陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第16話です。

 聖地編も最後となりました。

 まだ、エピローグが残っていますが…

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第16話「君の嘘、君の願い」上

 

 

 ガーデンのメンバーは先ほど扉の魔法陣とシャドウ・ゲートで全員帰還した。

 

 シャドウはヴァイオレットさんと台座に座ってハゲ(ネルソン)が来るのを待っていた。

 

 聖剣は既に無く、背後には鎖による拘束が解かれ開かれた扉が、そして扉の奥の『核』は調査完了し一部接収すみである。そう、なんと今はシャドウの魔力が聖域を支えていた。

 

「ヴァイオレットさんは……まだ消えたいの?」

 

「消える?」

 

「核を壊したら消えるんでしょ?」

 

 まぁ、とりあえず二択(生きるか消える)について保留となったので、一部をガーデンで接収したけどさ、と呟いた。

 

「そうね…、消えるというより解放されるといった方が近いけれど…」

 

 ヴァイオレットは私の方を見ずに微笑んだ。

 

「ここは永遠に繰り返される記憶の牢獄。」

 

 そして、小さく哀しげに言った。、

 

「…私には少し辛すぎる……場所だったのだけれど…

 

 

「そっか、なら、もう少し待とうか。」

 

「待つ……?」

 

「うん。もう少し待ってたら、ハゲ(ネルソン)が関係者を連れて来るからね。」

 

 赤黒い扉の魔法陣がドームの中心に現れた。

 ─注意しないと青紫色になっちゃうから気を遣うなぁ─

 

 

 そこには、英雄オリヴィエを従えた(つもりになっている)ハゲ(ネルソン)がいた。頭頂部がキラーンと光った気がした。

 

「来たよ。ハゲ(ネルソン)…と英雄様が。

 

「ハゲ…… とオリヴィエ?

 

「貴様、先ほどの仲間か!? ほう……アウロラを連れ出したか!?」

 

 

「知り合いのハゲ?」

 

「さあ…見覚えのないハゲだけど、私の記憶は完全ではないから、どこかであったハゲなのかも?」

 

 

「ウハハハハハハッッ!! 残念だったなその扉は貴様らには開け……って開いてる!?

 

 

 鎖が斬れて外れ開いている扉を目にして、唖然となるハゲ(ネルソン)だった。

 

 

「そ、そんなバカな…。あれは聖剣でしか切れないはず……って聖剣も抜かれている!?

 

 

「説明どうもありがとう。ついでに核がどうなったかも確認する?」

 

「な、な、なん、なんだと!! 貴様は一体何者だ!」

 

 私は立ち上がって、ハゲ(ネルソン)に向かって言った。

 

「ディアボロス教団のクズに名乗る名はないわ。我らは陰に潜み、陰を狩る者。」

 

「くっ、貴様らは…、お前は死ね!…このオリヴィエに切り刻まれてな!」

 

 ハゲたおっさんの命令でオリヴィエは前に出た。

 

 その眼はガラス玉のような空虚な瞳ではなくて、意思を感じさせるもので、怒りに満ちていた。

 

 

 そして聖剣そっくりな剣を抜くと──

 

 ヴァイオレットさんは焦った口調でいった。

 

「ダメよ。彼女は……「わかってる!強いね。」……だったら逃げないと。」

 

「うん? あぁ、彼女はもう“解放”されているよ。」

 

 ──振り返ると、そのまま聖剣でハゲ(ネルソン)の右手を斬り飛ばした。

 

 ぐあぁぁぁぁぁーーーっ。 斬り飛ばされた右手を左手で抑える。

 

「わ、わしの、わしの手がぁぁぁっ……」

 

 

「…ジャン・ジャック・ネルソン研究員、前『ナイツ・オブ・ラウンズ』第11席ロード・ラワガスの後任で、『ディアボロスの雫』を()にした研究者…」

 

 

 聖剣を一閃すると、今度は右足が飛んだ。

 

「わ、わしの足がぁぁっ…! オリヴィエェェェ!!! 貴様いったいなにを…」

 

 床に這いつくばったネルソンは、恐怖を湛えた目でオリヴィエを見上げている。

 

「…私が教団に従ったのは、魔人ディアボロスを討伐した先に、人々が平和に暮らせる世界があると信じていたから……」

 

 さらに一閃すると、こんどは右手を押さえていた左手が飛んだ。

 

 ぐわあぁぁぁーーーっ、と叫び声をあげて転がりまわるが……それでも命には別状ないようだ。

 

 

「…それを、土足で踏みにじっておいて…! 私の子孫たちを『悪魔憑き』として(おとし)めて(もてあそ)んで殺してきておいて、なにを? だと…、ふざけるなっ!!!

 

 

 残った左足を付け根から斬り落とした。

 

 もはやダルマとなって、転げ廻ることもできなくなったネルソンは、泣き喚いているだけだ。、

 

 

「ふむ、死にはしないけど再生もしないわね。聖剣は再生を妨害するのかしら?」

 

 私はネルソンの現状を確認しつつ、オリヴィエに聞いた。

 

 

「…聖剣とは、対ディアボロス特化。つまりはそういうことよ…」

 

 そして、喚くな! と一喝して喉を斬り裂いた。

 

 もはや声もなく、ヒューヒュー息の漏れる音がするだけとなった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 さて、と言いながらシャドウはオリヴィエに近付いた。

 

「残念ながら、オリヴィエ、あなたは聖域の歪みに閉じ込められた記憶の欠片、ヴァイオレットさんと違って実体(依り代)がないんだ。」

 

「…私はとうに死んだこと理解している。遠い子孫たちを見れただけでも上々よ──」

 

「そう。」

 

 

「──でも、彼女は違う。」

 

 

 とヴァイオレットさんを見る。私も見つめた。

 

「そう言っているけど…どうする?」

 

「…あなたを呼んだのは私。嘘つきでごめんなさい。」

 

 いいよ、と返す。

 

「他にも嘘をついたわ。」

 

 いいよ、と再び返す。

 

「ずっと早く消えてしまいたいと思っていた、すべてを忘れたかった。でも、忘れたくない記憶ができた。」

 

 私の手を取って言った。

 

「たとえ私が消えても、この記憶だけは忘れずにいたい、って。」

 

 大切な記憶を、ありがとう。

 

 そのヴァイオレットの瞳から涙が、一筋、二筋と溢れ落ちた。

 

 

「ねぇ……本当にやり直せるかな?

 

 

「ヴァイオレットさん次第よ。私は──シャドウガーデンはできる限り協力するよ。」

 

 まぁガーデンの仕事をちょっとだけ手伝ってもらうかもしれないけどね、と付け加えた。

 

 

「それに、左腕以外にも封印されている、とかないの?」

 

 オリヴィエを見ながら聞く。

 

 オリヴィエは首を横に振った。どうもここに残るオリヴィエの記憶にはないようだ。

 

 

「そうね、右腕の反応があるのよ。最初あなたのこと封印を解除した(右腕)かも…って思っていたのよ。」

 

 ヴァイオレットさんが私を指さして言った。

 

「…なのに、前に来てから十年以上来てくれなかったじゃない。」

 

 

 それを言われると…当時は色々と調査前だったり、調査中だったりしたわけで…

 

「じ、じゃあそれを目標にしましょう。となるとヴァイオレットさんが“百鬼丸”ね、そうなると、わたしは“どろろ”かしら。」

 

 なんか嬉しくなってきた。

 

 

 のだが…

 

 ヒュー…ヒュー…

 

 首と、残った左手の肘までと、右足の膝まで、を使って這いずって逃げようとするネルソンがいた。

 

 

 ちらっ、とオリヴィエに視線を投げると…

 

 ドガッと蹴り戻した後、ドスッ、と剣でネルソンを床に縫い留めた。

 

 

 ………まだ、ネルソンに聞くことはある? アルファ。

 

 ………もうないわ。イータも資料が手に入ったから、別に本人は要らないって。

 

 ………じゃあ、予定通りこの施設全部消し飛ばすから。起爆する場所と範囲を今回得た情報で再計算して。

 

 ………委細承知。イータ、最新(今回)の資料を確認して。

 

 ………あと、ア、アレクシアは…

 

 ………──ベータが王女たちを誘導しているわ。…レミーもね。聖域とは異なる山手にいるから巻き込む恐れはないわ。

 

 ふぅ~っ。

 

「これから冥土の土産にいいものを見せて上げる。」

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 私は、扉を通って聖域の核に向かった。

 

 そこには、残しておいてもらった『ディアボロスの左腕』があった。

 

「聖域には計り知れない魔力が眠っている。それを使えば、こういうこともできる。」

 

 私は右手のひらに氣と魔力を合一させて高めていく。

 

 支配下においていた聖域の魔力もそこに流れ込んでいく。

 

 突如、シャドウの体から、魔力が噴出した。

 

 その魔力は圧倒的に緻密で、青紫色の螺旋を描いて顕現した。

 

 それが『ディアボロスの左腕』を囲むように丸く積層した光の模様を描いた。

 

「こんなことは、人間には不可能だ!」

 

 床に縫い留められて見せられていたネルソンは大声で叫びたかった。

 

「…これが人に許された力なの…」

 

 ヴァイオレットさんもシャドウの規格外の魔力と魔力制御*1に驚いて呟いていた。

 

 

「アイ・アム……」

 

 

 手のひらを握り、氣と魔力の塊を握りつぶした。

 

 

「リカバリー・アトミック」

 

 

 青紫の光が辺り一面を染めた。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「えっ、うそ……」

 

 

 気が付くと、裸でシャドウに横抱きに(お姫様抱っこ)されていた。

 

 

「Hello, world.」

 

 

 先ほどまでヴァイオレットさんが立っていたところから、メタルスライムを回収して、ドレスにして装着させてあげる。

 

「…本当に肉体がある。」

 

 そういうと右手で左手を抓った。

 

「痛い!」

 

「そりゃね。でもごめんね…」

 

 

 そう言って明後日の方向を向いて言った。

 

 

「…できるだけ頑張ったんだけど、ちょっとサイズが…「ちょっと降ろして。」…ァッハイ。」

 

 さっさと降ろした。手を添えて立つのを補助する。

 

 私と同じくらいの高さだったヴァイオレットさんが、拳一つ…くらい小さくなっていた。大体15歳くらい。

 

「…これくらいなら問題ないわ。」

 

 

 それはよかった、と呟いて核の外へ抱いて連れ出してあげる。

 

 そこには、呆気に取られている英雄さまがいた。

 

 そして……信じられないものを見たよう顔で固まっているハゲ(ネルソン)もいた。

 

 もしも口がきけたら、そんなバカな! あり得ない! 嘘だ! これは夢だ!  とか言ってそうな顔だ。

 

 後ろを振り向いて見上げる。そこにあった『ディアボロスの左腕』とそれを収納した水槽は消えていた。

 

 

 ふぅ~っ。“ボク”の知識にあった万能細胞(iPS細胞)の概念を元に、聖域の魔力を借りたリカバリー・アトミックの成果だ。

 

 先ず、ディアボロス化していた左腕を解呪する。これはこれまでの経験からなんとかなった。

 

 次の、万能細胞を使って、足りない身体を作る……これが大変だった。

 

 思えば、分身(レミー)を作った時も同じことをしたのだろう。しかし聖域の魔力を使ってなお足りなかった。

 

 なので、元と同じ(二十代?)の身体にすることはできなかった。15歳くらいで妥協した。

 ─私がレミーを生み出した時は三歳だったからできたのかもしれない─

 

 あとは自力で成長か変身してもらおう。なんせ元『災厄の魔女』で『魔人ディアボロス』、オリジナルのディアボロスの細胞への適合者にして、私たちのオリジンなのだから。

 

 

 あれ? もうディアボロス率は私の方が高い可能性があるんだっけ…

 

 

 ………アルファ。ディアボロスの解呪に成功したよ。ちょっとサイズが小さくなったけど…

 

 ………ちょっと(・・・・)、ね。それどれくらい?

 

 ………15歳くらいかな。シド()と同じくらい。

 

 ………えっと、なにこれ? 私にも聞こえるのだけど。

 

 私は驚いてヴァイオレットさんを見た。

 

 ………ようこそ、ヴァイオレットさん。シャドウガーデンは──七陰はあなたを歓迎するわ。盛大にね。

 

 ………あ~これは、(シャドウ)の氣と魔力で染め上げながら解呪された七陰に発現した特異な能力…だったんだけど…、ヴァイオレットさんも該当するのね。

 

 良く見ると、ヴァイオレットの瞳が青みがかかって綺麗な青紫色に見えた。

 

 どうしよう、ヴァイオレットさんをヴァイオレットの瞳じゃ無くしてしまったよ。ブルー・ヴァイオレットさんになっちゃった。

 

「まぁ、内緒話ができる能力、くらいに思っておいて。」

「後、瞳の色が私の色(青紫色)に染まっちゃったけど、許して……」

 

 そう耳元で囁いた。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 アルファとイータにシャドウ・ゲートで来てもらって、ヴァイオレットさんをチェックしてもらう。

 

 イータが、メディカルトライコーダ(携帯式診断装置)を当てて簡単に診断する。

 

「ん……特に問題、ない。精密検査は……アレクサンドリアでする。先ずは……リハビリから。」

 

 アルファに支えてもらいながら立つヴァイオレットさんを、アレクサンドリアに連れ帰ってもらおう。

 

 

 なお、この一連の騒動の途中で、我に返ったオリヴィエから、滅茶苦茶聞きこまれてしまった。が、最新の魔科学の技術ということで通した!

 

 

「で、イータ計算できた?」

 

「ん……聖域の入り口は……情報工作したから……残しておいて……欲しいから、起爆はここ……聖域の中心。範囲は半径……200メートル、長くてもダメ……短くてもダメ。」

 

 聖域中央付近……ディアボロス細胞……関連の施設は、痕跡すら……絶対に残しては……いけない、と熱弁を振るうイータがいた。

 

「ガーデンでも、資料は……残すけど、再現できない……ようにして……残す予定。」

 

 これは“ボク”の世界でいう、マンハッタン計画と同じだとか。

 

 私が『核』になること(アイ・アム・アトミック)は、私個人の持つ力であり、わりとどうでもいい。まさに『我は死神なり、世界の破壊者なり』ってね。

 

 でも、『核』にせよ『ディアボロスの力』にせよ、その技術を流出させて大変なことになるのはごめんこうむる。

 

 

 ─陰の組織による(陰の実力者による)世界平和の実現─

 

 

 今のディアボロス教団による紛いモノよりはマシなものになると思っているし、前世の記憶的には有りなのではないだろうか。

 

 

 ちょっと少年よりも少女にやさしい世界になるとは思うけど…

 

 

 まぁ、まだあわてるような時間じゃない。ラウンズもまだ半分以上残っているのだ。

 

「はみ出してもダメ、ってそれはきびしいねぇ。ちょっと氣を分けてくれない、アルファ、イータ。魔力はなんとかなるんだけど、氣の方は…」

 

「そう言うと……思って、氣を昂らせて……おいた。はい。」

 

「私もあとは観戦するだけだから。はい。」

 

 アルファ、イータと併せた手のひらから氣がめぐってくる。それを経絡に通して、丹田に貯め込んでいく。アルファの暖かい感じのする氣と、イータの優しい感じのする氣だった。

 

 

 なお、七陰の氣から抵抗は感じない(・・・・)。染まってるなぁ…

 

 

 半径200メートルかぁ~。“ボク”の記憶をひっくり返す。え~と、リトルボーイの火球が半径150メートルくらいだから、もうちょい必要だ。

 

 ツァーリボンバの火球は2.3kmだったから、まだまだ先は永いなぁ……

 

 

「それじゃあ、本番いきましょうか。アルファとイータはヴァイオレットさんをよろしくね。」

 

「えっと、なにをするの?」

 

 ヴァイオレットさんは不思議そうに聞いてきた。

 

「ここを跡形もなく吹き飛ばすのよ。これで三回目(・・・)──火山島で噴火に偽装したのを含めると四回目(・・・)ね。」

 

 アルファが満面の笑みで答えた

 

「ん……闘技場の屋根の上で……七陰とヴァイオレットさん……一緒に見るから。」

 

 特等席だよ……、とイータも愉悦(たの)しそうだ。

 

「アレクサンドリアからも見えるって構成員(メンバーズ)準構成員(サブ・メンバーズ)みな楽しみにしているわ。」

 

「…大丈夫とは思うけど、衝撃波や爆風で落ちないでね。では本番ね、ハゲ(ネルソン)は……もう正気を無くしたようね。」

 

 自身の流す血の海の中、口から血の泡を吹きながらも肉体は死んではいなかった。がその目に正気の色はなかった。精神の方が先に逝ったらしい。

 

 わたしはアルファたちが青紫色に輝く扉で立ち去るのを見送ったあと、メタルスライム・ブレードを抜くと、そこに氣と魔力を合一させて高めていく。

 

 そして──

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 最初は、聖域にあるダムの水面上に、青紫色に輝く丸い光の檻のようなものができた。

 

 大体直径は4~500メートルほどだろうか。

 

 それは、わずかにあった雲を突き抜け、遥か天まで──成層圏まで伸びていった。

 

 ─その時点で異変に気付く者もいた─

 

 次は、ダムの湖の中央で始まった。

 

 光の檻の中央で、水が盛り上がったあと、吹き上がった。同時に地面も揺れ始めていた。

 

 次の瞬間、中央から天に向けて閃光が弾けた。

 

 光の檻を埋め尽くすように光の奔流が天に向かって一瞬のうちに駆け上がっていった。

 

 天の彼方で光は弾け、リンドブルムは青紫の閃光に染まった。

 ─それはアレクサンドリアからも、観測された。歓喜をもって─

 ─それはミドガル王国王都からも、観測された。戦慄をもって─

 

 発生した衝撃波が丸く広がっていった。

 

 教会を揺らし、闘技場を揺らして、聖地を揺らして郊外まで走り抜けた。

 ─闘技場の屋根で観戦していた七陰は、歓喜の表情でその光景を見つめていた─

 ─ヴァイオレットさんは、あまりの規模に唖然としてその光景を見つめていた─

 

 同時に、光の檻から光の奔流が漏れることは無かったが、周囲の水が押しだされて十数メートルの津波となってリンドブルムを洗い流した。

 

 遅れて轟音が響いてリンドブルムとその周辺すべてを震わせた。

 

 

 リンドブルムは阿鼻叫喚となった。

 

 

 その遥か上空を巨大な円形の雲──遠方からは巨大なマッシュルームのように見えた──が覆っていた。

 

 まるで、女神から天罰を下されたかのようで、廃墟となった教会や道端で、女神ベアートリクスに赦しを()う祈りをささげる者も多く見られた。

 

 その日、聖域は消滅した。

 

 

 

 

*1
─実際には氣と魔力─





 陰の実力者になりたくて! 本編の第16話です。

 聖地編も今回でクライマックスを迎え、残るはエピローグとなりました。

 基本カゲマス準拠です。今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、聖地編までは本編を進めます。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…性癖全開です。

 今回のハゲの名前とか、オリヴィエやヴァイオレットさんのこと、シャドウの目標は本作での捏造です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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