陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第28話です。

 ブシン祭編です。

 本戦二回戦のお話です。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとローズとの関係も…

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第28話「魔神降臨?しませんよ」上

 

 

 その日の始まりは平凡であった、と当日の警備報告書には書かれていた。

 

 

 

 クレアは艶々であった。

 

 氣と魔力で身体が満ち満ちていた。

 

 なお、レミーは精・氣・魔力が尽きた身体を、イプシロンとイータに闘技場まで運んでもらっている途中だった。

 

 

 

 ローズも魔力による疲労回復と睡眠を同時に行う術を使って、体調を万全に整えた。

 

 試合用の模擬剣と、本来の細剣*1の二本を携えて闘技場に向かっていた。

 

 

 

 シドも、前日がアルファの日だったので、朝まで同じベットで一緒に寝ていた。朝食も七陰と一緒に食べて──アレクシアが昨日から王宮に帰っていたため早朝稽古は無かった──ルンルン気分で寮から闘技場に向かっていた。

 

 三人で手を繋いで歩いている途中で、フードを目深に被った不審者に声を掛けられていた。

 

 

 「エルフの匂いがする。」

 

 

 思わず自分の身体と髪の匂いを嗅いでみたが、特段変な匂いはしなかった。

 

 今日はアルファとお揃いのシャンプーとコンディショナー、ボディソープの匂いがしていた。

 

 あまりキツくないふんわり系(・・・・・)の匂いだ。

 

 

 改めて不審者に眼をやると…半眼になってしまった。

 

 

「ベアトリクスさんじゃないですか。いつもそのフレーズで聞いてきますね?」

 

 クレアとローズもシドの言葉で警戒を解いた。

 

「…シドさんからは、愛しいエルフの匂いがするからだろうね。」

 

 

 思わず溜息を付いてしまった。この言動で嫌われてしまっているというのに。

 

 

「まぁ、他の人には聞かないだろうからいいですけど…。今日は貴賓席に来るんですよね?」

 

「ああ、コトが起これば、武神の名に恥じぬ戦いを見せると約束する。まぁ他に特に何ができる、というわけでもないが。」

 

 そう言って、フードを取って挨拶してくれた。

 

「そのときはよろしくお願いします。」

 

 

 事情を知らないクレアお姉さまは、不審者が武神であることに驚いていたが、シドの秘密の番外(エクストラ)999th(スリー・ナイン)で、オナカマです、の説明でとりあえず納得してくれた。

 

 ローズも、“見ればわかる”とは、そういう意味ですか…と一人納得していた。

 

 こうして、三人+フードを被った一人、で闘技場まで歩いていった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 三人が時間よりも早く闘技場に呼び出されたのは、アイリスからの紅の騎士団団員としての出頭命令──ローズに関しては出席の依頼がでたからだった。

 

 

 会場の警備指令室に案内されて着いて早々、獅子髭のグレン紅の騎士団の副団長から事情の説明が……ある前に、一悶着あった。

 

 幸い、グレンが武神を見知っていたことと、クラウスくん──陛下からの招待状があったこと、さらに、いざというときには力を貸してほしい旨の一筆があったことから一緒に事情の説明を受けることができた。

 

 

「…といわけで、すまないが、クレアさんの騎士服の腕の部分に、このエンブレムを縫い付けさせてもらう。」

 

「あっ。それなら私がやります。貸してください。」

 

 クレアお姉さまの服も、昨日急遽対刃性の高い物に入れ換えてもらっているので、普通に針とか通らないのだ。

 

 こっそりアイテムボックスから携帯用裁縫セットを取り出すと、クレアお姉さま、と声をかけた。

 

 クレアもわかったもので、はい、と渡してくれたので、その場で針に特製の糸を通して、氣を針に通して、特殊な織り方をしている布地の問題無い網目の部分に氣を込めた針を通してチクチクと縫っていった。

 

 

 呆気にとられていたグレンだが、気を取り直して説明を続けてくれた。

 

 

 試合前後はできるだけ、貴賓室に居るようにしてほしいこと。

 

 現在、会場内には第一騎士団の第一番隊を配置していること。会場周辺には第二番隊を、王都内各所には、第三番隊と第四番隊を配置していること。

 

 紅の騎士団の半数は貴賓席の警備に、半数は攻勢・予備の要員として指揮所のココに残すこと。

 

 そして、それ以外の騎士団については王宮と国境の警備を閣下より厳命してもらっているので、王都内、会場内にはいないこと。よってそれ以外の騎士団員が居た場合、即時確保ないし撃破の承認をもらっていることを告げた。

 

 

 なんと陛下のサイン入りの命令書も見せてくれた。

 

 

 今クレアお姉さまに付けたエンブレムが正規の身分証明になっているとのこと。なお、私はアレクシアとお揃いで作ったので、エンブレムは装着済であった。

 

 たとえ王族であっても、このエンブレムを着けずに武装するミドガル国籍の者は捕縛対象とする、と明記してあった。

 

 

 結構やるじゃん、さらに、エンブレムには通し番号がつけてあることもこっそりと教えてくれた。それが無い場合も捕縛対象となるそうだ。

 

 予備役のためで900番代で、クレアお姉さま(900)(901)の二人だけ、とのことだった。

 

 なお、今回は便宜上、王族が一桁、紅の騎士団が二桁番代を、第一騎士団の第一番隊は100番台、第二、第三、第四番隊は、300、500、700番台を着けているそうだ。

 

 ローズのことは周知されているので、武神のことだけ追加で内密に通達をだすことになった。

 

 

 まぁコトが起こってしまったときには、陛下からの一筆を持っているので勅命を受けているものとして不問、とすることになったのだが。

 

 

 なので、学園の制服を着ていた私は、警備司令室の更衣室でさっさと着換えることにした。

 

 インナーはメタルスライム製のを身に着け、アレクシアとお揃いの騎士服を着ていく。最後にアレクシアと交換した紅いタイを絞めながら、アレクシアに想いを馳せた。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 そろそろいい時間になったので、一度貴賓席に向かった。

 

 

「シドー!」

 

 

 先にアイリス様と一緒に来ていたのだろう、アレクシアが飛び付いてきた。

 

「アレクシア、おはよう。」

 

 抱きしめながら挨拶をした。

 

 

「おはよう、シド。…スンスン。今日はふんわり系のソープの匂いね。」

 

 ちょっと擽ったくて身を捩った。

 

 ちょっとアレクシア…止めてよね。今度同じ香りの物にしましょう、聖都に行ったときのように。早朝稽古のときに同じソープを使ってるよね? 私と同じ香りがいいの! あれ? でも聖都にいた時に…

 

 わいわい

 

 

「ア・レ・ク・シ・ア。」

 

 …昨日は、クレアお姉さまとローズの試合のあと、ちょっとやさぐれていたアイリス様だったが、メンタルを立て直してきたようだが…

 

 

「来賓が来るのですよ。」

 

 

 と、ちょっとお怒りのご様子だ。

 

 

「はーーい。それじゃあ、学園生徒枠の席に…」

 

「ア・レ・ク・シ・ア。はしたない行為をしてはいけませんよ?」

 

 

 とても圧を感じる声だった。

 

 

「はーーい。行きましょう、シド。」

 

 と手を繋いで行こうとする。

 

 

 今回は紅の騎士団の一員としても居るので、帯剣を許されている。それを軽く叩いてから貴賓席の中の、学園生徒向けの一角に歩いて行った。

 

 

 そして、席についてから、一度周りを見廻して、来賓がまだ来ていないことを確認する。

 

 そして、アレクシア、と小声で呼びかける。

 

 

 こちらを向いたところで、深いキスを交わした。

 

 

 互いに息苦しくなってきたところで唇を離す。

 

「今日は、陛下もご臨席されるでしょう? これで我慢してね。」

 

 

 …うん。アイリス様には気付かれなかったようだ。

 

 ちょっと余韻を味わっている様子のアレクシアだったが、うん、と頷いてくれた。

 

 

 さすがに、陛下(アレクシアのお父さん)の前でキスをするのはちょっとね。

 

 選手として呼ばれるまでの僅かな時間ではあったが、アレクシアと手を繋いで座って、互いの手の感触を楽しんだ。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 オリアナ国王とドエムは、闘技場の特別席にいた。

 

 

 そこで、ドエムはオリアナ国王を傀儡とするため使用している、教団の洗脳薬を飲ませていた。

 

 それには強い依存性をもつ特別な薬草を使用しているのだが…

 

 

「この薬、効果は申し分ないが、体臭が甘ったるくなるのはどうにかならんのか……」

 

 飲ませたあとの瓶を配下の者に投げ渡し、処分するように指示する。

 

「香水でもかけて誤魔化しておけ。」

 

 

 それから、自嘲するように言った。

 

 

「薬一つで命じられた通りにしか動けない人形に成り下がる…」

 

 ラウンズとなっても、所詮は最下位。

 

「『ディアボロスの雫』一滴のために、働かされる己とも大した違いはない、か。」

 

 

 ──その言葉を待っていた。オリアナ国王ラファエロは、昨日洗脳解除薬と一緒に渡された盗聴装置がこの言葉を届けていることを神に祈った。

 

 

「それでは、閣下、ご観覧に参りましょう。」

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 特別室から貴賓席までオリアナ王国の近衛騎士と、配下の文官を連れて歩いていく。

 

 オリアナ王国の宰相として、オリアナ国王の横やや後ろを歩いていたのだが、国王の動きが薬のため緩慢となっているため、自然と前に出てしまう。

 

 もはや、それを修正する気にもならず、そのまま貴賓席の入り口に着いてしまった。

 

 

 貴賓席の王族用の扉の前で、ミドガル国王クラウスが僅かな近衛騎士と共に出迎えていた。

 

 

 ふむ、この人形(オリアナ国王)を使って、こいつ(ミドガル国王)を暗殺するつもりでいたのだが、逆の立場になってしまうとは。

 

 

 今のところフェンリル派に動きはない、と特別室で報告を受けている。

 

 とはいえ、ここはミドガル王国。フェンリル派の縄張りだ。油断はできない。

 

 手勢を牽制のために動かしているため、配下の数が少々心もとなくなってきているのだ。

 

 

 ドエムは扉の前で、ミドガル国王に最敬礼を行う。

 

 …次は、この人形のように、対等の立場になっているのか、ふむ、悪くない。

 

 

 扉が開かれて、頭を垂れる人の前を、国王の先導として進む。

 

 場所は、中央の最上段、ミドガル国王の相席となる。

 

 進んでいる途中、アイリス・ミドガルの前を通過する前に…

 

 

「臭い。」

 

 

 なっ、たしかに臭いが陛下の前でっ! 思わずオリアナ国王を手で止めて、配下の方に押し戻してしまった。

 

「おい女、陛下に向かって失礼だろう! 衛兵っ! この女を今すぐ…「ドエム殿!」…」

 

 アイリス王女が割って入ってきた。

 

「アイリス王女。」

 

「この方はその…… ミドガル国王陛下が護衛としてお招きした武神ベアトリクス様……なのです。」

 

 

「何と……」はっ!

 

 

 武神ベアトリクスだと! 英雄の血を覚醒させているかもしれん、というあのっ!

 

 とても、武神と呼ばれる剣豪には見えないが、ミドガル国王が招待していることも考慮して、本物と考えるべきだ。

 

 

「ごめん。」

 

 

 頭を下げて謝って来た。

 

「でも、ラファエロくん、香水の趣味変わった?」

 

 とんでもない爆弾を放り込んできた。

 

 

「し、少々、香水の量が過ぎたようです。こちらこそ、知らぬとはいえ失礼しました。」

 

 

「ドエム・ケツハットの……言う通りじゃ。」

 

 

「へ、陛下もこのように仰せです。ブシン祭をごゆるりとお楽しみあれ。」

 

 ドエムは心の中で盛大に舌打ちをしながらも、そそくさと武神の前から離れていった。

 

 オリアナ国王を席に座らせて、自分は右後ろに控える。

 

 

 とりあえず、その場は収まった…ようだ。

 

 

 だから洗脳薬の臭いの改善が必要なのだっ!

 

 だが、なにより武神ベアトリクス! …オリアナ国王と知己であるとは聞いていなかったっ!

 

 ミドガル王都に滞在しているとは聞いていたが、よりにもよってなぜこの大会にっ!

 

 

 怪しまれたか?

 

 では、隙を見て排除……できるものかっ! アイリス以上の本物の手練れだぞっ!!

 

 

 落ち着け、ドエム・ケツハット。KOOLになるんだ。

 

 …逆に考えるんだ。護衛としては最上の手駒を手に入れたようなものだと。

 

 

 どのみち、ミドガル国王の暗殺は中止して、予定通りオリアナ王国での計画を進行させることになったのだ。

 

 取り敢えず今日を乗り切れば、明日以降は体調不良を言い訳に欠席させることもできる。

 

 問題がない。そう、何の問題もないはずだ。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 国王陛下のご臨席を、闘技場の中央で跪いて頭を垂れて待った。

 

 

 アレクシアのお父さんなんだよね。いずれ挨拶に行かないといけないのかなぁ。

 

 それ以前に、女同士の恋愛とか、どう思っているんだろう。

 

 アレクシアの噂くらい知ってるよね?

 

 

 ガーデンの叡智?により、女同士でも自分の血を引いた子供が作れるようになった、とはいえ…

 

 

 そんなことを考えていた間に、ご臨席が終わったようだ。

 

 

「それでは、国王陛下御観覧の元、二回戦の第一試合を開催します。」

 

 司会の人の宣言の後に続いて、立ち上がり、闘技場の中央で相手との距離をとる。

 

 

 開会前に待合室で会ったときには、上半身裸で泣いている人だったけど。

 

 一回戦のときは直前の試合だったので、控室からの移動中で見れなかったのよね。

 

 

「第二回戦 第一試合 ツギーデ・マッケンジー!! 対 シド・カゲノー!! 開始!」

 

 

 一回戦のアンネローゼよりも体格が大きいから、パワーはあるよね? でもスピードはどうかなぁ。

 

 巨大な両手剣を振り上げると、雄叫びを挙げながら突っ込んできて振り下ろしてくる。

 

 

 私は、相手の意を読んで、大きく避けた。

 

 

 相手は重力の助けを借りて、もの凄い勢いで地面を抉り飛ばした直後、返しの刃の方で素早く切り上げてきたのだ。

 

 

 最初の刃が当たれば一発で、避けられると、抉り飛ばした地面の欠片と返しの刃で破壊する、という刃を潰していて何の意味があるの? と言わんばかりの脳筋攻撃であった。

 

 

 ウオォォォーーーーッ!!!

 

 

 会場のボルテージが一気に盛り上がった。

 

 

 そういえば、シドの悪癖として必要以上に様子見することと、指導者モードになることがある、と昨日アルファに寝物語で聞かされたので、さっさと片付けることにしよう。

 

 

 相手が再び剣を持ち上げた瞬間、意より速く攻撃を叩き込んだ。

 

 ──ズンバラリンしてしまうと不味いので、氣で切れ味を落とす…代わりに鉄塊でぶん殴られたようになるが。さらに、スタンするように属性を附与する。

 

 

 私的にはゆっくりと、他の人には多分もの凄いスピードで相手は吹き飛んでいった。

 

 

 うん、上手いこといった。

 

 伸身宙返りに捻りを超加えたような軌道を描いて飛んでいる。着地が決まれば難易度どれくらいになるだろうか?

 

 

 相手は……足から落ちたので、死にはしないでしょう。

 

 残心を解いて剣を納刀する。──時間感覚が普通に戻った。

 

 

 会場は、しーーんとなっていた。

 

 

 呆気にとられている審判をじっと見る。

 

 

 カクカクと動きだして、大の字にのびている相手を確認しにいった。

 

 

「し、し、し、しょ、しょ、勝、勝、勝者、シド・カゲノー!!! 担架急いで!

 

 

 私に向けた?手も、本当に私を指しているのかわからないくらいに震えていた。

 

 担架を持った人が駆け寄る。4人がかりで担架にのせた後、さっさと運び出していく。

 

 

 私は、貴賓席に向かって最敬礼を行うと、出て行った。

 

 

 後日、審判をしていた剣術指南役の人が、二度と審判をしない、と言っていたらしい。曰く、何も見えなかった不徳を恥じる、とのことだ。

 

 結局、会場からの拍手はまばらにしか──メインスタンドの正面の一部からは熱烈だったが──聞こえてこなかった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「あっちゃ~。アルファ様、主…シド様に何かいいました?」

 

 

 イプシロンが、昨日と同じくメインスタンドの正面で写真機(デジカメッポイナ)を構えたまま聞いた。

 

「…シドの悪癖として、必要以上に様子見することと、指導者モードになることがあることを注意したわ。」

 

 ぷいっ、と顔を背けて答えた。

 

 

「多分、それですね。まぁあれで氣も属性変化程度で、ほとんど使ってないようですが…」

 

「逆に……問題。マスター素で……あの速さをだしてる。あの速さでは……テレビでは見えない。」

 

「そこは大丈夫よ。この会場ではっきりと見えていたのは七陰くらいよ。」

 

 周囲を見ると、ベータは必死に何かを書いて&描いていた。ガンマとゼータは恍惚としている。

 

 

「ねぇ、なにか問題があったの?」

 

「いえ、ヴァイオレットさん。空気を読まないバカが一人いた、それだけのことですよ。」

 

「…空気って、読むものなの?」

 

 ヴァイオレットさんが、不思議そうに聞いてきた。二回目ということもあり、観客には慣れたようだ。

 

「え~と、その場の雰囲気に合わせることを、そう言うんですよ。」

 

「…つまり、子供の喧嘩で大人が本気を出した、みたいな?」

 

「まぁそうですね。子猫の喧嘩に、大虎がでた、みたいな?」

 

「ねぇ、やっぱりシドくんの方が、私より絶対に世界に混乱を招くと思うわよ。」

 

「大丈夫です。アレにしても神の火扱いですから。」

 

 

 唖然として、拍手すら忘れている観客がほとんどを占める中で、熱狂的に拍手をするガーデン&ミツゴシ一同であった、

 

 デルタなんかは、大はしゃぎしていて、アルファに(たしな)められていた。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「はいはい、シドさんもあの速さをだせますよねっ! クレアさんができるんですもの、そうですよね。」

 

 アイリスは何かを悟っていた。

 

 最初の大剣の振り下ろしを避けるのも大概な速さだったが、相手がもう一度、と振り上げた、と思った瞬間には吹き飛んでいたのだ。

 

 

 シドさんの時間は進み方が違う、そのように確信していた。

 

 

 魔力強化を……しているんでしょうけど…

 

「…魔力を可視化できるほど込めていないのに…」

 

 

「いや、あれは魔力強化していないぞ。」

 

 そう武神ベアトリクスは教えてくれた。

 

「幼少……あぁ、こ、古文書を解読してからの、特訓の成果だと言っていたな。」

 

 最初にちょっと言い淀んでから、説明してくれた。

 

 

「なんでも、その奥義として、『神速』というのがあって、極限の集中力によって、知覚能力を大幅に上昇させて、周りが止まって見えるようになる……らしい。」、

 

 

やっぱり、時間の進み方が違うじゃないですかっ!!

 

 

「そうなる…のかな? 普通の人でも危険な時に周りが止まって見える経験はあるでしょう、それを意図的に起こしているだけなんです、とも言っていたな。」

 

 

「…ベアトリクス様は、シドさんをご存じだったんですか……」

 

「あぁ、す、数年前に縁ができてね。」

 

 そこから小声で答えた。

 

「その時に、こてんぱんにやられてしまったのだよ。」

 

「ということは、ベアトリクス様よりも強いと…」

 

「それ以来、私も修行に励んでいるんだが、まだあそこまでの速さは実現できていないんだ。」

 

「これに、魔力強化が乗ってくるんですよね?」

 

「ああ、そうなんだ。」(実は氣の強化も乗ってくるんだが…言えないわね。)

 

 紅の騎士団に予備役とはいえ参画してくれて…味方になってくれて良かった。

 

 そう思って、ふとアレクシアの方を見ると…

 

「シド……」

 

 意外と静かにしているわね。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

「ふぅ~っ。」

 

 

 アレクシアは熱のこもった息を何度もついていた。

 

 

「はぁ~っ。」

 

 

 実は、今のところは初歩の初歩だが、氣を使うことで、なんとなくシドの動きがわかってしまった。

 

 見えたわけではない。

 

 しかし、そのなんとなくわかった、シドの剣の軌跡がアレクシアを魅了する。

 

 研鑽の果てには、あのような美しい剣があるのか…

 

 

「シド……」

 

 

 名前を呟いてしまい、試合前にした深いキスの感触も思い出し、しばし法悦に浸っていた。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 一見、物憂げにも見えるアレクシアの隣で、ローズは喜んでいた。

 

 

 シドの強さは、規格外だと聞いてきたが、これほどとは。

 

 昨日の試合では、様子見をしていたようですが、この速さを最初からだされると大変ですね。

 

 

 一応、氣を使って強化して見ていたので、早回しくらいには見ることができた。

 

 決勝で闘うときには、少しくらい食らいついていきたいですね。

 

 

 でも、その前に、事態が動きそうなのが残念だった。

 

 

 

 かくして、またしても各方面に衝撃を与えた試合は終わり、次の対戦へと進んで行くのであった。

 

 

 

*1
─ガーデンよりメタルスライム製の者が支給されたので代替わりした─





 陰の実力者になりたくて! 本編の第28話です。

 盆休みの最後の更新です。遅れましたがなんとか書けました。

 ブシン祭編です。

 今回は、本戦二回戦のお話です。

 基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。

 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアにローズ、クレアも… 性癖全開です。

 ブシン祭の本戦の試合数とか人数や日程等については本作での捏造です。

 神速については、某とらハ3から名前だけ借用していますが、対外的なカバーストーリー用の言い訳で、実際は違いますので。これも本作での捏造です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。
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