七陰列伝の第0.5話です。
これまでいろいろと練って来た設定ばらし回でもあります。
なので、今回は、ちょっと長いです。
さて、本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わっています。
なによりも。影野ミノルの自我がありませんが、記憶──感情付きの記録でしかありません。
なので、記録を客観的に見たレミーや七陰にとって、前世の認識はこんな取り扱いとなっております。
それに注意して読んでください。
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
シャドウガーデンが、この世界の闇について調査と悪魔憑きの救出を開始する前。まだ七陰しか構成員が居なかったころ。シドの実年齢で8歳だったころのことになる。
その七陰をシドに内緒で招集したレミーによる話は、シド──シャドウガーデンの盟主シャドウの根幹に係る話だった。
「七陰は、シドが前世の記憶──感情付きの記録─を持っていることは知っているよね?」
みな頷いた。
「シドは、ぼく──レミーのこと、入れ代わりのこと、シドが変身できること、そして前世のこと──17歳まで生きた男の子の記憶──感情付きの記録──、それも高度に発展した科学技術を持つ文明、……それも異世界の物、って、教えたと思うんだけどー。」
「まぁ、主の言う言葉でなければ、信じられないことばかりだったね。」
「『彼の叡智』のこと……。もっと……知りたい……」
「うん。ゼータにイータ信じてくれてありがとう。でも、もうちょっと突っ込んだ話がしたくてねー。」
レミーは、イプシロンに紅茶を入れてくれるように頼んだ。
カップが配られてから唇を湿すことしばし、おもむろにアルファが口を開いた。
「それで? 七陰全員をシドに
だから、アルファのアタリってキツイんだけど……と溢しながら話し始めた。
──それが、七陰によるシドを守る戦いの始まりでもあった──
うん、一応は。
それは始まりからして不穏なものだった。
「実は、今のシドって、割と奇跡的なバランスが取れている状態なんだー。」
そこでもう一口紅茶を口に含んだ。
「前世の“ボク”って、主人公でも無く、ラスボスでも無く、物語に陰ながら介入し実力を見せつけていく存在『陰の実力者』になりたかったんだー。」
そして、一度
「いっそ、渇望していた、といってもいいー。」
「脅かさないでよ、実力者って、それは別に悪いことじゃないでしょう?」
アルファが息を吐きながら聞き返す。
「そうだよー。ただの実力者になる、ならねー。」
「…つまり、『陰の実力者』ということに問題があるのでしょうか?」
「半分正解だよー。」
半分?と、首を傾げるガンマに向かってレミーは続けて言った。
「言ったでしょー。
どうやら、今ひとつ異常性が伝わっていないようだ。
「よく聞いてー。物語に介入ていうけど、
アルファたちはみな頷いた。
「
それは他人に対して余りにも自分勝手で無責任なことじゃないかしら、とアルファの口からこぼれおちた。
「さらに言うと、前世の“
己の信念のために生きていた人……ではありますね、とはガンマだった。
シャドウ様とずいぶん違っているんですね。似なくて良かったです、とはベータ。
違う違う、とレミーは首を振りながら言った。
「だ・か・ら、もう、ぶちゃけると、前世の“ボク”って、控えめにいっても
言葉の響きからしてあまり良い言葉では無さそうですね、とイプシロンが呟いた。
「サイコパスっていうのは、自分以外の人間に対する愛情・思いやりなどが著しく欠けている人、自己中心的で道徳観念や倫理観がきわめて乏しい人、反省なんてしない無責任な人のことよ。」
ちょっと待って……、理解が追い付かないわ、とアルファが話しを遮ろうとしたが、レミーは話し続けた。
「だ・か・ら、前世の“
何時ものレミーのように語尾を伸ばすこと無く話し続ける。
「はっきり言って、世界をまともに──舞台装置程度にしか見ていなかったんだ。」
「他人のことも「ネームドキャラクター」とかモブとか言って個人名をほとんど覚えなかったんだ。」
「結果的に人助けはしてたけど、それで陰の実力者ゴッコをできたこと、実力を出せたことに満足していたんだ。」
「…でも、今の主の在り方とは、全然違っている。」
「ゼータの言う通り。今のシドって、サイコパスじゃないよね。それに今のシドの
──アライメントとは、人の性格や指針を示す属性のことだ、とレミーは説明する。
「自分はどう行動するか」の指針──社会的な「規則」に対する態度の在り方──
『秩序』は社会の
『混沌』は逆に、他人の決めた
従わないことで不利益を被る場合などは“渋々”従う事も有る、とのこと
『中立』は
「他者とどう接するか」の指針──他人との繋がりに対する「道徳」的な在り方──
『善』は他者を尊重するタイプ
──みんなが幸せだと嬉しい。その上で自分も幸せならもっと嬉しい──
『悪』は自分だけが良ければいいタイプ
──他人とは自分の幸せの為にある。むしろ俺の為に死ね──
『中立』は場合に応じてどちらにもなりえるタイプ
──基本的に自分の幸せが第一だが、他人を不幸にしてまで、とは”あまり”思わない──
「でも、前世の“
それって、ほとんど最悪なのでは、ベータは
シドが以前に言ってくれた、高度な文明をもつ科学技術の発達した世界の男の子の記憶って、こんなに
「で、問題はここから。考えてみて。ものごころがつくかつかないころに
皆思わす息をのみこんでしまう。
「ぼくも
なるほど、奇跡のバランスと言うはずね。アルファは納得した。
「それでも、シドに、いくつかの
1つ目は、“
2つ目は、人助けをすること。最後の1年間ほどスタイリッシュ暴漢スレイヤーとして、
西野アカネ? ──“ボク”曰くネームドキャラクター──を何度か助けていたから。
3つ目で最後は、
だから、自分なりの『陰の実力者』を目指そうとしている。
まぁ本当はもう一つあって、3つ目の陰の実力者たる者、普段は平凡で決して目立たない、人畜無害なモブAとして過ごし、いざという時に正体を隠して実力を見せつける、とか言う、訳がわからない目標もあったんだよ。どうしても最期の一年間の人助けの記録の方が鮮明だったので欠片も残ってないけど。
だから、あんなに魔力や氣の修行したり、自己改造を止めないのね、人助けも。アルファは納得したように頷いた。
「そういえば、以前王都近くに遠征中に、誘拐された女の子を助けた時に『通りすがりのスタイリッシュ盗賊スレイヤー』って名乗っていましたよ。」
「それは“
「もしも、アライメントが『混沌・悪』に傾くようなら、サイコパスな言動が出てきたら……、
そんな……マスター、変わって……いっちゃうの、と思わずイータの口から悲しさがあふれた。
「気にし過ぎなのかもしれない。でも……」
レミーはアルファを見つめて言った。
「問題は、シドが王都のミドガル魔剣士学園に通うようになるころ。今は七陰やお姉ちゃんがシドを『中立・善』に繋ぎ止めている。その箍が外れてしまったとしたら──どうなると思う、アルファ?。」
「一気に侵食して、今のシドが居なくなってしまう、とでもいうの?」
アレではあるけどシドの前世だから…多分
「考え過ぎだと思うのだけれど……」
レミーは、躊躇ったあと、口を開いた。
「これは聞きたくなかったんだけど……アルファは、自分が解呪された時のこと覚えている?」
「?、ええ、もちろん憶えているわ。私が再誕した時のことよ。悪魔憑きになってから──腐った肉塊になってから、始めて抱き締めてくれた。始めて優しい言葉をかけてくれた。始めて向き合ってくれた。シドの青紫色の魔力と氣に包まれて、1か月間昼も夜も寄り添ってくれた。私がシドの魔力や氣で染められていく至福の時を……」
「……熱くなっているところをごめんね。そういう意味じゃなくて……」
さらに躊躇ったあと、いいずらそうに口にした。
「……解呪に成功した
アルファは、そのままで“ピシッ”と音を立てて固まった。
その表情は不自然なほどにフラットで、その青紫色の瞳からハイライトが消えていた。
それも一瞬のこと、直後にトンでもない
『アルファ、落ち着いて、ね。』
…
……
………
「…………シドの声で喋らないでくれる、レミー。」
かなり低い声だった。
苦虫を千匹は噛んだような表情だった。
「……寿命が縮んだね。」
数年くらい、とゼータがイスを戻しながら言った。拠点毎吹っ飛ぶかと思った、とも。
「あの……、アルファ様?」
微動だにせず座ったままのアルファに聞いていいのかイプシロンは躊躇していたが、ガンマは意を決して尋ねた。
「悪魔憑きの解呪をもたらした祝福すべき日のできごと、というわけでは無いようですが。」
「あの時、最初は……って言ったの。」
「先に言っておくけど、実年齢5歳で、あの時は1ヶ月間アルファの解呪に付きっきりだったからね。シドが多分生涯で、2番目に精神を削られて心が弱っているときだからね。」
「シドは、最初は『君はもう自由だ』『これで故郷に帰れるよ』『君の未来に幸あれ』って言ったの。」
そうよ、あの時に『シドを絶対に逃さない』って決めたじゃない(黒笑)。
「シドが
「マスターの……生涯で、1番目……って?」
「でも、ぼくの懸念事項が的外れじゃあ無いって、シドの危険性について
アルファは大きく深呼吸してから答えた。
「ええ、懸念事項はわかったわ。確かにあの
アルファは、グッと両手を握り力を込めた。
「
『シドを絶対に逃さない、
「つまり、今後は主様の
1ヶ月間付きっきりって、私の時には1週間位だったのに…妬ましい。
「私の時は、2週間位だったのに…妬ましい。」
そこまでして解呪方法を見つけてくれたなんて、シャドウ様♪。
「あー、ベータ、本音と建前が逆よ。」
要は、シド様のアライメントに注意すればいいのよね。
「マスターの……アライメントを、逐次……検査する……必要……ある。」
前世の……記録も、精査する……必要……あり。
「驚いたけど、主の心を
助けてもらったことは、変わらない。
「ボス・レディーの敵は、ボス・レディーの中に居るのです?」
う〜ん、お話しは終わったです?
「あとは、どうやって、シドのアライメントを今の状態──秩序寄りの『中立・善』に繋ぎ止めるかね。」
「たしかに、このまま何の手も打たずに、王都の魔剣士学園に行くとなりますと……」
ガンマがチラリとゼータを見る。
「シドと同学年に、ミドガル王国の第二王女様がいたね。オリアナ王国にも1学年上に王女様がいるけど関係はないかな?」
「まずいわね。えっと、物語の主人公のことを「ネームドキャラクター」というんだったかしら?」
「正確には、物語に出てくる主要な登場人物のことだよー。王女様をことを「ネームドキャラクター」呼びしたらヤバイ傾向よー。」
「他には……、わからないな。併設されてる学術学園についても調査が必要かな。」
ゼータに調査は頼むとして──、ガンマ、とアルファは声をかけた。
「あなたも今後、王都の商会株を入手しようと動くのだから、ついでに調べてちょうだい。」
「アルファ様、かしこまりました。」
「イプシロンにも協力してもらうわよ。ベータ、教団関係は?」、
「はい、アルファ様。王都は、教団のフェンリル派が多数派です。それ以外にロキ派とヨルムンガンド派の存在が確認されています。また、騎士団内にも、教団が浸透しているようです。あと、未確認情報ですが、元ラウンズが学園で教職を務めている、というのもありました。」
「“ボク”のごっこ遊びの相手に事欠かないのね。シドが学園に入学するまで…約7年。それまでに対応しておく必要があるわね。」
「あとは……、住む場所としては、学園寮に住むことになると思われます。シャドウ様であれば特待生枠に入って、学園内の寮になるかと。」
「クレア様も、3年生として一年間は被っているわね。その後は魔剣騎士団に所属するのかしら?」
「クレア様の実力であれば入団は確実でしょう。数年は騎士団で経験を積むと思われます。」
他に不安要素はある?
「オリアナ王国で教団のモードレット派が暗躍し始めている、との情報もありました。」
「そう、イプシロン。そっちにも手を伸ばす必要があるわね。」
「あとは、ベガルタ帝国関係ですが、こちらもこれからということになります。シャドウガーデンとして勢力を拡大させ、力を高めることを決定したので、数年以内には……。」
「そうだねー、シドもまだ、今年で実年齢は8歳だし。アルファが言っていたように7年はあるよー。焦らず進めてほしいかなー。」
イータが手を挙げて言った。
「一般的に……過度の……ストレスは、良くない……」
「そうだねー、イータ。それに、シドって実は、まだ性自認が未分化なんだよねー。
「「「「「ちょっと待ったーー!」」」」」
わっ、ビックリさせないでよ。アルファに、ベータ、ガンマ、ゼータ、イータ。
「シドの性自認って、
代表してアルファが聞いた。
「まだ未分化っていうのが正解かなー。もともと、
ゴクリ。アルファが唾を飲み込む音が聞こえた。
「ということは、シドを女の子として洗のぅ……調きょ……教育をして、性自認を女の子に固定してしまえば
「アルファ様……さすが第一席、見直したよ。さらに、恋愛感情も持たせてシドの恋愛対象を女の子に洗のぅ……調きょ……誘導をして、恋愛対象を女の子に固定してしまえば、ますます
「そうですわ、アルファ様、ゼータ。さらに、男は不潔で野蛮なオオカミとしてシドの周囲から男の子を排じょ……駆じょ……遠ざけて、周囲を女の子で囲い込んでしまえば、ますます
「ん……、マスターが……侵食される……可能性は、徹底的にシドの周囲から壊めつ……殲めつ……全滅させて、周囲を……囲い込んで……しまえば、さらに
「つまり、シャドウ様の周囲を、メンバーズ、……ナンバーズ、……七陰だけで、固めてしまえば、さらにシャドウ様は安定する……!」
「いやいや、ベータ、一応クレア様とかは許してあげましょうよ。私も乗っかるけど。」
「ボス・レディーは元々、
「……シド最大の味方であり敵は教団では無かったのねー。でも、七陰の全力でシドの心を守ってちょうだいー。」
ええ、シドは絶対に逃さない、って決めたもの。
シャドウ様♪、逃がしませんよ。
主様、このガンマにお任せ下さい。身も心も……
主、ほんとは私だけを見て欲しいけど、七陰までなら許せるかな。
マスターと、一生……一緒……楽しそう……
えっ、私もなにか言った方がいいの?
う〜ん、お話しは終わったです?
「となると、シド──シャドウの外見年齢についても、考慮する必要があるわね。」
「たしかに、いつも前世の最期と同じ年齢──17歳くらいになっているんでしたっけ」
イプシロンがレミーに確認する。
「そうだよー、前世の最期は17歳の夏だったよー。死んでしまった経緯はあまり言いたくないかなー。」
「つまり、今の私たち13歳──アルファ様とベータとデルタ──と15歳──ガンマとイプシロンとゼータ、イータ──よりも年上に変身している、ということですね。」
「そうね、私たちと同じ年位にはなってもらいましょう。」
「そうですね。いつまでも年齢不詳というわけにもいきませんし、ということで今後は外見年齢は15歳として、そこから育って行ってもらいましょう。」
「ちょっと待って、ガンマ。それでは私とアルファ様よりも年上になってしまいます。それだと、シドを女の子として洗のぅ……調きょ……教育にするのに困ってしまいます。」
「そうね、だから外見年齢は13歳にしましょう。いいわね!」
「そうです。ガンマたちは、ちょっとお姉ちゃんとして導いてあげるんです。シャドウ様ってクレア様とかお姉ちゃんに弱いところがありますし。」
「マスターの、お姉さま……いいかも。」
「主のお姉さん、か……前世から守ることを考えても同じ年設定よりいいのかな」
イータとゼータは乗り気なようだ。
「シャドウ様のお姉ちゃん……って、実年齢(8歳)考えたら、みんなお姉ちゃんよね?」
イプシロンの意見はもっともであるが、これまで3年間ずっと外見17歳で七陰を導いてくれたわけで…。
「主様のお姉様……」
ガンマは少し考え込んでいるようだ。七陰とレミーの注目が集まるが、しばらく考えた後、了承した。
「…実は、主様のアライメント対策として思いついたことがありまして…もう少し考えさせていただきたく。」
──この時のガンマが考えていた二つの案が、近い将来アライメント対策として使われることになる。さすがは最硬にして最高のガンマである。
とはいえ、これから教団の調査を始めていく過程で悪魔憑きを奪還・救助していく以上、あまり
わいわい、がやがや
こうして、シャドウ不在のまま、外見年齢、設定、背格好等が細かく決められていくのであった。
スタイルはスラッと系よ!そこは譲れない。ワタシとお揃いよ
イプシロン…スタイルはいい方が良くありませんか?
シャドウ様は今までもスラッと系よ。動きづらいのは嫌だって、究極の機能美とか言ってたわ
でも、これを機にボンキュッボンになってもらっても…
…あなたは敵よ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それは、シドが実年齢では8歳のころだった。その日もレミーに入れ替わってもらって、『核』に勝つため氣と魔力を同時に使用して魔力を集中させる修行をしていて、それなりの結果が得られてホクホクしていた時のことだった。、
先日、シャドウガーデンのみんな──七陰たちが、自分たちに十分に力がついたとして、この世界の闇──悪魔憑きの真実をもとめて、聖教を隠れ蓑としているディアボロス教団への調査と、英雄の子孫たち──悪魔憑きの捜索・奪還・救出を開始することに決めて、しばらくたった後のことだった。
その日、建て増しされた拠点の新たな
変身を身に付けて以来、特にこだわりは無かったが、なんとなく前世の最期の年齢の姿に変身してきていたわけだが、今後、悪魔憑きを救出して構成員が増えてきたときに、盟主であるシャドウが、年齢を固定している、というのはちょっと……という話になったのだ。
いや、それをいうと「実年齢8歳」で「分身がいる」、とか「変身できる」という方が不味くない?と聞いたのだが、「分身」については、普通に影武者として協力してもらっている、ということでいいらしい。そして、「変身」については、悪魔憑きを自力で世界で初めて解呪したときに、色々無理してできるようになった、で押し通すらしい。
それなら外見年齢は17歳に固定でもいいんでないの?という話になったのだが、そこについては、あくまで変身能力も+5歳まで、とかにして、そこで成長するようにした方が、説明しやすい、とのことだった。そうかなぁ?
「これは仮定の話になりますが、シャドウガーデンの構成員が増えてきたとします。それら全員に、シド様の秘密について全て説明していくおつもりでしょうか?」
いや、それはちょっと……。たしかに七陰は私の直弟子だからいいとして、それ以外の構成員にまで詳しい事情を説明するのは……いやだなぁ。
「それは私たちも同じです。主様の秘密を知るものが増えると漏洩する可能性が増えます。それは許容できません。ですので、実は『
たしかに、『彼の叡智』の彼って誰よ?って話になるわね。それについてはそのとおりね。
「ええ、できれば、叡智自体も主様が古文書等から自力で解読した、としたいです。幸い家系図的に古い時代の資料を持っていてもおかしくないだけの家柄ではありますし、現拠点であるこの古代遺跡で発掘した、とかでもいいので。」
古代語とかも読めないといけないのね。はい、シャドウ様。私がお教えします。ありがとうベータ。…私も手伝えるわ、アルファもありがとね。いえいえ。、
「ですので、変身能力についても、許容できる範囲で考えると、外見年齢を固定してしまうよりも、『シド様の年齢+5~7歳程度に変身できるようになった』、そしてそこから成長していく、という方が問題は少ないと思われるのです。」
う~~ん。ガンマの言う通りになるのかなぁ。
「でないと、あと2年後には七陰のうち年長組──私ガンマ、イプシロン、ゼータ、イータの方が、4年後には年少組──アルファ、ベータ、デルタの方が年上ということになってしまいます。その先はどんどん差が開いていくことになります。」
…それは、たしかに嫌かな。私だけがどんどん年下になっていく、というのは……
「私たちも盟主が成長しない少女のまま、というのは避けたいのです。それに、別の危険性もあります。」
別の危険性?
「シドの……家系図を、調べた時のこと……覚えてる?」
ん、イータ?、あぁ、ほんとに人間の英雄の直系の女系の子孫だったことね。
「…ちがう、そっちの方……じゃない。」
「主様のお父上、オトン様の家系の話になるのですが、まだ確証がありませんが、初代様の姉の名前がエリザベートとなっていましたよね?」
うんうん、覚えてるよ、ガンマ、英雄の直系じゃなかったからね。哀しいね。
「実は、年代を考えると、そのエリザベート様は始祖の吸血鬼ということになります。」
えっ、吸血鬼ってこの世界にもいるの?
「主様、じつはこういったところも心配になっているのです。この世界に千年前には吸血鬼はいて、恐怖の対象となっていました。今でも無法都市の紅の塔に存在が確認されています。そして吸血鬼は手下としてグールを使います。この辺の常識をご存じないですよね?」
うっ、それは…この世界のことについては、実年齢ベースの8歳でわかる範囲しか習っていないからなぁ…
「そして、現在に残っている吸血鬼というのが、無法都市の紅の塔にいるという始祖の吸血鬼、血の女王エリザベートとその配下だけです。仮に家系図が正しいとすると…」
まさか、その始祖の妹さんだったとか?
「その可能性があります。それでなくても、年齢を固定されていると主様が吸血鬼扱いされるかもしれないわけです。」
あちゃー、そういう存在がこの世界にいるのね、となると年齢を固定することにもリスクがともなう、ということなのね。
「はい、ですので、主様には外見年齢を15歳に「13歳でしょ、ガンマ」…そうでしたねアルファ様」
二人の視線がぶつかって、火花が散った気がした。
「さっきガンマがいったと思うけど、シドにはこの世界の常識についての教育が必要だと思うの。だから実年齢との差をあまりつけたくないの。そこで、私たちと同じ13歳──実年齢との差を5歳として、こちらの
そうかぁ、たしかに貴族教育を受けていても、考えのベースが“ボク”の記録に引っ張られる、というのは結構あるからなぁ。平和ボケ日本の記録がね。
「ですので、主様が今の外見年齢の近くで、というのであれば15歳というのもありだったのですが、実年齢との差が7歳もついてしまいます。さすがに倍も差をつけてしまうというのは…」
それで、外見年齢13歳程度ね、たしかに見本としてアルファやベータ、デルタがいるのはいいかもしれないし、教育等を考えると実年齢との差を小さくする、というのはわかったわ。たしかに17歳であることにも特に理由を考えていなかったのよね。
「それに、クレア様+3歳であればシドにも想像しやすいと思ったの。」
それは…確かにそうね。今の17歳もお姉ちゃんとオカンをベースにしてるし。
「あと、その…前世の記憶──記録に引っ張られてなのでしょうが、主様はちょっと、女性的なしぐさとかがあまり…」
「…それは、自覚あるわ。そんなに男っぽかったかな?」
「その、修行や戦闘時には問題ないのでしょうが、例えば今の主様の座り方を見て欲しいのですが…」
「? 膝は閉じていると思うけど…」
「スカートの裾のさばき方をイプシロンと比べて見てください。」
「えっ? でも、イプシロンって元お嬢様だから…」
「それは所作とは関係ありません。シャドウ様、こう座るんですよ。」
そういって、私の前にイスを持ってきて座って見せる。
座り方から全然違っていた…、ショック。たしかに、ロングスカートの場合スカートの裾さばきも必要なのね。8歳ではそこまで注意されないから…
「あとは、メタルスライム製の服のバリエーションも増やしましょう。お出かけ用の服とかお揃いで買いに行きましょうね。」、
なんかうれしそうだね、イプシロン。
「といわけで、外見年齢も変更しましょう? ね!」
うっ、それは理解したけど…
「だって、シャドウ様のモデルになる、っていうと、一番私の体形に近くなるわけじゃないですか。」
そりゃ、体形的には、動きやすさを重視した究極の機能美を目標にしてるから、スラッと系のイプシロンを参考にさせてもらうけど…
「ええっ、シャドウ様、これからはボン・キュッ・ボンというのは…」
いや、ベータ、それはちょっと…動きづらいのは嫌かな。
ほら、スラッと系でしょう?、う~~ボン・キュッ・ボン~~、どうせならショートに…髪色と髪型は変えさせない! えっゼータ君、変・え・さ・せ・な・い! はい、わかりました。私たちがちゃんと洗ってあげるわ、そうそう、じゃあ身長はどれくらい? 私たちと同じくらいでいいわよ、……
わいわい、がやがや
こうして、シャドウガーデンでの私の立ち位置や叡智の取り扱いや、私への
ニヤリ×7
七陰列伝第0.5話です。
基本はカゲマスですが、今回もちょっと違います。
これまでいろいろと練って来た設定ばらし回でもあります。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わっています。
前書きにも書きましたが、影野ミノルの自我が続いていません。
よって、シドにとっては前世と思われる記憶──感情付きの記録でしかありません。
なので、その記録を客観的に見せられたレミーや七陰にとって、前世への認識はこんな取り扱いとなっております。
これも書きたかったことの一つではありますが、それに注意して読んでください。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
真祖の吸血鬼⇒始祖の吸血鬼 に修正しました。