陰の実力者になりたくて! 本編の第19話です。
決断の刻、となります。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…
そして、シドも“ボク”をリスペクトしきれないところが出てきました。
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
「ねぇ、ヴァイオレットさん。」
その日の早朝練習をアレクシアと行った後、今日は少し用事があるの、といって時間をもらってアレクサンドリアに移動したときに、リハビリで散歩中だったヴァイオレットさんにあった。
七陰会議(前回の続き)まで少し時間が有ったので、ついてきているメディックの担当者に声をかけて、ヴァイオレットさんの散歩に付き合うことにした。
「なぁに? シド。それともシャドウって呼んだ方がいい?」
「ん、この姿のときはシドで良いよ。シャドウに変身しているときはシャドウでお願いね。」
ちょっと私を見る目に呆れたような雰囲気を感じた。
「本当に変身できるのは、あなだだけだったのね。今の世の中についても教えてもらっているけど、思ったほど変わっていなかったわ。都市や街の名前や位置が変わったりしているけど。」
「…人のやることなんてたいして変わらないよ。ここであれ、地球であれ…」
「ちきゅう?」
そうだった。ヴァイオレットさんも聖域での関係者の一人だった。
「ねぇ、ヴァイオレットさん。これからの会議についてきてよ。」
「私は別にいいけど…」
ヴァイオレットは、首を傾げている。
「…他の出席者に確認しなくていいの?」
七陰は事情を知っているし大丈夫! といって、メディックの担当者に一声かけてから、陰の間に移動を開始した。まだゆっくりとしか歩けないヴァイオレットさんをエスコートすることも忘れない。
陰の間に続く旅の扉を前にして、ついでだから、ヴァイオレットさんをシャドウ・ゲートに認証させることにした。
「ちょっとここに左手を置いて。ちょっとチクリとするから我慢して。」
指紋と静脈+血による認証を行う。
素直に手を置いたところで、小さい針が飛び出してきて血液を採集する。
「きゃっ、いたっ。」
「ちょっと手を貸してね~、ホイホイっと。」
さっさと魔力を流して癒してあげる。イメージで言うと、
何かまた呆れられたように感じながら、陰の間に通じる旅の扉を開ける。
…まだ最後では無かったようだ。
ヴァイオレットさんを連れているのを見て、アルファとイプシロンがちょっとビックリしていた。
「紅茶の追加をお願いしていい、イプシロン?」
予備のカップを取りに行くイプシロンの隣の席にヴァイオレットさんを座らせる。なお、ソファーは三人掛けが四方に配置してある。
「彼女にも開示するの?」
「聖域での関係者でもあるから…」
アルファは、そう、と頷いてから紅茶を飲んだ。私も自分の分に口をつける。
うん、おいしい。
「いつもおいしい紅茶をありがとう、イプシロン。」
どういたしまして。そういいながらヴァイオレットさんの分を入れてくれた。
紅茶を楽しむことしばし、七陰とレミーが揃ったところで会議の開始を宣言する。
先ずは昨日の謝罪からだ。
「昨日は混乱しちゃってごめんなさい。」
まさか、クレアお姉さまが気付いているとは知らなくて…
「いやぁ、お姉ちゃんに気付かれていることに本当に気付いてなかったんだねー」
そんなことをのたまうレミーをジト眼で見る。
「なんで普段同調している時に教えてくれなかったのよ。」
「そりゃあ、私が知ってると思っているところまでは同調しないでしょー?」
たしかに、そんなところまで同調していたら大変だけどさ、でも…
「納得がいかない……って、クレアお姉さまって私とレミーが別人て知っているのに私も攻めてきてるの?」
お姉ちゃん曰く、かわいい妹が一人なのに二人もいるのね、って言ってたよー。
「…そっか。お姉ちゃん、そう思ってくれてたんだ。なんか嬉しいかも…」
しばし感慨に耽る。
「で、昨日の続きなんだけど…」
奇しくも昨日と同じ席に座っている七陰とレミー(ヴァイオレットさんはイプシロンの隣にいる)を見廻してからいう。
「アレクシアに、誓約魔術有りであれば、情報の開示しても問題ない、ということでいいのかな?」
「秘密を漏らさない…姉であるアイリス王女にも家族にも漏らさないって、主が事前に確認を取るんだよね?」
「うん。それがダメなら…諦める。」
「それに、シャドウ様。
私はそれに頷いた。
「ガーデンは──シャドウガーデンはシャドウと七陰の、『悪魔憑き』を助けるための組織だから、あくまで
「…誓約魔法のレベルは? レベルⅢ*1?」
ゼータとベータが顔を合わせる。そして同時に指を2本立てた。レベルⅡでいいようだ。
アルファとイプシロン、ガンマーとイータも指を2本立てていた。
なお、デルタは手をあげていた、かわいい。
「みんなレベルⅡで問題ないようね。なら後は…開示範囲ね。」
とアルファが取りまとめてくれた。
「正直、
アルファが溜息をついた。えっ?
「そっちについては、
私の手を取って、眼を見て話してきた。
「シドの秘密についてよ。」
…そうだった。私の秘密が一番の問題だった。
「
そこは…
「シドのことだから、全部教えたいんでしょ?」
うん。
「
「ひどいなー、アルファ。相変わらずぼくの扱い雑だよねー。」
「…そこは頑張って謝るっ!」
「あー、謝ることは前提なんだー。」
じゃあ、ってレミーが手をあげた。
「お姉ちゃんへの開示範囲も考えてねー。」
「それは…、アレクシアとローズ会長の件が終わってから考えるっ!」
「それに、いつから気付かれていたとか、その辺も教えてね、レミー? 一緒に考えましょう?」
ホイホイ。
「それで……、いったい何の話をしていたの。」
そうだった、ヴァイオレットさんにも説明しないと。
実は……
かくかくしかじか
「…ねぇ、元『災厄の魔女』だった私に言わせてもらうけど、シャドウの方が絶対に世界に混乱と破壊を招くと思うわよ。」
ズキューーン!
メディック! メディック! 私のハートが撃ち抜かれてしまったわ。
しくしく
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヴァイオレットさんへの説明は私たちでするから、ローズ会長の件もあるし、さっさとアレクシア様の件を片付けてきなさい、と寮の部屋に戻されてしまった。
まだ。午前中だったので、ダメ元でアレクシアに予定を窺いに向かうことにした。
寮の部屋を訪ねると、もう用事は終わったの? と聞いてくるアレクシアに答える。
「うん。だからちょっと誘いに来たの。」
そして、耳元で囁いた。
「例の件とか、いろいろと教えてあげたいの。」
ちょっと頬を染めながら、いまから行くわよっ! と喰い気味に答えてくれた。
で、どれくらい時間がかかるの? と聞いてくるので、なら、私の部屋でパジャマパーティーにしない? と誘った。
「…ゴクリ、いいわよ。」
準備してくるから、待っててね、と言って部屋の中に走っていった。
まぁ同じ寮の中だから、ということもあるのだろう。直ぐにカバン一つでやって来た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
寮の食堂でランチを食べてから、手を繋いで私の部屋に向かってあるく。
アレクシアはとてもご機嫌に見える。なんというか…ルンルンだ。
私の方がなんかドキドキしてきちゃった。
部屋の鍵を開けてアレクシアを招き入れる。
お部屋デートで何度も来ているので、アレクシアも勝手知ったる感じで入っていく。小さくおじゃまします、と言っているのが可愛らしかった。
扉を閉めて鍵を──内鍵も下ろす。なんだか緊張してきちゃった。
部屋のソファーの何時もの席に先に座っているアレクシアの隣りに並んで座った。
アレクシアの右手が私の左手を絡めてから恋人繋ぎで手を繋ぐ。
いつも通りのアレクシアに、ちょっとだけ笑ってしまった。アレクシアも、うふふっと笑った。
その飾らない笑顔に、やっぱりアレクシアのこと
私の鼓動が伝わったのか、アレクシアの頬が紅くなるのが見て取れた。
一瞬だけ、このままいつものようにお話を……という考えが頭をよぎった。でも…
「とても大切なお話があるの。…アレクシアに、今まで隠してきたことを打ち明けたいの。」
と、赤い瞳と眼を合わせて言った。
「…教えてくれるの?」
「うん。アレクシアが望むなら、
でも…
「代わりに、墓場まで持っていく話になるけど…聞きたい?」
アレクシアの眼が大きく見開かれた。
「そんなことを教えてくれるの?」
どうも、私の秘密の大きさに見当がつかないようだ。
「うん。アレクシアのこと好きだから、隠していることがつらいの。」
眼を放さずに告げた。
「でも、秘密にすることが無理なら、言えないし、言わない。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アレクシアは、シドの紅い瞳が揺れるの間近で見ていた。
シドの眼が揺らいだことなんて、今まで無かった。いつも飄々としていて、私よりも大人っぽくて、…コーヒーのブラックが飲めない。
多分、ここがシドとの分岐点。
ここを越えなければ、シドとの未来はない、唐突にそう思った。
誰にも言えない…ということは、アイリス姉さまにも秘密なのだろう。
でも、もう答えなんて決まってる。
私は、眼を合わせたままシドにキスをした。
シドの眼が驚いたように開くのを見た。
何時のまにか離れていた手でシドを抱きしめた。
そのまま、眼を瞑って、舌で唇を割って深いキスをする。
…初めてする深いキスはとても甘美なものだったわ。
思わずソファーに押し倒していて、ちょっと呼吸が苦しくなるまでたっぷりと堪能してから、荒くなった息を整える。
再びシドの紅い瞳と見つめ合ってから答えた。
「教えてちょうだい。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アレクシアに、ありがとう、と言ってもう一度キスを交わす。
そして……じゃあついて来てほしいの、そう言って身体を起こして一緒に立ち上がった。
「えっ、ちょっと外に出る準備はして来てないわよ!」
と、慌てるアレクシアにクスッと笑ってしまった。
「行き先はここだよ。」
といって、クローゼットを開けて洋服をずらす。するとそこには…青紫色の扉があった。残念なこと?にピンク色では無い。
は? と固まっている間に起動させて扉を開く。
すると、青い渦の形の模様の入った床の石造りの部屋に繋がった。
じゃあ、行くよ。といってアレクシアの右手を取ってクローゼットの中にあるシャドウ・ゲートの扉を潜った。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
シドに手を引かれて、クローゼットの中の扉を潜ると、扉がたくさんある部屋にでた。
見廻すと、青紫色の扉が15個ほど、木の扉がひとつあった(5個/面で3面)。床には青い渦の形の模様が入っている。
「…ここは?」
「私たちの秘密の拠点、古都アレクサンドリアの旅の扉の間だよ。」
「アレクサンドリアってどこよっ!」
聖地リンドブルムのさらに東、『深淵の森』の中、との回答。
木の扉の横に地図が貼って置いてある。世界地図(ミドガル王国中心)の右側やや上を指さす。
「ココだよ。」
違うわよ! そうじゃないって! …こいつ天然か!?
「今は、無理して開けてもらっているから…」
そう言って、別の青紫色の扉を開けた。
こうなったらとことん付いていってやるわよ! と勢い込んで付いていく。
着いた場所は…高級そうでシンプルなシドらしい部屋だった。
向こうにベランダがあるようで、案内してくれた。
周りを見廻すと、絶景だった。
そして、ここが城の最上階であることがわかった。
どこかの小国だろうか? ちょっとひんやりしていた。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
古都アレクサンドリア中央にある、小王国時代の城を改装した最上階にある、陰の間についた。
そこのテラスからアレクサンドリアが一望できる。それを見せてあげる。
三方向を険しい山脈に遮られており、山脈がない方向(西側)には要塞が見える。
「ねえ、シド。これって本物?」
うん。クローゼットの中じゃないのね? そこからか…
「あの扉は、遠く離れたところにある扉と繋がっているの。」
そう説明する。
「特別な術式をつかうことで、世界中にある旅の扉と繋がっているの。」
「つまり、世界中どこにでも行けるの?」
「さすがにどこにでもはいけないけど、旅の扉を設置してあるところなら、どこへでも行けるよ。」
「じゃあ、ここってほんとうに本物? 私たち聖地リンドブルムのさらに東、『深淵の森』の中にあるアレクサンドリア?にいるのね。」
「うん。王都から汽車で二泊三日、そのさらに東。」
シドの秘密ってスケールが大き過ぎよ…と呟くのが聞こえた。
どうやら、一周廻って落ち着いてきたようだ。それを見計らって、七陰が入って来た。
「初めまして…ではないわね。聖域で会ってるもの。アルファよ。」「ね? イプシロンよ。」
「お店で挨拶したことがありますよね。ガンマです。」
「不本意ですが、ナツメとして会ってますよね? ベータです。」
とベータ。
イータは、初めまして、イータ・ロイド・ライト……と挨拶している。
デルタとゼータは名前だけ言った。とても警戒している。
アルファの顔を見て、『漆黒の人』であることに気付いたようだ。
そして、髪の色からイプシロンとデルタにも気付いたようだ。マスクをしていたのと普段着なので、気付くのが遅かったのかな?
おお、ガンマがミツゴシ商会の会長であることにも気付いたようだ。ガン見している。
なお、ナツメ──ベータは…チラ見しただけだった。
「ここって、もしかしてディアボロス教団と抗争している…」
アルファが代表して前に出て…全員がメタルスライム・スーツに変形した。
「我らはシャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る者。」
「そして、私たちはシャドウの手足にして忠実なしもべ、七陰よ。」
アレクシアはゆっくりとシドを見る。
シドは、一瞬眼を閉じるとシャドウに変身した。
漆黒のメタルスライム・スーツにフード付きのロングコート、夜空色の髪と青紫色に輝く瞳の大人の女性がそこに居た。ただ、マスクをしていないし、フードもかぶっていなかったが…
…私をゼノンから助けてくれた漆黒を纏った人…
「えぇ、私がシャドウよ。」
とシャドウの声で言った。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
アレクシアは、ちょっと固まった後…
シドは? 私だよ、とシドの声で答える。
シャドウ? それも私、とシャドウの声で答える。
眼が廻ってしまったのか、ふらつくアレクシアを支えて、陰の間のソファーに座らせる。シドに戻って、そのまま頭を膝枕をしてあげる。
ベータとゼータが眼が尖った。
う~~ん、シドがシャドウで、シャドウガーデンで…とうわ言のように呟いている。
髪の毛を優しく梳いてあげた。
ベータとゼータがギリッと歯ぎしりをした。
イプシロンが紅茶を入れて配る。
4面の三人掛けソファーに9人が座る。アレクシアの隣にはシド──シャドウが。
なお、対面にはベータとデルタ、ゼータが座った。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「イプシロンが入れてくれる紅茶は、すっきりして美味しいよ。」
なんとか紅茶を一杯飲んで落ち着いたところで、改めてシャドウを見る。
アレクシアを見る眼からシドを感じて、少し落ち着いた気がした。
「それで、何から知りたい?」
アレクシアは、あまり廻らない頭を捻って聞いた。
シドって何者なの?
「カゲノー家の次女なのは本当だよ。ただ、私には前世の記憶…というか記録があるの。」
ちょっとだけ、口ごもってから続けて言った。
「17歳まで生きた男の子の記憶…というか、感情つきの記録ね。それも高度に発展した科学技術を持つ文明…それも異世界のモノ。」
えっ、男の子だったの?
「うん、一応性別的には男の子だったよ。でも前世は前世で、私ではないわ。」
…彼女いたの?
「いないよ。というか前世の“ボク”は恋愛感情とか削って捨ててたよ。」
ならよしっ。
「…それでいいの?」
いいのっ。なぜシャドウに変身できるの?
「それは、私が三歳の時に『悪魔憑き』になって、レミーと二人掛かりで自力で解呪したのが始まり。」
レミー?
「呼んだー?」
そう言ってケーキを持って入ってくる見た目はシド。
…シドが二人いる?
「…まだ説明して無かったのー? シドの分身のレミーだよー。」
何か似てない…
「失礼な! ぼくはレミーのときにはシドと区別できるようにしているだけだよー。」
ふふん、と笑いながら言った。
「それに…『ふ~ん、あなたが今年特待生で入学してきた天才魔剣士なんだって?』…、それから…」
なんで、私とシドの
「ふふん、だって、あれ、ぼくだったんだもーん。」
思わずシャドウを睨んだ。
あれがアレクシアとの馴れ初めだったんだ。ちょっとうれしそうに呟くのが聞こえた。
思わず力が抜けてしまった。
「だから、『悪魔憑き』になって暴走しているときに、もう一人自分がいれば協力してなんとかなるのに! って思っていたら、暴走した細胞からもう一人の自分ができていたの。」
…人って分裂して増えるの?
「前世の知識で『万能細胞』っていう概念があってさ。必死になっていたら…分身ができてました。」
「だから、私であり、ぼくでもあるんだよー。」
なんかパチもんみたいで気に入らないわ。
アルファが強く頷いていた。
「で、なんで悪魔憑きになったのかって言うと、魔力や氣に身体が馴染むように自己改造をしていたんだ。」
自己改造?
「うん。後にわかったのだけど、アレクシアも聖域で知ったように、魔力持ちの女の子って、ディアボロス細胞に適応した英雄の子孫の証でしょ? 私はそれの割合を意図的に高めようとしていたの。」
そんなことできるの?
「できちゃったの。まぁ制御できなくて悪魔憑きになるところだったけど。そのときに50パーセント以上あったみたい。」
そして、イータ?に聞いた。
「ねぇイータ、私今どれくらい?」
「ディアボロス細胞……90パーセント……前後。」
90パーセントって、人間辞めてない?
「うん。私はもう種族:魔人かなぁ。」
何を暢気な……
「だって、もう魔人ディアボロス以上だから。」
えっ!
「魔人ディアボロスも、まだ謎の魔王ディアボロスの細胞に適応した女の子だったの。」
また女の子…?
「うん。イータ?「70パーセント……前後だった。」…だって。」
なんでわかるのよ?
「アレクシアも見たでしょ。ディアボロスの左腕。だから、変身できるの。してるの、人間に。……気持ち悪くなった?」
馬鹿なこと言わないで! シドはシドでしょ!
「ありがとう…アレクシア。……ちょっとだけ怖かったんだ。」
ふんっ、次よ次。シャドウガーデンって何? 七陰って?
シャドウが眼を七陰に向けた。アルファと眼で語り合っているのを見て、視線が少し鋭くなった…かもしれない。
「七陰は、私が『悪魔憑き』から解呪した最初の七人。シャドウガーデンは七陰が『悪魔憑き』を助けるための組織。」
さっきは、シャドウの手足にして忠実なしもべ、って言っていたけど?
「私が盟主のシャドウだから…」
「シャドウは私たちを絶望の底から救いだしてくれたの。そして『悪魔憑き』の救済を──ディアボロス教団を滅ぼすことを目的とした陰の組織。」
「そのためにシャドウ様は前世の叡智を──『陰の叡智』を私達に与えてくれた。」
「総勢千人近い元『悪魔憑き』と教団の被害者による組織、ってところかな?」
千人? 英雄の子孫の??
「えぇ、一騎当千のツワモノたちによる、真の平和を求める教団に対抗する組織よ。起ち上げてかれこれ十年。下位ラウンズは打破してきたわ」
それがあの力…
「あの規模はさすがにシャドウだけよ。」
規模が違えばできるということね…
アルファ…さんはニッコリと微笑むだけだ。
どうして私に教えてくれたの?
「それは、…シドから聞いてないの?」
あぅっ、き、聞いてます。私のために …ゴニョゴニョ…
「そう、よかったわ。で、私たちからは情報漏洩防止に誓約魔術のレベルⅡを結んでもらうことを要請したの。」
誓約魔術?
「シドと魂魄の一部を用いた契約魔術。誓約した内容に違反することは、魂の一部が許さなくなる。そういう魔術。さすがに何も手を打たないってことはできないわ。」
念のため、ってこと?
「うん。あくまで念のため。アレクシアは情報を漏らさないって言ってくれたけど…」
信じて無いみたいでごめんね、とつらそうに言うシドがいた。
ふんっ、それだけ?
「えぇ、それだけ!」
くっ、本当は
さすがにことが大き過ぎるから、それくらいいいわよ。気にすることは?
「基本的に誓約した内容を遵守している限りペナルティは無いわ。」
「ただ、魂魄の一部を使うから、誓約を破ろうとすると…エライことになるわ。」
じゃあ、シ、シドは私の…こ、恋人でいいのね?
「ええ、シドは。」
ニヤリ×7
ふ~っ。なら問題無いわ。誓約内容は?
一枚の契約書を差し出した。
…ねぇ、こんなアバウトな内容でいいの?
「究極的には、私たちの情報を無許可に伝達しないこと、それだけよ。」
「それに、お仲間も増える予定ですから。」
ナツメがニッコリしながら告げる言葉が不穏すぎた。
「なんなら、シド・カゲノーの恋人とでも入れますか?」
はん、そんなこと要らないわよ!! …でも、念のためにそう追記して置こうかしら。さっさと結ぶわよ。
ニヤリ ×7
「それじゃあ、誓約魔術の術式を使うから、この契約書に魔力を流して。」
それだけ?
「それだけ。」
「一応、これが写しよ。ガーデンで保管しておくわ。誓約書は燃えちゃうから…」
どんとこいよ。
「アレクシア、ありがとう。大好き。」
ギリッ×6
「じゃあ、手を誓約書に乗せて。後は私が魔力を導くから、それに合わせて。」
誓約書に書かれた文字が光始める。同時に誓約書が周囲から燃え始めた。
「我、ここに誓約する。」
青紫色の光る文字だけとなったそれが、私の魔力に反応して私の心臓目掛けて押し寄せてきた気がした。
「これでおしまい。」
シドの魔力を心臓で感じている…不思議な感覚だった。
「ふ~~っ、これでローズ会長を助けられる。」
どういうことよ。ローズ先輩がどうしたの?
七陰は、笑顔だった。ただ、程度の差はあれ、苦みを感じる笑いだった。
「もう、意地悪しないで。ローズ会長、『悪魔憑き』を発症し始めているの。」
えっ
それも、珍しい人間の『悪魔憑き』だから…
ふと七陰を見廻した。
エルフ五人に獣人二人。…レミーは除く。
もしかして、人間の悪魔憑きって珍しいの?
「千人弱中、五人未満よ。」
それって、珍しいっていうレベルを超えているじゃない。
「そうよ。だから救出しようとしているのだけれど、そうなるとローズ王女の方に先にシド──シャドウとシャドウガーデンのことを言わなくちゃいけない、って、反対する人がいて…」
…なんか、顔が熱いわね。
「ごめんね。アレクシアに新しい隠し事をしたくなくて…」
シド…、愛してる。ギュッとしてチュウを…
「私も愛してるよ。」ギュッとしてチュウッ
ギリッ×6
「それじゃあ、学園の寮の方はレミーにまかせていいから、ご・ゆ・っ・く・り。」
あっ、何かいい人たちかも…
…こいつ、チョロイ…
「あなたのことは、
ありがとう。ねえ、シド。
ふぅ~~ん。レミーと一緒なのね。
「…アルファと一緒でレミーへの当たりがキツイね。」
それは仕方ないわ。
「仕方がないの?」
「仕方ないの!」
他にも教えてちょうだい。
「うん。」
陰の実力者になりたくて! 本編の第19話です。
シドとアレクシアにとって、決断の刻、となりました。
基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアも…性癖全開です。
本作ではアレクシアが結構ヒロインしています。もちろん本作での捏造です。
そして、シドにも“ボク”をリスペクトしきれないところができてきました。
繰り返しになりますが、気に入らない方は、そっ閉じ願います。
あと、本文中の仕掛けに気付いた人は凄いです。ご笑覧いただければ幸いです。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。