陰の実力者になりたくて! 本編の第17.5話です。
閑話となります。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
ミツゴシのスパリゾート内、そこを貸し切りにして、アイリスはアレクシアとの休日を楽しんでいる…だけではなかった。
「ではやはり……」
「はい。聖教そのものが怪しかったと言わざるを得ません。」
バロック調の建物の美しい温泉。そこのサウナ室の中でアレクシアから先日の聖都リンドブルムでの報告を聞いていた。
「殺された大司教様も、殺した男も、ディアボロス教団の手のものだった……」
そこにはもう1人いた。
なんと、アレクシアと聖都に同行していたシドさんがアレクシアに呼ばれて来ていたのだ。
アイリスは、アレクシアがルンルンで手を組んで繋いで現れた時から悪い予感がしていた。
なお、一応服を脱ぐ前に挨拶はされた。『アレクシアの恋人をやってます』と言われた時は、とうとう来るものが来たか、と感じたものだ。
「でもそれ以上はわかりません。証拠もいくつか見つかりましたが、奴らが聖域と呼んでいた場所はきれいさっぱり無くなっていました。もう二度と入ることも見ることもないでしょう。」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
四人でカルテットの結成を決めたあと、少し急いで山を下りた。…とはいえアレクシアたちの靴が正装用の
そして、高台にあったため、湖の水に浸かっていなかったホテルの部屋に戻って手短に温泉で汚れを落とす。
なお、このお風呂前にレミーはシドと強引に入れ代わった。記憶を同調することもメダルと剣を渡すことも忘れない。シドは、緊急だったとはいえ、レミーのあまりに杜撰なアレクシアとのやり取りに白眼をむく思いをした。
もちろん、アレクシアが一時あやしんでいたことも同調時に伝わっていたので、頭も痛かった。
とにかく、アレクシア、ローズ会長と一緒に手早く温泉に入って汚れを落とし、ドレスから制服などに着換えてから、備え付けの非常食を食べで腹を満たした。この時に闘技場からホテルに戻ってきた護衛の紅の騎士団と第一騎士団のメンバーとも合流している。
そのあと、再度ナツメと合流して、四人(+護衛)で教会の施設にゴンドラで向かった。
闘技場を含む土地の低いところの水は、まだ引いて無かった。
とりあえず、聖域に呼ばれる前に居たところに行こう、と闘技場に顔を出したところ、『女神の試練』のときにメダルを渡してくれた聖教の司教がいた。どうも彼が最高責任者の代行をしていたようだ。
護衛と共にかれらのところに向かう。そこで私たちに気付いた彼は、最初にネルソン大司教代理のことを聞いてきた。
なので、
第一に、
第二に、そのディアボロス教団が聖教の陰に隠れて、歴史を捻じ曲げていたこと。真実の三英雄は女性であり、それを男性に情報操作していたこと。
第三に、彼ら教団は、魔人ディアボロスの細胞を用いた人体事件を行っている外道の集団であること。彼らの実験により無数の少年が適応できず死に、ほとんどの少女が『悪魔憑き』を発症して死んでしまったこと。
第四に、無数の屍の上に奇跡的にディアボロス細胞に適応した三人の少女──三英雄を使って、ディアボロス教団は、魔人ディアボロスの討伐ではなく、多くのディアボロス細胞の奪取を目的としていたこと。
第五に、そうして入手した『ディアボロスの左腕』を用いて教団は不老不死を目指していること──限定的には実現していること。
第六に、それを完璧なものにするために、ディアボロス教団の目的は、魔人ディアボロスを復活させることであり、その細胞を入手して完全な不老不死になることを目論んでいること。
聖域に招かれた私たちは、これらを記憶として、見せられたことを話した。
これらがばれてしまったため、私たちの殺害を企んだディアボロス教団のネルソンが、同じく聖域に招かれた敵対組織と戦闘になり、私たちは逃がされたこと。ネルソンはその場に残ったこと。
さらにディアボロス教団は、本来英雄の子孫であるディアボロス細胞を持つものが魔力暴走した『悪魔憑き』を金をだして集めて、人体実験を行い、ディアボロス復活への生贄として扱っていること。
『悪魔憑き』は穢れではなく英雄の子孫であることの証明であること。
解呪する方法はディアボロス教団によって、闇に葬られているが、ディアボロス教団に敵対する組織が、その方法を解読したこと。
等々、
司教からも、たまたまそこにいた新聞会の記者からの質問もあって、ちょっとした記者会見風になってしまった。
そして、報告が終了すると、各種新聞会の記者が、大スキャンダルだ!スクープだ!と駆けだしていった。
司教は遠い目をした後で、前任の大司教ドレイクもネルソン大司教代理彼も、私たちと違う気がしていました、と肩を落とした。
そして、彼は聖域に残ったんですね? と確認してきたので、そうだ、と伝えたところ、聖域に繋がるといわれて秘されていた場所が突然崩れ落ちて、長い通路が見つかったのだという。
その時点で最高責任者である、司教の自分と、聖騎士の長で信頼できるものだけを選んで中を調べたところ、まるで遺跡のような丸い通路があり、それは途中まで残っていたが、その繋がる先──おそらく聖域はきれいさっぱり無くなっていた、とのことだった。
その場所に三英雄エルフの勇者オリヴィエと書かれた、戦乙女の像があったことから、今の話に真実味がある、ともいわれた。
そして、その通路にあった隠し部屋に、大司教ドレイクとネルソン大司教代理の汚職や孤児の失踪に係る書類が隠してあったのだが、見つかったとも。
その中に彼らとディアボロス教団という組織との関りを示す証拠もあったのだが、聖教にあるまじき名前の組織と繋がりがあるとは信じたくなかった、とのことだ。
「とはいえ、ネルソン大司教代理が行方不明である以上、主席司教である自分が為すべきことを為します。そして、ディアボロス復活を目的とする教団などという組織を、聖教で許すことはありません。」
と力のこもった眼で言っていたので、この真相についてもミドガル王国へも報告願います、とアレクシアが頼んでいた。
なので、私も意見を言わせてもらった。
「ディアボロス教団は、教団の関係者であるドレイク大司教猊下すら暗殺しています。御身お大切に願います。信頼できる聖騎士以外は近づけないようにするなど…ディアボロス教団がどこに潜んでいるかわかりませんから。」
─ガーデンからも護衛を付けているが、確率は上げて起きたい。
──これでガーデンの作戦通り聖教は、ディアボロス教団を異端認定する方向に動くだろう。ディアボロス教団の陰の勢力を削ぎ落していたこと、大司教に大司教代理がいなくなって、建前上のトップがディアボロス教団とは無関係な主席司教になったことも大きいだろう。
後に、そうなるようにあやしい司教を失脚させたり、清貧な司教を後援したりと手を廻していたとガンマから報告されて、さすが七陰の参謀!と大いに褒めまくった。
そして実際その日の夕方には新聞から号外が出され、ディアボロス教団というカルト教団として世間に露呈して一気に広まってしまったため、聖教としても擁護できないところまで来ていた。
ディアボロス教団としても世間が敵に回ったのだ。多少は動きにくくなることだろう。
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「あれほどの規模の施設、表の影響力がなければ隠し通せるものではありません。そして、実際にそれだけの力と影響力を持つ組織は……」
アレクシアはアイリスに詰めよった。
「聖教も協力を約束してくれました。是非調査するべきです。王都での事件も合わせ、原因究明を旗に掲げれば奴らだって……聖教も受け入れてくれるはず、です。…!」
しかし、アイリスは首を横に振った。
「同様のことを私もお父様……陛下に相談しました。ですが返答は今は時期が悪いので動くな、とのことでした。」
「そんな…!」
「認めていないわけではないのです。事なかれ主義の陛下らしくない回答でした。ただ、同盟国の王であるオリアナ国王の来賓を控えて、聖教を相手に余計な騒ぎは起こしたくない、とのことでした。」
「くっ、ブシン祭本選に合わせての来賓でしたか…」
「ええ、なので、陛下を動かすためには──ブシン祭までの間に明確な証拠を揃える必要があるでしょう。」
グレンたちも放火未遂にあった資料の精査と、第三騎士団の隊長等教団員へのを尋問をしていますが、挙がってくる名前に高位貴族が多く、捜査は難航しています、と内情を教えてくれた。
「そういう意味では、ブシン祭の開催が今年であったのは幸いでしたね。うまくすればオリアナ王国と連携して進めることができるかもしれません。」
アレクシアはカルテットのメンバー一人であるローズ先輩のことを思った。
「たしかに、悪いことばかりではないですね。」
─ローズ会長については正直悪いことなのだが…王国宰相がディアボロス教団のモードレット派なのだ─
─そして、王を洗脳して傀儡にしてミドガル王都で騒乱を企てている─
─
「ですが姉さま、もしまた『ディアボロス教団』が何か仕掛けてきたら……? 大きな催しの裏では、常に彼らが動いていました。もしかしたらブシン祭でも…」
アレクシア、とアイリスは言葉を遮った。
「心配は無用です。私が、お父様……陛下とオリアナ王国国王の護衛に付きます。」
「…姉さまはブシン祭に出場しないのですか?」
ちょっと驚いた顔でアレクシアは尋ねる。
「二度でて、一度優勝しています。連覇を、とも思わなくもないのですが、今は紅の騎士団 団長として、グレンらと共にディアボロス教団について調査を進め、国難に挑むことの方が重要です。」
そして、悪戯するような表情をしてから言った。
「あなたの彼女は『女神の試練』で大層強い魔女を相手に勝利した、と伺っていますよ。優勝候補なのでは?」
一瞬でポンと赤くなったアレクシアは…
「お、おっと、のぼせたかも。み、水風呂入ってきま~す。」
そう言うと、焦ったのか、シドの手を放して一人でていった。
アイリスと残されたシドは、そろって溜息をついた。
「あの…」「その…」
二人は同時に声をかけた。
で、譲り合いの結果、アイリスが話すことにした。
「先ほどの冗談はさておき、『女神の試練』達成おめでとうございます。」
「ありがとうございます。アイリス王女。」
「アイリスと呼んでもらっていいですよ。」
「…それは私の心臓に悪いので、アイリス様で…」
「それとも、アイリス
「…アイリス様って意外とお茶目なんですね。アイリス様でお願いします。」
そうですか? と首を傾げるアイリス様がいた。
(これは天然か!とシドは心の中で突っ込んでいた)
「しかし、古代の魔女──アレクシアが言うには『災厄の魔女』アウロラに鎧袖一触で勝ったとか、」
「それは…魔女である以上懐に潜り込んでしまえば、魔剣士の勝ちですから。」
とはいえ、その近づくのがとても難しことだったのだろう、とアイリスは思った。
「…やはり一度手合わせをしてみなくてはわかりませんね。」
「お手柔らかにお願いします。」
やはりこうなるか…。魔剣士は剣で語る…アレクシアと仲良くなったきっかけだし…とシドさんは小声で呟いていた。
「それにしても、あのアレクシアが…」
「とてもかわいくなったでしょう? 」
シドさんは得意げに自慢してきた。
「我が妹ながら面倒くさい性格をしていたように思っていたのですが…」
「私の前では、とっても素直でかわいいですよ。」
…ごちそうさまです。 いえいえ。
その時、サウナの扉を開けて、アレクシアが顔を出した。
「ちょっとシド? いつまでサウナに籠っているのよ?」
「今行くよ~♪」
私を置いてなに話していたのよ? アレクシアがかわいいって話。わ、私がかわいいって…。私にはかわいいもん! もう、シドったら所構わず私自慢するの禁止! 無理!アレクシアがかわいいの事実だし。
わいわいがやがや
「ほんとにかわいくなっていますね。ゼノンが婚約者候補だったころは…」
もっと尖っていましたね…そう呟いた。
アレクシアにはシドさんの方が合っているということですか。
シドさんもアレクシアの専属騎士を目指している、とアレクシアから聞きましたし、『女神の試練』を達成したのですから、実績は充分にある、と言ってよいのでしょう。
これでブシン祭でもいいところまでいけば…
…お父様に話すときには味方になってあげましょう。
そのためにも一度剣で語る必要がありますね。グレンに根回しをしてもらいましょうか…
そしてアイリスは、先日の聖都リンドブルムで起こったことを思い返していた。
「あれは、王都を染め上げた青紫色の光と同じだった…」
但し、あれよりも遥かに太かった。近くで見ていたアレクシアが言うには、直径4~500メートルはあったという。
王都のときには直径10メートル程度だった。
それでも、衝撃波と爆風で少なくない物的被害が出た。
リンドブルムでは、聖域が消滅し、さらに湖の水が津波のように押しよせ、ダムが干上がったと聞く。
そして、あの巨大なキノコ雲…
あれは人間が放てる威力ではない。
とはいえ、それが可能な巨大な魔力を秘めたアーチファクト…というのも聞いたことがない。
グレンに相談して……相談して……
「姉さま? ちょっと
ホイホイ。あ、アレクシア、扉を開けておいて。
これでいい? うん。
あっ、なんか涼しい…
姉さま、水分を取って、
水 分…?
シド、身体を起こして。ホイホイ。お願い姉さま飲んで!
口元に冷たい感触が…
ごくごく飲んで…冷たくて気持ちいい…
シド、アレやって。気をつかうやつ。ホイホ…って、アイリス様には内緒だよ。うん。
シドさんが私の両手をもって…あ、なんか気持ちいい…
しばらくすると、身体も冷えて、頭が廻るようになってきた。
スパの涼しいところに置いてあるベットに寝かされてから上半身を起こしているようだ。
隣には水の入ったコップを持って心配そうなアレクシアがいた。眼の前には私の両手を持っているシドさんがいた。タオルが落ちてスレンダーな身体が丸見えだ。
「あのぉ…」
「目が覚めた? 姉さま。先ずは水を飲んでください。」
口元にコップの感触。ちょっと恥ずかしかったが両手をシドさんに取られたままでは仕方がない。
コンプ一杯分の水分を補給したことで少し楽になった気がした。
「あのぉ…」
そう言ってシドさんを見上げるが、ニコニコしている。
シドさんが手を取っているところから、なにか暖かいような冷たいような不思議なナニカが流れ込んで身体を廻り、反対の手から熱と共に出ていくものを感じていた。
「もう大丈夫そうですね。」
そう言って手をはなされた。おもわず、あっ、と声が出てしまった。
瞬間、アレクシアの眼が剣呑となった。
「このところ稽古が足りてないのではないですか? 氣の廻りが悪くなっていました。」
シドさんは気付いていないのか続けて言った。
「なんなら早朝稽古に一度参加しませんか? アレクシアとても強くなったんですよ。」
思わず、ハイと返事をしてしまった。…だからアレクシア、姉に嫉妬するのはよしなさい。
ほら温泉に入るわよ、一緒に入ろう! も、もちろんよ。 どのお風呂にしようか迷うね。そうね…
わいわいがやがや
楽しそうにしているアレクシアたちを見ていて、アイリスは魔剣士学園のころの女友達に会いたくなった。
ミリア…
一年年下だった後輩。でも二年生の時に失踪してしまった。王都ブシン流の稽古では一部に属していたかわいい後輩だった…
今頃どうしているのだろうか…
なお、
感動?の再開まで、あと一時間というところであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
雨が降りしきる中、ローズは独りで剣を振っていた。
無駄のない一閃。
しかし、ローズは納得できていなかった。
何度も件を振る。
…違う。
あのとき、あの美しい剣に……
ローズの脳裏を幼き日の記憶が蘇った。
ローズはかつて一度だけ誘拐されたことがある。
薄暗い小屋の中で拘束されていた。手足は荒縄で縛られ、口には猿ぐつわをはめられている。
小屋の外から、深く、低く、深淵から発せられたような、それでいてどこか甲高いところのある不思議な声が響いていた。
盗賊死すべし、慈悲は無い!
あの時、誘拐された自分を助けてくれた人の振るう剣──いや、わずかに反った片刃の剣。
その剣を見たその時から、私は剣の道に進むことを決めた。
なお、後日ローズなりに調査したが、そのような剣を使う流派は無かった。
そして、誘拐されていた私を解放してくれた。
ついでにと王都の壁近くまで送ってくれた。…その速さに眼が廻ってしまいそうになったのは私だけの秘密だ。
「誘拐されるとは災難だったわね。あそこが王都の壁よ。帰りは気を付けて帰りなさい。」
「あの…あなたは、いったい?」
漆黒のボディスーツを着た、
「そうね、まだ修行中だから、通りすがりのスタイリッシュ盗賊スレイヤーさんってところかな。みんなには内緒だよ?」
頭を撫でてくれたあとに、同じような恰好をした、湖のような髪の少女と消えたかのような速さで立ち去って行ったのだった。
それは大切な、幼き日の記憶。言われた通り、誰にも話したことの無い、ローズだけの秘密。
…そう言えば、聖域にいた漆黒の人の一人が湖のような髪をしていたような…
あれっ、それに全員が漆黒のボディスーツを着ていた…装飾が違っていたが。
あの時のお姉さんだったら、すぐにわかったのに…
再び剣を構えた時。
「あっ…!」
突然、胸に痛みが走った。
「うっ……!」
ローズは思わず、胸を押さえる。
「なっ…!」
胸の谷間からは、『悪魔憑き』の証がわずかに見えていた──
これは──『悪魔憑き』は穢れではなく英雄の子孫であることの証明であると先日知った。
しかし、英雄の子孫の証だとしても、まだそのことを誰も知らないし、解呪する方法は、ディアボロス教団と敵対している漆黒の人のいる組織しか知らないのだ。
ローズは、どうしたらよいかわからなくなっていた。
陰の実力者になりたくて! 本編の第17.5話です。
聖地編の残った部分ですが、閑話となりました。
基本カゲマス準拠です。
聖地編まで進んだので、もう一話閑話を挟むか七陰列伝に戻る予定です。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアも…性癖全開です。
聖教の主席司教とか、某教団が暴露されたこととかは本作での捏造です。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。