運を!」
私は七陰から少し離れてついていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「こいつは……でっかいぞ!」
「実在……していたというの……!?」
デルタ! ゼータ! くっっっっ。
『────わしの眠りを覚ます者は誰か……』
ガンマは呻いた。
「な、なんて魔力のプレッシャー……」
「…こりゃ意外な展開になってきたわね。七陰も驚いてる。無理もないわね、本当にドラゴンが居るなんてね。」
そこには、2対の翼を持ち、鋭い爪の生えた両腕と、しかし足は無く長い尻尾で身を支えている龍がいた。大きな2本の角を頭に持ち、口には髭が二本と多数の牙が並んで生えていた。
『霧の龍』……!
『そのようにワシを呼ぶ者もかつて存在していた……、だがすべては、時の流れと霧の中に滅びた……!』
「…それは『古都アレクサンドリア』も?」
「ちょっと、ベータ?、正気??」
『風船の灯火たる、自らの命の行く末よりも、歴史の陰でひさがれ続けてきた都の真実を知りたいというのか?』
『たとえ知ろうとも、貴様らはここで息絶え、伝えるべき者なき物語になろうというのに……』
「ええ、とっても知りたいですっ! 得られた情報は、決して多くはありませんでしたが…、この状況を含めて、考察可能なレベルには足りていますから!」
『答え合わせをしたい、とでも?』
霧の龍は、しばし可笑しそうに笑い声をあげた。
『この期に及んで、面白い奴! よかろう、わしが語り部となっている間に、どうわしを出し抜くか策を練ってみることじゃな。』
「なんだ? どっちもおしゃべり好きなのです?」
「シーーッ! 馬鹿犬は静かに!」
さすがのゼータも必死だった。
「『霧の龍』栄華を極めし『古都アレクサンドリア』を荒らし、一夜にして滅ぼした、という伝説もあれば、『古都アレクサンドリア』の王と約定を交わした守護神であったが、王都の約定を裏切り、都を霧の毒で吹き飛ばした、という伝説もあります。」
「ちょっと、こんな状況で、よくインタビューみたいなことできるわね……」
自らの恐怖を凌駕するほどの、物事に対する知的好奇心……私はベータの長所だと思っているわよ。
『それは、真実の一端を担ってはいるが、決して事実そのものを表してはおらんな。』
「では、実際のところはどういう?」
『……わしは、古の時代、アレクサンドリアの王と盟約を結んだ。それは王の拓きし都の繁栄を約束する、強者同士の盟約であった。』
『だが、その盟約は、いつしか忘れ去られていった。その盟約の内容も、意味するところも、このわしの存在すらも。』
『アレクサンドリアの人々はおろか、わしのもたらす霧によって古都に守られ続ける、王の子孫たちですら、わしの存在を 忘れ去っていったのだ……。』
「歴史からも忘れ去られた!? ということは、相当の月日が経ったということですね。生命の生存と 繁栄の歴史から見れば、おそらく1000年にも満たない、ごくわずかな時の流れ、それでも、人にとっては、長い長い悠久の時、とも言えるのでしょうけど……!」
『そなたの言う通り、時の流れに埋もれていく、定命の者の儚さよ……』
「まさか、アレクサンドリアの繁栄は、時の流れとともに腐敗へと変わっていった、と!?」
『……察しのいい小娘だ。想像力があるようだな。そう、倦怠とも言うべき繁栄の中で、アレクサンドリアは古の盟約に基づく支配者の徳をも、失っていったのだ……!」
だから……、滅ぼしたというの?
『大きな力には、その力を証し立てるための、ふさわしい何かが必要であろう?』
『支配者の徳も、その中の一つであるし……。夢、野望、決意……。大きな力には、気高き精神が伴うべきものだ。』
「気高き精神!? あなたは人間が力を持つ上での精神性を、王を始めとする、アレクサンドリアの人々に求めていた、と?」
『人間に限らず、全ての生命に対して、じゃな。』
『その精神を失い、繁栄のもたらす安寧を貪る者どもに大きな力のもたらす恩恵を受ける資格などなかろうよ……。』
…他の種族の暮らしや歴史など、龍にとってみれば、瞬きの間のような時間に過ぎない……。
その長い時の流れの中にあっては、龍は、力に対する精神のあり方を重視する、と……?
『わしが期待したのは、古の王の新たな都にもたらせし叡智が、この世を、この世に生きる命を、変革していくこと。』
『そして、さらなる強者へと立ち向かう力を、己の意志で育み、生命としてより高みへと昇ろうという、精神の発現だった……!』
そこで、デルタに視線を向けるのがわかった。
『そこの獣人にならわかるだろう? 強者の予感に心を躍る瞬間というものが。』
「おうっ、わかるのです! 強い奴と戦うのは、わくわくするです!」
「…つまり、『古都アレクサンドリア』は、強者を求めず、堕落してしまったから……滅んだ……!?」
『そういうことだっ!!!』
霧の龍の咆哮が辺りを切り裂いた!!!
『終わりはあまりに、あっけないものだったな。あれほど繁栄していた都も、霧の流れる向きが変わっただけで……。』
自らが繁栄に力を貸した都を、自らの手で滅ぼしたというの……!
「与えたり、奪ったり、自分勝手なやつ……」
『与えるか 奪うか……。その通りだ、獣人よ! 究極のところは、その2つだけが、この世界を動かす!』
『そして……、この森に深く踏み込んだ貴様らもまた、与えられることはなく、』
『奪われる側となろう!』
…どうやら、ご機嫌を損ねたみたいね。
「アルファ様! 何か策は──」
話している間も、まるで気の緩みを見せなかったわ。だから、毒の霧を避けつつ
「真っ向勝負ということです!?」
この龍に、おそらく小細工は通用しない──純粋な力比べよ!
「狩りではなく、真剣勝負……わくわくしてきたのです!」
『わしの存在を伝える伝説に、また新たな記述が付け加えられることだろう──。』
『好奇心は──エルフと獣人を殺す、と!』
『心臓につながる血管と見て狙ったか……、だが、的外れめじゃ!』
龍が、その爪と尻尾で反撃してくる。皆必死に避け、捌き、受け流す。
「…一撃が半端なく重い……!」
「メス猫っ! もっとしっかりやれ!」
デルタが咆哮を挙げて真正面から突っ込んでいった!
「デルタスペシャル!」
「バカ犬! 正面からぶつかっても……。」
『龍を相手に、力任せの一撃など! 笑わせてくれる!!』
その場で受け止められてしまい、反撃をくらって、デルタが弾き飛ばされて来た。
イプシロンとベータが慌てて避け、ガンマが受け止めて、一緒に転がっていく。
「ちょっとベータ、こいつの弱点とか調べてないの!?」
「そんなこと言われましても! 本当に森の中にドラゴンがいるなんて、そもそも思っても見なかったんですけどっ!」
「じゃあそのドラゴンの弱点よ! 生き物なんだから、殺せるんでしょう?」
ベータの顔が歪んだ。
「弱点はありません……、少なくとも、私の知る上では、まったく!」
「はぁっ!?」
「それどころか、ドラゴンという種族は、通常の攻撃では命を奪うことができない、とも言われていて────」
「何よそれ! 存在自体が反則じゃないのよ!」
──シャドウは、少し離れたところで様子を見ていた──
「ふむ。格上、それも人間相手とは比べ物にならない、そこらのモンスターよりもよっぽど強い相手。まぁ仮にもドラゴンだし、そのくらいじゃなくっちゃね。…さて、となると…アルファがいつ、
『そういう存在を内包するのが、世界というものだよ、エルフの小娘!』
霧の龍は、嗤いながら攻撃をしてくる。
「ベータ、イプシロン!!」
「ベータは下がって! くっ……結構ギリギリだったんだけど!」
『足手まといをかばっているのかわからんが、その体たらくでは、避けるのがやっとじゃぞ?』
イプシロンが氣と魔力を高め、そして、冷静に連携攻撃を放った。
「五月蝿い、余計なことを言うなっ! ……ベータ! アッチェレランド!!」
「続きますっ、エクスプロード・ショット!!」
イプシロンとベータが連携して氣と魔力を込めた一撃を決めた。がドラゴンはわずかに揺るぐだけだった。
「…決まっている手応えはあるのに、効いている気配はまるでない……どうすればいいの!?」
「くならぁーーーっ! 気合の一撃!」
ガンマが大太刀で切りかかる。
「ベータ! イプシロン! 下がって! これだけ的が大きければ外す心配はない……けど!」
『そう、倒せることと同義ではない。知恵が回る者ほど、絶望するのも早いというものじゃな!』
「フッ、それはどうかしら……」
アルファが背後に廻り込み、氣と魔力を込めた大技を叩き込んだ。
この一撃でっ!ファントムスラスト!!
「通ったのです……!」
「脊髄への深い一撃……! あれなら、どんな生き物だろうと……。」
『賢しいぞッ! 高貴なる者よ!』
霧の龍は、大技を決めて動きの止まったアルファに尻尾を横殴りに叩きつけた。
「「「「「アルファ様!」」」」」
ギリギリで刀で逸らしたのか、吹き飛ばされてはいるが、ダメージは少ないようだ。
……強い!!
『そう、強いのだ。』
『お前たちとて、強い……。それこそ、並の生命では比較にならないほどに。』
『だが、世界には、上には上がいる、ということよ……!』
シド……いえ、シャドウ!!
「…それじゃあ、始めるとしましょう……」
七陰列伝第04話です。
基本はカゲマスで、霧の龍vs七陰(イータは不参加)です。
上中下の3部作の中ですが、ちょっと冗長だったかなぁ。
早ければ明日、下もあげれるかもしれません。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。