陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第22話です。

 ブシン祭編です。

 ですが、予選参加者が身近にいないため、ローズ会長の訓練話となりました。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとローズとの関係も…

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第22話「獅子の雌伏の日々」

 

 

「そういえば、ブシン祭の予選が始まったのよね?」

 

「うん。もう少ししたら、クレアお姉さまが戻ってくるよ。たしか、予選の四回戦くらいから試合を見るようなことを言っていたよ。」

 

 

 何時ものように、アレクシアと二人で──護衛はいるが──早朝稽古の柔軟体操とストレッチをしている時のことだった。

 

 

「…二人だけでの早朝稽古は、それまでなのね…」

 

 

 しみじみと聞こえてきた。

 

 

「アレクシア…」

 

 

「お、お風呂も、二人っきりじゃぁなくなるのね…」

 

 

「アレクシア…」

 

 

「ふ、ふん、まぁいいわ。でも、デートは毎日するわよ。」

 

「うん。お忍びでのお出掛けデートは難しいから、お家デートになっちゃうけどさ。」

 

 

「…また、アソコにも連れて行ってね。」

 

「ホイホイ、気に入った?」

 

 

「それは……とても……気に入ったわ。

 

 じゃあ今日行っちゃう? いいの? うん。

 

 そうやって、その日の予定を決めながら、早朝稽古を熟した。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 ローズは、起床時間の前に普通に起きていた。

 

 ゼータ様との特別訓練は厳しくて激しいモノだった。

 

 しかし、ガーデンでの修行の最初にイプシロン様から教わった、魔力による疲労回復と睡眠を同時に行う術により、身体に疲労が溜まることは無かった。

 

 

 まぁその分、精神的に削られている風にも思えるが…

 

 

 ローズは、あの日のことを思い返していた。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 ディアボロス教団が、異端認定されたあの日。

 

 

 陰の間で、テレビ?中継なるモノで、宗教国家オルムの大聖堂で行われた主席司教に対する数々の暗殺未遂を見せられて、呆気に取られてしまった。

 

 

 ──特に、最後の大司教による暗殺未遂など、一連の過程をいくつもの角度で見せられて、何度か見直していた。

 

 

 ……そう、画像の記録すらできているのだ、そして、一番良く見えるものを決めると、普通の(白黒の)写真で取り直して、決定的瞬間として新聞会に提供するという。

 

 アルファ様とイプシロン様が、大司教が仕込針を抜いた瞬間の映像を選んでいた。拡大縮小して画角を決めていた。

 

 

 その隣りに光学迷彩をしたゼータ様が立っているなんて信じられなかった。

 

 

 でも、身体で隠しながら一気に刺しに行ったところで、まるで手を添えられて導かれるかのように方向が変わったのだ。

 

 

 見えていないはずなのに、シャドウ様はゼータ様の手腕を褒めていた。

 

 本格的に刺すために力を入れる一瞬前に干渉して、力の向きを変更している、大司教は自分に刺さるまで気付かなかったと思うよ、とのことだった。

 

 

 その後、大司教を映していた画面が一つを除いて周囲を映し始めた。

 

 大司教が血の泡を噴いて倒れたとき、驚愕している人たちの中に何故!?という顔をしているものが幾人も見て取れた。

 

 

 それらの顔が拡大されて記録されていく。

 

 

「多分、主席司教に神罰が下った!! とでも言って暗殺を正当化しようとしていたのでしょうね。その為のサクラだったのでしょう。」

 

 アルファ様が黒い笑顔で教えてくれた。

 

「この映像は情報部隊(インテリジェンス)も記録しているわ。今度は今回の暗殺未遂やサクラだった彼らを使って、反ディアボロス教団の動きを、絶えず広げていくように燃料を追加していくわよ。」

 

 オリアナ王国もその一環に加わってもらうからそのつもりで、そう言われた。

 

 思わず、唾を吞み込んでしまう。 

 

「それは…オリアナ王国のためになりますか?」

 

 

「そこは、あなた次第よ。」

 

 ふふん、と鼻で笑われてしまった。

 

「ただ、シャドウガーデンによる真の世界平和を実現する過程で、オリアナ王国に巣食う教団──ラウンズ第7席モードレットを打破していくことになるわ。そのときに観客として観ているのか、自ら陰に立ち向かうか……」

 

 

「今のローズには無理だけど、修行ならガーデンで付けてあげるからね。」

 

 

 シャドウガーデンは決して甘い組織ではない。

 

 構成員のほとんどが元悪魔憑きで、悪魔憑きを見捨てはしない。

 

 ディアボロス教団を恨んでいて、世界を変えようとしている。

 

 

『私は断固として闘うつもりでいる。ディアボロス教団からオリアナ王国を…国民を守るのじゃ。だから、ローズ、私の愛しい娘。私を支えてくれ。』

 

 お父様は闘う道を選んだ。私も…

 

『そうじゃ。すべてがうまくいったら、ローズ。褒美に婚姻の自由を与えよう。』

 

 私も…(赤面)

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 その後、とても上機嫌なゼータ様と、イプシロン様とで修行の日程を…といっても、当面の間このアレキサンドリア──シャドウガーデンの拠点に泊まり込むことになったので、その為に必要なものと移動方法を教えてもらった。

 

 

 対外的には、ブシン祭に向けて独りで山に籠もって特訓する、となった。

 

 

 その方が、ドエム派の監視を逃れることができるし、早く着いた場合にも顔も合わせなくてすむ。

 

 最後に、シャドウと誓約魔術を結んで終わったのだった。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 そろそろ起床時間だ。仮称:666番として、日常生活はガーデンの構成員(メンバーズ)の下士官教育を共に受けている。

 

 

 同室に人がいる、というのも初めての体験で、少しうれしい……と思えるようになるまでに一週間はかかったが。

 

 ちょうど、同室の664番と665番も起きたようだ。起床ラッパに合わせて起きて、寝衣から下着を変えて、メタルスライム・スーツに着換えて、ベットを整える。

 

 互いの服装をチェックしてから、部屋の外で下士官教育の教官である『π』(パイ)の点呼を受ける。

 

 

 朝の基礎訓練が始まる。柔軟体操にストレッチをして身体をほぐすと、魔剣士の速さでアレキサンドリアを一周する。なお、身体は一番硬くはなかった、とだけ言っておこう。

 

 アレクサンドリアは広い…最初は途中で魔力が切れてしまって迷惑をかけてしまった。

 

 

 魔力制御とかは正直レベル…というか段階が違っていた。

 

 これまでの魔力操作は…赤ちゃんが転がっているか、ハイハイかヨチヨチ歩きをしているに過ぎなかった。

 

 ここでは。身体の複数の箇所でそれぞれ異なる強さで動かして、それをまとめて連動させて制御して動いている。つまり、歩いて、走って、止まって、跳ねているのだ。

 

 使用されている魔力量は極々わずかで、要求される制御には何倍もの緻密さが要求される。

 

 

 下士官候補生となった同室の二人に比べても差が大きかった。

 

 同じ班になったメンバーには申し訳なかったが、そこのところは『事情持ち』の教官の一言で不問としてくれている。しかしなにおっ、と精進しているところだ。

 

 

 早朝の訓練が終わったところで、順番に急いでシャワーを浴びる。髪の毛の量が多いので、少し大変だ。さっさと汚れを落として、それを魔力で乾かしていく──これのやり方も最初にイプシロン様が教えてくれた。まだ、しっとりとして、しっかりと乾かす、というのはできないでいる…

 

 

 朝食を食堂で取る。

 

 ガーデンでは食べるのも訓練ということで、食事の最低限の量が決められていたのには驚いた。

 

 まぁ訓練の内容を考えると、確かにこれくらいは必要なのだろう。気持ち身体がスリムになったようにも思える。

 

 

 食休憩のあと、下士官向けの座学の時間が、わたしの特別訓練の時間となる。

 

 今のわたしに足りない部分を、ゼータ様と…不在の時はイプシロン様によるマン・ツー・マンの修行で補ってくれる。

 

 なんというか、意外と感覚派らしく、指導に擬音と指示語が多いのだが、それがわかってしまう自分にも慄いている。

 

 

 そして『氣』の運用も習っている。

 

 

 氣を込めて戴天流の套路をするゼータ様の動きを見たときは、涙が出てきてしまった。

 

 あのときの…シャドウ様(スタイリッシュ盗賊スレイヤーさん)の美しい剣技を再び見ることができて、感無量だった。

 

 実際、ゼータ様の氣も昂ってしまったようで、輪郭が後光をさすように光っていて幻想的だった。

 

 

 その後、実際に氣を巡らせて教えてくれたのだが…筋はいいそうだ。ただ、ちょっとゼータ様とイプシロン様が焦っているように見えたのだが…

 

 ─ちょっと、氣の…私たちの氣の通りが良すぎやしないかい?─

 

 ─解呪するとき、シャドウ様、膨大な氣と魔力を込めてたから─

 

 午前中の特別訓練を終えてから、昼食の時間となる。

 

 

 実のところ、最初の方は、この食事が一番きつかった。

 

 いや、本当にゼータ様とイプシロン様の修行って、キツイのだ。

 

 毎回、きっちりと現時点での限界を見極めて、そこから少し先を要求してくる。

 

 それに修行内容も独特だ。

 

 例えば、魔力制御の訓練にということで、壁や水上を歩けと言ってきたときには驚いたものだが、今では緻密になった魔力制御により走ることまで可能となってきているのだから。

 

 

 魔力制御も筋がいいとイプシロンさんに褒められているし。

 

 

 それでも、まだまだ先は永い。ゼータ様は壁や水面を飛んだり跳ねたりできるし、普通に天井(・・)まで歩く。

 

 …天井を歩くには、氣を使った軽身功が必要とのことだが、そこまでくると、空気中のチリを足場にして移動できるようになる、というのだ。

 

 

 つまり『女神の試練』でシド…さんが見せてくれた超絶謎機動って…

 

 

 まぁ何とか腹に詰めて、食休みのあとに、教官による戦闘訓練となる。

 

 午前中は新兵たちの訓練を見ていた『λ』《ラムダ》教官も、座学を別の教官にゆだねて、午後から戦闘訓練に加わってくる。

 

 

 ここでは一部だけ下士官候補生の訓練への参加が認めらている。

 

 それが『氣』の訓練だ。

 

 氣については、新兵の時に、ラムダ教官から、初歩の初歩を習うらしい。そして、筋のいいものについてはシャドウ様が特別に見てくれる、とのことだった。

 

 そうして、新兵の時に、初歩の初歩について習った後は、通常の訓練で初歩について手ほどきを受けるようになる。

 

 さらに、上位メンバーになるためには、氣の修得が必須のため、この下士官教育で氣の初歩から基礎と、ちょっとした応用くらいまでを習うのだという。

 

 なんていうか、教官が氣を込めた布が剃刀のごとく切れ味を発揮するのにも驚いたし、木剣──木刀と呼んでいた──で斬鉄できてしまうことにも驚いた。

 

 それに、ゼータ様が特別に氣殺して見せてくれたのだが、眼の前にいるはずなのに消えたかのように感じでしまって、訓練生一同で周囲を見廻して探す、という一幕もあった。…実際は一歩横に動いただけだった。

 

 シャドウ様になると、気配の残滓を残して、自分の気配を断絶──それも、己の心臓の鼓動さえも制御してみせる、絶技に限りなく近い妙技ができるというのだ。

 

 光学迷彩なしで、それくらいできてしまうという。

 

 氣の訓練が終わると、また、ゼータ様によるマン・ツー・マンの特別訓練だ。

 

 くたくたになるまで、氣と魔力の制御と行い、身体を動かす。

 

 そして、くたくたになってからが本番! となるのだ。

 

 

 お父様へのドエムの所業を思い出して、心に怒りを貯めていく。

 

 元母親兼王妃(レイナ)と共謀して洗脳薬を飲ませて傀儡とし、さらに、王位継承権を求めてわたしにまで手を伸ばしてくる、最低を通り越した気持ち悪い相手。

 

 

 しかし、ガーデンの情報によると、ドエムはそれなりの剣技を持っている、とか。

 

 ドエムを討つためにも、剣を、魔力を、氣を…心を研ぎ澄ませていく。

 

 

「やっぱし、いいねぇ。」

 

 ゼータ様?

 

「なんでもないよ。じゃあ、この状態から、もう1セットやってもらおうか。」

 

「くっ……。行きます!」

 

 

 こうして昨日の限界を今日超えていく、そして明日には…

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 訓練が終わると、夕飯の時間となる。

 

 ボリュームたっぷりであるが、身体が欲しているのか、(むさぼ)るように食べる。

 

 

 食べ終わって、落ち着いたところで、少し身体を見廻してみる。

 

 …わたし、この2週間くらいで、少したくましくなってきたような… でも、スリムにもなっているし…

 

 

「そりゃあ、身体を作るための食事だからね。」

 

 

「ゼータ様?」

 

 

「『陰の叡智』に、運動とか身体に負荷を与えた後に食べる、身体を作るための食事、とかあってね。」

 

「そんなのあるんですか?」

 

「あぁ、これを食べるのと食べないのでは身体づくりの速さが全然違う。」

 

 

「…それで、食事の最低限の量が決まっているのですか。」

 

「ちなみに、上限もあるんだけど、そこまで食べた猛者はデルタ以外ではいなかったね。」

 

 そのデルタも近頃は落ち着いてきたからね、とウィンクされてしまった。

 

 

 デルタ様……獣人の漆黒の人。

 

 聖域で見た、ネルソン大司教代理の分身を暴力で虐殺した…

 

 

 でも、今思うと、確かに氣と魔力が制御されていたことがわかる。

 

 

「飲み物一つを取ってもぜんぜん違うでしょ?」

 

「スポーツドリンク? でしたっけ。ちょっと酸っぱ甘くて最初はびっくりしました。」

 

「ただただ激しい鍛錬をしても無意味だからね。」

 

 

 ─忘れてはいけない。イプシロンの社交教育*1で壁を登るような特訓をアレンジした一人であることを─

 

 

 食後の休憩を取ってからは、大浴場でのお風呂となる。

 

 温泉があるようで、そこでゆっくりと身体の疲労を抜いてゆく。

 

 

「大丈夫? 悩みがあるなら相談して。」

 

 同室の664番は小柄なエルフだが歳は一つ上らしい。真面目で責任感が強くて、この班の班長を任されている。

 

「そうだよ~、666番ちゃん。」

 

 もう一人同室の665番は、のんびりとした性格で、良く何かを口にしている。

 

 

 二人とも美しい少女だが、表の世界でならば、一流の…その中でも上位の魔剣士として通用する実力があるだろう。

 

 それが、まだ下士官候補生だというのだから、どれほどガーデンの層が厚いのだろうか… 

 

 

「いえ、大丈夫です。」

 

「…そう。」

 

「あっ、あの本当に大丈夫なんです。シャドウ様やアルファ様に配慮してもらってますし…」

 

「そう…なの?」

 

「はい。」

 

「ゼータ様やイプシロン様が訓練を見に来ることは少ないからねぇ~。ホントにそうなのかも?」

 

 

 生徒会長でもない、オリアナ王国王女でもない、ただの同僚という気安い関係を持てることが嬉しかった。

 

 

 お風呂上りに談話室でお茶を飲みながらわいわい話す。

 

 今回の下士官教育は、全部で13人だ。

 

 エルフが10人に、獣人が2人、人間がローズ1人、という構成だった。2分隊(5人×2)+1班という構成だ。

 

 

 ガーデンでは、適正に応じて『強襲』(アサルト)『情報』(インテリジェンス)『諜報』(シークレット)『清掃・救出』(クリーナー/レスキュー)『科学・医療』(サイエンス/メディック)から一つ以上を取得することになっているとか。

 

 もちろん内家戴天流剣術は必須技能となっている、とのことだ。

 

 

 あの美しい剣術を学べるなんて…と喰い気味に反応したところ、シャドウ様に七陰も、内家戴天流の修行に北の訓練施設を訪れるらしく、早く士官になって、内家戴天流の修行に参加したい、とのことだった。

 

 わたしは習ってもガーデンの外では使えないため、そこまで戴天流剣術の訓練は受けていないこともあり、とても羨ましく思った。

 

 

 戴天流剣術は、氣を使えるようになると見えてくる世界が違う、とのことなので、さらに美しい剣があるのか…と思うと、是非とも見せてもらいたくなってくる。

 

 

 すでに、ブシン祭の予選が始まっている。

 

 本戦出場者32人──内、4人は学園選抜なので、残りの28人を決める予選に2週間かかる。

 

 

 本戦の始まる前には戻らないといけないので、あと2週間…

 

 アレ(ドエム)は、本戦前には到着するようなので、ギリギリまでここで修行をするつもりだ。

 

 下士官教育は、13週あるという。その中の4週だけお邪魔させてもらうことになるわけだが、ブシン祭が終わった後も夏休み中はお邪魔したくなってくる。

 

 …いや、オリアナ王国での教団との闘いが待っているかもしれない。

 

 

 そして、消灯時間が来て、部屋に戻って就寝…魔力による疲労回復と睡眠を同時に行う術の実践をすることになる。

 

 

 これが、ブシン祭本戦までの日常であった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「で、クレアお姉ちゃんにどう話すか決まったのー?」

 

 

 その日の午後、寮で昼食を食べた後、シドの自室からシャドウ・ゲートで旅の扉の間を経由して、陰の間に移動してきた。

 

 ベランダでシドが入れてくれるお茶で一服していたところ、パチモンのシド──レミーがお茶菓子を持って合流してきた。

 

 アレクシアは、このおじゃま虫め、という視線を隠すことなくレミーに向けている。

 

 

「それは…」

 

 珍しくシドが言い淀んでいる。

 

「もう来週には王都に戻ってくるんだよー。いい加減覚悟を決めたらー?」

 

 

「…でも、ちょっと怖い。私が、私とぼくの二人に増えました…って、それも『悪魔憑き』になりそうになって自力で*2覚醒したときに分裂しました…って。」

 

 

「そこのところは大丈夫だと思うんだけどねー。」

 

「シドにとってクレア義姉様(お姉様)は特別なのね。」

 

 うん。そう素直に頷くシドだった。

 

 シドー、アレクシアのクレア義姉様(お姉様)のアクセントに気付こうよー

 うるさいわねっ、レミー。クレア義姉様(お姉様)呼びのどこが悪いのよっ!ー

 

 

「アレクシアには、詳しく話したことが無かったよね。」

 

 ちょっと上を向いて懐かしそうに話し始めた。

 

 

「あれは、私が調子に乗って、氣と魔力による自分の身体の魔改造を開始したときのことなんだけど…」

 

 氣で肉体を強化しながら、魔力を超圧縮していたところ、ある一線を超えてしまったのか、いきなり魔力が大暴走してしまったの。それだけではなく、肉体が細胞レベルで増殖・暴走・壊死し始めたの、と。

 

「当時は『悪魔憑き』なんて知らなくて、とにかく魔力制御をして魔力暴走を抑えようと必死だったわ。」

 

 

 …ちょっと待って。ということは…

 

 

「そう、アレクシアの考えた通り、魔力の過剰な圧縮や──体内の魔力が飽和することで『悪魔憑き』になる危険性があるの。でも、それ以外でも発症することがあるから、原因の一つでしかないよ。」

 

 アレクシアの想像している魔力の圧縮とかのレベルではぜんぜん無理だからね、安心していいよ、と教えてくれた。

 

 いったいどれくらい圧縮しようとしたっていうのよ、まったく…

 

 

「当時3歳だったんだけど、残念ながら自分一人ではどうにも制御できなかったんだ。…そこで自棄になって、『もう一人自分(・・・・・・)がいれば協力してなんとかなるのに!』…って死ぬほど思っんだ。」

 

 それに『陰の叡智』で万脳細胞っていう概念を知っていたのも大きかったし、身体が三歳と小さかったことも大きかったと思うんだ、と告げた。

 

「なんと暴走した細胞からもう一人の自分ができていたんだ。で、訳が分かんないけど分身(もう一人の自分)ができて、二人分になった魔力制御能力を駆使して、魔力を制御して、抑制して、暴走して、を繰り返しながら、自分(主観側)の肉体を元の自分の体になるように、自分(分身側)で見ながらコントロールして──なんとか人型に鋳造したの。」

 

 

「それのどこにクレア義姉様(お姉様)が関係しているの?」

 

「例えば、アレクシアって、自分の身体の隅々まで立体的に思い描くことができる?」

 

 全身鏡とか無い状態で、だよ。と聞いてきた。

 

 

「…ちょと難しそうね。」

 

「うん、私には無理だった。だから、魔力制御が完全じゃなくて、三日三晩高熱でのた打ち廻っているときに、私の右手をずっと握って必死に看病してくれた当時五歳だったお姉ちゃんの身体を魔力でスキャンして、お姉ちゃんより少しだけ幼く肉体を調整したなの。姉妹だけあってよく似ていたから。」

 

 それに、お姉ちゃんが口移しで水分や食べ物を補給してくれたおかげで生き残ることができたし、と告げた。

 

 

「そう、命の恩人でもあるのね…。」でも口移しなんて羨ましいわ

 

 

「そうだねー、ぼくの自我って、このシドが魔力暴走を起こしてクレアお姉ちゃんに手を握ってもらっていたときに、ベッドの下で一緒に魔力制御をしながら「うらやましいなぁ…」っていう思いから始まっているんだー」

 

「えっ、それ聞いたの初めて…」

 

「あれっ? 言ってなかったっけー? だからお姉ちゃんが大大大好きになったんだよー」

 

 わいわいがやがや

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

「というわけで、できるだけ隠し事はしたくないけど、巻き込みたくもない、という感じなんだ。」

 

 

 アレクシアはちょっと頭痛が痛い感じがした。

 

「そう、これが『悪魔憑き』の解呪を自力で為した裏話かと思うと、微妙な気持ちになるわね。」

 

 シドが慌てて付け加えてくる。

 

「一応、七陰は知っているんだけど、他には言わないでね。」

 

 いわないわよっ! うん、ありがとうアレクシア。 ど、どういたしまして。

 

 

「じゃあ、クレアお姉ちゃんにぼく(レミー)の存在と、入れ代わりのことは言っていいんだね。」

 

「うん、シャドウガーデンのことは、『悪魔憑き』を助ける陰の組織、ということで誤魔化されて…くれるかなぁ…」

 

「そこはぼくに任せてー。帰ってくるまでの1週間でいろいろと考えておくからー。」

 

 

「今一つ信用できないんだけど…」

 

「ひどいなぁ、同じシドじゃないかー。悪いようにはしないからー。じゃあ、戻って来た次の日辺りでいいかなー?」

 

「うん、その日は開けとくね。」

 

 ホイホイ、といってレミーは出て言った。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

「やっぱり、シドとは違う人なのね、レミーって。」

 

 

 まあ、自我を持っている以上はね。

 

 

「…これまでも入れ代わっていたのよね?」

 

 

「そこはごめんなさい。恋人になる前までは、日常生活は50%レミーでした。ちなみに夕方以降は80~90%レミーだったのだけど。あと、こ、恋人になってからは80~90%以上私だったから…」

 

 

 ちょっとアレクシアが頭を抱えている。

 

 

「えっ、どうしたの? 頭痛?」

 

「…恋人の入れ代わりに気付いて無かったっていうのが少し…」

 

「あぁ、レミーの時には私との違いを大きくみせてくれるけど、本質的には元は一人だから。」

 

「…次からは気付いて見せるわ。」

 

 

「アレクシア…」

 

 

「ま、間違って、キスとかしたくないじゃない。」

 

 

「アレクシア…」(赤面)

 

 

「でも、受け入れてくれてありがとう。大好き、アレクシア。」

 

「私も同じよ。」

 

 そして、私はアレクシアからの深いキスを受け入れたのだった。

 

 

 

 

*1
─七陰列伝 第17~18話参照─

*2
─当時レミーの自我が無かったので、協力してというより二人分の自力でとなる─





 陰の実力者になりたくて! 本編の第22話です。

 ブシン祭編です。

 ですが、予選参加者が身近にいないため、ローズ会長の訓練話となりました。

 基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアにローズも… 性癖全開です。

 ブシン祭の本戦の人数や日程や、ガーデンの科学力(基本大抵スライム使用)と訓練については本作での捏造です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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