陰の実力者になりたくて! 本編の第21話です。
ブシン祭編です。ローズ会長の話の続きです。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとの関係も…、ローズ会長も!?
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
ローズ渾身のカミングアウトのあと。
さすがにアレクシアも哀れに思ったのか、強く言ってこなかった。
まだ話は終わってないんだよなぁ…
「ローズさん?」
「ローズ、です。」
「ローズさん?」
「ローズ、です!」
「ローズさん?」
「ローズ、です!!」
…ベータとアレクシアの視線が痛かった。
「ローズ?」
「はい、なんでしょう?」
「そろそろ離れて…「いやっ!」…」
「ローズ?」
「はい、なんでしょう?」
「離れて…「いやっ!!」…」
だめだ、最初に誘拐から助けたときと
困っていると、アレクシアが、ローズの耳元に口を近づけてなにか話し始めた。
「ちょっと、ローズ先輩。」
「…なんですか、アレクシアさん?」
「さすがに私も同情するけど…」
「ふん、勝者の余裕ですか?」
「…そうじゃないけど、このままでもいられないでしょ?」
「それは…そうですけど…」
「話し合いが終わったら、シドと私と一緒だけど時間を作るから。」
「…シドと二人っきりにはしてくれないんですね。」
「それは、少しぐらいなら…考えなくも…ないけど。」
「わかりました。そこは妥協します。」
いや、シャドウの聴力を持ってすれば丸聞こえになるけどさ…。うんうん、アレクシアやさしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
わたしは、アレクシアさんからの提案にうなずいて、シャドウさんから離れた。
一度座りなおしたところで、イプシロンさんが新しく紅茶を入れてくれました。
ゆっくりと口に含む。
「本当に美味しいです。」
「どういたしまして。…続けて大丈夫?」
「はい。」
イプシロンさんがベータさんに眼をやった。
「それでは続けます。『継承の指輪』についてはご存じですね?」
「確か、オリアナ王家で継承されてきた王の証の一つだと…」
ベータさんの眼がわたしからシャドウさんに動いた。
シャドウさんが頷いた。
「では、『黒キ薔薇』についてもご存じですか?」
「それは、十万のベガルタ兵の侵攻によって一時滅亡の危機にあったオリアナ王国が使用し、ベガルタ兵を一夜で全滅させた、という伝説の存在だと。詳細は襲えてもらっていません。」
一瞬間が空いた。
………よろしいのですか? シャドウ様
………オリアナ国王の意向だろう。今はその認識で良しとする
「…その認識で結構です。」
ベータさんの眼鏡が、再度キラリと光を放った。
「その『継承の指輪』をディアボロス教団は──モードレット派は狙っています。そのため継承者となったローズさんの王配と「いやっ!」して…」
そっぽを向いてしまう。とにかく
「
うぅぅっ。シャドウさんが直接言葉にしないで説明してくれる。
「現在、シャドウガーデンでは、ブシン祭を使って、
できれば、オリアナ王国に巣食うディアボロス教団の排除も…と続けた。
「う~んっ…現時点はこれくらいにして置きます。」
ベータさんの後に、イプシロンさんが立ちあがって告げた言葉に驚いた。
「では、この後──昼食後に、一度オリアナ国王に会いに行きましょう。」
思わず眼をぱちくりとしてしまった。
「現在、オリアナ王国からミドガル王都まで移動中なのでは?」
「昼食の時間をしっかりと取っているんです。
そういう文化じゃないですか? と聞かれてしまった。
「その間に、洗脳解除薬の投与、栄養の補給等をガーデンが行っているんです。今回は、そこに紛れ込みます。」
ちょっと早めの昼食になりますが、問題ないですよね? とイプシロンさんがウィンクしてきた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋の窓側にテラスがあった。
──ここは陰の間という、シャドウと七陰専用の場所とのことだった。
城の最上階になるのだろう。周辺を一望できた。まさに絶景を見ることができた。
そこで、シャドウさんの隣…アレクシアさんの反対側に席を取る。
そこに、聖域であった、金髪青紫色の瞳のキリっとした美人の──三英雄の一人、オリヴィエのそっくりさんが、ワゴンを押して現れた。
イプシロンさんがワゴンを引き取って、配膳を始める。
「私はアルファよ。シャドウの手足にして忠実なしもべ、七陰の
「ローズです。よろしくお願いします。」
「時間を優先して、今日は海鮮の冷製パスタとサラダのみよ。」
美味しい…
こんな風に冷たいパスタを食べたことはありませんが、魚介類の旨味が溶け込んだ冷たいスープとあわせてたべる…なんと美味しいのでしょう。
付け合わせのサラダも完食して、イプシロンさんが紅茶を入れてくれました。
「…どうやら、少し落ち着いたようね。」
「ありがとうございます。アルファさん。」
肩をすくめて答えると、
「それじゃあ、オリアナ国王のところまで、ゼータが案内するわ。」
「ゼータ。」「ここに。」
シャドウが声をあげると、間髪いれず背後から返事が来た。思わず振り向いてしまった。
白金の猫の獣人がそこに跪いていた。
「状況は?」
シャドウさんの声が、シャドウガーデンの盟主に相応しい威厳のある口調に代わっていた。
「現在、サイシュウ砦に到着し、アレらの昼食を準備しているところです。」
「見張りは?」
「いつものように対応しています。」
「国王の容体は?」
「洗脳薬の再投与があったようですが、事前に服用させていた解除薬の効果で、意識ははっきりしています。」
「ローズさんの面会のお膳立てはゼータに一任する。」
「委細承知。」
懐から懐中時計?を取り出すと、時刻を確認して言った。
「こちらの用意した服に着替えてもらいます。」
そうして、私の手をとって奥のプライベートルームにつれていった。
「済まないが、こちらの支給する服に、下着から着替えてもらう。脱いだ服はこの籠に整理しておいて。」
籠に入った下着と空の籠を指差された。
「下着を着たら声をかけて。」
そういうと扉を閉めてでていった。
…時間がありません。さっさと制服を脱いで畳んでいく。下着も脱いで、支給品を手に取って驚いた。
なんて手触りがいいのでしょう…なお、当然のようにわたしのサイズにピッタリだった。
インナーを身に付けたところで扉に声をかける。
「素直に着変えてくれてありがとう。その上は…」
ゼータさんが何処からともなくスライムの塊を手にしていた。それがわたしの身体に纏わりついてシャドウさんたちと同じボディースーツとフード付きマントになった。
「これでよし。後は……」
そういって口元以外を隠すマスクとフードを被せてくれた。
「…これでよし。ここからは、666番と仮称で呼ぶから、気を付けてね。」
「ありがとうございます。ゼータさん。」
ちょっと意外そうな顔をすると、七陰とシャドウ様には様付けにもらえるかな? とイタズラっぽく笑いながら言ってきた。
「…わかりました、ゼータ様、シャドウ様のところに戻りましょう。」
「666番…へぇ、素直でいい娘じゃないか。ガーデンに加入したら諜報部隊に入らない?」
「…そうなってしまったときには、考慮します。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋に戻ると、テラスから戻ってソファーに思い思いに座っているところだった。
「じゃあ、仮称:666番、オリアナ国王の健康維持作戦に出動するよ。」
アレクシア。うん、ここで待ってる。1時間も掛からないからアルファと待っててね。うん、チュッ。行ってきます。行ってらっしゃい。
…アレクシアさん…
「
「1小隊は先行して対応中。もう1小隊は、旅の扉の間で待機中。」
「エクセレント! さっさと移動しましょう。」
入ってきたときに使った青紫色の扉を通って、扉のたくさんある部屋に着いた。
そこには、20人くらいの集団が4列に並んでいるところだった。
ゼータ…様が、わたしを前に連れていくと、暫定666番だ、今回のお客さんだ、以上、と手短に説明した。
「ミュー?」
「5分ほど前に小隊が先行して対応中です……オリアナ国王は起きているようです。」
「いつものように、ゆっくり急いでいくよ。行動開始。」
ミューさんが、旅の扉の受付に再確認を取る。
「5番が繋がっています。ガーデンに栄光を。」
「あぁ、ガーデンに栄光あれ。」
そして、振り向くと…
「光学迷彩準備! 」「「「「「ヤボール」」」」」
「盗聴防止準備! 」「「「「「ヤボール」」」」」
「移動先、サイシュウ砦内ガーデンアジト、移動先最終確認!」
えっ! と声があがるところをシャドウ…様に口を押さえられた。
「ここからは、声をたてないで、ね。」
と耳元で囁かれた。
ミューさんが、こちらを向いて
次々と姿を消して音を立てずに扉を通っていく。
ミューさんを残して移動が完了したところで、ゼータ様と、シャドウ様が私の手を取って扉を通った。
そこは、暗い部屋?だった。
石造りの壁と床が見て取れた。粗末なベットが端に置いてあり、そこに…お父様が座っていた。
ガーデンのメンバーが、食事を取らせて、
何か言いたくなる口を押さえ、飛び付きたくなる身体を抑えていた。
すると、お父様を中心に薄い光の膜が拡がったてきて私たちを呑み込んだ。
「よく我慢できたね。もう広域盗聴防止装置を作動させたから、しゃべっていいよ。」
「ゼータ様ありがとうございます。」
そして、ゆっくりとお父様のところに近寄って行った。
「ローズ、私の愛しい娘。」
「お父様…」
「おいで…」
広げた両手の中に飛び込んでいた。
「私の言葉を信じてくれてありがとう。」
そう言うお父様の言葉には力が籠っていた。
でも、この臭いは…
「お父様…」
涙が溢れてきたが、お父様はわたしの頭を一撫ですると、話だした。
「ローズ、もう『悪魔憑き』ではないのじゃな?」
「はい、シャドウ様に解呪してもらいました。」
わたしの頭をもう一撫ですると、しゃべり始めた。
「私の方は情けないばかりじゃ。妻の──レイナのことにも最後まで気付けなんだ。」
…あれはもう王妃でもなんでもない、と断言した。
「もはや
お父様…去年帰省して会ったときよりも、
それに、この甘い臭い…
「情けない父ですまんが…ローズもそのつもりでいてくれ。」
はい、という返事にも籠る嫌悪感に気付いたのか、ゆっくりと頭を撫でてくれた。
「こうしてシャドウガーデンが手を差し伸べて来なければ、もはや正気になることもかなわなかったじゃろう。」
だが…と言う声には力があった。
「私は断固として闘うつもりでいる。ディアボロス教団からオリアナ王国を…国民を守るのじゃ。だから、ローズ、私の愛しい娘。私を支えてくれ。」
「はいっ! よろこんで!!」
ふわりと優しく微笑んでくれた。
あぁ、昔と同じお父様の笑みがあった。
「詳しい話はシャドウガーデンに聞いてくれ。」
お父様は、食事を再開した。
「そろそろ、向こうの食事が半分終わります。」
そうミューさんが報告してきた。
薬です。苦いのぅ。仕様です。洗脳薬は甘いというのに… それも教団の仕様です。
今なんて?
「
それが甘い上に、甘く臭うじゃろ?
ギリッ、と歯を喰い縛った。
魔力が荒ぶるのを…シャドウ様が肩に手を添えて抑え込んでいた。
もう少しの我慢よ。あなたには
そう耳元で囁かれた。
その未来を夢見て、魔力を抑えに掛かる。
おやおや
「どうしました?ゼータ様?」
「君、いいね。その精神性…オリアナ王国解放にも是非とも参戦してもらおうじゃないか。」
「よろこんで。」
とても冷たい笑みで応えられた……と思う。魔力と感情を貯め込んでいく。
「…いいねぇ、君には魔力制御の修行をつけることになっていたんだけど、できるだけ私が見ようじゃないか。」
手を差し出してくる。
「『天賦』のゼータだよ。七陰の
その手を握りしめた。
「仮称:666番です。よろしくお願いします。」
ゼータ様はとてもイイ笑顔で笑っくれた。
アレクシア様よりも、良さそうだ。
本当ですか? 応援してくれます?
ああ、応援しよう。
ここに予想外の師弟関係が成立した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それでじゃな、ドエムも
「お父様…」
笑えない話だった。
もう、お母……レイナさんのことはまともに見れない自信があった。
「そろそろ、向こうの食事が終わります。あとはティータイムですので、潜入班以外は撤収を。」
いったいどうやっているのかわからないが、ミューさんが
「ふぅっ、次に会うときは、ミドガル王都じゃな。おそらく、私はツライ言葉をローズに言うことになるじゃろう。」
もう一度、頭を撫でてくれた。
「だが、私が討伐を指示するまでは、堪え難きを堪え、忍び難きを忍んでくれ。すべてはオリアナ王国のため。」
なに、あと2~3週間のことじゃ。
「そうじゃ。すべてがうまくいったら、ローズ。褒美に婚姻の自由を与えよう。」
「えっ、本当ですか!?」
「無茶苦茶喰いついてくるのう… ドエムを成敗すれば勲一等間違いなしじゃ。二言は無い。」
「その言葉を励みに精進します。」
なお、その時シャドウはミューから報告を受けていたので、この最後のやり取りを聞き逃した。
ゼータはイイ笑顔で、親指を立てていた。
オリアナ国王、痛恨のフラグを建立した瞬間であった。
陰の実力者になりたくて! 本編の第21話です。
ブシン祭編です。ローズ会長の話の続きとなりました。
基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアも、おやっローズ会長も!? 性癖全開です。
本作のローズは、お父様が無事だったので原作ほど追い込まれていません。が、別の才能に目覚めました。
最後に、オリアナ国王がフラグを建立してしまいました。もちろん本作での捏造です。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。