陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第10話です。

 聖地編です。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第10話「聖地・欺瞞の都…」下

 

 学園が半壊したとか、そういうのは無かった(・・・・)ので、普通に夏休みとなった。

 

 ほとんどの生徒が帰省している寮は静かなものだ。

 

 私は実家に帰っても特に何もすることはないけれど、結局ここにいてもすることもないので帰省することになっている。

 

 レミーはお姉ちゃんと一緒に帰省する日を指折り数えて待っている状況だ。

 

 そんな時、私も参加していた七陰会議で、アルファたち七陰から私に提案があった。

 

 恋人(・・)が『聖地リンドブルム』へ旅行するそうだから、ついて行ったらどう?

 

 やや棘のある表現だったが、アレクシアとの関係は七陰とレミーに今後のことも考えた結果、許容範囲として認められた……。

 それはそれでちょっと複雑だが、お前が言うな、というやつだ

 

 旅行? というが、なんでも『女神の試練』に合わせて、王女たちが聖教への査察を考えている、とか。

 

 前回のゼノンの誘拐事件の時に、そのように情報を細工して置いてきた、とはゼータ君の報告にあったが、見事に踊ってくれているようだ。

 

 まぁ、証拠品を収めた「はず」の建屋が放火により焼失した、と表向きにはそうなっているようだが、紅の騎士団の副団長となった獅子髭のグレンの機転により事なきを得たようだ。

 念のために火を消す用意もしていたようだが、使わなくて良かった、とのことだった。

 ─悠長に消火活動できるわけがないから、爆風消火でもする気だったのだろうか─

 

 そして、誘拐事件の当日に第三騎士団がやらかして明らかとなった証拠と、焼損を免れた証拠を使って、第三騎士団の隊長を含む教団の関係者への粛正に乗り出している、とのことだ。

 

 特に、教団との証拠を揃えて置いた、三番隊と四番隊の隊長を捕縛できたのは大きかった。それにより、紅の騎士団の予算についても通すことができたようだ。

 

 さらに、一部第一騎士団の騎士からも逮捕者(内通者)が出ているようで、少なくとも王女の周りについては、かなり教団を影響力を削ぐことができた、と作戦の成功を愉悦(よろ)こんでいた。

 

 後は芋づる式に吊り上げていくわけだが、今後も教団の介入を考慮していく必要がある。

 

 そういう意味でも、機転の利く元第一騎士団一番隊隊長を務めていた獅子髭のグレンを引き抜くことができたことは大きいようだ。

 

 また、それらによりさらに証拠を積み上げたところで、聖教と教団の癒着に辿り着いたことが、今回の査察に繋がった…らしい。

 

 アレクシアも姉と仲直りができたようで、これまで、どこか斜に構えていたところが無くなって、元々の素直な面が出てくるようになった、かわいい。

 

 そして、姉の立ち上げた『紅の騎士団』に騎士見習いとして参画しているようだ。

 

 なお、それにはもちろん、クレアお姉さまと私も誘われているが、まだ学園生であること、特待生であるため優秀な成績を治めなくてはならないこと、等を理由に、直接参加とはせずに予備役としての参画に止めている状況だ。

 

 まぁクレアお姉さまは、私が学園生している間王都に残れること、卒業後も一緒に居られるということもあり、かなり前向きに検討しているようだ…とはレミーから聞いた話だ。

 

 問題は、以前──4歳のころ『聖地リンドブルム』に行ったときのことだ。『女神の試練』の時に魔力を使ってから扉が現れて付きまとってきたこと。

 

 今回行った場合にも同じようになる懸念があるのでは? と聞いたところ、それを利用するから問題ない、との回答があった。結構ややこしいプランに見えたのだが、問題ないらしい。

 

 という事情を知っていたこともあり、先日アレクシアと二人で朝練となった日に、一緒にお風呂に入って(汗を流して)いた時に、ちょっとお願いがあるの…と上目遣いに切り出された瞬間、来るべきものが来たか、という気持ちになったのは仕方がないと思う。

 

 ほんとにガンマとゼータの予想通りだったのだから。

 ─おそらく、主様と二人きりのときにお話してくると思います─

 ─そうだね、主との早朝の稽古の後のお風呂時とかに切り出しそう─

 

 まぁ、クレアお姉さまの説得手伝ってね、とホイホイ引き受けたところ、抱きつかれて「楽しみにしていてね」と耳元で囁かれたのは予想に無かったが。

 そういえばガンマが、これを機にアレクシア王女が攻めて(・・・)くるかもしれません、と言っていたような…

 

 

 でも、ほんとにかわいくなっちゃってさ、恋をすると女は変わるっていうけど、私も一緒にドキドキしちゃったよ。

 

 

 というわけで、アレクシアと一緒に一等客室の個室に乗って、汽車の旅をすることになった。

 

「『聖地リンドブルム』には、明後日には着くわ。それまではゆっくりくつろげるわ。」

 

 そう言って、一等客席──個室兼寝室は別にある──の隣の席にピッタリと寄せて座って、手を絡めて繋いでくるアレクシア。もちろん恋人つなぎだ。

 

 てっきりアイリス王女も一緒かと思っていたのだが、私の勘違いだった。アイリス王女は紅の騎士団団長として王都で目を光らせることにしたようだ。

 

 ─聖地なんて本気ダッシュで行けば夜の間にすぐに着いてしまうし、シャドウ・ゲートを使えば一瞬で行くことができるのよね─

 

「この三日間、隣室でよろしくお願いしますね。アレクシア王女と、シドさん。」

 

 そして、向かいの席に、アレクシアと同じく『女神の試練』に来賓として招かれたオリアナ王国のローズ王女──ローズ会長、が座っている。

 

 元々、アレクシアと同じく来賓として向かう予定だったのだろう。同じ車両の一つ前の区画がローズ会長の使用する個室兼寝台のようだ。

 

「お互い王女でわたしの方が年下なのだから、アレクシアでいいわよ。」

 

「では、アレクシアさん、で。」

 

 そして、とても生暖かい視線を感じている。しかも目もなんか(キラ)めいているようでもある。

 

「シドさんのお目当ては『女神の試練』ですよね?」

 

「あ、うん、たぶん、そう、ですね……

 ─違います─

 

「大丈夫わたしはちゃんとわかっています。」

 

 あ、これあかんやつや。ちょっと眼がトリップしてる。

 

「あなたたち二人の道は茨の道を進むことになるでしょう祝福されず認められない道です。しかし女神から力を授かった伝説の英雄は平民から富を築き大国の王女をめとったと聞きます。茨の道を抜けた先には必ず幸せな未来が待っているんです……」

 

 この世界で最もポピュラーな宗教は、正教、女神ベアートリクスの聖なる教えを、崇めたてまつる宗教だ。クレアお姉さまもよく祈っている。

 

 なお、三人の英雄が魔人ディアボロスを倒し、世界を救ったというおとぎ話の原型はここにある。

 

 その聖教の聖地の一つが今向かっているリンドブルムだ。三人の英雄に力を授けるために女神が降臨あそばされた地……らしい。

 

「……今回の『女神の試練』をシドさんが超えることができればアレクシアさんも大手を振って交際することができるでしょう。茨の道を二人で一歩ずつ乗り越えていく。そうやって二人の愛はますます強く結ばれていくのです。」

 

 あっ、トリップから戻って来た。

 

コホン、…というわけで、愛し合う二人の未来を祝福しています。」

 

 ふと隣を窺うと、顔を真っ赤にして髪や服をごにょごにょしているアレクシアがいた。

 

 さすがにド直球で祝福してもらったことはないようで、めちゃめちゃ照れている。

 

 なお、手を握る力はどんどん強くなってきている。わたしもギュッと握り返してあげたら、ますます赤くなり、首筋まで真っ赤になっている、かわいい。

 

 とはいえ、当初予定してる計画(プラン)では、シドとして『女神の試練』に参加することはないわけで…、どうしようかな。なんかアレクシアも内心盛り上がっているようだし。

 

 朝から晩まで、ニコニコとトリップしては祝福してくるローズ会長のおかげで、とてもかわいく照れるアレクシアを満喫することができたわ。

 

 …そして同じ個室なので一緒のベットに寝るわけだけれども、…ガンマの予想は外れたのか、アレクシアが攻めてくる、ということは無かった。

 

 旅行が決まってから、ミツゴシで一緒に買ったお揃いの寝衣を着て、ちょっと寝物語に互いのことを語り合う…汽車の車輪や蒸気機関の音に紛れないように、私の腕の中にスッポリ収まったアレクシアの赤い瞳を見ながら。

 

 姉と和解できたのが嬉しかったのか、ご機嫌で少し上気している。私もクレアお姉さまとのエピソードをいくつか話したのだった。

 どちらかというと、アレクシアは受け身のタイプなようね…

 

 そうそう、寝衣に着換えるときにアレクシアがTバックを履いていたのには驚いたわ。何時の間に買ったのだろうか、まさかアイリス王女と…それはないか。でも寝衣越しに抱きしめた時に感触を堪能させてもらったわ。とってもすべすべだったわ。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 私たち一行は、アレクシアがぐにゅぐにゅになるまえに『聖地リンドブルム』へと辿り着いた。

 

 前に来た時と同じく、山を切り抜いたかのような地形に壮麗な聖教会が立っており、その下に白を基調とした街並みが広がっていた。

 

 そして、汽車から見たときにわかったのだが、山の途中にダムが築かれているようで、街の上に湖が広がっていた。

 

 街の中心を通るメインストリートの途中に大きな闘技場があり、その先はそのまま聖教会への長い階段へ続いていて、その往来は『女神の試練』の観光に訪れた数多の観光客で溢れていた。

 

 私たち一行は、露店を冷やかしながらメインストリートを歩いていった。

 

 露店では、禍々しい左腕を剣が貫いている小さな飾りが土産物として売っていた。

 

「そういえば、姉様がこのキーホルダーを持っていたのよね。」

 

 アレクシアが、絡めて繋いでいる(右手)とは逆の手で一つ手に取りながら話し出した。

 

「なんでも、10年くらい前に来賓として父と一緒に来たときに、来賓席を抜け出して一般席に行ったそうなの。」

 

 姉のエピソードをアレクシアは楽しそうに笑いながら話してくる。

 

「そして観戦していた時に、隣の席に同じ年くらいの女の子がいたのだけれど、その女の子に偶然出会った記念として、このキーホルダーを貰ったそうなの。」

 

「へぇ~~っ。」

 

 私も似たようことをした覚えがあるわね。

 

「なんでも、肩甲骨辺りまで伸ばした(ストレートショートボブ)夜空色の髪と、青紫色の瞳の女の子で、くれたあと、まるで消えたかのような、とんでもない速さで立ち去ったらしいわ。」

 

 

「ふぅ~~ん。」

 

 

 その瞬間、表情に出さなかった自分を褒めてあげたい。えっ、声が踊っているって?それくらい許してほしい。そして私を見ながらアレクシアは続けた。

 

「髪の長さならシドも同じくらいね。」

 

 内心、それ、私じゃん! そういえばアイリス…お嬢様って呼ばれてたじゃん!!ってツッコミまくってたわよ。…護衛の髭おやじって…獅子髭のグレンじゃん。じゃあ、あのチャラかった金髪って、もしかして…

 

「そうね。わたしも肩甲骨辺りまで伸ばした(ストレートショートボブ)黒髪(・・)だもんね。私たちも記念に買いましょう、お揃いで?」

 

「お揃いで!」

 

 大きさはどれくらいがいいかしら、そうね、ポケットに入るサイズがいいわね、あら、聖剣の形は種類があるのね、どれがいい? そうね…

 

 わいわい、がやがや

 

 それをニコニコしながらローズ会長が見ていた。のだが…

 

「──あっ、ナツメ先生のサイン会をやっています! 私、大ファンなんです!」

 

 いきなり声をあげた。

 

「ナツメ先生?」

 

「はい、壮大な発想力と、斬新な世界観が魅力の人気小説家なんです!」

 

 彼女は手を振りながら力説してくる。

 

「恋愛、ミステリー、アクション、童話、あまつさえ純文学まで……!全てのジャンルに精通し、まるで別人が書いているような多様性が魅力的で……」

 

 正直、私とアレクシアはちょっと引いた。

 

「なんでもありだねー、ほんとベー……、あー、なんでもない、なんでもない。…アレクシアも読んだことがある?」

 

「…一応、恋愛物は読んだことがあるけど…シドは?」

 

「一応、全分野について読んだことはあるわ。クレアお姉さまの親友のニーナ先輩が大ファンで、ローズ会長よろしく布教されたの。」

 ということになっているの、ごめんね、ニーナ先輩

 

「すいません、お時間をいただいてよろしいでしょうか?」

 

 どうぞどうぞ、ええ、かまわないわよ、と返事を返したところ、ローズ会長は、サインの列へと並んだ。 

 

 私は特にやることもなく、なんとなく空いている手(右手)で本を手に取った。

 

 テント横の立て看板には、『真夏のナツメコレクション』発売中! と書いてある。

 

 ナツメ・カフカ──ベータ、がんばってるなぁ

 

「吾輩はドラゴンである」「ローミオとジュリエッタ」「シンデレーラー」「紅いずきん」「スタートラップ」「ワンパース」「ドラゴンビール」「マーリア様がみてる」「天才王女と転生令嬢の魔力革命」「アダチーとシーマムラ」「ありおと」「わたなれ」「ザ・エミネンシス(・・)・イン・シャドウ」

 

 元ネタを提供したのは、私かレミーだけど、あれらをこの世界に受け入れられるように、よくぞここまで書き上げたもんだ。

 

 サイン会の列を見ると、老若男女問わず並んでいる。人気小説家というのに嘘はないようだ。 

 

 ………繁盛してる?

 

 ベータに通信を送る。

 

 一瞬ピクッと反応したがサインを続けている。

 

 ………まずまずですね、順調に名を広げております。すべては主様の叡智のおかげです。

 

 ………文学が好きだというベータに私とレミーで前世の物語をいくつか教えてあげたけれど、それをリスペクトして、この世界で通用する話に仕上げたのはベータの功績だよ。近ごろはオリジナルも出してるようだし。

 

 ………ありがとうございます、シャドウ様。シャドウ様はアレクシア様とローズ様で両手に王族ですか?

 

 ………人聞き悪いこと言わないでよ、ベータ。アレクシアは…そうだけれど、ローズ会長は汽車で一緒になっただけだよ。

 

「シドもサインが欲しいの?」

 

 アレクシアには、私が本を手に取って立っているよう見えたようだ。慌てて本を台に戻す

 

「新作があったらニーナ先輩に報告をしなくっちゃ、って思ってただけよ。」

 

「…わたしも 恋愛小説以外 読んだ方がいい?」

 

 私は恋人つなぎになっている左手に少し力を込めた。

 

「無理してまで読む必要は無い、かな。アレクシアの興味を引く本が出たときに読んでくれたら嬉しいよ。その時には一緒にいろいろと感想を話そ。」

 

 それとも一冊の本を一緒に読むとか? それもいいわね。 その時はどういう姿勢にしようか? 並んでじゃないの? 私がアレクシアを後ろから抱きかかえてとか。それ絶対本読む姿勢じゃなくなりそう。そうだね~。

 

 アレクシアと他愛無い話をしていると、ローズ会長がサインをもらって戻って来た。

 

「シドさんも好きだったんですね、ナツメ先生。」

 

「いやあ、私は…」

 

「見てください。ナツメ先生に私の名前も入れてもらったんです。」

 

 ナツメ・カフカのサインを考えてるベータ………結構シュールだったのよね。◯が二つあるのはメガネをモチーフにした、とのことだった。

 

 私が前世のアイドルとかの崩したサインのことを教えたものだから、その気になっちゃって…

 

 私たち一行は、そのまま最高級ホテルにチェックインして、お偉いさんとかに挨拶回りがあるという、アレクシアとローズ会長二人とはしばしお別れた。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 静かな大聖堂は穏やかな月の光に照らされて、そのステンドグラスと相まって幻想的な色に染まっていた。

 

 聖地にある大聖堂。そこには捻じ曲げられた三英雄の像があった。

 

 その大聖堂をたった一人で進むのは、美しい金髪のエルフ。その青紫色の瞳は英雄オリヴィエの石像に向けられていた。

 

「我々は、真実が知りたい……。」

 

 その像の一人、エルフの英雄オリヴィエ

 

「英雄オリヴィエ、あなたは、聖域と呼ばれる地で何をなしたの?」

 

 光学・魔力迷彩、さらに防音結界で自分のだす音を消している。

 

「歴史の闇を紐解くほど、真実と嘘が混ざり合う。」

 

 アルファは、血の滴る三英雄の像の上を見上げた。

 

「大司教ドレイク……あなたは何を隠していたの。もし口を利けたなら、答えて欲しかった。」

 

 そこにはオリヴィエの持つ聖剣に貫かれた、大司教の服を着た男がいた。

 

「あなたは誰に殺されたの? あなたほどの地位に居ながら切り捨てられたというの?」

 

 大司教の黒い噂は王都にまで広がり、近いうちに調査されるはずだった。

 

 その直前に、彼は消されたのだ。

 

 …こんな悪趣味な殺しをするなんて…、独り言ちるアルファだった。

 

「我らは明日、扉が開く時を待つ。」

 

 背後で大聖堂の扉を開ける音がした。

 

 防音結界は中からの音を消して、外からの音は通す。ほんとにすごい発明よね。

 

「猊下!、大司教猊下!!」

 

 そして、石像の剣に貫かれて殺されている大司教の死体を見つけた。

 

「なんたる冒涜!聖堂を封鎖しろ。下手人を逃がすな!」

 

 誰一人として、金髪のエルフのことは口にしなかった。

 

 誰も彼女のことを…氣殺法と光学・魔力迷彩を纏ったアルファを認識していなかったのだ。

 

 そのまま、だれにも気付かれることなく、アルファは大聖堂から抜け出した。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

『女神の試練』を明日に控えた前夜祭は大層な盛り上がりだ。

 

 メインストリートにはたくさんの屋台が並び、ランプの灯りが川のように続いている。

 

 アレクシアとローズ会長は聖教会でパーティらしい。さすがに私は呼ばれなかった。呼ばれても辞退したけど。

 

 聖堂の鐘の音が響いた。

 

 それを高いところから見下ろす私。

 

 うん、いいじゃないかな。

 

 確か前世の“ボク”の遣りたかったリストかなんかに、こうやって高台から町や人々を見下ろすシリーズ、ってあった、と記憶している。これで、また一つ無念が晴れたことでしょう。

 

 現在の聖地は夜、天気は晴れ。見下ろす先で何かイベントをやっているようだ。

 

 ん? 

 

 あれは泥棒かな?

 

 こんな時に無粋な奴……

 

 ──屋根の上を駆けていた男は、違和感を感じて路地裏に身を隠した。

 

 そして、腰の後ろにつけた剣に手を掛けて引き抜き始めた。

 

 振り向きざまに斬りつけるも、そこには誰もいなかった。

 

 そこに、頭上から魔力の斬撃が飛来して、男を斬り裂いた。

 

 そして、斬り裂かれた男は消えた。アイテムボックスに収納したのだろう。飛び散った血も纏めて回収したようで、惨劇の痕跡は無かった。

 

「斬撃に魔力を乗せて飛ばしたのね。そのまま収納する。ほんと、さすがは『緻密』のイプシロンだね。」

 

「光栄です。三日ぶりです。主さま。」

 

 そう言って私の眼の前で跪く彼女はイプシロン、七陰の第5席である。

 

 透きとおった湖のような髪に、それより少し深い紫色の瞳をしたエルフだ。

 

 美人にも色々タイプがあるが、彼女は派手な美人だ。目鼻立ちがくっきりした顔立ちも派手だ。しかし、そのスタイルはスレンダーで究極の機能美を体現してる。そのスラっとした造形には、誰もが目を奪われるだろう。

 

 凛としたその声は人によっては高圧的に聞こえるかもしれない。だけど私はどこか、ピアノの音色のようなその声は嫌いじゃない。

 

 彼女の二つ名は『緻密』だ。彼女は七陰で最も魔力コントロールが緻密だ。通常魔力は体から離れると制御が難しくなるが、彼女はそれを苦も無く制御し、遠距離から斬撃を飛ばすのを得意とする。それに、アルファの言うことも素直に聞くし、上下関係をしっかり守る性格なのだ。

 

 彼女と会うのは3日振りだし、積もる話もあるが、彼女の雰囲気からガーデンモードであることを察した。

 

「アルファからの作戦書にあった、例の計画はどう? 順調なの?。

 

「ターゲットの大司教ドレイクが、教団の処刑人に始末されました。手下はほとんど処理しましたが処刑人の行方を追っているところです。今夜中には捕縛か処理できるでしょう。」

 

 そして決意を込めた眼で続けた。

 

「こういうこともあったため、計画を第2プランへの変更を提言しようと思います。」

 

「えっ、いいの? イプシロンは聖教そのものと敵対することには、反対していたでしょう?」

 

「…教団との癒着が、予想より大きいのです。なので…覚悟の上です。教会を敵に回すことも、…悪名が轟くことも。」

 

「そう…。なら、私もできるだけ、第2プランに沿って動くようにするけど、私としては、できるだけ教団を、聖教から切り離したいから。アルファとガンマにも作戦変更の可否を含めて指示を仰いでね。気を付けてね。」

 

 一時期は大きなコンプレックを抱えていたけど、それが解消してからは、いい意味でプライドを持った、面倒見のいい性格の彼女だ。私への当たりもかなり柔らかい。誤解されやすいけど昔は毎日紅茶を入れてくれたいい子なのよ。

 

 





 陰の実力者になりたくて! 本編の第10話です。

 聖地編です。

 学園襲撃はありませんでした。その辺の経緯は閑話で書こうと思います。

 基本カゲマス準拠です。今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、もう少し本編を進めます。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…性癖全開です。

 汽車の座席と個室が分かれているところとかは本作での捏造です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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