陰の実力者…?   作:ponpon3

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 七陰列伝の第18話です。

 基本、カゲマス準拠です。

 今回は、『イプシロンの社交デビュー』の上下2部構成の下となっています。


 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。


 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の… 七陰列伝 第18話「優美!イプシロンの社交デビュー」下

 

 

「ワン! ツー! スリー! フォー! ワン! ツー! スリー! フォー!」

 

 くっ……

 

「ツー! ツー! スリー! フォー! ツー! ツー! スリー! フォー!」

 

「あ、頭が重い──」

 

「頭に乗せているビンに集中するんじゃないっ! そんなものは存在しないものと思えっ!自分の体の中心部分、体幹をブレさせないことに集中するんだっ!」

 

 そう、イプシロンはラムダの特訓を受けていた。

 

「ラムダ、訓練役になると人が変わる……!」

 

 なぜか、水を入れたビンを頭の上に乗せて歩くという。

 

「イー!、アール!、サン!、スー!、ウー!、リュー!、チー!、パー!」

 

「な、なによ、リズムが変わった!?」

 

「シャド!、カツ!、シャド!、カツ!」

 

「何よっ! その掛け声!?」

 

「そのままターンしてポージング!」

 

「くっ! はぁっ! …って、わぁっ!?」

 

 ターンまではうまくいったのだが、ポージングのところでバランスを崩してしまい、倒れてしまう。

 

 ビンはメタルスライム製なので割れることは無かったが*1…、

 

 あたた……。

 

「だらしないぞっ! 体の線が歪みすぎだっ! 背骨を地面と垂直にっ! 大地に根差せっ!」

 

 ラムダが厳しい声をかけてくる。

 

「…これ、本当に社交のレッスンなの!?」

 

 もしかしら、シャ・コウ とか別の武術か何かだったりしない、と聞いてしまった。

 

「当然だっ! このレッスン法は、シャドウ様よりご教授いただいた『陰の叡智』を、アルファ様とゼータ様がアレンジしたものっ!」

 

 ちょっと得意そうにラムダが言う。

 

「お二方による、クールでスパイシーなレッスンプログラムっ! 体幹を制するものはっ! 陰の社交活動──シャドカツの道を制するっ!」

 

「どんなプログラムよ!?」

 

 体幹は大事、とはシャドウ様から教えていただいたけど…と呟くイプシロンに対して、ラムダは罵声を浴びせる。

 

「座学ができてるからといって、実技のレッスンをなめるんじゃないぞっ! この世間知らずっ、田舎エルフの箱入りがっ!」

 

「ちょっとラムダ、変なスイッチ入ってる……!?」

 

 教官モードのラムダに驚いてしまった。とはいえ…

 

「…って、そこまで言わなくてもいいでしょう!? だいたい、私、田舎育ちじゃないんだけど!」

 

「泣き言をほざく暇があるならビンに水を詰め直せっ! 頭に乗せて、中身をこぼすことなく、ウォーキングからのターンを連続で10セットっ! 一度でも失敗したらまた1セット目からやり直しだっ!」

 

「ちょっと! そんなのできるわけ…「できるまでやれっ! できなければ負けて死ねっ!」…」

 

 ラムダの腹の底からの叫びに、イプシロンは負けん気を発揮した。

 

「くっ……やってやるわよーーっ!」

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「…厳しいですね、ラムダ。」

 

「あら、そんなことないんじゃない?」

 

 そんなイプシロンのレッスン風景をアルファとガンマが見にきていた。

 

「普段の彼女は、もっと苛烈よ。ガーデンの新兵なんて虫けら呼ばわりなんだから。」

 

「ラムダが教官として、そういう役割を演じているということですか……。だから、イプシロンも怒りこそすれ、ラムダのレッスンにはちゃんと従っていて…」

 

 頷きながらアルファが答えた。

 

「本質的には礼儀正しい子だから、このレッスンにおける上下関係については、ラムダの方が絶対的に上だと分かっているのね。」

 

「それに、レッスンで得られる技能がオリアナ王国で顔を売るために必要不可欠だと、精神的にはもちろん、理屈としても理解している。魂をかけているのよ、このミッションに。」

 

 なお、このレッスン、元ネタを提供したのはシャドウであるが、アレンジしたのがアルファ(・・・・)とゼータであることを忘れてはいけない…

 

「…イプシロン…!」(頑張って)

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「イー……アール……サン……スー……! シャド……カツ……シャド……カツ……!」

 

 はぁっ……はぁっ……! 息も切れ切れだ。

 

「の、登ったーーーっ! スライムの力も、氣も魔力の補助もなしで、スーツを維持したまま登りきってやったわーーーっ!」

 

 アレクサンドリアの西側以外を囲む山脈、その北側の絶壁を登攀していたのだ。

 

「…ったく、こんな崖登りのどこが、社交のレッスンだってのよっ!」

 

 あっ…!

 

「でも、とっても素敵な景色……。あんな下から、登ってきたんだな、私……」

 

 

 …登ることで初めて、見えてくるものがある……。

 

 

 登るためには、心も、体も、揺るぎなくあること。その姿を可能とするのは、確かなる体幹……!

 

 社交向けの訓練だけど、戦闘時の姿勢まで安定してきてる。魔力制御の精密性も、レッスンを始める前より高まってる。

 

 つまりこれは、体幹のトレーニングを通じて、すべてに応用可能な集中力が高まっている、ということ!

 

「この集中力さえあれば……社交の舞台なんて眼じゃないっ! なんだってできるし、なんにでもなれる!」

 

 崖の上でイプシロンは叫んだ。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「…ピアニスト、『シロン』。あなたのお披露目の舞台を整えたわ。」

 

 ガンマが訓練を終えたイプシロンに話しかけた。

 

「よみにち新聞ミドガル王都支局が主催する、紅茶と談話を楽しむ貴族向けのガーデンパーティー。そのお抱えピアニストの一人が故郷へ帰るとのことで、ベータに頼んであなたの出番を確保してもらったわ。」

 

「うっ……ベータに、ですか……!」

 

「何か不満でも? オリアナ王国の貴族も数多く訪れる、絶好の会場よ?」

 

 あの(・・)ベータが手配してくれたことに多少の引っかかりはある、が…

 

「い、いえっ、ありがとう、ガンマ。このチャンス最大限に生かしてみせるわ!」

 

「あえて普段着での演奏を行うことで、人々に対し、才能の原石の発見を、より鮮明に際立たせる。カジュアルな姿のうちに潜む、確かな淑女の振る舞いも、感受性豊かな貴族の琴線へと大いに触れることでしょう。」

 

 ラムダが頭を下げつついった。

 

「イプシロン様、良い顔になられました。レッスン中における数々のご無礼、お許しくださいませ。」

 

「ラムダ…ふふっ、いいのよ! その代わり、私がピアニストとしてデビューしたら、あなたは私のファン1号になること! いいわねっ!」

 

「イプシロン様……はいっ! 喜んで!」

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「寝付けなくて、外に出てきちゃったけど……今さら、特にやることもないのよね~。」

 

 真夜中、眠れなかったイプシロンはミツゴシ商会本社の建物から会場にむかってなんとなく夜道を歩いていた。

 

「パーティーの準備も終わってるし、商会の手伝いをする必要もないし。」

 

 それでも、気配を消して、魔力を抑えているところはさすがである。

 

「あとは、本番を待つだけ!」

 

 イプシロンは身悶えしていた。

 

「うぅっ……、あぁ~っ、どうしてこんなに緊張してるの!? シャドウガーデンの任務だって、こんなに緊張なんてすることないんだけど!?」

 

 小さく怒り出した、と思ったら…

 

「…あれっ? ガーデンの初任務のときも、私って、このくらい緊張してなかったっけ?」

 

 悩みだして…

 

「いやここまで緊張はしてなかった? してた? してなかったっ?」

 

 頭を抱えてしまった。

 

「あぁ~っ、もうっ!」

 

 そして、一息ついた。

 

「ふぅ~、まったく……落ち着くのよ、『緻密なイプシロン』、今日まで練習も準備も、完璧にこなしてきたじゃない。

 

 これまでの特訓を思い返す。

 

「ピアノの鍵盤と、高い崖に張り付いて、演奏と社交の技術を磨いてきたのは、なんのためよ?」

 

 うんうん。

 

「歩き方一つ取っても、今の私は、育ちの良い謎のピアニスト! この立ち居振る舞いだって、簡単に身についたものじゃない。厳しいレッスンに耐えて、血と汗と涙を流して身につけたもの……」

 

 っと、血と涙は流さなかったわね……、とぼやいた。

 

「とにかく! 今の私に死角はないっ! …と、自分でもわかってるはずなんだけどね…」

 

 

 ─その瞬間魔力が近くで(うごめ)いた─

 

 

「なっ……! 今の魔力の気配は…? こんな街中──といっても、かなり中心部から離れてはいるけど…、 だからって、こんなモンスターの気配がするなんてことは……でも…」

 

 イプシロンは氣を廻らせて、六感(五感+霊感)を集中させて周辺を探った。

 

「はっ、通り向かいの倉庫の前……こいつは……!!」

 

 

 ─そこには巨大なモンスターが佇んでいた─

 

 

 一瞬呆気に取られてしまった。

 

 真夜中ではあるけど、こんな堂々と……あからさまに大きいのが、いったいなんなの!?

 

 

 急げよ──。 ああ──。 ここをこうして…

 

 

「あいつらは……明らかにまともな目的じゃなさそうね。…それに、確か、あのモンスターって──」

 

 

 

 以前のイータとの会話を思い出した。

 

『バジリスク、捕獲して……くれるなら……邪視……気をつけて。』

 

『…邪視って、いったいどうなるのよ?』

 

『バジリスクに……邪視で見られると……眠らされたり、動けなくされたり……対処を誤ると……一方的に嬲り殺しに……される。』

 

 

 

「そうよ、バジリスク。イータが、実験台に欲しがってたモンスター。飼いならすことも可能だから、実験用に……、な~んて、のんきなことを言ってたのよね、あの子は。」

 

 思わず溜息をついてしまった。

 

「とにかく、さっきの魔力の気配は、あのバジリスクが邪視を使ったってこと……!」

 

 

 様子を窺っていると──

 

「おい、お前ら、そこで何を……!」

 

 バジリスクが視線を向けて…さっきと同じように魔力が蠢いた。

 

「何、を…して……」

 

「っ! 邪視で警備をしている魔剣士が誰何(すいか)をしたのだが、眠らされた……」

 

 

「もしかして、こいつら、バジリスクを利用して、盗みを働こうとしてる?」

 

 周りを見廻して確認する。すでに会場の近くに来ていた。

 

「…この周辺は、会場になってる貴族の別宅の他には、倉庫だけが立ち並んでる、人目の少ない区画。警備は厳しいけど、その網をこうして無力化できるなら、大胆にモンスターを起用しての盗みも、充分あり得る…」

 

 さらに考えを巡らせる。 

 

「明日のガーデンパーティーに向けて、倉庫にはたくさんの高級な品が運び込まれてる。騒ぎを起こさず盗み出すのに、バジリスクの邪視で、警備を無力化してると考えれば…行動の辻褄は合うわね。」

 

 と自分で納得した。

 

「…確か、こっちの倉庫にはミツゴシ商会の品物は運び込まれてないはず…」

 

 ミツゴシ商会の商取引の記録を思い出した。

 

「なら、放っておいても、害はない…なんならある意味、降って湧いた幸運かもしれない。他の商会と提携している、何人かのライバルが、パーティーでおもてなしをできなくなるわけだから──」

 

 

「…よし、開錠できた。運び出すのは、高級な茶葉だけでいいぞ。」

 

「了ー解。」

 

 

「うぅぅ……いや……放っておくわけにはいかない! これが原因で、パーティーが中止になってしまったら、それこそ本末転倒だし…」

 

 それに、それに…、と呟いたあとに…

 

「そう、それに、パーティーを主催している、よみにち新聞の評判が落ちれば、ベータの立場は……まあそこはどうなろうが別にいいとして──新聞の広告を積極的に利用している商会に対しても、少なからず不名誉の余波が及んでしまうはず。」

 

 

 …イプシロンは、すでに理由を探している状態だった。

 

 

「ライバルが減るといっても、実力をちゃんと出せなければ、結局はパトロンの目に留まることはないわけだし…」

 

 きっ、と眼に力をいれた。

 

「何より、私が、こうしてぬけぬけと、目の前で行われる陰謀に対して、見て見ぬふりをしたくないっ!」

 

 というか、ミドガル王国内で自主的に治安維持(盗賊狩り)をしているシャドウ様は、こういうショボい(やから)のチャチな暗躍も見過ごさないはず

 

 ─イプシロンは、衣装をメタルスライム・ボディスーツ─に切り替える。マスクをすることも忘れない─

 

「流浪のピアニスト『シロン』、その正体は……ってね。ベータの『ナツメ』とキャラ被るのはちょっとしゃくだけど! …奴らが倉庫から、何かを盗み出したのか確認したら、介入するっ!」

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「…これで全部だな?」

 

「ああ。」

 

「バジリスクの足跡以外に、痕跡は残さなかったな。」

 

「大丈夫だっ」

 

 そこにイプシロンは姿を現した。

 

「っ!?」

 

「…あなたたちが、盗みを終わらせるまで待っていたのは、どうしてだと思う?」

 

「だ、誰だ!」

 

「誰かが後始末するときに、何がどこから盗まれたか、まとまっていればわかりやすくなるから……よっ!」

 

 言い終わりざまに、イプシロン専用魔道具「イプシロンの大鎌」で空を斬った。

 

 ぐわぁっ! 

 

 すると、間合いの外にいたはずの盗賊が斬り裂かれた。

 

「なっ……!? い、いったい何をした!」

 

 わけがわからない盗賊は狼狽えている。

 

「ふんっ……魔力の斬撃を飛ばしたのよ。まあ、誰にでもできるようなことじゃないから、驚くのも無理はないわね。」

 

 イプシロンは得意そうに答えた。

 

(魔力の斬撃による、中距離攻撃──試しに行けるかな? と思ってやってみたら、できてしまったわ!)

 

(体感を鍛えるレッスンの効果が、体内の氣と魔力の循環を整えて、発動を安定させることにもつながっ

ている!)

 

(…けど、考えなしになんとなく撃つには、魔力の消耗が激しいし……魔力防御もおろそかになる……)

 

「くそっ、まだこんな奴が警備に残っていたなんて……やれっ!」

 

 盗賊はバジリスクに命令を下す。

 

 バジリスクは視線をイプシロンに向け、邪視を発動させた。

 

(まずいわね……こちらの魔力防御が整わない状態では邪視の影響を強く受けてしまう……)

 

(相手と目を合わせなければいい、ってわけじゃない。向こうがこちらを見ている以上、回避はほぼ不可能)

 

 くっ。 

 

「見られたからには、眠らせるだけじゃ済まさねえ。そうだな…へへっ、殺す前に楽しませてもらうとするか。」

 

「うわぁっ、そういうの最低ね……!」

 

「そんな減らず口、今に叩けないようになるぜ…! この小娘を骨抜きにしろっ!!」

 

「…だけど、向こうがこちらを見ているなら!」

 

 イプシロンは大鎌に張った弦を弾いた。

 

 

 !!!!!????? バジリスクは困惑している。

 

 

「ふふっ……どうして邪視が効かないのか、って顔しているわね。バジリスクの視線に乗っている魔力が、私の体に直撃するのを……魔力の乗った音で逸らしたのよ。」

 

「視線を成立させる光に、音を成立させる大気──どちらにも魔力が乗れば、互いに干渉するようになるってこと!」

 

「な、なんだその理屈は!? 聞いたことないぞ!」

 

「ふっ……死にゆくものへの手向けよ。」

 

(口から出まかせでもっともなこと言っちゃったけど、案外そういうものなのかも……!?)

 

「…遊びは終わりよっ!」

 

 イプシロンは、再度大鎌で空を斬った。

 

 ーーーーーー!!!!!! バジリスクは魔力の斬撃に斬り裂かれて声にならない声をあげて倒れた。

 

 ぐあぁーーっ! 盗賊も同時にと声をあげて斬り裂かれた。

 

「そして消耗が激しいのなら、一度の斬撃で、同時に撃破する数を増やす……と。安定して放てるようになるまではこの考え方と運用方法で試すとしましょう。

 

「…なんだか、適度に肩の力が抜けた感じ! ぐっすり眠れそうだし、明日のパーティーもバッチリね!」

 

 じゃぁ、死体を収納して……って、盗賊だからクリーンアップいらないんだった

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 イプシロンは、『月光』の第一楽章を引いていた。

 

「あのピアニスト、見慣れない娘だが……」

 

 さっそくオリアナ王国の貴族が耳をそばだてていた。

 

「なんて叙情的な旋律なのでしょう……あの子はどこの誰なの? 是非当家の専属ピアニストに──」

 

「ちょっと、抜け駆けはおよしなさい! 最初に目をつけたのはこのわたくしよ!?」

 

「しーっ! 静かに! 今は演奏に集中しましょう。」

 

 護衛騎士がそれを止める。

 

「ふふっ、さすがマルコ様ね。おばさまたちの扱い方も心得ていらっしゃる。でも……本当に、素敵な旋律──今は真昼なのに、月の光が差し込んでいるみたい。」

 

 ふふん! とさらに得意そうに演奏を続ける。

 

「…どうやら決まりのようね。」

 

 ガンマが会場を見廻してから言った。

 

「商会の紅茶と合わせてこのパーティーの話題は、あの流浪のピアニスト『シロン』がさらっていく。新たなスターの誕生ね!」

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「ふんふふ~ん♪ ふんふふ~ん♪ ふんふふ~んふ~んふ~んふんふんふ~ん♪」

 

「ノリノリだね。イプシロン。」

 

「えへへ……わかってしまいますか?」

 

「今のイプシロンを見てそうとわからない人の方が珍しいと思うよ?」

 

「そうでしょうか……? それではシャドウ様、本日のお紅茶になります。」

 

「うん、ありがとう。」

 

 イプシロンは紅茶を入れるのが得意だ。しかもお菓子作りも得意と来ている。何でも初見でできてしまう系のゼータとは違って、イプシロンのこれは、地に足のついた才能と特技だ。

 

「いい香りだね……ところで、ご機嫌な理由は聞いてもいいの? ピアノは大成功したんだよね?」

 

「はいっ、…あっ、え、ええと……!」

 

「…えっ、どうして急に恥ずかしがるの?」

 

「いや、あの、いざ口に出すとなると、なんか急に緊張してしまって…!」

 

 さっきまでノリノリで『月光』の鼻歌を歌ってたのに。まあイプシロンは七陰の中でも、特に恥ずかしがり屋というか、プライドが高いというか……いわゆる『乙女のデリカシー』を重視するタイプ。

 

 こちらから色々聞くのは無粋というものよね。

 

「…あ、あのっ!その、私っ、魔力の斬撃を飛ばせるようになったんです!」

 

「へぇーっ、えっ、すご~い!! 戴天流剣術にも氣の斬撃はあるけど、身体から離れると霧散してしまう魔力で斬撃を飛ばすなんて。凄い!!」

 

 霧の龍との闘いで見せた、『アトミック・ソードもどき』なんかは氣と魔力の合一で無理やりやっていることだし…と言うと驚いていた。

 

「どうしても『氣』有りで考えちゃうからね。…魔力が減衰しないよう充分に流すのと同時に、魔力の無駄な消耗は抑える必要がありそうで……うわっ、バランスが難しそう。やっぱりすごいよ! なんて緻密な魔力制御が必要なんだろう。魔剣士の闘い方が変わるよっ!」

 

「えへへっ、そうですか? 私も、もっと上手くできるように頑張ります!」

 

「…石の上にも三年という言葉がある。でも、三年を一年で習得する努力を決して怠らないことね。」

 

「あぁっ! それは『陰の叡智』ですね! シャドウ様のお言葉心に刻みますっ!」

 

「いやいや、今回凄いのはイプシロンだからね。私も使わせてもらおうっと。イプシロン先生、今度見せてくださいね。」

 

「えへっ、えへへっ、そ、そうですか? こんどお教えしますね。」

 

 なお、シャドウの場合、どうしても『氣』が混じってしまうため、純粋魔力での斬撃はとても困難してしまうことになる…

 

 

 

*1
─実は重い原因の一つ─





 七陰列伝第18話です。

 今回も基本はカゲマス準拠です。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。

 シドと七陰の距離感がまったく違います。

 というか、シドは普段から七陰と一緒にいますし。ただ、最近、修行に傾倒気味で…

 本作でのシャドウは氣ありきで考えているため、純粋魔力の斬撃はイプシロンの特技となりました。当然捏造です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います
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