陰の実力者になりたくて! 本編の第17話です。
聖地編も最後です。
一部エピローグが残っていますが…
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
「聖域は消滅しました。」
とイプシロンが、アレクサンドリアの作戦室で報告していた。
「イータとダムの柱に登って内部を確認してきましたが、一時的に湖が干上がっており底を見ることができました。」
「効果範囲は、辺り一面が……ガラス状のクレーター……となっていた。痕跡を留めるものは……一切無かった。」
「残留する熱気が凄かったです。雨が降る前に見ることができてほんと良かったです。」
「至近距離で……観察できたけど……やっぱりマスターは頭、おかしい」
イータが頭を抱えてしまった。
「う~~ん、原理は……教えてくれないけど、『陰の叡智』から……わかってくる……ものがある。」
そして顔を上げると言った。
「その場合、放射線──中性子とか、ガンマ―線とかが発生して、もっと致命的で壊滅的被害がでるはず…」
「…これまで至近距離で色々と見てきたけど、とくに問題無かったわよ。それに問題が?」
問題無いのが問題……とイータは言った。
「あれは……魔力的に起こした……魔力粒子を用いた……核反応。魔力制御とかの……レベルを超えてる。だから、マスター、かなり…頭、おかしい。」
「でも、アレクサンドリアからも観測できたので、凄く盛り上がっていたようですよ。」
聖域で情報抜き取りを指揮していたシグマも、情報工作を担当していたミューも似たようなことを言ってたわね。
「それに、イータが至近距離で記録した映像を見たい、って要望もありました。」
至近距離で歓喜していた七陰としては、却下とは言いづらいものがあった。
後で検討しましょう。はい。
「聖剣も……回収できた。」
「聖域の魔力の核を構成する部分を回収できました。何よりもヴァイオレットさんを奪還・解呪・解放できました。」
「理論上、悪魔憑きの……解呪については……ほぼ到達した。」
「そうですね。それにシャドウ様自身が疑似的に聖域自体を再現できるとか…ちょっとわけがわからないです。」
イプシロンが首を傾げていった。
「そうね。それを成し遂げるのがシャドウだから…。でも、彼女の歩く道は、我らが歩く道でもある。」
「先は永いですね…」
しばし沈黙が流れた。
「それで、ベータは?」
「王女たちを誘導しています。うまくいけば潜り込めるかと。」
順調ね? はい。
「それで…ヴァイオレットさんにも確認しましたが仮説は正しかったようです。『災厄の魔女』アウロラ──またの名を、『魔人ディアボロス』。正体不明の魔王ディアボロスの最初の適合者。」
「そう…だからシャドウは…」(ヴァイオレットさんを助けたのね)
「次の舞台はミドガル王都よ。準備は怠らないように。」
「はい。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
聖域から扉をでると、そこは聖域とは違う方向にある山中の森の中だった。
眼下には闘技場を含むリンドブルムのメインストリートが、右手にはダムでできた湖が一望できた。
周囲を確認すると、手を繋いだシドとローズ先輩、ナツメの四人だけで、漆黒の人たちはいなかった。
とりあえず、無事に脱出できたことにホットして、思わず手をほどいてシドに抱きついた。シドもいつものように抱きしめてくれた。背中をポンポンと優しく叩いてくれた。
そこでようやく一息をついた。
すると、なぜか感極まって泣き出してしまった。
とにかく涙が止まらなかった。
抱きしめたシドの温もりが心地よかった。抱きしめるられていることに安心感があった。人前であることも忘れて、大号泣してしまった。
少し落ち着いてきたので、スンスンとシドの匂いを嗅いだ。
ここ数日、お風呂も寝るのも一緒だったから、自分と同じ匂いを感じる……ハズなのに………
「ねえ、シド?」
…思っていたよりも低い声が出た。
「うん、どうしたのアレクシア。 ぼくなんかした?」
声が低いよ、と囁く声にもそこはかとなく違和感を…
─その時、聖域があるといわれている山手の方向、ダムでできた湖の中心辺りから青紫色に輝く光の柱が天を貫いた─
ちょうど顔がそちらに向いていたアレクシアは思わず指を指した。
「あれは何?」
アレクシアが泣きながらいちゃいちゃするのを眼を隠した手の指の隙間から見ていたローズもつられてその方角をみた。
「あれはっ!」
「何か知っているのっ? ローズ先輩。」
「アレクシアさんが誘拐された事件のときと同じ光の柱です。でも、今回は前回に比べて太い…」
「そうだね、アレクシアが誘拐されたときは、10m位の太さに見えたけど、今回は……数百メートルはあるように見えるね。」
なお、ベータは最初からそっちの方を向いていた。
そして、光の中で水が盛り上がったあと吹き飛んだ。
地面も揺れ始めていた。
次の瞬間、光の柱の中を光が埋めつくして輝いていた。光の奔流が天に向かって一瞬のうちに駆け上がっていったのだが、まるで天から光でできた棒を撃たれたようにも見えた。
天の彼方で光は弾け、リンドブルムは青紫の閃光に染まった。
衝撃波が、爆風が立て続けに森を、大気を揺らした。
街を見下ろすと、湖の水が津波となって街を水浸しにしていく様もみれた。
アレクシアはシドと抱き合いながらも、その一部始終を見ていた。
─違和感も一緒に吹き飛んだ─
ローズは恐怖を押し殺して、ナツメ──ベータは恍惚としながら見ていたのだが、アレクシアは気付く余裕も無かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アレクシアは。シド──レミーとローズ、ナツメと共に聖地の闘技場に向かって歩いていた。
ふと天を見上げると丸い雲が何重にも発生しているのが見えた。
多分遠方から見ると、キノコのような形に見えるのだろう…
「あの光景は……おそらく漆黒を纏う人の……」
「アレクシアさん?」
アレクシアの足が止まる。手を繋いでいたシドも手を引かれて立ち止まった。
「どうかしましたか?」
ローズとナツメも歩みを止めてアレクシアを見た。
「ねぇ 悔しくない?」
ポツリとこぼれ落ちていた。
「悔しい……?」
「? 意味が分かりません。」
「私たちは聖域に招かれた。でも、何もできなかった。」
「…でも、色々とわかったことがありましたよ。」
私とシドさんは巻き込まれたように感じましたが、とナツメは微苦笑をして言った。
「あぁ、あの光の扉は
私は巻き込まれて良かったよ、とシド──レミーはアレクシアに言った。
あ、ありがとう。どういたしまして。
「コホン。…でね、力がないのは分かっていたから頑張ってきたつもり…」
「入学したころに比べると、うんと強くなったよねー」
なんで上から眼線なのよ。だって私の方が強いしー。…なんかむかつくわね。
やいのやいの
「あの……」
とローズ会長が止めようとしたところ…
「いちゃいちゃはあとで二人の時にしてください。」
バッサリとベータが切った。
アレクシアは、頬を赤く染めたまま続けた。レミーは涼しい顔をしていた。
「コホン。そうじゃなくて…魔人ディアボロスを討ったことは正しかったかもしれない。でも、見せられた記憶からすると、その過程やその後については正しいとは思えなかった。」
「そりゃあ、人体実験を正しいとはいえないでしょ?」
レミーは、なにを当たり前なことを…と
「でも。王族は国と国民を守らないといけない。魔人の討伐方法を考えなくてはいけないの。でも、私には……」
「では、アレクシア様は、あのような弱い者の──女の子の
軽蔑します、とナツメはきっぱりと言った。
「そんなわけないでしょ!! …でも私は対案を示せなかった…」
「アレクシアは今、混乱しているんだよ。正直、飲み込むのも大変なことを山ほど見聞きしたから。」
「シドッ!」
レミーの胸に顔を押し付けて縋りついていた。
「ディアボロス教団のしてきたことを、アレクシアは正しいとは思わなかったんでしょ?」
うんうん、と激しく頷いた。
「なら、アレクシアは正常だよ。」
優しくアレクシアの後頭部を優しく撫でた。
シドォ! ほらほらもう泣かない。スンスン。め、女神の試練で汗かいてるから嗅がないで。スンスンスン。だからアレクシア止めて、みんなが見てるから…
ちらりと周囲を見回して、指の間からばっちりと見ているローズ先輩と眼が合った。
恥ずかしくなったのか、さらに顔を埋めてしまう。スンスンスンスン…、もうアレクシアさすがに怒るよ。
レミーに怒られて、ようやくアレクシアが離れた。
「…アレクシアさん…」
「いちゃいちゃは二人だけのときにしてください。」
「そ、そうそう、このまま何も知らずにいたら、気づかないうちに大切なものを奪われてしまう、そんな気がする、って話したかったの。」
バツがわるかったのか、ぶっきらぼうに話し始めた。
「私も、考えていることがあります。アレクシアさんの誘拐事件から、大きな組織が裏で動いている。ディアボロス教団のことも、それと敵対する組織のことも、私たちは何も知らない……」
「それで、どうするおつもりですか? アレクシア・ミドガル第二王女。ローズ・オリアナ第一王女」
とナツメが聞く。
「私たちは、弱く何も知らない。でも、4人もいればできることもあるはず。」
えっ、ぼくも? と驚くレミーだった。
「ナツメの言うとおり、私はミドガル王国の王女だし、ローズ先輩はオリアナ王国の王女。ナツメ・カフカ。あなただって作家としての人脈はあるでしょう? それにシドは私の恋人でしょう。」
最後だけは小声で言ったあと、続けて言った。
「先ずは、4人で協力して情報を集めるのよ!」
「…情報を集めてどうなさるのですか?」
「情報次第だけど、4人で協力して戦えないかなって。仲間も増やしたり、拠点の確保…はいいか…」
「具体性の欠片もないですね」
ナツメは肩を竦めた。
「だ・か・ら、まずは情報を集めてその情報を精査して決めるのよ!」
アレクシアが睨む。
「情報を精査できる知能があるといいのですが……」
ナツメがボソッと呟く。横を向いた時に、キラーンと朝日がメガネに反射した。
「何か言った?」
とてもイイ笑顔でアレクシアは聞いた。
「いいえ、何も。」
ナツメも負けず劣らず笑顔で答えた。
二人はしばらく見つめ合った。
「それで、どうするの? 組むの? 組まないの?」
「協力しましょう。些細なものですが、私にも伝手はあります。」
そう言ってローズは右手を前に出した。
「…私も、作家としての人脈を使って調べてみます。」
ナツメがローズの手の上に右手を重ねた。
「ぼく…コホン、私も付き合うよ。」
シド──レミーも右手を重ねた。
「決まりねっ! これで私たちは仲間よ。」
最後にアレクシアが右手を重ねた。
「国も、立場も違う。腹の中で何考えてるかわからないのもいるけど……、私は仲間だと信じてる。」
「いいですね。世界の真実は暴く仲間……伝説の始まりみたいです。」
ローズが微笑んだ。
「勇者と剣士と賢者、そして、足手まとい担当が揃いましたね。」
ナツメがアレクシアを見てイイ笑顔で付け加えた。
「あら、足手まとい担当はあなたよね?」
とアレクシアはナツメを見て微笑んだ。
すでに朝日が上がり、遠くリンドブルムの街並みを照らしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
イプシロンの指が鍵盤を叩く。
ふと通りかかったアルファは──ピアノの音を耳にして立ち止まった。
ベータは小説を書き、オメガはカイとチェスに興じている。
そんな中で、イプシロンが優雅にピアノを弾く。
いつも通りの、風景。
──アルファは七陰がそろったころのことに思い出していた。
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「どうかしら?」
月明かりが差し込む、静かな森。
ここは、聖都リンドブルムとカゲノー男爵領の中間くらいやや北側にある、
その中に、頑丈そうな建物が建っていた。
「うん。」
私が教えた建築様式で、比較的大きな二階建ての家が建っていた。
「ツーバイフォー、あなたが教えてくれた建築技術のおかげよ。」
「建築するのも上手になったわね。私の作った物置小屋や、アルファと作った最初の小屋とは大違いね。」
家の中では、各々が自由に過ごしていた。
本を読むベータに、気持ちよさそうに寝転がるデルタ。イプシロンとガンマは食事の準備をしている。ゼータはソファーにに寝転んで、イータは食卓に突っ伏して眠っていた。
「仮の拠点も完成した。これであの子たちの訓練も本格的に始められる。」
「それより、本当にあの子たちも鍛えるの?」
「ええ、必ず必要になるわ。教会にある闇の部分──ゼータを救出したときにわかったディアボロス教団に対抗するためには、組織の拡張と共に個々の戦力強化も進めないと。」
「まぁ、そうなるのかな。」
「それに、あの子たちも奴らと戦う力を欲しているわ。」
「そう、か…。ならば我が叡智の一端を授けましょう。闇の中で己が意思を貫き通すための力を……」
えぇ…と頷いた。
「──あの子たちにも、力を。」
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アルファにとって、大切な光景。
アルファは、和気あいあいとしているベータたちを微笑ましく見ていた。
「アルファ様」
そこに、ガンマが現れた。
オリアナ王国からの連絡です。
王国宰相、ドエム・ケツハット伯爵がこのミドガル王都に向けて出発したとのことです。
アルファの眼が、ガーデン指導者のものへと変わる。
「ドエム・ケツハット……再び王都で事を起こそうというのね、教団は。」
陰の実力者になりたくて! 本編の第17話です。
聖地編のエピローグです。一部残っていますが…。
基本カゲマス準拠です。
今後も七陰列伝は順次投稿していく予定ですが、聖地編までは本編を進めます。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…性癖全開です。
魔力粒子の核反応とか、四人カルテットになったことは本作での捏造です。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。