本話も、オリ展開&捏造回となります。
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
もう少しだけ思い出話をしましよう。
あれは四歳になったころね。だいたい今から一年くらい前のこと。
カゲノー一家で聖地リンドブルムまで旅行したの。この世界で最もポピュラーな宗教である『聖教』の聖地の一つで、魔人ディアボロスを倒した三英雄にその力を授けた女神ベアートリクスを唯一神と信じる感じの宗教よ。
そこでは『女神の試練』というイベントがあるらしく、そのイベントの観光に来たらしい。
聖地への道のりはカゲノー家から馬車で四日。なお、最近通った王都経由の蒸気機関車を使えばだいたい三日らしい。国内にあるし
私には、ボクの影響もあってか、聖教の考え方とか教えとかはいまいちよくわからないけれど、初めての家族旅行ってことで、分身ともどもはしゃいでいたのを覚えている。なんとか荷物に紛れて連れて行ったんだよね。
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聖地リンドブルムは、山を切り抜いたかのような地形に壮麗な聖教会が建っており、その下に白を基調とした街並みが広がっていた。
街の中心を通るメインストリートの途中に大きな闘技場があり、その先はそのまま聖教会への長い階段へ続いていて、その往来は数多の観光客で満ち溢れていた。
私が初の大群衆に人酔いしてしまったのはしかたのないことでしょう。
それでもなんとか露店に出向いたときに、日本の観光地にもよくあった竜が剣に巻き付いた小さな飾りっぽいお土産を見つけて、こういうのってどの世界でも変わらないのね、とか思っていた。
ただ、ここではなぜか竜ではなく、禍々しい左腕が剣に巻き付いていたけど。
何でどれも左腕なんだろう、と思っていたら、露店の店員が教えてくれた。
「三英雄の一人エルフの英雄オリヴィエの聖剣と魔人ディアボロスの左腕だよ。かつてこの地で英雄オリヴィエがディアボロスの左腕を切り落として封印した、と伝えられているんだ。ほら、あそこだよ」
店員が指す方には、闘技場の向こうの長い階段とその上に佇む聖教会大聖堂、そのさらに先の方だった。
「あの切り立った山肌に聖域と呼ばれる遺跡があるんだ。そこにディアボロスの左腕を封じたとされているんだ。お伽話だけどね」
「男の子には人気のお土産だよ」
おもわず、
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というわけで私は温泉に母とお姉ちゃんと入っている。
ここリンドブルムは温泉の名地でもあった。それを聞いてからとても楽しみにしていたんだ。
現在早朝、前世?の“ボク”は温泉には朝入るのが好きだったようだ。もちろん夜も入るが、朝の方が好きだった、理由は人が少ないから。
あわよくば貸し切りを狙って早朝に頑張って起きて来たのだけれど、母とお姉ちゃんには筒抜けだったのでしょう。まあ四歳児をひとりで温泉には入れないわよね。
「髪と体洗ってあげる!」
私はお姉ちゃんと髪と体の洗いっこをした。私になってからは普通にやっていたし。実はその
それを微笑ましく母が見ていた。
「『女神の試練』って、どんなことするの?」
「お姉ちゃんが教えてあげる!『女神の試練』は一年に一度、聖域の扉が開かれる日にある戦いなんだって。」
フムフム。
「聖域から……こ、コダーイの戦士の……「古代の戦士の記憶を呼び覚まして、挑戦者はその記憶の戦士と戦うの。」……そう、ママのいうとおり、よ。」
なんでも、事前に申請すれば魔剣士なら誰でも参加できるらしい。けれど、古代の戦士がそれに応えるとは限らない、とか。
毎年百数十人の魔剣士が参加するけれど、実際に戦えるのは十人程度とのことらしい。
「どうやって古代の戦士を選んでるの?」
「挑戦者にふさわしい古代の戦士がいるかどうか、らしいわよ。なんでも、挑戦者より少し強い古代の戦士が選ばれることが多いから、『女神の試練』と呼ばれるようになったそうね。」
「今年は、高名な流浪の剣士ヴェノムが挑戦するのよ。」
ふ~~ん。
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私は一人観客席から『女神の試練』イベントをぼんやり眺めていた。
実は、途中で分身と入れ代わったの。
早朝お姉ちゃんと温泉に入りたかったのに、私が入ってしまったので分身の機嫌が悪かった。今頃大大大好きお姉ちゃんと一緒にはしゃいでいることでしょう。
分身は、どうしてこうお姉ちゃん大大大好きになったのだろう………当然、普段の私もお姉ちゃん好き好き!な行動をしないといけない、というのがつらい………もちろん私も
日中のイベントは始まり、ドレイク司教の挨拶やありがたい説法に、来賓紹介やらパレードやらが行われている。
メインである『女神の試練』は陽が沈んでから行われるらしい。
今の私は十歳くらいの少女の姿だ。身元がバレないように、
迷子に間違われないように堂々と、でも目立たないようにひっそりと。
そもそも異世界でこういう大きなイベントって初めてだから、意外にもなかなか楽しみにしていた。賭試合もあったわ、もちろんお金は賭けれなかったけれど。
そして陽が沈み、いよいよメインイベントの『女神の試練』が始まった。豪華な明かりが会場を灯し、競技場の床から古代文字が浮かび上がってきた。……まだ読めないけど。
古代文字は白い光を放ちながらドーム状に展開し、歓声のボルテージが一段と盛り上がった。
挑戦者がドーム状の空間に入ると聖域が相応しい戦士を選び、戦いが始まる。一度戦いが始まればどちらかが戦闘不能になるまで外部からの干渉を受け付けない、とのことだ。だから死者が出ることもあるらしい。
戦闘不能になるまで戦わされるとか、さすが『女神の試練』だ。
そうこうしているうちに一人目の挑戦者が紹介されてドーム状の空間に入る。そこそこ有名な傭兵団の猛者らしい。
その時隣の空いていた席に、赤髪・赤目の女の子が座った。
だいたい九歳から十歳くらいで今の私の見た目と同じかやや年下くらい。なお、お姉ちゃんよりも年上になる。
迷子かな?と思ったけど、おまえがいうな、ってやつだ。
気付かない振りをして観戦を続ける。
しかし、最初の挑戦者にドームは何の反応も示さなかった。
彼は悪態をついて、聖騎士に連れられて会場を出て行った。
隣の席の子はその態度に目を怒らせていた。真面目か!
しかし、これで参加費20万ゼニーだから笑えない。しかも今回の参加者は128人っていう話だから、〆て2560万ゼニー。坊主丸儲けね。
『女神の試練』をクリアすることはとても名誉なことらしい。記念のメダルがもらえて「女神の試練をクリアしたのか、よろしい魔剣士として採用だ!」とかあると聞いた。
私は、誰か呼び出さないかなぁーと思いながら次々と挑戦者が呼ばれていくのを眺めていた。
古代の戦士が登場したのは12人目の挑戦者の時だった。
流浪の剣士ヴェノムがドームの中に入ると、古代文字が反応し光り始めた。光は人の形を形成しそこに半透明の戦士が現れる。そして光が弾けて実体化する。
解説してくれたネルソン司祭の話によると、彼は三英雄の一人、エルフの英雄オリヴィエ?を呼び出したらしい。
隣の子は大変興奮していた。
で、
古代の戦士に期待していたけど、──内家戴天流よりも、思っていたよりも
まあ隣の子の表情の方がよっぽど面白かった、と言っておくわ。
この先もっと強い戦士が召喚されることを期待して健闘を拍していたところ、魔剣士とおぼしき髭もじゃの人と金髪のチャラそうな人の二人組が近づいてくるのを感じた。
聖騎士じゃなさそうだし、迷子の担当にも見えなかったのでスルーしていたところ、隣の子を目標に近づいてくるではないか。
まさか誘拐?
今突発的イベント?に巻き込まれてしまうのはまずい、と数舜とまどったあと、思いきって隣の女の子に声をかけた。
「ねえ、お姉ちゃん、あの人たち知っている?」
と二人組を指さす。知らなかった場合どうしよう? 巻き込まれないといいのだけど…
「あれは……グレンとゼノ…」
「知っている人なんだ。」
私はイベント?を回避できたことに安堵した。
「アイリスおぅ……お嬢様、勝手に抜け出されては困ります。全く新人の隙をついて抜け出すなんて………」
緑色のマント止めを付けた髭もじゃの方が声をかけてくる。
金髪のチャラい方はチャラく笑っている。胡散臭い笑顔だ。
どうもアイリスお嬢様?がチャラい金髪の隙をついて来賓席を抜け出して、観客席に見に来たらしい。
来賓席ってお行儀良くしていないといけないから、抜け出したかったのかな?
「ご協力感謝します。」
とは髭もじゃの魔剣士。
いえいえ、私は何もしていません。
「お嬢ちゃんも迷子なのかな?」
「父が『女神の試練』に出場しているので、ここで待っています。」
わたしはイイ笑顔でチャラい金髪にそう言った。
「……迷子になったら、受付に行くんだよ。」
はーーい。そうだ今日偶然出会った記念に聖地名物のこれ、あげるね。お姉ちゃんバイバーイ。
私はクールに席を去るぜ。
──というつもりだったけど、実際は消えたかのようなとんでもない速さで席を離れたらしい。後に銀髪の妹さんが教えてくれました。私も異世界初イベントで浮かれていたようで思い出して恥ずかしかったよ。
お土産も追加で2個買いに行く事になったし。
さらに、かなーーり先の話になるけど、その時に初めて顔を合わせていたらしい、ディアボロス教団の幹部候補に。
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なお、その後は荷物に紛れてカゲノー領まで帰ることになった。分身がお姉ちゃんと離れたがらなかったからなのだが。滅多にわがまま言わないから仕方なく。
それと、赤髪ちゃんから逃げ出すときに魔力を使って移動したあとから、突然変な扉が現れたんだ。
私の前に、紅く光るパッと見薄汚れたみすぼらしい扉が浮かんでくるのだ。多分古代文字と魔法陣?のようなどす黒い染みは、どう見ても乾いた血の跡だろう。
怪しいなんてもんじゃない。さすがの私も回避余裕である。 が、なんと私の動きに扉は全力で付いて来るのだ。
距離をとっても、どの方角に移動しても、扉が私の前に現れるのだ。
結局『女神の試練』が終わった翌日、聖地を離れるまで人知れず逃げ隠れすることになった。ずっと扉に付きまとわれていたの。
それもあって分身と入れ代われることもできず、私が荷物に紛れることになったのよ。
まあ、私も『女神の試練』の時にみた一種の時空間転移と結界の術式、それに追いかけてくる扉の術式についてゆっくり考えたかったからね。
で、帰る途中の山中で盗賊の襲撃があったの。貴族で魔剣士の馬車を襲うなんて運の無い盗賊よね。前後に平民の馬車が十何台かいたので、気付かなかったのでしょう。
盗賊は私刑にして死刑、この世界の田舎では割とまかり通っている。裁く人なんて都会にしかいないしね。う~ん、中世。
で、普通にオトンによってあっさり撃退…というか討伐された。一部すり抜けてきた盗賊もオカンにより討伐されていたし。お姉ちゃんと分身は馬車の中から見てるだけだったって。
それよりも、その地の貴族とのやり取りの方が時間がかかっていたけどね。
実はこのとき、私の隠れていた馬車にも二手に別れた盗賊達が襲ってきてさ、メイドさん達に問答無用で斬りかかってくるし、思わず黒手裂震破(もどき)で相手を殺して剣を奪って成敗してしまったの。
四歳にしてスタイリッシュ暴漢スレイヤー改め、スタイリッシュ盗賊スレイヤー(ガチ)の爆誕よ。見た目は十歳位に変身していたのだけれど。その後死体を誤魔化すのと身を隠すのに苦労したわ。
あれだね、盗賊死すべし、慈悲は無い!ってやつよ。
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それ以降、カゲノー領だけに偏らせると不味いので、王都より北の地域で、東は聖都リンドブルム、西はオリアナ王国手前を縄張り(自称)として、盗賊は見つけたらちょくちょく刈るようにしている。今後は遠方に遠征とかしたいものね。治安維持大事よね。
ところで最近、カゲノー領とリンドブルムの中間くらいのところにある廃村にならず者が住み着いたらしい。調べたところそれなりの規模の盗賊団がいるみたい。
なので、本日は最近試作が完成した新兵器を実戦投入することにしよう。メタルスライムボディスーツ&ブレードのことだよ。
というわけで、オリ展開&捏造回でした。
一応原作でもリンドブルムには、「昔一回行ったことがある」とあります。
まぁ、四歳の時に行った、というのは本作品での捏造です、念のため。
なんとかアルファを出すまでに、4話まで来ました。あと1話は稼げるかな…
なお、捏造した設定もありますので、読む際は注意願います。
PS.一部修正しました。赤髪のお姉さん→銀髪の妹さん