陰の実力者になりたくて! 本編の第14話です。
聖地編です。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
「もう、シドに会いに来ただけっ! って言っているのに…、」
来賓席から闘技場の外へ退室する途中、控室の近くを通っている時だった。それに気づいたアレクシアが、せっかく近くに来たのだから、とシドに会いたがっていた。
「ですから、もう、外に避難していますって…」
ちょうどそこに、つかれた顔をしたシド──レミーが控室から呼びだされて出てきたところだった。
アレクシアは護衛の騎士や聖騎士を振り切って加速すると、シドに向かって飛びついた。
「シドっ!!」
飛び込んできたアレクシアを氣と化勁を使って慣性を打ち消して受けとめる。
「ア、アレクシア。ひ、昼振り。」
アレクシアの眼から涙が一筋、二筋と零れ落ちた。
「良かった。生きてる。勝ったのよね? 怪我はない?? 大丈夫???」
そのまま大洪水となった。
慌てて、アレクシアの顔を胸に埋めてやり、そのまま抱きしめて後頭部をポンポンとゆっくり叩いてあげる。
「大丈夫だよ、怪我してないよ。生きてるよ。ほら、ドキドキしているよ…」
アレクシアが落ち着くまでゆっくりと声をかけ続ける。
ネルソン大司教代理を眼で牽制しながら、アレクシアが落ち着くのを待った。
ひとしきり泣いたところで落ち着いたのか、ぼくの鼓動を聞いて安心したのか、アレクシアがしゃくりあげるのをやめたので、すばやく魔剣士学園の制服の上着を脱いでアレクシアの頭をフードのようにすっぽりと覆ってあげる。その上から再度抱きしめてあげた。
スンスン
おいおい、ちょっと匂いを嗅いでるよ。
ちょっと気持ち的に引きながら背中をゆっくりと撫でてあげていたら、とうとう痺れを切らしたのか、ネルソン大司教代理が何かを言ってくる前に、ローズ会長が話しかけてきた。
「おめでとうございます。『女神の試練』達成しましたね!」
ローズ会長の眼にも涙があった。
「女神から力を授かった伝説の英雄は平民から富を築き大国の王女をめとったと聞きます。」
「茨の道を抜けた先には必ず幸せな未来が待っているんです…」
「今回『女神の試練』をシドさんが達成したので、アレクシアさんとも大手を振って交際できるでしょう。」
「茨の道を二人で一歩ずつ乗り越えていく…茨の道を抜けた先には必ず幸せな未来が待っているんです。」
「そうやって二人の愛はますます強く結ばれていくのです。」
「コホン、…というわけで、愛し合う二人の未来を祝福しています。」
…ベータによると、どうもシドが『女神の試練』に挑戦したのはローズ会長が裏で手を廻したかららしい。ぼくも一瞬白眼を向きそうになったわ。
そしてアレクシアの体温が上がっている。まぁなんだ、祝福されて照れてるんだろう。あるいは今の自分たちの状況に気が付いたのだろう。
なんというか、聖教の人たちも、みんな「おめでとう」っていう雰囲気ができていた。
あれ?聖教って、女同士の仲は認めてたっけ?
「ごっほん。そろそろよろしいですか? 外へ避難をお願いします。」
ネルソン大司教代理が声をかけてきた。ぼくはアレクシアを抱いていた手を放して、
「ご迷惑をお掛けしました。」
ぼくはそう言って頭をちょっと下げると、アレクシアの
すると、いきなりネルソン大司教代理の背後に
オルソン大司教代理は気付かないうちに吸い込まれた。ぼくはワザとらしく、あれは何だ! と叫んでからアレクシアと一緒に扉に吸い込まれていった。
「あぁ~れぇ~、吸い込まれていくぅ」
ローズに背後から抱きついたベータの声に力が抜ける思いをしながら…
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中空に放り出されたぼくたち一行は、落下した。
ドスン!と音を立ててネルソンは落ちた。腰を押さえてぐおぉぉぉと呻いている。
ぼくは、すかさず体勢を整えて、アレクシアを両手で抱きとめた。
「うぁぁぁぁーー!!」「うわぁぁあぁぁあ~」
ローズ会長はナツメに背後から抱きつかれた状態で落下していた。
「あたたたた…、ナツメ先生は大丈夫ですか?」
「ローズ様、変なところを触らないでください。」
「す、すいません。うっかり手が…」
ローズは身体を起こすと、自分たちに視線が集中していることに気付いた。
「あの……えっと。」
「あら、招待された客がまた現れたわ。」
「き、貴様たち、何者だ!!」
ネルソンが叫んだ。
アレクシアもさすがにこの事態に頭が冷えたのか、フード状に被った学園の上着の下から顔を出した。
ついでにシドに抱かれた体勢から降り立った。上着は返さずそのまま着た。
そこに居たのは、漆黒のボディスーツにフード付きのマント、さらに口元を隠すマスクを付けている人たちが三名ほど。
「ディアボロス教団のクズに名乗る名はないわ。我らは陰に潜み、陰を狩る者。」
喋ったのは、金髪の前髪と青紫色に光る瞳の持ち主だった。
だが、それよりも言った言葉に気が向いた。
「ディアボロス教団…、このハゲがその一員だというの。」
「ええ、そうよ。」
すごくあっさりと答えられた。
アレクシアとローズも驚きの眼を向けた。遅れてシド──レミーも。
まさか大司教代理がディアボロス教団の一員だったとは。ということは大司教ドレイクが殺されたというのも…
金髪の漆黒の人は、アレクシアとローズを見た後で、肩をすくめると言った。
「あなたたちも聖域に招待されたというのなら、もしかしたら、あなたたちにも知る権利があるのかもしれない。」
「ば、バカな、聖域が応えたというのか。」
「さぁ? でも私たちがここにいるのが事実よ。」
実はいかさまだけど、と心の中で付け加えた。
そして、奥に向かって歩き出した。
「このハゲがディアボロス教団で、聖地リンドブルムの大司教ネルソン…であってる?」
「残念、このハゲは聖地リンドブルムの大司教“代理”ネルソンよ。本当にディアボロス教団だというのなら、“元”になりそうだけど…」
「ホイホイ。この胡散臭いのが作家のナツメ先生?」
「そう、うさんくさいの。」
「わかるわ──その気持ち。」
…誰かの呟きが聞こえた気がした。
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「…これが聖域?」
巨大な円形の塔が横倒しになっているかのようだ。丸い壁面に通路のようなものが設置されているのが見える。
突き当りの円形の扉は分厚い金属でできているのが見てとれる。その前に石像が安置されていた。
「この地は英雄オリヴィエが打倒した魔神ディアボロスの残骸、その左腕を封印した地と伝えられている。」
声が反響してくるまでの間から、その大きさがわかった。
「それがどうした? おとぎ話を頼りに腕でも探しに来たか。」
「それも楽しそうだけど…、私が知りたいのはディアボロス教団のことよ。」
「んん、なんの話だ…?」
ネルソンの声が低くなった。
「ふんっ、答えられないのはわかっているわ。だから直接見に来たの。最初から全て歴史の闇に葬られた真実を探しに。…そしたら聖域に招かれたの。」
それを鼻でわらったあと、安置されている石像を指さした。
「英雄オリヴィエの像」
「英雄オリヴィエ…? 男性のはずでは?」
「我々はおおよそのことは理解している。歴史の真実も、教団の真の目的も──」
「──そしてなぜこの英雄が、私と同じ顔をしているのか」
誰もがその美しさに息を吞み、そして同時に気付いた。彼女の顔は、英雄オリヴィエとうり二つなのだ。
「き、貴様はエルフの『悪魔憑き』……! だが適応できずに死んだはずでは……!」
「やはり知っているな!」
透き通った湖のような髪の見える
「我らは『悪魔憑き』の真実は知っている。今の秩序を維持したい教団にとってはさぞかし邪魔でしょうね。」
「一体、なんの話を…」
ローズは彼らの話がまるでわからなかった。しかし、アレクシアは多少理解しているようだし、
ローズは先日の王都を青紫色に染めた光の柱を思い出した。
アレクシアの救出時に立った光の柱、それがとてつもない威力の一撃だったことをオリアナ王国経由で聞いている。
あの光はオリアナ王国からも見えた、と。衝撃と爆風もオリアナ王国へ届いた、と。
そして、アレクシアの誘拐事件にディアボロス教団というカルト教団が関与していることも。
それに対抗する組織が趣味で考古学しているわけではないだろう。何か、大きな理由があるのだ。
強大な二つの組織の抗争が人知れず繰りひろげられている。その事実にローズは戦慄した。
もし、この先彼らの争いが激しさを増したとき、何も知らない国がそれに対応できるとは思えなかった。
そして、その魔の手がオリアナ王国に伸びている可能性も…
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「教団の目的が単なる魔人の復活ではないことも察している。しかし、まだ確信はない。…だからみんなで直接見に行きましょうか。」
すると、赤黒い扉の魔法陣が顕現するが、その魔法陣の色が青紫色に染め変えられた。
な、なにぃ~、とネルソンは叫んだ。
「かつて、ここで大きな戦いがあり、幾多の命が散った。」
魔力の高まりが、大気を振るわせる。
その尋常でない魔力量に、ローズは背筋が冷たくなった。もし、彼女の矛先が国へと向いたとき、それを止めるには膨大な戦力が費やされるだろう。
「この魔力、やはり『悪魔憑き』、自力で覚醒したのか……?」
突き当りの円形の扉に青紫色の線が走った。どこかで巨大な『何か』のロックが開く音がした。
そして、装置の起動を示すように、音が高まり、周囲の灯りが点灯していく。
「バカな、なぜ起動する!?」
「魔人と戦士たちの魔力が渦巻き、その魔力の渦に行き場をなくした記憶が封じ込められた──」
突き当りの円形の扉が非対称に分かれて天井と床に収納されていく。
「──ここは
「バカな……まさか……、オリヴィィエェェェ!?」
「さあ、おとぎの世界に旅立ちましょうか?」
光りかがやく世界の中で、
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アレクシアは気が付くと白い廊下に立っていた。
現実のようで、どこか夢の中のような、ふわふわした空間だった。
「ここは?」
左手を繋いだシドがいることに安心する。あれ…
「聖域に閉じ込められた英雄オリヴィエの記憶よ。」
廊下の窓から見える風景は
「かつてここは、教団によって身寄りのない子供たちが集められ、ある実験の被験者になった。」
科学者…あるいは錬金術師か──白衣の男たちがいた。おとぎ話の時代とは思えない高度な専門性の高い施設であることだけはわかった。
「ほとんどの子供は『それ』に適用できずに死んだ。残ったのはほんのわずかな女の子だけ。」
そこから見えるのは人体実験の記録だった。ほとんどの子供が醜く腐り果て、身体を暴走させて死んでいた。
血まみれの女の子がいた。しかし、その血は自傷によるものだけでは無かった。肉体の異様な変異によって裂けた肌から血が滴り落ちていた。
その黒く腐り落ちるような様に、アレクシアは思い当たった。
「これは…『悪魔憑き』!?」
「むごい……」
ローズも気持ち悪そうにしている。それを醒めた目でみるナツメ先生──ベータがいた。
子供たちの死に方に一つの共通点があった。
女の子は『悪魔憑き』のような姿で死に、
男の子は『悪魔憑き』にはならなかった。
それを通路から静かに眺める女の子──オリヴィエがいた気がした。。
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ガラスで隔てられた牢屋の中に幼いオリヴィエがいた。
彼女には怪我もなく、苦しんだ様子も見えない。ただじっと、向かいの牢を見ていた。
向かいの牢屋は血塗れだった。
次の瞬間、そこは場面が切り替わるかのように掃除され、中には女の子が現れた。
そして、苦しみ、死んでいく。すぐにまた別の子が入る。
小さなオリヴィエはずっとその様子を眺めていた。
「オリヴィエは『それ』に適応した、わずかな子供の一人だった。」
「『それ』っていうのは何なの?」
アレクシアはたまらず聞いた。
「ディアボロス細胞……。私たちはそう呼んでいる。教団は──」
そして、ネルソンを見ながら続けて言った。
「──教団は、魔人の細胞を子供たちに移植する実験をしていたのよ。」
「仕方がなかった。魔人に対抗するには力が必要だったのだ。」
苦々しい声でネルソンが抗弁する。
「それが教団の言い分ね。真意はどうあれ、実際にオリヴィエが魔人の左腕を切り落としたのは事実よ。」
「おとぎ話ではなかったというの?」
アレクシアは信じられない思いでいた。ギュッと左手を握りしめる…とその手を握っているシド──レミーがいた。あれ、何か違和感が…
「どう思おうとあなたの自由よ。」
それも
「ここで見ている光景も、結局どこまで真実かは分からない。
一瞬光景が廃墟に変わったような気がした。施設は完全に破壊され白骨死体がところどころ落ちていた。それも一瞬のことで元の光景に戻った。
「記憶は時間とともに色褪せる。本人の望んだ形に作り変えられる。」
オリヴィエは成長し、美しい少女となった。その顔はやはり
「ともあれ、成長しディアボロスの力を手に入れたオリヴィエには一つの任務が与えられた。」
聖剣がオリヴィエの前に装填されてきた。
「魔人の討伐よね。」
アレクシアは得意気に答える。
「おとぎ話ではそうなっているけれど、本当の任務は新たなディアボロス細胞の搾取。」
「でたらめを言う……! ……ぐあぁ…」
ネルソンの背後にいた、
アレクシアとローズは彼に軽蔑の視線を向けた。ベータは一瞥すらしなかった。シドは相変わらず退屈そうにしている。
それを無視して
「彼女は力を得た後も従順だった。きっとその先に人々が平和に暮らせる世界があると信じて……」
すこし、哀しそうに言った後、声色を戻していった。
「しかし、教団の目的は違った。」
世界は鏡が割れるように粉々に砕け散り、その後に新たな世界が広がった。
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そこは幾多の死体が積み重なった戦場だった。
先の方で大きなものの落ちる音が響いた。
アレクシアたちは
「何ですかこれは……」
その黒い塊は巨大な腕だった。黒く、太く、醜く肥大化した化け物の腕だ。黒い爪が伸び、生々しい肉片がこびりついていた。
「ディアボロスの左腕よ。」
ディアボロスの腕は斬り落とされてもなお、生きていた。不用意に近づいた男が、左腕から伸びた骨に貫かれ絶命するところが見えた。
周囲を囲むようにいた大勢の白衣の男たちが杖のようなナニカをかざして起動させていく。そこから鎖状の光が飛び出していく。無数の鎖によってディアボロスの左腕が拘束されていく。
「教団は古代の高度なアーティファクトによって、ディアボロスの左腕を封じ込んだ。」
しかし封印は完全ではなくやがて歪みが生じて聖域となる…それはまた別の話ね、と独り言ちた。
「教団の目的はディアボロス細胞の驚異的な生命力だった。その肉を切り刻み、血を抜き取って研究し、ディアボロス細胞の驚異的な生命力を得るために…」
「その過程で生まれたのがこれよ。」
「それ……!」
それはアレクシアも見たことのある、赤い錠剤だった。
ぐぅぅうーっ、とネルソンも声なき声をあげた。
「でもこれは副作用も強く、教団が真に求めるものではなかった。」
そして世界が揺れた。鏡が割れるように粉々に砕け散った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アレクシアは気が付くと、そこは白い研究室だった。
そこにはディアボロスの左腕が、鎖で繋がれて、巨大な水槽の中に入れられていた。まだ生きているのか、ときおり指先がピクピクと動いている。
「魔人の腕が……!」
そして、水槽は赤く透明な液体に満たされていて、何かを抽出しているのか、気泡が下から上へと上がっているのが見えた。
思わず前に出てしまい、シドの
「ここは遺跡! なんて大きい!」
ローズ会長は遺跡自体の大きさに驚いているようだ。現在ではこのような巨大な建造物は存在しない。
「バッバカな! 貴様! よりにもよってここは暴くつもりか!!」
状況を把握したネルソンががなり立て始めた。
無言で魔人の腕の水槽の下にいる科学者──白衣の男を指さす。
「よせ、見るな! 実験体の末裔ごときが、知っていいものではない!!」
その白衣の男たちが何か操作をする。すると──
「赤く輝くそれは、まるでディアボロスの血のようだったという。」
──白衣の男たちの目の前の一部が持ち上がり、強烈に赤く光かがやく何かが抽出されていた。それを恍惚とした表情で眺めている白衣の男たち。
「それを舐めれば、莫大な力と老いることのない肉体を得る。」
「不老不死、とでも言うのですか…?」
「それが教団の真の目的…」
「ふっ、そこにいるネルソン大司教代理…」
暴れ出したネルソンを、
「…そしてあそこにいる男。よく似ていると思わない?」
「…まさかっ!」
アレクシアは慌ててネルソンの顔を見た。顔を反らそうとしているが、かなわない。
それは似ているという段階を通り越して、本人としか思えないほどだった。
「当事者のあなたになら、素敵な情報が得られそうね?」
アルファは一瞥すると黒く微笑みながら続けた。
「この薬の名前は?」
顔を背け、暴れるネルソンだったが、背後の
「うぅーー、雫だ! 『ディアボロスの雫』」
「ありがとう。でもこの薬は2つの大きな欠点を抱えていた。」
「欠点……ですか?」
「それくらいなら見ててわかったわ。」
得意気にアレクシアが前に出る。シドも面倒になったのか、一緒に前に出る。キラーン! とネルソンの頭頂部が光を反射した。そして左手で白衣の男を指さして言った。
「過去のこいつには、髪がある!! でも今のこいつには…「違うわーー!!」」
「違う!! 髪が抜けたのは、ストレスのせいだ! どうせ死なんのだからと、どいつもこいつも厄介事ばかり……」
ネルソンは激昂していた。
「普段はいがみ合っているくせに、どうしてわしに後始末を押し付けるときは協力し合うのだ!! あいつらは!」
ローズは思わず印を切っていた。アレクシアは明後日の方を向いて早口で言った。
「えっと、ごめんなさい。」
「欠点のうちの一つは、『ディアボロスの雫』は定期的に摂取しないと効果を失うということ、一年に一度、といったところかしら?」
「その通りだ…」
ネルソンは呻くように答えた。
「二つ目はごく少量しか生産できない。一年で?」
「12滴だ…」
よくできました、と言わんばかりの笑顔で続けた。
「そういえば教団の最高幹部『ナイツ・オブ・ラウンズ』の数は12人だったわね。偶然かしら?」
「『ナイツ・オブ・ラウンズ』!! ゼノンの言っていた…」
アレクシアの脳裏を誘拐事件の時のゼノンの言葉がよぎった。
「あなたたちは『ディアボロスの雫』を未だ完全なものにできていない。完成の鍵と見ているのは封印された魔人と英雄の子孫。そう、私のような英雄オリヴィエの血を色濃く受け継いだ者。」
ネルソンを見て確認するように聞く。
「…そうよね、ラウンズ第11席殿。」
「…クク……クックック……教団では誰もがその雫から得られる力と永遠の命を求める。」
赤黒い魔力を放って、背後の
「は、ははっ。私の正体にたどり着くとは…それだけは褒めてやろう! いかにも、私は選ばれた『ナイツ・オブ・ラウンズ』『強欲』のネルソンんぶはっ」
背後から、メタルスライム・ソードでネルソンの心臓を射抜いた
そのまま力の抜けたネルソンの身体を研究室の通路から下の水路へ振り落として捨てる。一同は唖然としてその一部始終を見ていた。
ネルソンの落ちた辺りの水が赤く染まっていくのを呆然と見ていた。
ふぅ、と一仕事終わったかのように満足の息をつくデルタを、
「ちょっと
「ぁあぁっ…あ゛…ぅっぅっぅっ…す、すいません……様、でも……は、あいつを狩っといた方がいいと思ったのです。この前山で岩イノシシを狩った時も…「黙りなさい。」」
クゥーーン、と耳を押さえて涙眼になってうずくまる
「それと、いつも言っているでしょ。獲物を仕留めたかは、ちゃんと確認しなさいって。」
ネルソンの落ちた辺りの赤い水が沸騰したように泡立ち始めた。
「…来るわよ」
数階分下の通路から、下半身を肉塊にしながら通路まで身を伸ばしてきた巨体となったネルソンがいた。
「ククク……クハハハハハ!」
その顔に聖職者の面影はない、それは獰猛な戦士の顔だった。
「アハハハハハッ、クハハハハハ!」
巨大なネルソンが腕を振るった。
すると、世界がひび割れた。鏡が割れるように粉々に砕け散って、場面が変わった。
陰の実力者になりたくて! 本編の第14話です。
そろそろストックが…
聖地編です。
基本カゲマス準拠です。今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、聖地編までは本編を進めます。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…性癖全開です。
今回のアレクシアたちの聖地突入はオリ展開です。なお、レミーも最初は焦っていました。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。