陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第06話です。

 アレクシア拉致計画を使ったガーデンのカウンターがどう進むのか?

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。

 シドと七陰の距離感がまったく違います。普段から七陰と一緒にいます。

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第06話「王族の血」下

 

 

 放課後、騎士団からの通達に従って、さっさと寮に戻り、自室へと向かった。

 

 そこには金髪エルフの美女が魔剣士学園の制服姿で待っていた。

 

「昨日ぶり、アルファ。」

 

「うまくいったようね、シド。はい。」

 

 そう言って、まぐろなるどの定番~タルタルソース味~を差し出してきた。

 

「ありがとう。昼ご飯に間に合わなかったからお腹すいてて。で、どんな感じ?」

 

 まぐろなるどを食べながら、アルファに聞いた。

 

「シドが第一発見者の一人になって、ローズ生徒会長に現場保存させたでしょ? おかげで現場を荒らす役の人たちが入れなくて、魔力痕跡を乱すことも消すこともできなかったようなの。それにシドをアレクシア王女の部屋の近くで目撃した、と証言をする役の子も第一騎士団に聞き込みされてボロをだして逆に尋問されているわ。あのクズ(・・)が、……ええっとフラグ?立てまくっているわ。」

 

 とてもイイ笑顔で答えてくれた。

 

「上々だね。で、もうアレクシア見つかった?」

 

「シドが広域探査してくれたから候補が絞り込めて助かったわ。王都の地下迷宮、北の大通りにほど近いフェンリル派の地下の研究施設のあるアジトで確認されたわ。少々血を抜かれているようだけど、生命(いのち)に別状はないわ。」

 

 まぐろなるどを食べ終わった私は…

 

「はー、生き返った。」

 

 …そのままベットにひっくり返る。

 

「もう、制服から私服にぐらい着替えなさいよ。」

 

 ハァとため息をつくアルファ。そのままのしかかってくる。

 

「すでに『細工は流々仕上げを御覧じろ』という段階だよね。」

 

 至近距離でアルファと見つめ合う。

 

「シドがなぜアレクシア王女様とロマンスを繰り広げてたかは知らないけれど…「ロ、ロマンスは繰り広げてないかなぁ。」…そう?」

 

「でも、朝部屋に迎えに行ったことも噂になっているわ、すっかり注目の的よ。」

 

 僕の瞳を覗き込むアルファから逃げるように視線を逸らす。そりゃ多少バツが悪い。今朝のアレクシアの部屋を訪問したのはガンマの献策だったとはいえ、誤解を招くためのものだったから。

 

「…もう、冗談よ、シド、作戦(プラン)なんだもの、わかっているわ。」

 

 でも少し嫉妬したのよ、といって正面から抱きしめてきた。

 

 あぁ、アルファの匂いだ……なんてことを ちょっとフェチっぽく 考えながら私も下から抱きしめ返す。

 

 暖かくて柔らかくていい匂いがする。なんか本当に眠くなってきそう。

 

「この事件が解決したら、まぐろなるどをご馳走して。さっきのサンド私の分だから。」

 

 アルファはそう言って微笑んだ。

 

「いいよ。なんか悪いね、アルファの分食べちゃって。」

 

 アルファは短く接吻をすると、手を放して立ち上がった。

 

「気にしないで、今日動く予定だから準備ができたらベータが知らせにくるわ。──そうそう、クレア様が自室で反省中だから、顔を出してあげて。それかレミーと入れ代わってあげて。」

 

 レミーがうざいのよ、そういって、クローゼットの扉を開ける。

 

「ところで……あなたを尾行していた例の騎士二人だけど、とりあえず消しておいていいかしら?」

 

「第三騎士団所属なんでしょ? もうちょっしたらまとめてできるから我慢して。」

 

「…そう、でも気が変わったら言って。デルタも来てるし。」

 

 アルファはそう言うと、クローゼットの中にあるシャドウ・ゲートのスライムを起動させる。片足をかけると、小さなヒップが揺れた。

 

「デルタも来てるの?」

 

 特攻兵器デルタ。簡単に言えば戦闘に極振りだったTHE 獣人。

 

「この5-6日間ほど、アレクシアに掛かりっきりになってたでしょ。それに当番が無かったからシドに会いたがってたわよ。詳しいことは準備ができたら伝えるから。またね。」

 

 アルファは最後に微笑むと、制服姿でシャドウ・ゲートを潜って行った。

 

 旅の扉の間の警備の人は魔剣士学園の制服姿のアルファにビックリするだろうな。アルファも、もう 二十歳 だし。

 

 私もさっさと入れ代わろう。そう思い、レミーに思念(通信)を送りながら制服から着換えるのだった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 時が満ちた……今宵は影の世界……

 

 それが、ミツゴシのいるシャドウの下を訪れたベータを迎えた言葉だった。

 

 シャドウはベータに背を向けたまま陰の間(七陰専用会議室)の椅子に座っていた。無防備な背中、だがその背中がなによりも遠いことをベータは知っている。

 

(深夜)の世界。月の隠れた(天候は雨)今宵は、まさに我らにふさわしい世界ですね。」

─ベータの言葉使いムズイよぉ~─

 

 ベータは言った。シャドウはベータを一瞥した。

 

「準備が整いました。」

 

「そう。」

 

 何もかも知っている、そう錯覚してしまうほど見透かした声。いや、事実これから語るベータの言葉は、ほぼすべて知っているのだろう。それでもベータは続けた。それが、彼女の使命だから。

 

「アルファ様の命により、近場の動かせる人員はすべて王都に集結させました。その数125人。」

 

「125人!? 1個増強中隊、5個小隊も?」分隊なら25分隊

 

 少なかっただろうか?「シャドウガーデン」の戦闘力を考えれば、むしろ十分に思える。

 

 が、しかし、ベータは思い違いに気付く。125人の有象無象など所詮は脇役なのだ。事実、記号持ち(ナンバーズ)は全体の1割にも満たない。

 

 今宵の主役は彼女だ。主役を彩る脇役として考えたとき、125という数はあまりにも。、あまりにも少なすぎる。

 

「も、申し訳ありません。今動員できるのはこれが最大で……」

 

 えっ? えっ? と一瞬問答となった。

 

「いや、アルファに聞いていた時より増えている……いや、何でもない。」

 ─ベータの理想のシャドウ様に付き合うの難しいよ~─

 

 ベータはそれ以上問わない。彼女の言葉にはすべて、ベータでは想像すらできないほどの深い理由があり、ベータにはそれを聞く権利も実力もないのだ。それでも、いつかその隣に立ち、そのすべてを支えたいと思う気持ちをベータは抑えきれないでいた。

 

 いつか、その日のため。ベータは胸の内を隠して言葉を伝えた。

 

「作戦は王都に点在する、ディアボロス教団フェンリル派アジトの16箇所の同時襲撃です。すでにシャドウ様の探査とデルタによる追跡によりアレクシア王女の居場所を特定済です。作戦開始後、確保する予定です。」

 16箇所もあるから25分隊いるのね。

 

全体指揮(コマンダー)はガンマが、現場指揮(コマンドポスト)はアルファ様が取り、私はその補佐と情報部隊(インテリジェンス)の指揮をして教団の情報を抜きます。ゼータは諜報部隊(シークレット)で王国に対する調略を仕掛けます。イプシロンは後方支援で清掃部隊(クリーナー)、デルタが突撃部隊(アサルト)で先陣を切り作戦開始の合図とします。イータは作戦本部で悪魔憑きの解呪を担当します。部隊ごとの編成は……」

 

 ベータの詳細を語るのを、静かに聞いていたが、シャドウは報告が終わる直前に片手を上げて制した。

 

「すまないが、つい先ほど、ディアボロス細胞の強制的な暴走反応を感知した。イータにも連絡(通話)したが、どうも教団側が悪魔憑きに対して強硬手段(・・・・)を取った可能性がある。よって、現場には私も向かう。……どうも、デルタの襲撃地点の地下で、アレクシアと一緒にいる可能性が高い。先に現場へ急行する。途中まで案内してくれ、ベータ。」

 

「はぁ~~~っ。はい!」

 

 ベータは共に戦える歓喜に震えた。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 とあるビルの一室、そこには殺戮の嵐が吹き荒れていた。

 

「ひぃっ……、何だお前は、俺たちが何したって言うんだよぉ!」

 

 血の海……まさにそう表現するに相応しいこの場所で男は叫んだ。

 

『それ』は突然やったきた。

 

 前触れもなく、理由述べず、いきなり壁を突き破って殺戮を始めた。今ももう1人、漆黒の刀の餌食となる。そしてその死体も消えた。もう誰も『それ』と戦う気などなかった。心にあるのはただ我先にと逃げ出したいという思い。しかし、たった一つの出口は『それ』の背後にある。

 

「た、助けっ、ぐあああぁぁぁぁぁっっっ!!」

 

 男の体は左右に分かれた。脳天から股下まで一直線に切断され、血を噴き左右に倒れた。その身体もすぐに消えた。

 

『それ』は全身に血を浴びながら、振りそそぐ血を愛おしそうに受けとめる。

 

 姿形は女性のそれだが、その様はまさしく悪魔。

 

『それ』は辺りを見廻して得物が残り少ないことに気付くと、刀を伸ばした。

 

 比喩でも何でもなく、それは壁を突き破るほど伸びた。『それ』は伸びた刀を大きく振りかぶり、建物ごと、すべてをまとめて斬り捨てた。

 

 轟音が辺りをつんざいた。

 

「始まったわね。」

 

 建物が冗談のように切断され、崩壊していくのを、その美しいエルフは時計塔の上から眺めていた。

 

 黄金の長い髪は風に流され、夜の闇に煌めいた。

 

「デルタ……あの子はいつもやり過ぎよ。」

 

 ため息をつき、首を振った。やってしまったことは仕方ない。

 

 アルファは時計塔の上から王都を見わたした。

 

 王都全体が慌ただしく動き始めている。予定通り、すべてが始まったのだ。そしてその注目は建物を斬り刻んだデルタに最も集まっている。

 

「デルタのおかげで他が動きやすくなるのも事実ね……」

 

 周辺の被害にさえ目をつむれば、彼女の働きは最高のものだった。

 

「あの子たち、今頃片付いたかしら?」

 

 そう言って、時計塔から身体を躍らせた。

 

「私も、さっさと片付けましょう。」

 

 そう言って、大通りに横たわる巨大化した悪魔憑きの解呪に向かって行った。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 大通りと反対側の裏通り、そこに教団員が走って向かってきてる。

 

 迫ってくる、二列横隊での教団員に対して、ガンマは横一文字にメタルスライムの大太刀を伸ばしながら振りぬいた。前列にいた者は上半身と下半身に分かれて吹き飛んだ。しかし、伸ばし過ぎたのか、大太刀の先の方が道の横にある街灯の柱に食い込んで止まってしまう。

 

 そのままガンマはかわいく掛け声をかけながら力を込めて、柱ごと持ち上げる。これには教団員も驚いて動きが止まった。そして逃げ出そうとするが……

 

 ガンマはおりゃーと叫びながら、柱ごと大太刀を振り上げると、飛び上がって教団員に振り下ろした! 一瞬土埃が舞った。残りの教団員はミンチになった。

 

 ふう、と一息つく。そこに…

 

「ガンマはドジなのです。」

 

 その大太刀の柄に飛び乗った血塗れのデルタが言う。そこから大きくジャンプをして第二陣の教団員の中心に飛びおりた。

 

 爪を伸ばして素早く動きながら、周囲を囲む教団員を斬り裂いていった。

 

 残心しているデルタに向かって、その大きさから出遅れたのか、教団の巨漢が斧剣を上から振り下ろしてくる。それを、勘で避けたデルタは、とんぼ返りをしながら剣を生成して縦一文字に切り下した。

 

 ガンマに向かって、得意そうにいった。

 

「楽勝なのです!」

 

 しかし、やや浅かったのか巨漢が立ち上がり斧剣を向けようとしたが、その頭部を横から矢が貫いた。

 

 デルタが振り返ると、崩れ落ちる巨漢がいた。

 

「獲物を仕留めたかは、ちゃんと確認しなきゃダメですよ。」

 

 建物の上から狙撃したベータが飛び降りてきて合流する。死体をさっさと収納していく。

 

「それにしても……、今回もまた派手に暴れましたね。イプシロンたち(クリーナー)が大変です。」

 

 そうデルタに話しかけるベータを、隙と捉えた教団員が二人路地裏から不意をついて飛び込んでくる。

 

「はわあぁ~~~、なーんて。」

 

 そう言いながら、一瞬で刀を形成すると左から右へ一撃で二人を斬り飛ばした。そして即収納する。

 

「はっ、こんなことをしていたら、シャドウ様の活躍を見逃しちゃう。」

 

 その前に情報部隊(インテリジェンス)に命令を出しておいてちょうだい、とガンマが声をかけた。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 外が慌ただしい。

 

 アレクシアは数時間ぶりに目を開けた。

 

 この部屋に来るものは、あの白衣の男と世話係の女性くらいなもので、相も変わらず台座に四肢を拘束されているアレクシアは、体力を温存するために寝るぐらいしかすることがない。

 

 同居人の化け物ともまぁ相互不干渉ということで上手くやっている…つもりでいる。

 

 外の喧騒は次第に激しさを増し、何やら争いが起きていることを伝えてくる。

 

「うるさくて、寝てられないわよね。けれど起きていた方がいいわ、きっと楽しいから。

 

 答えが返ってくることはないと知りながらアレクシアは話しかける。

 

 しばらくして、部屋の扉が開く音が響いた。それも慌ただしく、落ち着きがない様子だ。

 

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!!」

 

 白衣の男が勢いよく扉を開けて入って来た。

 

「奴らが、奴らが来やがった!おしまいだ……み、皆殺し、皆殺しだ!!」

 

「騎士団は無用な殺生をしないわ。抵抗しなければ命までは奪わないはずよ。多分…」

 

 でも、そんなことはない、とアレクシアは心の中で自分にツッコミを入れる。

 

「騎士団なんてどうでもいい! 奴らは皆殺し、皆殺しで、行方不明になるんだ!」

 

 おやっ、だとすればいったい何者だろうか。いや、この男が錯乱しているだけの可能性もある。

 

 頭をかきむしって、白衣の男は血走った眼を化け物に向けた。

 

「し、試作品は作った。こ、これなら出来損ないでも役に立つ。」

 

 そういって、白衣の男は針の付いた装置を化け物の腕に押し付ける。

 

「やめておいた方がいいわ。なんだか嫌な予感がするの。」

 

 わりと真面目に、アレクシアは言った。

 

 白衣の男は当然無視して、化け物の腕に針を突き刺して何かを注入する。

 

「さあ見せてみろ、ディアボロスの片鱗をぉ!」

 

 すると、化け物の体が膨張した。筋肉が見る見る暴走し、骨格すら成長し伸びてゆく。太く長くなった両手は、凶悪に禍々しく肥大し、人の足ほどもある長い爪が生えていた。

 

「うぅあぁ、素晴らしい……素晴らしいぞ! おぉ!おぉぉぉぉ!」

 

 しかし、当然それほどまでに急速な成長を遂げれば、化け物の拘束は耐えられるはずもなく弾け飛ぶ。

 

 そして……、グチャッと音がして、肥大した化け物の身体と鉄格子の間で、白衣の男は断末魔すら残さずつぶされて死んだ。この大間抜けが。

 

「だからやめとけって言ったのに。」

 

 化け物とアレクシアの眼があった…気がした。アレクシアは化け物の動きを注視した。

 

「さて。」

 

 四肢を拘束されているアレクシアにできることは限られる。だが、何もできないわけではない、バカの巻き添えで死ぬなんてごめんだ。

 

 化け物の右手が振られた。化け物の右腕はアレクシアを避けて、そのまま彼女を拘束する台座と魔力封じに繋がっている鎖を破壊した。

 

「まさか、助けてくれた……?」

 

 化け物は甲高い叫びのような咆哮を上げると、肥大していく身体をすぼめるようにして石壁を破壊して、出て行った。

 

 薄暗く廊下に、運悪く化け物に轢き殺された兵士が数人折り重なって倒れている。アレクシアはつぶれた騎士から鍵を抜き取った。

 

「悪運強いわね……我ながら。」

 

 廊下を見通すも、そこにはもう、化け物の姿はなかった。壊れた台座とブチ破られた壁。

 

「……そうでもないか。」

 

 魔封の拘束を外す。

 

「まあ、最悪よりはマシよね。」

 

 これで魔力を練られる。

 

「この剣貰うわね。」

 

 アレクシアは死体からミスリルの剣を拝借した。見るからに安物だが、最低限の仕事はするだろう。

 

 一度大きく伸びをして全身をほぐし、アレクシアは化け物が壊した壁から外に出た。そのまま廊下を進んでいき角を曲がると、そこに……

 

「勝手に逃げられては困るな。」

 

 角を曲がったアレクシアの目前に、見知った顔が現れた。

 

「あ、あなた……どうしてここに?」

 

 アレクシアは驚愕に目を見開いた。

 

 金髪に端正な顔立ち、自信に満ち溢れた笑み、チャラい男、ゼノン・グリフィ婚約者候補がそこにいた。

 

「ここは私の施設だからだよ。私があの男に投資した、それだけのことさ。」

 

「…よかった。私、あなたのこと頭おかしいんじゃないかなってずっと思ってたのよ。やっぱりおかしかったのね。」

 

「どうでもいいさ、君の血があれば。」

 

「どいつもこいつも私の血の話ばかり。」

 

「君の血と、研究があれば私はラウンズの第12席に内定する。剣術指南役などというくだらない地位ともおさらばだ。」

 

「ラウンズ? 狂人の集まりか何かかしら?」

 

「教団最高の十二騎士、ナイツ・オブ・ラウンズ、今と比較にならない富と名声だ。本当はアイリス王女の方が良かったが、君で我慢するさ。」

 

 アレクシアの気迫の一撃が戦闘開始の合図となった。

 

「失礼、君は姉と比べられるのが嫌いだったね。

 

 怯まずに剣を振るうアレクシア。2本の剣が衝突し、空中で何度も火花を散らす。そのせめぎ合いは、宙で踊る2本の剣だけを見れば、互角と言っていい様相だった。しかし、剣を操り2人の表情は対照的。アレクシアは険しく、ゼノンは余裕の笑み。

 

「いつもよりはいい、しかし所詮は凡人の剣だ。」

 

 アレクシアの顔が目に見えて歪んだ。一瞬泣き出しそうに、そしてそれをかき消すかのような怒りに。

 

 アレクシアは知っていた。自身の実力では普通に戦ってもゼノンには勝てないということを。しかも今回の得物は安物の剣、そう長くはもたない。だが、アレクシアは日々漫然と剣を振ってきたわけではない。姉を目標に自分に足りないものを理解し、それを埋める努力をしてきた。

 

 そして、誰よりも姉の剣を間近に見てきた。

 

「だったら見てなさい、本当に私が凡人かどうか!!!!」

 

 気迫と共に金色の魔力を(ほとぼ)らせ仕掛けた。その一刀は、まさしくアイリス王女を彷彿させた。アレクシアは既に姉の剣を寸分の狂い無く思い描くことができるまでになっていた。

 

 くっ、ゼノンの顔から初めて笑みが消えた。

 

「……姉君の太刀筋か。こんなものを隠しているとは思わなかったよ。」

 

「何度でも見せてあげるわ。」

 

「では私も、次期ラウンズの剣を見せよう。」

 

 そういって、ゼノンは剣を構える。それに怯みそうになりながらも、再び魔力を迸らせながら切りかかった。しかし──

 

 ゼノンの剣はまさしく、アレクシアが今まで見たことのない威力を込めた一撃だった。天才と凡人の。絶望的なまでの差がそこにはあった。それは、あるいは彼女の姉にすら匹敵するのかもしれない。

 

 どこか遠く、剣を振るのが楽しくて仕方がなかった幼い頃の遠い記憶が、アレクシアの脳裏に蘇った。アレクシアの隣にはいつも姉が居た。それは、ずっと昔に忘れたはずの遠い記憶。

 

 ゼノンの左拳がアレクシアの顔を殴った。膝から崩れ落ちるアレクシア。

 

「君は姉のようにはなれない。一緒に来てもらうよ。」

 

 アレクシアの手から砕けた剣が落ちて、瞳から一筋の涙がこぼれた。

 

 そのとき、ゼノンの背後から靴音が響いた。

 

 そして、音が止まったそこに……、

 

「誰だ、君は?」

 

「ディアボロス教団のクズに名乗る名はない。我らは陰に潜み、陰を狩る者。」

 

 漆黒のロングコートを纏った人がいた。

 

 

 

 





 陰の実力者になりたくて! 本編の第06話です。

 基本カゲマス準拠です。

 今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、当分本編を進めます。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。

 シドと七陰の距離感がまったく違います。普段から七陰と一緒にいます。

 アレクシア拉致計画を使ったガーデンのカウンターにより、僅か1日での決着となりました。

 なお、化け物としていますが、ごく普通の悪魔憑きです。アレクシアが知らないだけです。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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