陰の実力者になりたくて! 本編の第24話です。
ブシン祭編です。
ようやく本戦が始まって…ません。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとローズとの関係も…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
ブシン祭の予選が終わる数日前に、ドエムらオリアナ王国来賓団は、ミドガル王都に到着していた。
国賓の宿泊する最上級のホテルの中で、ドエムは苛立ちを隠せずにいた。
第一に、ディアボロス教団のことがある。
まさか千年の永きにわたり歴史の陰で君臨してきたディアボロス教団の名が、表に出るだけでも異例のことだというのに。
それが、聖教に異端認定されてしまったのだ。それも、最上位の聖戦として。
聖戦となってしまった以上、『世界の敵』として認定されており、取り締まりは強化されている──この場合、聖騎士や司教、異端審問官の裁量に置いて、即断されてしまう。
さらに悪いことに、表の世界で高位にある教団のものが、これを利用して、対立派閥を排除しようとして、そこをつかれて、逆に排除されてしまったのだ。
これが繰り返され、もはや、聖教の上層部は、教団と関係の無い清貧なものが多数派を占めている。
残ったものは保身に入っているが、いつの間にか情報が漏らされており、世間の教団への嫌悪感、忌避感を高め続けている状況だ。
オリアナ王国とて例外ではない。
ドエム派閥の重鎮の中に、教団との関与を疑われているものも出てきている始末だ。
オリアナ国王を押さえているとはいえ、自分の出自──ケツハット家に養子で潜り込んでから成り上がるまでのことを考えると、他人事ではない。
はたして、このままオリアナ王国を乗っ取り、その成果をもってラウンズ第12席になる──現時点で内定している──ことが最善なのだろうか…
いや、ラウンズとして得られる永遠の命に優るものはない……はずだ。
第二に、ローズ・オリアナのことがある。
この数週間山篭りと称して、王都を離れているのだ。行方はしれない。
週に一度は着替えの交換に寮に顔を出してはいるようなのだが、手の者に後を付けさせたが、これまで一度として成功していない。見失ってしまうのだ。
魔剣士としては、できる方ではあったが、これ程の実力は無かった……はずだ。
学園選抜枠に入ったとはいえ、所詮三位でのことだ。
聞けば、一位と二位など、木っ端男爵の令嬢姉妹がとったという話だ。質が低下しているのだろう。
さらに、到着する日を事前に連絡していたというのに、父親のところに挨拶にも来ない。
これまでの様子から行くと、本戦当日に会場で会うことになってしまう。
婚約の件を伝えることなど、仕込みの時間が必要だというのに、勝手気儘に動いている。
そう思うだけで、苛立ちが増してくる。
ドエムが苛立って貧乏ゆすりをしながら、ぐちぐちと愚痴るのを、一見ぼーっとした虚ろな表情の裏でほくそえみながら、録音?する魔道具で記録しているオリアナ国王だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ねぇ、シド?」
「なに、アレクシア?」
「そろそろ本戦だけど、シドとクレアさんの準備はいいの?」
クレアお姉さまが戻ってきて、三人で早朝稽古の柔軟体操とストレッチをしている時に、アレクシアが聞いてきた。
クレアお姉さまがチラリと私に眼をやると、溜息を付きながら言った。
「ふぅっ、…シドとお揃いの騎士服を作ろうと思っていたのよ。」
「あぅっ、その…ごめんなさい。私がお揃いの騎士服を作ろうって先に言ったので…」
上眼使いでクレアお姉さまに謝るアレクシアがいた。
「あら、そうだったの、シド?」
「…恥ずかしいから内緒にしていたのに…」
だって、恋人にお揃いの着よっ! って言われたら着たくなるよね?
「あら、いつの間にか稽古着もアレクシアとお揃いなのに?」
他にも、お揃いの小物とかも持っているじゃない、と言われてしまった。
「それは、その通りなんだけど……その…ガーデンで飼っている魔物の糸を使った防刃繊維を使って作っているの。」
アレクシアは眼をぱちくりさせた。
「これって、恋人になってからミツゴシでお揃いを買ったのに?」
「…その時点でガンマに仕込んでもらったの。アレクシア誘拐されたし、安全性を考えて。」
シド…。アレクシア。好きよ。私も好きよ。う~ん
ゴッホン!
「あっ。ご、ごめんなさい。クレアさん。」
「…二人が熱々なのはわかっていたけど、人前では節度をもってね?(圧)」
今夜もたくさん鳴かしてやる…眼がそう言っていた。ぶるっ、レミーに押し付けよう。
「その服も、今日くらいにはミツゴシに納品される予定だから、午後はミツゴシで買い物デートにしよう、いい?」
「いいわよ。」
「…あと、クレアお姉さまの騎士服とか稽古着に制服とかは、すでにその布製に換わっているからね。」
「? 普通にお店で既製品を買ったか、作ってもらったものもあるけど?」
「それを洗濯の時に採寸して入れ換えていたの。」
「入れ換えた後の服は、レミーが大切に保管しているから。」
「あらあら、うふふん。」
「ふぅ~~ん。そうなんだ。へぇ~~つ。」
「…アレクシア。さすがに王宮の服を入れ換えるのは無理だからね。」
「ふぅ~~ん。そうなんだ。へぇ~~つ。」
「…こんどお気に入り服を持ってアレクサンドリアに行こう? そこで複製してもらうようにするから。」
「…シドの分も作ってくれる? お揃いじゃなくても色違いとか、模様違いとか…」
「うん。全くのお揃いもいいけど、同じデザインとかもいいかも。」
「あらあら、うふふん。」
クレアお姉さまの眼が鋭くなっていた。──今夜はとってもたくさん鳴かしてやろう、と。
ぞくっ、背筋を冷たいものが走った。うん。夕方からはレミーに押し付けよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日、ガーデンの下士官教育の場で、一人が略式ではあるが卒業を迎えていた。
「666番」
「はいっ! パイ教官殿。」
「本日を持って、貴様は特例で卒業する。」
「はいっ! 教官殿。」
「事情を持ちの貴様には、特に困難な任務が待っていることだろう…しかし、ここで学んだことを決して忘れること無く、死力を尽くして任務にあたれ! 生ある限り最善を尽くせ! 決して無駄死にをするな!」
そして、やさしい眼をして言った。
「そう、いづれディアボロス教団のすべてがシャドウ様の神の火で消える、そのときまで…」
「はいっ! 教官殿。」
「あと、任務中で来れなかったゼータ様とイプシロン様から、手紙を預かっている。あとで読むように。」
そう言って、手紙を二通渡してくれた。
「卒業、おめでとう666番。」
「そうだよ~、おめでとう666番ちゃん」
「664番さん、665番さん、ありがとうございます。」
「私たちはあと4週間残っているから、卒業したらどこかで会いましょう。」
「そうそう、任務で会うかもしれないし~、休暇に会いに来てもいいよ~。」
「はいっ。その時はよろしくお願いします。」
「そうそう、卒業と特殊任務遂行に当たり、支給品が供与される。あと、アルファ様がお呼びだ、城の執務室に1500に出頭するように。それまでは交流を存分に楽しめ。
△▼△▼△▼△▼△▼
アルファ様、666番が出頭して来ました。入室を許可する。はっ、666番通ってよし。
「666番です。アルファ様に出頭するように命令されてきました。」
「…すっかり、板に着いたわね。ソファーに座ってちょうだい。」
執務室の応接用のソファーに移動して向かい合って座る。
「さて、ドエムを倒すくらいの力は付けれた?」
「…死力を尽くします。」
満足したようにアルファは頷いた。
「そう、では、仮称:666番、あなたを、ガーデンの
「…
「さらに、
「そして、あなたには、これらを支給するわ。」
そういって、手に持った2つのブレスレットを見せる。
「先ず、左手首の
はいっ、と2つを無造作に渡された。
「アイテムボックスとメタルスライム・スーツとメタルスライム・ソード、それ以外にも、緊急用シャドウ・ゲートも入っているわ。そして右腕用が青い線のあるやつで、光学迷彩・盗聴防止結界に、メタルスライム・通信も付いているやつよ。」
「…それって、ガーデンの機密では?」
「ゼータとイプシロンの推薦もあったわ。あなたにメンバーズ相当の待遇を、ってね。二人に信用されたのね。」
シャドウ・ゲートへの認証もしてあるでしょ? と聞かれた。
「はい、してもらいました。」
「なら、そういうことよ。」
「他にも、ガーデン特製の防刃性の高い服──制服とかアンダーウエアも入っているわ。メタルスライム製の服やアンダーウエアが使えないときに使ってちょうだい。」
私は古い方の
「前の方から今のやつに着替えとかを移して。ブレスレットを接触させるとできるわ。」
アイテムボックスと念じると、リスト見たいなのがわかったので、私物を移していく。
移動はあっと言う間に終わってしまった。
次いで右腕にもつける。メタルスライム製のためか、手にぴったりのサイズに変わってくれる。
………通信はこんな感じよ。
右手から頭に響く感じで、アルファ様の声が聞こえた気がした。
………えっと、こんな感じでしょうか?
右手のブレスレットに込める感じ、でしょうか…
「ええ、いいわ。明日から、ブシン祭の本戦が始るわ。1回戦16試合がほぼ一日かけて行わる。多分試合後に、ドエムと国王と面会する時間を取られているはずだから、我慢してね。」
「…はいっ。」
「国王は、本戦2回戦から来賓として参加する予定だから、事が起きるとすると、2~3回戦辺りになるでしょう。」
そして、とっても不本意そうな顔になって言った。
「一応、
アルファは本当に嫌そうな顔をしている。
「…
いや、見ればわかる、って言われても…
その後、何度か聞きだそうとしたのだが、決して答えてくれませんでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ブシン祭の開催は厳かに行われようとしていた。
私は、アレクシアとお揃いの騎士服を着ていた。
もともとはアレクシアの騎士服を──王族の騎士服をベースにしている。
色は、濃い紫色から紺色を基調に変更している。服の裾とか襟の所々を金色ではなくて白銀と赤色──アレクシアの髪と瞳の色──の装飾が入っている。
首元は白いワイシャツに紅いタイを捲いて紅玉の留めでとめている。さらに上着の前面はダブルになっていて下は開いていて、後ろの裾は長くなっている。下は上着と同じ色のズボン・タイプで、足元は、編み上げのブーツの上から脚甲を付けている。
なお、腕についている部隊証には、紅の騎士団のエンブレムが入っている──予備役とはいえ入団しているからね。
ちなみに、アレクシアの方は、デザインが一緒で、装飾の色が黒と紅い色──シドの髪と瞳の色──となっている。リボンの色は紅い色だが、タイは赤色だ。何故かというと──
学園の制服で会場に着いてから、選手控室でアレクシアと一緒に着換えたのだが……アレクシアのテンションがひたすら高かった。
そして、タイを絞めてくれたのだが、そうだ、ここだけ入れ換えましょう、と言って、アレクシアの紅い色のタイと交換したのだった。なので、アレクシアのタイは赤い色なのである。
アレクシアはルンルンだった。
…控室から出た時の周囲からの生暖かい視線に欠片も気付いていなかった。
なので、私も知らんぷりしていつものようにアレクシアと手を絡めてから繋いで待合室まで歩いて行った。
時間より、少し前に着いた待合室には、8割がたの選手がそろっていた。
先に着いていたクレアお姉さまを見つけて挨拶する。クレアお姉さまは、紺色のショートブレザーだった。下にブラウスとグレーのベストをつけて、紅い色のボウタイを捲いている。上着と同色のプリーツスカートに黒タイツを履いていた。
ジロジロと私とアレクシアの服を見た後で、熱いわね、と言われてしまった。
なお、それでますますアレクシアのテンションが上がってしまって、選手たちの注目を浴びてしまった。
そう見えます? タイだけ交換したのね。わかっちゃいます? 赤に紅って意外に目立つから。そうですか? ちょっと照れます…
わいわいがやがや
さすがに、アレクシアのいるところでは、文句は付けれないようで、けっ、という顔をしているものと、鋭い目で見てくるものがいた。
後者の方は──あの青い髪の人は…『女神の試練』のときにいた、アンネローゼさん?じゃないかな。隣にTHE 悪役プロレスラー見たいな人がいるけど…。それに上半身裸の人とか、もう泣いているじゃん。
あと、金ピカに眩しい人もいる。
そして、集合時間になる直前に、最後の選手として、ローズ会…ローズがやって来た。
係の人に遅れてすいません。と挨拶しているので、手を振った。気付いたローズ…がこちらにやってくる。学園の制服を着ているローズは、個性豊かな服を着ている選手の中では目立っていた。
そして、私とアレクシアの服を交互に見た後で、羨ましいです、とポツリと言った。
「いいでしょう。」
それに悪びれずに自慢するアレクシア。そこがアレクシアらしくてかわいい。
「…シドさん、今度お揃いの服を作りませんか?」
「はっ、どういうことよ。」
つーん
瞬時に沸騰するアレクシアをなだめる。
「はいはい、もう時間だから、アレクシアは貴賓席に戻って、私の闘いを見守っていてね。」
軽く額にキスをする。
アレクシアはようやく落ち着いたのか、私にふわりとキスをすると、ウィンクをして颯爽と護衛と出て行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それでは選手入場です。」
なんとなく学園選抜枠の四人で固まって行動していた。
最後の一人は、準決勝で私が下したクリスティーナ・ホープ先輩だ。たしか公爵令嬢だったはず。
私たち学園選抜枠の4人は、16試合ある第一回戦を4つの組に分けるて見ると、違う組に別れている。
…つまり、もう一度闘うためには準決勝まで勝ち上がる必要がある。
ブシン祭の会場となっている闘技場は、観客で満員だった。
今日は七陰もヴァイオレットさんを連れて観客している、と言っていた。
ミツゴシ商会でメインスタンドの一角を押さえている、とのことだったので、そこを見るのが楽しみなような怖いような。
「一回戦 第2試合 アンネローゼ・フシアナス選手と、シド・カゲノー選手の入場です。」
鮮やかな青色のベガルタ風の簡易甲冑を身に着けた、アンネローゼさんとともに、入場門から闘技場のメインスタンド前に作られた簡易ステージに上がる。
オォォォォーーーーー!!!!!
闘技場の観衆のボルテージがあがった。アンネローゼ選手の人気が高いようだ。
観客に手を振りながらメインスタンドを見ると…
居たよ。
ガーデン一行が、メインスタンドのほぼど真ん中を陣取っていた。たしかにメインスタンドの一角ではあるけどさぁ。
たしか、ガーデンの
それに、ミツゴシ商会の面々もいるので、300人くらいは関係者になるのだろうか…
現実逃避気味に視線を上に上げると、メインスタンドの貴賓席で、これまたテンションの上がっているアレクシアを見つけた。
ウィンクしながら片手で投げキッスを飛ばすと、両手で投げキッスを返してくれた。
…隣に座っているアイリス様が、頭が痛そうな顔をしていた。悪いことしちゃったなぁ。
ヒューヒュー!! キャーー!!
指笛を鳴らして囃し立てる音が響いた。
ふと視線を感じたので見ると、アンネローゼさんがこっちを半目で見ていた。
ちょっと罰が悪くなったので、視線をメインスタンドに戻す。
アルファとゼータが渾身の投げキッスを送ってくれた。手を振って誤魔化す。
ベータは…何か書いているようだ。
ガンマは瀟洒に拍手をしていた。
イータが何か──たぶんテレビ中継用の装置を構えていた。となりのイプシロンもごっつい
デルタはテンション高めで歓声をあげているようだった。
となりにいるヴァイオレットさんは、観客の多さに人酔いしているように見えた。
「一回戦 第16試合 ゴルドー・キンメッキ選手と、ローズ・オリアナ選手の入場です。」
金ピカの名前にちょっと笑ってしまった。
「以上、32名が、第48回ブシン祭の出場選手となります。」
ウオォォォォーーーーー!!!!!
闘技場の観衆のボルテージがさらに盛り上がった。
陰の実力者になりたくて! 本編の第24話です。
ブシン祭編です。
ようやく本戦が始まって…ませんね。開会式まででした。
基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアにローズも… 性癖全開です。
ブシン祭の本戦の人数や日程や、開会式等ついては本作での捏造です。
ガーデンの装備等についても本作での捏造です。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。