陰の実力者になりたくて! 本編の第08話です。
その後の話になります。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。
そして、アレクシアも…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
ゼノンは跡形もなく蒸発した。
そして、漆黒の人も、光の柱から出て来て、そのコートの裾を翻して姿を消した。
同じような漆黒の人たちが現れて、何か会話をしている風だったが何も聞こえなかった
そして、アレクシアは無事に生き残った。
あの光の奔流は光の柱からはみ出ることは無かった。その代わり光の柱の内部──直径10mの範囲内のすべてを蒸発させていた。まるで超高温な刃物で抉り取ったようにガラス状になった壁面があった。
そして、天井の大穴は地上へ──それまでいた場所は地下だった──続いていた。なお、穴の底は見えなかった。
ふと、足元に目をやると、罅の入った剣が落ちていた。
アレクシアはそれをおもむろに拾いあげ、構えた。……そして振るっていた。
アレクシア! アレクシア!!
地上から、声をからして叫んでる人影が見えた。
あれは…アイリス姉さま。思わず剣を取り落とした。
アレクシア!! アイリスお姉さま!!
飛び込んできたアイリスに、有無を言わさず抱き締められた。
アイリスの服はびしょ濡れで、それが冷たく、けど暖かく感じた。
「無事で良かった、本当に。」
アレクシアはやっと身体の力が抜けていくのを感じた。
「ごめんなさい、冷たいでしょ。」
アレクシアはアイリスの胸の中で首を振った。
「ありがとう……アイリス姉さま。」
アレクシアも抱き締め返すのだった。
…今なら色々と聞けるかもしれない。アレクシアはアイリス姉さまの耳元に口を近づけた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「というわけで、裏の事情のある事件になったけど、表面上は解決した、ということになったわ。」
二人の女学生がカフェテリアのテラス席のパラソルの下で隣席に座っていた。
恋人たち アレクシアとシド、現在学園の噂の的の二人だった。
「でも、姉さまは専門の調査部隊を立ち上げる準備をしているし、私も協力するつもりだから、まだこれからね。」
「へ~~っ。そうなんだ。じゃあ私はこれでお役御免ということで…」
そう言って素早く立ち去ろうとすると…
「ちょっと待って! その──話しておきたいことがあって。」
手首を掴まれてしまった。しまった、はす向かいに座っておくんだった。
「ここで?」
ちらりと視線を周囲に廻して見せた。かなりの視線を感じる。
「こ・こ・で!」
強く言われたので、仕方なくもう一度座る。しかし、アレクシアは手を放してくれなかった。それどころか、テーブルの上で私の左手と手を繋いでしまった。えっ、ちょっとこれって…
そして、その頬を赤く染めながら話し始めた。
「前に私の剣が好き、って言ってくれたでしょ。遅くなったけど、ありがとう。」
アレクシアは満面の笑みを浮かべて言う、かわいい。
でも、この状況で「私が」「好き」っていうのはちょっと… …視線が一気に生暖かくなったような…
「…それは良かったわ。」
私も笑顔になってしまう。
「ようやく自分の剣が好きになれたの。シドおかげ…だけじゃないけれど。」
一言余計と思わない? 事実だもん。
互いの瞳──赤い瞳と紅い瞳が交わった。
「…まあでも、好きになって良かったわ。私も、前に言った通りアレクシア の剣 は好きだし。」
「ええ、そうね、良かったわ。」
はにかむアレクシアはかわいかった。
「じゃぁ、私はこれで…」
手を外して立ち去ろうとしたが、手を放してくれない。それどころか掴む力が強くなった気がする。
「だから待って! その……これまで私たち付き合ってるふりをしてきたわけだけど、今回の事件でゼノンが死んでくれたから…」
アレクシアはどこか言いづらそうに言葉を探す。
「もし、あなたさえ良ければ…」
赤い目がキョロキョロしている。すでに私の左手を掴む彼女の右手の力は痛いほどになっている。……まぁ痛くはないが。
「…もう少しだけ、この関係を続けてみたいなって。」
少し小さい声で続けた。
─お断りだ─
そう言えたら良かったのだが、さすがにそれはない…
「念のために聞くけど、それは剣友として? それとも……こ、 恋人関係として?」
まあ、後者の時に手を握る力が一層増したので、そういうことなのだろう。
交わったままの視線の奥に、不安と期待が踊っているのが見えた気がした。
さらに彼女の左手もギュッと握り締められているのが視界の縁に見えた。
私は視線を切らずに一息つくと。
「…お手柔らかにお願いします。」
アレクシアの右手を両手で柔らかに握り返した。彼女も両手で握りしめてくる。
学園のどこかで嬌声があがった気がした。
「…こちらこそ、よろしくね。でね──」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ベータ、報告を。」
王都のミツゴシにある、屋上に密かに作られたシャドウハウス──シャドウガーデンの施設にある
「アレクシア王女が捕らえられていた教団施設は、私ベータの率いる情報部隊とゼータ率いる諜報部隊が共同で調査を完了しています。十分に時間があったため、必要な情報は全て回収し、都合の悪そうな情報は抜き取るか抹消、こちらの意図する情報を追加して残す処理を、十全に行うことができました。」
ベータがゼータに目を向ける。
「基本的にいつものお仕事通り。チリ一つ残さずに、ね。それにお姫様たちに踊ってもらうために必要な資料を“ちょっと”問題の騎士団の分を入れて置いただけで、特に苦労はしてないかな。ただ、今回はお姫様が目にしたので意図して残した
「実験の情報を……引き出すのに、生きていて……欲しかった。忌々しい」
「そこは実験の資料と
「でも、あの娘……無茶苦茶、だった…。」
「…アレクシア王女の誘拐の件があって、悪魔憑きの救出が一日遅れただけだというのに、その一日でかなり無茶をしていたようです。症状の詳細は別紙の通りです。」
ベータが話を戻した。
「ゼノン・グリフィ
「ボス・レディーは最強なのですぅ…。」
デルタはもう眠そうにしている。
「本当に美しい光でした。」
とりあえず指定範囲外は無傷でした。
イプシロンが感慨深げに頷いた。
「王都のすべてがシャドウ様の魔力に染められていく、天上の楽園のような光景でした。」
ベータが陶然と述べる。
「あれだけ……高高度まで、結界陣を……伸ばしたのに、凄い衝撃波だった。」
「主の『私が『核』になることだ!』には痺れたね。」
イータもゼータも恍惚とした笑顔だ。
「そうですね。奴らも十分に思い知ったことでしょう。自分たちが狩られるための獲物でしかないことを。」
あれで威力をかなり
「ふふっ、いずれ敵のすべてがあの光に消える。その時まで…」
まぁ今回は地上の被害は直径10mで抑えたから良しとしましょう。
ガンマとアルファも黒い笑顔を浮かべて言った。
─七陰は皆笑顔だった、種類は違えど─
待ち遠しさに無言の時間があった。
続けましょうか、はい。
「イプシロンですが、いつものように隠蔽…とはいきませんでした。」
イプシロンに視線を向けた。
「さすがに衆人環視の中、建物が斜めに斬れたところまでは隠蔽できませんし、王族の血から高濃度・高純度に抽出された、他人のディアボロス細胞を注入されたことで暴走して巨大化した悪魔憑きまでは隠蔽できません。」
そう言って睡っているデルタに目線を向けたあと続けた。
「それ以外の16箇所のフェンリル派のアジトについては、残すべき情報以外は、死体・その他の情報、チリ一つ残さずに確保・隠蔽しました。」
「情報については、何分情報量が多く現在情報部隊で精査中です。」
吉報を待ちましょう、ええ。
「イータからの研究報告はこちらに。」
「
イータの声にも怒りが見えた。
「最後に、ゼータからの報告です。オリアナ国王が宰相ドエムにより完全に傀儡化されました。共犯は王妃になります。しかし、例の鍵についてはそれまでにローズ王女に継承したもようです。それによりローズ王女を取り込むように動き始めるようです。」
「教団が使用する例の洗脳薬さ。王妃が共犯者だとは見抜けなかったようで、甘い匂いがプンプンしてた。イータ?」
「洗脳解毒薬は……できてるけど、呑ませても……再洗脳されるから……使うタイミングが……難しい。」
「というわけで、アルファ様、オリアナ王国のプランの見直しが必要、という感じかな。」
そうね、タイミングが重要です、あの薬だとあまり長くは持たない、どれくらいまでもつの? 夏くらいまでかな、それくらいまでなら…
七陰は何処か楽しそうに謀略を練り始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ディアボロス教団、そして黒尽くめの人物…。私たちの預かり知らぬところで何かが動き出しているのかもしれないのです。それに、今回明らかな証拠が出てきた、特に第三騎士団のディアボロス教団による汚染は…」
アイリスは机に両肘を置いて指を組んだ。
「騎士団に不信を持っておいでですか。」
獅子髭のグレンは単刀直入に聞いた。
「我が国が誇る剣術指南役が、…以前は私の護衛騎士をしていた騎士が、そのディアボロス教団の信徒だったのですよ。そして王女を誘拐し、代わりの犯人まで準備していました。それを考えれば、所属していた第三騎士団は疑わざるをえない…」
「まぁ、実際に押収した証拠品を保管した事になっている建屋を特定して放火しましたからね。私の一存で内密に保管場所を変えてなかったら…」
グレンが苦い顔で応えた。
「…つまり、第一騎士団にも内通者がいる、と?」
「残念ながら……、残された情報にあった通りです……」
「では、
アイリスは一人ずつ目を合わせて言った。
「グレン、マルコ。私が心から信頼しているあなたたちに参加してもらいたい。」
「諾、御下命受託します。」「わかりました!」
「とりあえず、証拠品は焼損したことにして、内密に保管していてください。」
アイリスは少し考えると続けて言った。
「後は、お取り潰しとなったグリフィ家の内部調査と、同じく第三騎士団3・4番隊の隊長を逮捕して確保し口封じを防止をすることですね。」
「そうですね、結局他に襲撃された
肩をすくめるとグレンは続けた。
「それに、すでに何人か、第三騎士団から行方不明の者もでています。例の化け物を襲撃した騎士の分隊も…」
「グレン、第一騎士団の信頼できる団員を使って動かしてくれませんか。」
「…その信頼できる、が
「ありがとう。グレン。今は、少しでも情報が欲しい。非常の策もやむ無しとします。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
どうしよう、まさかアレクシアに本当に告白されるなんて…。アルファの言ってたアレクシアとのロマンスが始まっちゃったわ。でも…断れなかったのよ。狡いわ、あんな顔してくるなんて。それにクレアお姉さまは新騎士団勧誘で懐柔してくるし、ファンクラブとか使って外堀は埋めてきてるし、なんかご機嫌で可愛くなっちゃうし、態度もなんか恋する乙女っぽくなってるし…
はあぁ、レミーとの情報共有が重要になってくるわね。あの娘も珍しく気に入ってるから大丈夫でしょう。でも、アレクシアは真性の百合では無かったはずだけど、あのクズのせいで男嫌いになったっぽいし。政略結婚するまでのアヴァンチュールなのかなあ。それはソレで寂しいなぁ。あれ、でも王位継承権の無い第二王女だから
「おっ、あれはシェリーじゃない?」
ちょうど友だちと別れて歩いてくるピンク髪のちょっと小さめ後輩?…先輩?を発見した。
普通に声を掛けようとして、自分がシドであることに気付いて手を止める。しまった、今はギリシアじゃない。完全に気が抜けていた…
こちらに気付いたシェリーが、キョトンと首を傾げていた。カワイイ、じゃない。
「へい! そこの彼女、良かったらそこのカフェでちょっとお茶しない?」
私はどこのナンパ師か!
「お茶ですか? 良いですけど、魔剣士学園の女生徒さんですよね。学術学園の方に何か用事ですか?」
純度100%の笑顔、プライスレス。うん、今度ギリシアの時に注意しよう、女の子のナンパにも気を付けろって。
カフェでコーヒーを一緒に飲みながらそう強く思った。
その後の話になります。
基本カゲマス準拠です。今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、もう少し本編を進めます。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。七陰のシドへの傾倒具合…わかりましたかね。
アレクシアもアイリスと拗れた関係を二人きりで話すことでそれなりに修復できました。
それに入学してからほぼ毎日試合ってきた仲の良い剣友(半分強レミーですが)もいます。もう男はこりごりということで……性癖全開です。
なお、騎士団関係は本作での捏造です。ガーデンの暗躍により、教団の勢力を削っています。
そのため、真っ当な騎士やグレンの立場がそれなりに上にあります。なので第三騎士団は焦った、とかいう裏設定もあります。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。