陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第13話です。

 聖地編です。

 なんと、本日で3週間毎日更新となりました。そろそろストックが…

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第13話「記憶の中の真実」上

 

 

 ネルソン大司教代理は、苦い顔をしながらではあるが、祭壇の上で閉会の挨拶をしていた。

 

「これにて、今年度の『女神の試練』は終わります。試練を乗り越えた挑戦者は、おめでとうございます。そして、今回、試練を…」

 

 その瞬間、闘技場で地響きが鳴った。

 

「なっ……!!」

 

 闘技場を覆うドームにひびが走っていた。

 

「なに?」

 

 パリーンという、無数のガラスを割ったような音と共に、ドームが砕け散った。

 

「なっ……!!!」

 

 気が付けば、来賓席のアレクシアの眼の前に──闘技場の舞台の中央に紋章が浮かんでいた。

 

 紋章は、瞬く間に変形し、闘技場をのみ込んでいく。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 観客席の屋根の上で、アルファはデルタ、イプシロンと共にその様子を眺めていた。

 

「聖域が彼女に応えた……」

 

 アルファはぽつりとつぶやく。

 

「シャドウ、あなたはやはり……」

 

 ………ガンマ、ゼータ、イータ急いで。始まってしまったわ。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 ──閉会式の途中、闘技場の中心には紋章が展開して赤黒い巨大な扉が姿を現していた。

 

 ローズとアレクシアは、思わず席を立って来賓席の開口部に近付いていた。

 

「これは…? いったい…」

 

 とローズも驚いて言った。アレクシアが答える。

 

「巨大な扉?」

 

「新たな戦士が出てくるのでしょうか?」

 

「魔女の次よ……魔人でも出てくるっていうの?」

 

 アレクシアも驚いていたが、視線は挑戦者の(シドの向かった)控室に向いていた。

 

「まさか……そんなバカなっ、聖域が何者かに応えたというのか…!?」

 

 ネルソンが思わずぽろりとこぼしたのをナツメは横で聞いていた。。

 

「司教様?」

 

「…応えたとは?」

 

「ああ……っ、いえ……、その……。」

 

 しまった、という顔をしながらも、ネルソンは取り繕って答えた。 

 

「ご存知の通り、今日は年に一度、聖域の扉が開かれる日です。しかし、『女神の試練』が終わった後に開かれるなど、これまでには無かったことです……」

 

「聖域の扉は、大聖堂の内部に秘されていると聞いていますが…」

 

 アレクシアは扉から眼を離さず聞いた。

 

「扉とは実体のある、それ一つを指すものではないのです。」

 

「あのように自在に形を変え、ある場所を変え、求める者、資格ある者に応じてふさわしき姿で映し出されます。」

 

 アレクシアの見ている前で、扉の端の紋章から赤い光を放ち、順に紋章をなぞるようにして少しずつ全体を光らせていく。

 

「すなわち、招かざる扉、召集の扉、そして歓迎の扉……。あの扉が何の扉かは……!?」

 

 アレクシアの見ている前で、とうとう紋章が完成して、一層光を放った。

 

「いかーん! 扉が開いてしまう!! 信徒たちを外に出せ! 扉に近づけさせるなっ!!」

 

 ネルソン大司教代理の指令を受けて、教会の聖騎士や使徒たちが、観客席にいる観客たちを競技場の外へ誘導しはじめた。

 

 

「女神の試練は終了しました!」「早く外へ!」

 

『女神の試練』が終了していたこともあってか、観客たちは素直に外へ出ていった。

 

 

「さあ、皆様にも万一のことがあっては…大変なことになってしまいます。退室を…」

 

 最後まで残って監視していた、ローズとアレクシア…とナツメにネルソンは声をかけた。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 もはや、どうしようもない。

 

 とりあえず、レミーの服装を整える。

 

 ………みんなごめん、闘技場どうなっている?

 

 ………巨大な扉が起動しているわ。シャドウを待っているのかしら。

 

 ………赤黒い魔力で形成された、紋章の入ったやつ?

 

 ………そのとおりなのです! 見ていないのにわかるです?

 

 ………私の目の前にも、人サイズの奴があるの。どうにも逃げられそうにないわ。今もこっちを伺っているのがわかるわ。

 

 ………主様、それはレミーにも反応していますか?

 

 レミーが私から離れたが扉は微動だにしなかった。

 

 ………私をご指名っぽい。 

 

 ほんのわずかな時間考えた後ガンマが考えを述べた。

 

 ………そこから聖域に突入しましょう。幸い代わり(レミー)はそこにいます。

 

 ………ガンマまで…扱いが酷いよ! 

 

 ………だまらっしやい。ゼータ?

 

「主──シャドウ、七陰全員でバックアップするから、」

 

 いつの間にか、ゼータがシャドウ・ゲートを通って側にいた。

 

 ………ゼータには光学迷彩と防音結界をはって同行してもらいます。

 

 ゼータが頷く。

 

 ………残りの七陰は全員アルファ様と合流しました。最悪ここから闘技場の中央にある巨大な扉を経由してでも駆けつけます。

 

 ………ん、観測装置設置完了した。…聖域に繋がってるの…確認した。

 

 懐からメダルの入った箱を取り出してレミーに渡す。メタルスライム・ソードも腰から取って渡した。

 

「アレクシアのこと、任せるから。」

 

 そう言って、一瞬眼を閉じるとシャドウに変身した。

 

 漆黒のメタルスライム・スーツにフード付きのロングコートに口元以外を隠すマスク、僅かに見えるのは夜空色の髪と青紫色に輝く瞳だけだ。

 

 ゼータがシャドウ専用魔道具の漆黒の倭刀(メタルスライム・ブレード)を渡してくれたので、腰につける。

 

 ………ベータです。現在避難勧告がだされています。どうしますか? 巻き込みますか? それとも…

 

 私はちょっと詰まってしまった。

 

 アレクシアを巻き込みたくはない、が王族なら巻き込んだ方がいい。

 

 ………巻き込む! でも、その場からはまずい。一度引いた後でやるわ。

 

 ………ガンマ、作戦(プラン)1で見直しをして。巻き込むタイミングも任せるわ。できればローズ会長も巻き込んじゃいましょう。

 

 ………承りました。主様、ご武運を。

 

 もう我慢できなくなったのか、扉の方から迫って来た。分断されないように光学迷彩を発動したゼータに手を伸ばして繋いでもらう。

 

 こうして、当初の予定からはかなりズレてしまったが、聖域に突入することになった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 聖域への扉を潜らされて中に入ってみると、吸い込まれるような深い暗闇が広がっていた。

 

 扉を見つけたので入ってみると、そこは殺風景な部屋だった。

 

 部屋の中は扉が一つと、半身を(・・・)拘束された女性が一人。ヴァイオレットさんがいた。

 

 ──ベータによると、『災厄の魔女』アウロラさんらしいが…

 

「こんばんわ。」

 

 マスクを消してゼータとの手を放して挨拶した。基本だよね、挨拶。

 

「──こんばんは?」

 

 あれ、なっか間違ったかな?

 

「もしかして君が私を呼んだのかな?」

 

「呼んだ……? そんなつもりはないけど…、さっきとは違う姿なのね?」

 

「…同一人物だよ、(たま)に変身するんだ。」

 

「そう、人間て変わったのね…」

 

 楽しそうに微笑んで続けた。

 

「ただ、さっきの闘いは楽しかったわ。」

 

「ごめん、変身できるのは私だけよ。でも、私も楽しかったわ。」

 

「そう…やっぱり()じゃないのね…、私の記憶は不完全だけど、きっとあなたが一番強かった。私の時代にいてくれればよかったのに……」

 

 ちょっと拗ねたように言った。

 

「光栄ね。」

 

「それで、あなたはどうしてここに?」

 

「ちょっと扉がやってきて、無理やり潜らされたらここだったんだ。」

 

 こう、扉の方がガッと迫ってきてね、と手を使って示した。

 

「よく…わからないわ。」

 

 そっぽを向いていうところはかわいい。

 

「私もね。そう言えば直接会うのは初めてね、さっきのは幻影みたいなものだったし。」

 

 コートの裾を払って見えを切った。

 

「我が名はシャドウ、陰に潜み、陰を狩る者。…そう言えば名乗りを上げるのは初めてだわ。」

 

「…私の名前はアウロラ、『災厄の魔女』よ。」

 

「…アウロラって名前嫌い? じゃあ君の瞳の色から、ヴァイオレットさんでどう?」

 

 あらいいわね。でしょさっきはそう呼んでたんだ。

 

「ちなみに、聖域の他の場所に行く方法は? ここの調査に来たんだ。出る方法とかはわかる?」

 

「どうかしら、私も出た記憶がないのよ。」

 

「えっ? さっき戦ったけど…」

 

「気付いたらあそこにいたの。あんなことって初めてよ。覚えている限りね。」

 

「そうなんだ。困ったなぁ。」

 

 周囲を見回しても白一色で入って来た扉しか見当たらない。

 

「じゃあとりあえず来た道を戻ってみようかな。」

 

「待ちなさい。」

 

 笑顔だった。

 

「今、シド──シャドウの眼の前にいる美女は、どんな格好をしているでしょう?」

 

「…半身を拘束されているわね。」

 

「えぇ、さっきので半分斬れたんだけど、残り半分も斬って助けてみませんか?」

 

 むちゃくちゃ笑顔だった。私は手をポンと叩いてしまった。

 

「修行じゃなかったんだ! その昔“ボク”もそういうのやっていたみたいなんだけど…」

 

「…斬新ね。──やっぱり人間って変わってない?」

 

 私はヴァイオレットさんの拘束具の残り半分をメタルスライム・ソードで斬って解放した。

 

 ちょっと魔力が使いにくかったが、まぁ許容範囲だ。メタルスライムのコアにちょっと多めに魔力を喰われるだけだ。

 

 ヴァイオレットさんは気持ちよさそうに伸びをして、どこか懐かしむように微笑んだ。

 

「ん~~……。ざっと千年ぶりの自由ね。」

 

 そう言えば、災厄の魔女だっけ? 呟きが漏れてしまった。

 

「適当よ。覚えていないから、最低でそれぐらい。」

 

 ちょっと責める眼つきでいった。

 

 ごめんごめん、とアイテムボックスから予備のメタルスライムを取り出して服を着せて上げる。

 

 どんな形がいい? そうねシャドウの服(ボディスーツ)は嫌よ、ドレスがいいわ。はいはい、さっきと同じ感じ? そんな感じ。

 

「さて、私たちの目的は一致しているわ。あなたは調査、私が解放、でしょ?」

 

 ちょっと得意気に顔を寄せてくる。。

 

「まぁそうかな。」

 

「協力していきましょう。」

 

「いいけど……ここから出たことないんでしょ?」

 

「わからないわ。でも解放の方法はわかる。」

 

 周囲を見廻してから言った。

 

「この聖域は、いにしえの戦いで作られた記憶の牢獄よ。中心にある魔力の核を壊せば、私は解放されるわ。」

 

 私は? 私は!

 

「って言いたいところだけど、核を破壊すれば何もかもが消えるわ。あなたも出られるはずよ。」

 

「それって聖域なくならない?」

 

「いいじゃない。困るの?」

 

「ちょっと待って、ゼータ?」

 

「なに? シャドウ?」

 

 えっ? と光学迷彩を消して姿を現したゼータに驚いてる。

 

「ここ無くなったら困る?」

 

「…アルファとデルタ、イプシロンが来るって。シャドウ・ゲートを繋げれる?」

 

 ホイホイ

 

 メタルスライムのシャドウ・ゲートの魔力刻印に魔力を流す。……ちょっと多めに必要だった。

 

 開いたゲートから三人が入って来た。

 

…ちょっと魔力が吸い取られているわね。初めましてヴァイオレットさん、私はアルファよ。」

 

「デルタなのです!」

 

「初めましてオリジン、私はイプシロン。」

 

「ゼータ。」

 

 挨拶をするアルファたちにめちゃくちゃ驚いているヴァイオレットさんがいた。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 ヴァイオレットさんが落ち着くまでに、持ち込んだ観測装置を設置する私とデルタとイプシロンがいた。

 

 ヴァイオレットさんは、そんな私とアルファとゼータを順に見廻しては落ち着かない様子だ。

 

「私に似ていると思っていたけど、フレイヤにも似ているのね。」

「あら、気が付いた? 三英雄のオリヴィエ、リリ、フレイヤの直系(女系直系)の子孫よ。」

「…私を討伐に来たの?」

「まさか。あなたを解放するためにきたのよ。」

「…それって、私の正体も…」

「その答え合わせに来たの。…あなたも被害者だったのね。」

 

 アルファと話し込み始めたので、イータに通信を繋いだ。

 

 ………イータ、観測はどんな感じ?

 

 ………ん…データは取れてる。けど、かなり魔力が…吸いとられている…はず。

 

 一通り話は済んだのか、アルファも話しかけてきた。

 

「シャドウは気づいているか微妙だけど、魔力は使えない…はずよ。」

 

 ………アルファとイータ酷い!

 

「吸いとられていることはわかってるわよ!」

 

 それを使って、聖域を掌握しようとしているんだからね!

 

 そして、気を取り直したのか、ヴァイオレットさんが教えてくれる。

 

「ここは聖域の中心に近いの。魔力を練ってもすぐに吸いとられれてしまうわ。」

 

 ゆるく練った魔力を手のひらにだすと、一瞬で霧散していった。

 

「みたいだね。前にラウンズと闘ったときよりもずっと強力な奴だ。魔力を練るとすぐに消えてなくなる。でもまぁこれも想定内かな? まあ問題ない。破壊に関しては一家言あるんだ。」

 

 アルファとイプシロンのジト眼には気付かなかった振りをする。

 

「あら、頼もしい。ちなみに私、魔力が使えないとか弱い乙女よ。一度ナイト様たちに守られてみたかったの。」

 

「…その余裕はとてもか弱くは見えないんだけど…。そういえば解放されたあとどうするの?」

 

「…? 消えてなくなるわ、ただの記憶だもの。」

 

 そこでアルファは前に出て、指を二本立てて見せた。

 

「あなたには二つの選択肢がある。このまま消えてなくなるか、現世で生きるか。」

 

 アルファが話しかける。

 

「…それってどういう意味かしら。」

 

「言葉通りの意味よ。ヴァイオレットさんとして生きるか、アウロラの一部として消えてなくなるか。」

 

「…ちょっと考えさせて…」

 

 ………ん…、ここの観測は…終了した。いつ移動開始…していいよ…

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 ヴァイオレットさんが落ち着くのを待ってから、元の扉を開けて出ることにした。

 

 その前にアルファたちは光学迷彩を起動して姿を隠した。

 

 扉の先は早朝の森だった。日の光が木々の隙間から降りそそぎ、朝露に濡れた草が輝いている。

 

「ここは?」

 

「記憶の中よ。」

 

「君の記憶?」

 

「見覚えがあるわ。」

 

 静かな森の中をしばらく進むと、突然視界が開けた。

 

 朝日がさんさんと降りそそぐその広場に、小さな女の子が膝を抱えて座っていた。

 

「泣いているみたいね。」

 

「そうね」

 

 私たち一行は、二人で女の子に近づいた。私が屈んで顔を覗き込むと紫色の眼から涙が溢れていた。

 

 君にそっくりだ。似ているだけよ。なんで泣いているのかな? おねしょでもしたんじゃない。

 

 そう言ってヴァイオレットさんは煙に巻くが…

 

 ………その女の子、ヴァイオレットさんと匂いが一緒です!

 

 とデルタから通信が入った。

 

 女の子は声を出さずに泣いていた。その身体には青あざが目立つ。

 

「それで、どうすればいいの?」

 

「先に進みたいならこの記憶を終わらせればいいの。」

 

「つまり?」

 

「泣いても何も変わらないわ。」

 

 パンッ、と頬を叩いた。

 

 ひどくない? いいのよ自分だし。結局認めるんだ。

 

 そして世界が割れた。鏡が割れるみたいに、朝の森が粉々に割れていき、深い闇の奥に消えていく。

 

 そして辺りは何もない暗闇になった。そのときかすかに破壊された施設の一部が見えたような気がした。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 私たち一行は、何もない暗闇の中を、魔力が吸い取られる方に進んだ。

 

 それ以外には、靴音しか感じなかった。

 

 歩く足の裏の感触すら曖昧で、上下の感覚すら失くしてしまう。

 

 ゼータ君を見ると光学迷彩を消して、すでに順応したのか試しに上下逆向きに歩いていた。アルファとイプシロンも同様に挑戦していた。デルタは興味がなさそうだ。

 

「ねえ、彼女たち何してるの?」

 

「いや、ここ上下の感覚がないなって思ってね。氣を使って軽身功を使っても、重力に逆らって天井を歩くって割と大変なことだから、感覚を掴むための練習ってところかな?」

 

「…天井を歩くの?」

 

「そう、天井を上下逆向きに歩くの。」

 

 

「ねぇ、正直に答えて。…人間だけじゃなくてエルフや獣人も変わってない?」

 

 

「変わってないって。私たちだけだよ、こんなことができるの。」

 

 しばらく進むと、私たち一行は光に包まれた。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 アルファたちはその瞬間に上側に戻っていようだ。

 

 それなりの高さに出現したので、各自華麗に着地する。私はヴァイオレットさんは受け止めた。

 

 ありがとう。どういたしまして。私は少し冷たい身体の彼女を降ろしてあげた。

 

 デルタがすでに周囲を警戒しているが、ここは戦場だった。

 

 倒れた兵たちの、どす黒い血が大地に染みこんでいる。それが地平線まで続いていた。

 

「行きましょう。」

 

 ヴァイオレットさんはまるで、行き先がわかっているかのように進んでいく。

 

 デルタを見ると、ヴァイオレットさんの進む先の方を指さして囁いた。同じ匂いがいるです。

 

 私たちはヴァイオレットについて歩き出した。アルファたちは光学迷彩を使って姿を消した。

 

 

 戦場は、死屍累々だった。

 

 

 死体がそこら中に散乱している。できるだけ死体を踏まないように注意して戦場を歩く。

 

 しばらく歩くと戦場の中心にできたクレーターの中で少女が泣いていた。私たちは少女の前で立ち止まる。

 

 顔を見なくても、それがヴァイオレットさんだとわかった。

 

 また泣いているね。泣き虫だったのよ。剣を貸して。どうぞ。

 

 ヴァイオレットさんは刀が重いのか地面を引きずりながら少女の前に立った。その顔に表情はなく、どこか別のところへ感情を追いやっているように見えた。

 

 ヴァイオレットさんは刀を持ち上げて振り下そうとする。

 ………デルタ!

 ………はいなのです!

 

 その直前、デルタが動いて*1。動き出した死体を爪で引き裂いた。

 

 兵士の死体が動きだし、彼女を斬りつけたのだ。デルタが対応しなかったら危なかっただろう。

 

 私は驚いているヴァイオレットを抱えて一度下がった。途中起き上がった死体を踏み台にしてクレータの外に戻る。 

 

「厄介ね……聖域に拒まれている。」

 

 周囲の死体が次々よ起き上がってくるのが見えた。まるでゾンビ?だ。

 

「私たちはウイルスで、アンチウイルスソフトに引っかかった感じかなぁ?」

 

「よくわからない例えね」

 

「ごめん、私も“ボク”も詳しくないんだ。…でもアルファたちは見えてないようだね。」

 

 ………アルファたちは、ここでは隠れておいて。

 

 彼女を降ろして、渡した刀を返してもらう。

 

「…ちなみに君はここで死ぬとどうなるの?」

 

「初めの部屋に戻されるでしょうね。」

 

「それは面倒そうだ。」

 

 迫ってくる死体を相手に刀を向けた。

 

「そうね…、本当に面倒……」

 

 ヴァイオレットさんの声には、心底面倒そうな雰囲気があった。

 

 結構遠くの死体まで動き始めていた。

 

「そうだねぇ。」

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 こちらに向かってくるゾンビを片っ端から斬り裂いていた。特別動きが速いわけでもないので、首を刎ねるか四肢を斬り落としていく。

 

「魔力がないと微妙なんだね。」

 

 ヴァイオレットさんは地面のゾンビを蹴り飛ばしていた。

 

「言ったでしょ、か弱い乙女だって。あなたは…魔力があってもなくても平気みたいね」

 

「そりゃ、赤ん坊の頃から肉体の魔改造に励んできたからねぇ。」

 

 ちょっとアルファとゼータの責めるような視線を感じた…気がした。

 

 さて、魔力は吸われているけど、こっちの生成量の方が多いから特段問題を感じない。

 

 とは言っても、第三陣までダルマにしたが、第四陣が迫ってきている。長々と闘っていてはいずれ体力の限界が訪れる。

 

 一度下がって…

 

「無双状態も悪くないけど、終わりが見えないのはいやね。」

 

「それは困るわ。」

 

 …ヴァイオレットさんと眼を合わせると、少女に眼をやった。

 

 私が斬り裂いた血飛沫を浴びて真っ赤に染まっているが、膝を抱えて泣いたままだった。

 

 私は納刀すると少女に近付くと両手で抱え上げて立たせると、抱きしめた。

 

 少しだけでも暖かみを伝えたかった。

 

 そして、左手で少女を支えると、

 

「ごめんね。」

 

 そのまま素早く右手にメタルスライム・ショートソードを生成すると、背中から心臓を一突きにしてあげた。

 

 その瞬間、また世界が割れた。

 

 粉々に世界が砕けていく。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 そして、私たちは聖域の中心に辿り着いた。

 

 そこは遺跡のような場所だった。

 

 今まであった、どこか夢の中のようなぼんやりとした感覚は消えて、少しひんやりとした空気が皆の感覚を醒ました。

 

 天井は高く、魔法の光が辺りを照らしていた。

 

「みんな無事?」

 

「おかげさまで。」

 

 ………全員揃っています。

 

「よしっ、で、あれって……?」

 

「そう……聖域の中心よ。」

 

 前方を見ると、強大な黒い扉が鎖に巻き付かれて拘束されていた。…よく見ると、周囲に斬れた鎖が散乱していることから、元の半分くらいの量になっているのだろうか?

 

「…そう言えば、何を壊すんだったっけ?」

 

「魔力の核よ。その扉の奥にあるはず。」

 

 ふむ、鎖を斬ればいいのかな、と呟いたところ。

 

「いいんじゃない?」

 

 と回答があった。どうもそうらしい。

 

「よしっ、でも、一本ずつ斬っていくのは面倒そうね…」

 

「あのね、普通鍵があると思わない?」

 

 なるほど、確かに。…やる気がそがれたのでヴァイオレットさんの方に近付いた。

 

「で、それ?」

 

 その扉の前に、そこそこサイズの台座があって、そこに何やら豪華な剣が一本突き刺さっていた。

 

 刀身に古代文字が描かれている、アーティファクト一種だろう。

 

「これよ、この剣なら鎖が斬れるって書いてあるわ。」

 

 扉の前に鍵を置いとくって…他になにか仕掛けないんでしょうね?

 

 どれどれ、と言いながら剣に手をかけたところで拒絶の意思を感じた。

 

 なんか気に入らなくて、氣と魔力を全力で込め始めた。

 

 すると、赤黒い何かが弾きだされると同時に、拒絶の意思を感じなくなった。

 

 よしっ、これで引き抜こうと思えばいつでも簡単に抜けそうだ。

 

「アルファ、イプシロンにゼータ。抜いちゃったら、さすがに教団側にバレるよね?」

 

「…そうね、それは多分聖剣よ。その前に資料を抜き取りましょう。イータが扉の魔法陣について解析できたそうよ。これで聖域の好きなところへ行けるわ。」

 

 姿を現したアルファたちが右手を翳すと、手の前に青紫色に輝く紋章が現れ、順に魔法陣が展開して広がって扉の形になった。

 

 色が変わっただけだが、青紫色に輝く扉は神秘的に見えた。

 

「シャドウはここでヴァイオレットさんと鍵──聖剣を守って待っていて。私たちは()の件をやってくるわ。ゼータは残って情報収集と情報操作の現場指揮(コマンドポスト)をお願いね。」

 

「了解。気を付けて。 うん、もう少しで掌握できるから… 」

 

「アルファ様も気を付けて。」

 

 魔法陣は光を放って、アルファたちを飲み込んで消えた。

 

 

 

*1
─光学迷彩で見えてません─





 陰の実力者になりたくて! 本編の第13話です。

 冒頭にも書きましたが、なんと本日で3週間毎日更新となりました。そろそろストックが…

 聖地編です。

 基本カゲマス準拠です。今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、聖地編までは本編を進めます。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…性癖全開です。

 今回の聖地編は途中からオリ展開となります。一部七陰がエントリーしているのも聖剣についても全部捏造です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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