陰の実力者になりたくて! 本編の第33話です。
本編の2ndシーズンの無法都市編その第2話となります。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとローズ、クレアとの関係も…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
『番犬』は『紅の塔』で獲物を待っていた。
彼はかつて、とある国の騎士団長だった。
白い制服を身に纏い、白く美しい髪をなびかせて、市民を守る理想の騎士。
しかし、その正体は、夜な夜な町で人を斬り続ける殺人鬼だった。
だがある日、同僚に彼の犯行が発覚する。
その瞬間、彼は『白い悪魔』となった。
「殺すことが生きがいだった。生きているという実感があった。俺こそが生存競争の頂点に立っている、そう思えた。」
「そう、あの時までは…」
『白い悪魔』と呼ばれ恐れられた男が、クリムゾンに何もできずに敗れたのだ。
彼は一方的に嬲られて、ぶざまに許しを請うた。
そして今は『番犬』をしている。
人を殺す自由さえ奪われた。
「そんな俺も今や……ククククヒヒヒヒ……!」
「街はグールどもで大騒ぎ……」
『赤き月』が始まり吸血鬼の多くは塔から出た。行動を見とがめる者も残っていない。
『赤き月』が続く間は自由に殺せるのだ。
「誰でもいい……俺もいいだろうぉ……? 早く殺させろおおおおお!!」
誰かこの『紅の塔』に辿り着いてくれと、『白い悪魔』は祈るような気持で獲物が来るのを待った。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「ウァアハッハッハッハァ!」
「うん?」
「雑魚は引っ込んでろぉあ!!」
ジャガノートが巨大な鉈を振り廻して、グールを一刀両断にしながら近付いてくる。
「あれは……あのデカい鉈、圧倒的暴力に満ちた鋭い眼光……『黒の塔』の支配者、『暴君』ジャガノート……!!」
「!?」
ユキメは九本の尻尾が深夜に輝くと、グールが一網打尽に討たれていった。
「あの特徴的な九本の尾は、最上位の獣人の証……! 『白の塔』の支配者、妖狐ユキメ……!?」
そして、示し合わせたかのように『暴君』と妖狐が討ちあい始めた。
「二人とも俺が逆立ちしても勝てない超大物じゃないか……! なんでこんなところまで出張ってくるんだ!?」
「くたばれ女狐ぇ!」
「ほんまに……邪魔くさいでありんすなぁ。大口開けて臭い息をまき散らすのはやめなんし。」
宙を舞うユキメに対して、ジャガノートが突っ込んでいく。
「獣臭ェのはテメェだろうが!」
「しつこい男は……好かんわ!」
再度二人が激突しようとした瞬間、ミドガル魔剣士学園の制服を身に着けた魔剣士が、衝撃と共に夜空から落ちてきた。
「てめぇは……!?」
ジャガノートが唸るように聞いた。
「ぬしは……? (これは…シャドウ様モードではありんせん?)」
ユキメは少し混乱した。
シャドウ様が来る、とのことでありんしたが…
「我が名は、シド・カゲノー。『紅の塔』を討伐するものよ!」
………行きがかり上魔剣士協会を助けちゃったら、シドのままで行くことになっちゃったのよ(泣)
慌てて、七陰
………主、諜報部隊は現在、無法都市内の吸血鬼を掃討中なんだけど…グールは隔離しておくだけでいいの
………シャドウ様、現在情報部隊と『紅の塔』内で情報を抜き取り中ですが、何か命令にに変更ありますか?
………デルタです。強襲部隊と無法都市内の吸血鬼を掃討中です。吸血鬼もグールも大したことないです。
「シド……?
………め、命令に変更はないわ。あと、レミーは……
………ぼくは、なぜかお姉ちゃんと、吸血鬼狩りの
………ど、どうしてそうなった! レミー!!
「シド・カゲノー。たしか今年のブシン祭の優勝者でありんすな。女神の試練の達成者でもありんした。」
………あの、シャドウ様でありんすよね? なんでシドはん
慌てて、メタルスライム通信で返事する。
………ええっと、ちょっと計画に変更があっただけよ。基本はそのままだから(汗)
「あぁ、イキった魔剣士どもをボコり倒した優勝者か。……まぁ知ったこっちゃねーよ!」
ジャガノートが勢いよく
「ひぃぃぃぃ!?」
「あばよ女狐、次は殺す。」
『紅の塔』の城門をぶち壊すと、塔の中に入って行こうとした、が…
「月が赤い……暴走が始まるわ。」
「暴走……このグールどもの騒ぎのことを言ってるでありんすか?」
ユキメが尋ねる。
「その晩3つの国が滅んだっていう『赤き月』の伝説ってヤツか。」
ジャガノートは『紅の塔』を見上げながら続けた。
「良いじゃねえか、そんなんならコウモリどもにも歯ごたえが出るだろう。」
そういって、楽しそうに入って行った。
「あの男……、ほな、わっちもここで。」
と、中に入る前に振り返って、感謝を伝えてくる。
「そうそう、色町の娘らも助けてもろたようですし、今後もよしなに、シドはん。」
………シドはん、先に行きんす。後で詳しゅう聞かせておくんなんし。
………いってらっしゃい、ユキメ。気を付けてね。こっちは状況を説明してから行くから。
そうして、七陰HLとメタルスライム通信を使って、今後について打ち合わせを行っていた。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「城門自体がアーティファクトなんだぞ……? なんで大鉈で壊せるんだ。」
壊れた城門の上で、番犬は戦慄していた。
「『暴君』……それと張り合う妖狐……ヤツ等が狙う『血の女王』……ろくでもない化け物ばかり……冗談じゃない。俺は人間を切るのが好きなんだ……。」
思わず城門の上で愚痴っていた。
「ん? あいつ……あいつは何だ? さっぱり強さが感じられん。」
残った女魔剣士をみる。
「俺より弱いよなぁ?」
ヒ……ヒヒ……ヒヒ、ヒ…ヒヒ……ヒヒヒヒヒ!!!
不気味な笑い声が『紅の塔』の城門に響いた。
「お前は獲物で……決まりだあぁああああ!」
ツインブレードに変形させて、城門の上から女魔剣士に飛び掛かった。
そのまま一閃する。
──殺った!
が、
「……あ?」
なんだ……?
そこには、斬り飛ばされた自分の腕や下半身があった。
こいつは……何だ……
『白い悪魔』は自分が絶対に手を出してはいけない生物に手を出してしまったことを知った。
「まったく、もうすぐ暴走が始まるっていうのに。もう時間無いのよ!」
「なん……なんだ……?」
『白い悪魔』は今わの際にそう思わずにはいられなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
巨大な書庫の中、ベータは
「これが当時の一般的な技術だというのなら、やはり教団の技術力は異常という他ない。」
ページを捲って読み進める。
「奴らの力の源は魔人にある……それはいい。けど、その力を得るために必要な知識は一体何処から……?」
何処からか物音が聞こえてベータは顔を上げた。
レミーから七陰HLで地下から『紅の塔』に侵入するとは聞いていたけど、よりによって此処にくる?
「「うはぁあああ!?」」
クレアと吸血鬼狩り──レミーによると最古の
「……うへぇ。」
ベータはマスクの下で顔を歪めた。
「だから迂闊に触らないでって……」
と吸血鬼狩り……のくせに自分も吸血鬼っぽいメアリーが嘆いた。
「滑り台があるなんて、聞いてないわよ!!」
クレアお義姉さまも、いつもと変わらずお元気そうだ。
「とにかくこれで、塔の内部には侵入できたから……」
「まさか、あんなところがああなって、こんな風につながっているなんて……」
なんというか、二人とも呑気だ。
こっちの視線に気付きもしない。
一応とはいえ侵入者なのだから、もう少し用心してほしい、切実に。
「ところで、ここはどこかしら?」
「『紅の塔』の地下のはずだけど……」
「ここは『紅の塔』の地下書庫よ。」
「……!?」
ハッとして周囲を警戒し始める
「どうしたものかしら……。目撃者は始末しなきゃダメなんだけど……、ちょっと無理かなぁ。」
メタルスライム通信をクレアお義姉さまに繋ぐ。
………クレアお義姉さま、ベータです。とりあえず知らん振りしてくださいね。
びくっ、とした後に、慌てて腰の剣に手をかける。
メアリーも、血を変形させて剣を形作っていた。
「さ、早速バレてたみたいね。」
………クレアお義姉さま……もうちょっと冷静に願います。
………わ、わかったわ。それにしてもなんで
「だから慎重にって言ったのに……」
メアリーがぼやいた。
「ごめんなさいって。でもこの様子じゃどちらにせよバレてたわ。」
謝りながらも強気の姿勢は崩さないクレアお義姉さま、図太い。
「こちらに戦う意思はないわクレアさん。」
手を上に上げて話しかける。
「……わ、私を知っているの?」
「先日のブシン祭の第3位のクレア・カゲノーさんでしょう?」
………そういう設定でいきます。いいですか、クレアお義姉さま。
「あ、あら、私もなかなか有名になったものね。」
ちょっと機嫌が良くなったようだ、ちょろい。
「アレは吸血鬼では無いようだし、私達に余計な戦いをしているヒマはない。……それに仲間もいるな。」
さすがにメアリーさんは気付くか。
「ねえねえ、なんでベータ様ってずっとお顔隠してるの?」
「ちょっ、黙ってなさい!」
「それに、あっちにレミーさんがいるよ?」
665番と664番が小声で話していた。
「いいわ。あなたが何者で何が目的か教えて。敵じゃないとわかればこちらも引くわ。」
何故か、クレアお義姉さまが話を進めている。
それでいいのか、最古の
「私が何者で、何が目的か……。そうね、あなたたちと同じで『紅の塔』に侵入した側よ。」
メアリーがびくっとしていた。
「もっと詳しく。」
………話せるところまででいいから、話してちょうだい。お願いベータ。
「少し長くなるけど…」
………基本的に秘密組織なので……で押し通しますよ?
「詳細かつ簡潔に述べよ。」
「あら難題ね。私はとある秘密組織のベータ。少し用があって『紅の塔』にお邪魔しているの。」
メアリーがさらにびくびくっとしている。
「とある秘密組織ね。まぁいいわ。それでなんの用があるっていうの?」
「さて……どこまで話そうかしら。私にも話せることと話せないことがあるのよ。」
チラリとメアリーに眼をやる。
「そうね……我々はわけあって『悪魔憑き』の研究をしているのだけど、始祖の血のサンプルが欲しいってところかしら。」
「悪悪憑きね……英雄の子孫の証がどうしたっていうの?」
クレアお義姉さまが言う通り、既に世間でニュースになって、一般的にも知られたことだ。
「悪魔憑きと始祖の吸血鬼に何の関与が?」
メアリーが眼を鋭くしながら聞いてくる。
「それは、悪魔憑きと吸血鬼は、元をたどれば同じ物で、血が受け継がれる過程で変質し、分かれていった……研究の過程でそんな仮説が生まれたの。」
………それって本当なの、ベータ?
………ええ、最新の研究結果ですよ、クレアお義姉さま。
「それを確かめるために、吸血鬼の始祖である『血の女王』を調べる必要があるのよ。」
「ふ~~ん。悪魔憑きと吸血鬼が……?」
「それは始祖に対する冒涜でしょう。」
メアリーがさらに鋭い眼をして強い口調で切り出した。
だから、あなたは最古の吸血鬼狩りじゃなかったの? 思わず突っ込みそうになるベータだった。
「あくまで仮説。我々に始祖を冒涜する気はないわ。ただ検証のために、始祖の血のサンプルが必要なのよ。」
だから突っ込んだ。
「なぜあなたが怒るのかしら。千年の昔から伝え聞く、最古の吸血鬼狩りさん?」
クレアもメアリーに横眼を向けた。
「私のことも……」
メアリーの顔がわずかに歪み、逆にベータがにっこりと微笑んだ。
「噂は聞いているわ。私たちはあなたを邪魔しない。あなたも私たちを邪魔しない。それで納得してくれないかしら。」
メアリーは無言でしばし熟考した上で、それを受け入れた。もう時間が無いのだから。
「ふ~~ん。あっ、そうそう一つ教えて。悪魔憑き直す方法はあるの?」
「それは……私には答えられないわ、それが答えよ。ただ、あなたが心配する必要はないとだけ言っておきます。」
どういう意味? そのままの意味です。……いいわ、行きましょう。行ってらっしゃい。こんなところでちんたらしているヒマはないわ。……そうですね、血の女王が復活してしまう。
「もういいわね? 邪魔しないってこと忘れないでね。」
そういうと、クレアお義姉さまは、シド──レニーを地下通路からここに呼んだ。
すちゃっ、と着地して降りて来た。
「……というわけで、不干渉ということでいいんだよねー?」
「えぇ、そうなったわ。」
………ただ、現在シャドウ様が
………了解ー。といっても、どう注意したらいいのさー?
そして、立ち去るメアリーに向かって、ベータが質問をした。
「そうそう、最後に一つだけ。もう一度『安息の地』を目指す気はないのですか?」
なぜそれをっ!と言わんばかりの表情でメアリーは振り返った。
「メアリー?」
きっ、と振り切るようにして先に歩きだした。
「あ、ちょっと……」
………意地悪なこと聞かないでよ、ベータ。
………レミー……いいんです、少しくらい。
はぁ~っ。
「664番、665番、もっと緊張感を持ちなさい。」
「「申し訳ありません。」」
「ラムダも下士官としてのあなたたちの実力は認めている。アルファ様もあなたたちには期待している。これは減点よ。あなたたちもちゃんと互いにフォローしなさい。」
「すみませんでした。」
と664番
「ごめんなさぁーい。」
と665番
「私たちの任務は、あくまで情報の収集とサンプルの回収。『血の女王』に関してはシャドウ──シド様が対応なされる。それで全て問題はない、いいわね。」
「「はい」」
「それで、
「そろそろ終わります。思ったよりも多かったです。」
「はぁーい。アレクサンドリアに戻ってからがぁー大変そうですぅー。」
陰の実力者…? 本編の第33話です。
本編は 2ndシーズンに突入しました。
話の切れ目の関係で、上はちょっと短いです。
ここまでGWパワーで書くことができました。できたところまで更新します。
無法都市編、シドにレミー、更に仲間にいますので、展開は変わって…ます?
基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。
カゲマスでのネタバレが酷くて、オリキャラ・オリ展開にしかなりません。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアにローズ、クレアも… 性癖全開です。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。