陰の実力者になりたくて! 本編の第15話です。
聖地編も残りわずかとなりました。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
アレクシアは気が付くと、そこは白一色の世界だった。
「今度はなにっ!」
右手を繋いだシド──レミーの手をギュッと握りしめる。
「白い…」
ローズ会長も驚いて周りを見廻している。
アレクシアが改めて周囲を見ると、右手を繋いだシドに、
ナツメ──ベータも周囲を確認してから呟いていた。
「イプシロンはいない、か…」
「分断された。…これも聖域の防衛システムというわけね。」
………シャドウ?
………掌握はとっくに終わってるよ。一応ハゲの要望通りに分断した風に見せているだけだよ。
………魔力の吸収も、アルファとデルタの方はバレないように1/4に落として続けているよ。
………イプシロンです。ゼータと合流しました。
………そっちの魔力吸収は無しにして、みんなが動いてるよ。
………ガンマ?
………
………デルタ?
………はいなのです!
アルファの前で、手を地面につけて攻撃の構えを取っていたデルタが応えた。
「ウハハハハハハッッ!!」
すでに張り子の虎となっているのだが、もう少々時間が必要なようだ。
「聖域は我らの領域! 教団に牙を向けたこと、その身で悔いるがよい!!」
そう言いながら、魔力でできた分身を十数人へと増やしていく。
デルタは大きく息を吸うと…
「ウワアァァアァァア~!!!!!!」
大きく吠えた。それが闘いの始まりとなった。
デルタは走る勢いをそのままに、爪で薙ぎ払う。
すべてを薙ぎ払う暴力がネルソンたちを弾き、彼は木っ端微塵に吹き飛んだ。
エヘヘヘッ、と爪の血を見て笑うデルタに、複数のネルソンが飛び上がって切りかかてきた。
それを、振り向きざまの左手の一閃で木っ端微塵に吹き飛ばす。
ん……?
違和感を確かめるデルタの背後から獰猛に嗤いながらネルソンが切りかかってくる。
「ゥハアァッッ!」
しかし、デルタは爪で難なく大剣を受け止めた。が、デルタ
その後、大剣を弾くと後方へ飛びのいた。
「…何かおかしいです。」
………えっと、これでいいです?
アルファも手の上で魔力をゆるく練る。それは一瞬で霧散した。
「なるほど……」
………ええ、名演技よ。
ネルソンが大笑いしながら告げた。
「ガハハハッ、聖域の中心に近づくほど、貴様らは力を失う。誘い込まれていることに気づかなかったのか?」
最高にキメ顔だ。
「あなたは逆に、中心に近づくほどに力を得る。」
─もう逆の立場だと知ったら、どうなるかしら(黒笑)─
「ウハハハッ、もう少し近づいてから仕掛けたかったが──」
そう言って、二十数人の魔力でできた分身を作り出した。
「──この辺りでも十分だろう。」
数が倍に増えたことで怯むと思っていたのだろう。
残念、デルタにとっては…
「獲物が、1……2……、たーっくさん!!!」
…獲物が増えただけだった。数の不利も包囲されるリスクも関係ない! ただ獲物を目掛けて猛進した。
「ヴワア”ア”ア”ア”ァァア”ァァア”~!!!!!!」
そこには、純粋な暴力があった。
─実はさらに、氣と魔力のソコソコ緻密な制御もあった─
「バカな……」
また一人ネルソンが血祭りにあげられた。
「魔力は制限されているはず……なぜまともに戦える!?」
デルタはこの魔力制限(シドの操作で実は1/4になっている)された状況で、笑いながら複数のネルソンを倒していく。
それはネルソンの常識では考えられないことだった。
─まぁ、魔力制限が本来の強さであっても、氣を使えるデルタには可能だったが─
観戦している一同が、うへぇーーっ。となった。
一面がネルソンの死体で覆われた。
「本当に自力で覚醒したというのか……、だが、その手法はとうに失われているはず……」
オルソンは戦慄が止まらなかった。
「それはどうかしら……」
ネルソンの呟きに、一体のネルソンを屠りながら
「んん……!?」
思わず後ずさってしまった。
「ま、まぁまぁいい、この程度は想定の範囲内だ…」
ネルソンの数が倍々に増えていった。
その数はこれまでの比ではない。100人に迫るほどだ。
「見るがよい、これが全力だ──」
があぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!
うぉっ! と怯むネルソン。
氣と魔力を迸らせるデルタがいた。そこにあったのは人の身長より遥かに長い大剣だった。
がああぁぁぁぁぁあああっ!
「鉄塊」と囁くように
ヴアアアアァァァァッ!! ガアアァァッ!ガアアァァッ!! アアアアアアァァァァ!!!
虐殺が始まった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アルファたちと分断させられたことになっているイプシロンは、
その途中、物音が聞こえて、足を止める。
前方には何かの影。
そして、唸り声とともにヒタヒタと大きくなる足音。
実験設備の隙間から現れたのは『悪魔憑き』だった。
「アアァ……アアアアァ……」
「平気よ。」
イプシロンが前に出た。
『悪魔憑き』がまっすぐにイプシロンへ向かう。
イプシロンに縋りつくかのようにも見えたその直後、『悪魔憑き』は青紫色の光に包まれながら少女の姿へと変わり、フッと笑いながら消えた。
「これは……」「いったい……」
「『女神の試練』と同じようなものでしょう。私たちに反応し、現れた記憶……」
イプシロンが哀しそうに言った。
「私たち…?」
「そう、私たち、『悪魔憑き』に。」
そう言うと、資料室らしきところに入って行った。
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「主さまと出会えなかった私たち……か。」
イプシロンは凄惨な人体実験の記録を前にして、思わず呟いていた。
「予想以上の量だね、カイ。」
「でもついてるよ、オメガ。これなら何度も下見に来る必要もない。」
「でも所詮は記憶、持ち帰るのは難しいでしょう。カメラはあるわね?」
イプシロンが確認をする。
「えぇ、このガーデンの新魔道具、デジカメッポイナが。」
「すごいよね……
「あぁ、さすがシャドウ様とイータ様だ。」
「すべては主さまの『陰の叡智』のおかげよ。」
何故か、イプシロンがとても得意気に答えた。
さあ、さっさと写していくわよ、と発破をかける。
「きゃぁっ!」
メタルスライム・ボディスーツの形が揺らいでいた。
「またぁー」
「これ、以前のラウンズ戦の時のやつと同じ…?」
「これは厄介ですね。」
「中心に近づくほど魔力を吸い取られる仕掛け、ね。ちょっと待って。」
………イプシロンです。現在地を魔力吸収の範囲から外してください。
………あら、そこにいるんだ。警戒用に無差別吸収モードにしてたよ。その区画も範囲から外したよ。
「もう大丈夫よ。でも、魔力制御にはいつも気をつけなさい。さあ、ツーマンセルを作って、さっさと資料の写真を撮っていくわよ。」
一息開けてから続けた。
「で、撮り終わったやつと遺物はアイテムボックスに収納していくわよ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヴアアアァァッ!! ウガァァァァッ! ゥヘヘヘヘッ。アアアアアアァァァァ!!
デルタの咆哮とネルソンが血を噴きだして倒れる音だけがその場を支配していた。
大虐殺だった。
デルタの虐殺を、アレクシアは少し離れた場所からシドの左手を絡めてから繋いだ状態で、呆然と眺めていた。
「ねぇ……アレって、本当に漆黒の人の仲間なのかしら?」
「? どういうことですか?」
実際に見たことの無いローズにはわからなかった。
「闘い方が全然違うわ。私が見た漆黒の人の剣は究極の研鑽された剣だった。でもアレ、技もへったくれもない、ただの暴力じゃない。」
それはアレクシアの考える強さとは別の方を向いていた。
「強いのはわかるけど、アレでいいのかしら?」
「アレが特別脳筋なだけじゃないでしょうか……? でも、よく見ると魔力制御は洗練されていますよ。」
ナツメ──ベータは苦笑しながらもフォローした。本当に氣と魔力制御を改善したのだ…
ネルソンは瞬く間に駆逐されていく。
最後のネルソンが屠られていく。
やがて、世界が割れた。
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アレクシアが気が付くと、最初の場所に──巨大な円形の搭が横倒しになったような、オリヴィエの像のあるところにいた。
それに、今まであった、どこか夢の中のようなぼんやりとした感覚は消えていた。
「なぜだ……! 100を超える分身を、なぜこうも簡単に……!」
ネルソンは、もはや狂乱状態だった。
「あなたはきっと研究者だったのでしょうね。」
うぅっ…ぅぅっ……とネルソンは呻いた。
「コピーがいくら増えても頭脳は一つ。増やした身体を制御するにはとても足りない。」
ネルソンに向かって、静かに歩き出した。
「たとえ100体いても、まともに動かないのなら、それはただのカカシ。」
ヒッ、とネルソンはそれに合わせて後ずさりしていた。
「…無限にコピーを生みだせる、というわけでもなさそうね。」
その様子を見て
そして、後ずさりして安置されている英雄オリヴィエの像に背中をぶつけた。
「! そうだ! オリヴィエ! オリヴィエェェ!! 来い! 来い!! 来い!!!」
台座に手を添えると、魔力を流して赤黒い魔法陣を起動させる。そして血走った目て叫び続けた。
「オリヴィエェェェェェェェ!!!!!」
その情けない声に応えて、赤い光とともに空間が裂けた。
そこから一人の女性の姿が現れる。その
「英雄オリヴィエ……」
………シャドウ?
………リクエスト通りに送ったよ。但し、ここでその後の歴史を知った奴をね。
「イヒヒヒヒッ、ウヒヒヒヒッ」
…それは、英雄オリヴィエだった。しかしその眼には…力があった。ガラス玉のような空虚な瞳ではなくて、意思を感じさせるものだった。そして怒りに燃えていた。
「そう、オリヴィエ……やはりあなたは……」(後悔したのね…)
ふううぅぅぅぅっっ、と
そこに…
「調査が終わりました!」
「いつでも出口が作れます!」
………アルファ様が時間稼ぎしてくれたので、ほぼ全での情報の抜き取りと情報工作を完了しました。
………記録も書物も遺物もアイテムボックスには収納しましたが、帰って確認するまでは…
「結構。なら私たちはそろそろ帰るわ。」
「おぉっ、ま、待て……! 帰る? えぇ……!? 逃げるつもりか?」
オリヴィエの背後から恐る恐る声をかけてきた。
「…ほ、本当に?」
「小物にも不確かな記憶にも興味はないわ。我らの目的は力の源を絶つことだけ。」
「聖域の防御がどんなものかもわかった。またお邪魔するわ。…次はこちらの好きな時に。」
(もう聖剣も核も情報も確保済。それにシャドウが怒っているから二度と来ることはできなくなりそうたけどね)
「こ、このまま……にっ、逃がすと思うのか……!」
門の魔法陣に向かう漆黒の人たちに向かって、オリヴィエの背後から負け惜しみをいう。
「あら、追ってきてくるのかしら?」
そう言って振り向いた二人は黒い笑顔だった。
ひっ! ひぃぃぃぃっ、と、ネルソンはオリヴィエの背後に隠れた。
「…行くわよ。」
ふううぅぅぅぅっっ、と
「…はぁ、 あ‶!? 」
「ひゃい! ごめんなさいなのです!」
耳を伏せ尻尾も丸めて
「皆さんもどうぞ。」
そう言って、
顔を見合わせるローズ会長とアレクシア……とシド──レミー。
「私はついていきますよ。」
ナツメ先生はそう言って門に向かって行く。振り返ってこう続けた。
「アレクシア様は残られては? こういう薄暗い場所、お似合いですし?」
「はぁ!? なんで私があんなハゲの隠れ家に残らなきゃならないのよっ!!」
一瞬で激昂した。まぁまぁ落ち着いて、でもあんなこと言われて、大丈夫
二人はイチャイチャしながら扉に向かった。
「はぁ……。私も彼氏か
青紫色に輝く扉に全員入って、扉も折り畳まれて紋章となり消えた。
聖域に平穏が訪れた……ようにみえる。
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ネルソンは、ほっと溜息をついた。
「ま、まぁよい、金髪の漆黒のエルフの顔は覚えた。奴の血があれば雫も完成に近づくだろう。」
その後、その場を離れようと歩き出した。
「他派閥への言い訳は……そうだな。聖域に誘い出し、罠にはめ、謎の対抗戦力の正体を暴いたとでもすればよいだろう。それならむしろ手柄に……」
その時、ネルソンの前に赤い警告のウィンドウが開いた。
「ん? …中枢にネズミが紛れ込んでいるだと……?ふん、憂さ晴らしに嬲って──」
その瞬間、脳裏を
「…オリヴィエ! つ、ついてこい!」
そうオリヴィエの命令すると中枢に向かって歩き出した。──オリヴィエの眼に浮かぶ表情に気付かず。
全く、何でワシがいる時にばかり面倒なことが……そう、ネルソンはぼやき始めた。
陰の実力者になりたくて! 本編の第15話です。
そろそろストックが…
聖地編も残りわずかとなりました。
基本カゲマス準拠です。今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、聖地編までは本編を進めます。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…性癖全開です。おやローズ会長も…
聖域をシドが掌握する、とかは本作での捏造です。デルタ渾身の演技です。
なお、途中シドから指摘があり、レミーは気付いてもどしています。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。