陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第18話です。

 第17.75話で書いた、決断への序章となります。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第18話「決断への序章」

 

 

 

「おはようござ…い…ます?」

 

 指定されていた時間から少しだけ遅れて王宮から魔剣士学園の寮にある稽古場に着いたのだが…

 

 最初に眼に入ったのは、二人が交互に互いの身体を押しつけあっている姿*1だった。

 

「おはよう。姉さま」

 

「おはようございます。アイリス様」

 

 ごく普通に挨拶してくる。

 

 …アイリスは、柔軟体操とストレッチを知らなかった。なので、なにをいちゃいちゃしているのか、と思った。

 

 それも、開脚前屈を見た時に驚きに変わった。

 

 最初にシドさんが、大股開き(180度開脚)したあと(下はズボンです)、背を押されてペタリと上半身が地面に伏せたのだ。

 

 そして、次にアレクシアが同様にしたあと(下はズボンです)、背を押されてペタリ……胸が邪魔していたが前屈して見せたのだ。

 

「身体が柔らかいのですね。」

 

「アレクシアは元々剣術の訓練のときから可動域が広かったので、この二カ月で180度開脚ができるようになりましたよ。」

 

「では、私も…」

 

「ちょっと待って! 姉さま。下がズボンでないと…」

 

 はっ、と気が付いて止める。…見ると二人の稽古着はズボンになっていますね。…それにお揃いの稽古着(ズボン)

 

「…え、えっと、柔軟体操とストレッチが終わってから一緒にやりましょう?」

 

 それまではアイリス様の普段の準備運動を…とシドさんが提案してくれた。

 

 身体を動かし始めながら、改めて二人組で行われる柔軟体操とストレッチをみる。

 

「こんな早朝から稽古しているのですね。 …二人だけで…

 

「…い、いつもはクレアお姉さまも参加しているのですが、現在帰省しているので。それに…」

 

 そういって、稽古場の入り口に眼をやる。

 

「護衛はついています。今日は、グレンさんとマルコさんのようですね。アイリス様に配慮したのかな。」

 

 一人が外を、一人が内を見る体制になっている。

 

 こちらを向いていたグレンが頭を下げたのが見えた。マルコには刺激が強いのだろう…

 

 それからしばらく二人の いちゃいちゃ 息の合った柔軟体操とやらを見せつけられて…

 

 いつもよりも魔力が昂ってしまったようだ。

 

 

 …それがアイリスの敗因の一つになる。

 

 

 その後、パルクールといって学園内を駆け廻るというので、そこから着いていくことにした…の…だが……

 

 二人はびっくりするほど魔力を使わない。

 

 使っていないわけではないが、極少量を巧みに…いや、緻密に使っている。

 

 自分の魔力の使い方を楽器に例えるなら、きびきびと大音量で主旋律を奏でているラッパのソロ奏者だとすると、アレクシアたちは交響曲の伴奏する楽器すべてを一人(・・)で奏でているかのようだ。

 

 同時に何ヵ所の魔力制御をしているのだろうか?

 

 それをシステマチックに連動させている。複数の楽器を一人で操って伴奏しているかのように。

 

 アレクシアはまだ拙いところがあるようで、途中でシドさんに拾われてたりしていたが……隙あらばいちゃいちゃして…

 

 思わず校舎に体当たりをブチかましてしまうところだった。

 

 シドさんに後ろから抱き止められたので事なきを得たのだが……だからアレクシア、姉に嫉妬するのはよしなさい…

 

 …そういえば、今空中を蹴って止めたような…

 

「アレクシア、上手になっているでしょう?」

 

 シドさんがちょっと得意そうでした。

 

「これまで愚直に剣術と向き合って、動作の一つ一つを納得するまで突き詰めてきたアレクシアだから、あの魔力制御ができるんです。」

 

「シ、シドったら、所構わず私自慢するの禁止って言ってるでしょ! …あと姉さまを放して。

 

 ホイホイ。

 

「立てますか?」

 

 ぶつかりそうになった校舎の屋上でさっさと降ろされた。…なんとなく“ポイっ”とされたように感じた。

 

 アレクシアには(・・)やさしいんですね…

 

 なお、後でグレンに確認したところ、以前聞かれたときに「とても緻密な魔力制御をします」「アレクシア様には教えています」と報告していたはずです、と答えられた。

 

 これを「とても緻密」の一言で(さつ)しろと言われても…

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 何はともあれ、稽古場に戻ってきて、ようやく木剣での修行となった。すでに30分くらい経っていた。

 

「姉さま、久し振りに一手所望します。」

 

 アレクシアが少し悪い顔をして言ってくる。シドさんは…どうぞどうぞ、と手を振っている。

 

 木剣が十本くらい用意してあったので、自分の剣に近い長さの木剣を選ぶ。

 

 なぜこんなにたくさんの種類の木剣が? と思ったのが顔に出たのか、護衛の人たちと手合わせするときに使うんです、とシドさんが教えてくれた。

 

 手に取って振り回してみる。重さは…普段使いの剣と変わりませんね。鉄芯でも入れてるのでしょうか。

 

 ニコニコと待っているアレクシアのところに向かい、剣先を合わせる。

 

 

「アイリス様、ご注意ください。」

 

 グレンが話しかけてきた。マルコも近くに来ていた。

 

 

 ひとまず、アレクシアと向き合う。…いきなり注意しろと言われても…

 

 

 あれっ、威圧感とか殺る気というか、剣気を感じない?

 

 

 第一印象はそう感じたが…よく見ると、アレクシアは緻密な魔力制御で魔力を放出していなかった。

 

 

 これは…おもしろい!

 

 

 と木剣を袈裟斬りに振り下した、のだが…

 

 アレクシアは剣を払ってアイリスの剣を流していく。

 

 

 まったくアレクシアの力を感じないわけではないが、振り下ろすとずらされ地面を叩きそうになり、振り払うと上に下に反らされてしまう。

 

 

 まず剣を受けようとしない。

 

 

「…あぁ、剣先に気が乗りすぎてますね…」

 

 

 アイリスがむきになって魔力強化をすればするほど、アレクシアの剣にいいようにあしらわれてしまう。

 

 

 なるほど、たしかに剣を受け流す技術は上がったようですが、攻撃は…

 

 

 そう思った瞬間、振り払った剣を強く流される。

 

 

 体勢の崩れたところを狙ってくるようですが、甘いっ! と魔力強化して飛び下がろう、と…して……

 

 

 気付くと天をむいて倒れていた。 

 

 

 えっ!?

 

 

「姉さま、大丈夫ですか?」

 

 

 えっっ!?

 

 

 慌てて上半身を起こす。 危なっ、とアレクシアが覗き込んでいる体勢から一瞬で下がっていた。

 

 

 廻りをみると、グレンは顔を右手で覆い、マルコは明後日の方を見ていた…

 

 

 えっっっ!?

 

 

 ちょっと得意そうな顔のアレクシアが眼に移った。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「あのですね、今、観の眼を教えてまして、アイリス様の剣筋がソコソコわかるようになってきたんですよ。」

 

 観の眼……聞いたこと無いです。

 

「これはアイリス様にもできると思うのですが、視界を全部使っているんです。」

 

 

 は?

 

 

「今回はなれない木剣を使ったこともあると思うのですが、剣先に気が乗りすぎてまして、アイリス様の動きが丸わかりだったんです。」

 

 思わずグレンを見るが、首を横に振られた。

 

「アレクシアがアイリス様の剣を良く知っていたので、アイリス様の身体の初動を観ることで剣筋が見えてたんです。」

 

 マルコを見るが、同じく首を横に振った。

 

「そんなわけで、何が来るかわかっているから、受け流すこともできるし、ああやって吹き飛ばすこともできます。」

 

 

 後にグレンに聞いたのだが、私のなぎ払いを少し強く上に流す途中でさらにクンと上に剣を跳ね上げられたところで、ちょうど私が飛び下がろうとしていて(みずか)ら倒れ込んでいった、と言う。

 

 そのときに、実は私も、アレクシア様に同じ手で何度かやられてまして……とグレンは頭をかきながら申告してきた。

 

 

 正直とてもショックを受けていた。

 

 

 すると、シドさんが木剣を構えてアレクシアと向き合う。

 

「なので、ちょっと初動を消すとか、フェイントを入れると…」

 

 …そのアレクシアが、ボッコボコにされていた。

 

「…こんな風になります。アレクシア眼に頼りすぎ。五感全部を使って感じるようにしないと駄目だよ。」

 

 

 その様子を見ながら、グレンに小声で聞く。

 

「…剣術だけなら、グレンと互角?」

 

「いえ、完全に上をいっています。見ての通り緩急自在です。」

 

 シドさんの動きを見ながら続けて言った。

 

「離れて見ていると、剣速自体は速いように見えないのですが…対峙していると意識外から剣が来ます。どこから剣が来るのか見当がつきません。」

 

 

 でも、アレクシアは少し反応しています。

 

 

 そうそう、私の意を感じとるの。それが難しいって。うん上手に流せたよ、その調子。そこっ。残念フェイントだよ。きゃぁ。ハイ一本。あたたっ。

 

 

「…容赦無いですね。」

 

「痛くなければ覚えませぬ、と言ってました。」

 

 それはわかりますが、仮にも一国の王女を相手にそこまでやりますか…あぁだから気に入った…と言ってましたね。

 

「…ブシン祭の学園選抜枠を決める大会でも、クレア・カゲノーに決勝で勝って1位2位で通過しています。ローズ生徒会長はクレア・カゲノーに準決勝で敗れて3位でした、選抜枠には入りましたが…」

 

 現学園最強と名高いクレアさんとですか…カゲノー家恐るべし…。紅の騎士団に予備役とはいえ参画してくれて良かったです。

 

 

「そうそう、そうやって相手の意さえ読めれば、『軽きを以て重きを凌ぎ、遅きを以て速きを制す』こともできるようになるよ。」

 

 

 思わずグレンを見てしまう。グレンは苦い顔で頷いたのだった。

 

「まさにシドさんの剣がそれを体現しているかと…」

 

 

 もっと剣の腕を磨こう。このところ書類仕事が多かったし。対ディアボロス教団対策で訓練時間が減っていたし。

 

 何よりアレクシアに負けたままでは居られません。

 

 

 その後何度かアレクシアと立ち会ったのですが、ずっとあしらわれてしまいました。

 

 

 それに、シドさんはいちいちアレクシア()褒めるのです。えぇ、いっそ清々しいほどに。

 

 

 アレクシアが褒められるたびに、私のナニカが削られていくようで…

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「今日は緊急の七陰会議に全員参加してくれてありがとう。ついでにレミーもね。」

 

 同日夜、アレクサンドリアの城の最上階にある陰の間──シャドウと七陰専用の部屋にあるソファーにシャドウと七陰全員+レミーが思い思いに座っていた。

 

 イプシロンが紅茶を入れて配ってくれた。それを一口飲んでから…

 

「で、なんの件について相談なの?」

 

 代表してアルファが聞いてきた。

 

 うん、相談したいことがあるの、と私は答えた。

 

 ローズ会長──ローズ・オリアナ王女の件とオリアナ王国と国王の件については、七陰の作戦(プラン)通りでいいんだけど…

 

 

「その…ア、アレクシアの事で相談があるの。」

 

 

 その瞬間ベータとゼータの眼が鋭く尖った…のだがシャドウは気付かなかった。

 

 

「作戦通りにいくなら、オリアナ国王だけじゃなくて、ローズ会長にもシャドウガーデンのことを話すでしょう?」

 

「ええ、ローズ・オリアナ王女を見捨てないのならば、ね。」

 

 

「私が『悪魔憑き』を見捨てるわけ無いでしょ!」

 

 

 思わず立ち上がっていた。

 

 

 一息ついてから座り、続けた。

 

 

「…イータとレミーとも一緒に開発した誓約魔術を使って、ガーデンの情報を漏らさないように、オリアナ国王にも使用してもらってるし、ローズ会長にも使うけどさ。」

 

「ん……開発には……苦労した。もっとお手軽に……できるように……改良が必要。」

 

 

「でね、そうなると、アレクシアだけ内緒になっちゃうでしょ? カルテット的にも…」

 

 とベータを見やる。ベータは平然と、それが何か?と聞いてきた。

 

 

「うっ…」

 

 

 と、思わず胸を押さえた。

 

 そう、これまでのやり方を考えれば、別に話す必要はないのだ。内緒にするのが正解なのはわかる。わかるんだけど…

 

 

「その……新たな隠し事は作りたくないの……その……アレクシアに。」

 

「それを言うと、お姉ちゃんはどうなるのー?」

 

「うっ…、そ、それはカゲノー家には迷惑かけれないし…」

 

「本当にー?」

 

 

 うっ…でも、レミーの言う通り。これはあくまで…

 

 

「…私の心情的な問題なの……」

 

 

 正直に話そう…

 

 

「ローズ会長に話すのに、アレクシアに秘密にしているのがつらいの。私の心情的に。」

 

 

 七陰とレミーを見廻した。

 

 

「だから、七陰に相談。アレクシアに打ち明けるかどうか。誓約魔術を使うのも込みで。」

 

 

「あくまで、相談なんだね、主。」

 

 

「うん、ゼータ。これは相談。」

 

 

 並んで座っているアルファとイプシロンを見る。

 

 

「私はシャドウだから、シャドウガーデンが…七陰が一番大事。」

 

 

 対面に座るベータとデルタとゼータを見る。

 

 

「ディアボロス教団を滅ぼして、平和な世界を築く方が大事。」

 

 

 一緒の席にいるガンマとイータとレミーをみる。

 

 

「妹たちに平和な世界で暮らしてもらうことの方が大事。」

 

 

「でも、シドとしては、アレクシアもクレアお姉さまも大事。」

 

 

「ごめんね。“ボク”みたいに、大抵のものをどうでもいい、にはできないよ。」

 

 

 しばし、沈黙が支配した。

 

 

 ふぅ、と息をはいたのはアルファだった。

 

 

「アレクシアと会ってから四カ月ほどかしら。恋愛関係になって二カ月ちょっと。よく我慢したわね。」

 

 意外なことにアルファは賛成してくれるようだ。

 

「七陰に秘密を打ち明けたときも、大体助けてから二ヶ月くらいだったわね。」

 

 そう言ってガンマ以降の七陰に眼をやった。

 

「主が、“相談”してくれたから言うけど、アレクシア王女って、秘密…守れるの?」

 

 そうゼータが聞いてきた。

 

「その辺は信用しているよ。ただ、アイリス様にも秘密にすることになるから、誓約魔術は結んでおく必要があるとは思う。」

 

 

「…それ本当に大丈夫?」

 

 

「そこは事前に確認するよ。」

 

 

「…立ち位置はどうなりますか?」

 

 

「ん、ベータ。レミーと同じく、番外(エクストラ)にするよ。」

 

 

 ぼくといっしょかー、とレミーが呟いた。

 

 

「なら、シドも気付いていると思うけどー、クレアお姉さま、ぼくのこと気付いているよー。」

 

 

 えっ!

 

 

「もしかして、シド本当に気付いて無かったのー? けっこうぼくと私で態度ちがうよねー?」

 

 

 えっ!!

 

 

「まぁ、最初は二重人格を疑っていたっぽいけど……ほらキスマークが消えたり増えたり(・・・・)なんかして…別人と入れ代わっていることに気付いたっぽいー。」

 

 

 えっ!!!

 

 

「あっ、これはもう今日は駄目っぽい。今日の当番は誰たっけー?」

 

「わたしよ。」

 

 じゃあ、アルファ、まかせた。はい、解散、解散っと。

 

 

 えっ!!!!

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 気が付いたらアルファと一緒に寝てました。

 

 とてもぐっすり寝っていたわ。

 

 ちゃんとお風呂にも一緒に入ったらしい。

 

 とても素直で可愛かったわよ、と言われても記憶にない…

 

 会議の続きは、本日のアレクシアとの早朝練習後にすることになったから、と言われて送り出されました、まる

 

 

 

*1
─柔軟体操とストレッチです!─





 陰の実力者になりたくて! 本編の第18話です。

 第17.75話で書いた、決断への序章となりました。

 基本カゲマス準拠です…が、もはやオリ展開ですね。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアも…性癖全開です。

 アレクシアって、ヒロインになる資質は充分あると思っています、本作では結構ヒロインしています。もちろん、本作での捏造です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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