陰の実力者…?   作:ponpon3

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 陰の実力者になりたくて! 本編の第34話です。

 本編の2ndシーズンの無法都市編その第2話となります。


 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとローズ、クレアとの関係も…

 気に入らない方は、そっ閉じ願います。


 ──これはそんな「if」の物語──


陰の実力者…? 第34話「安息の夢」下

 

 

 どうやら『紅の塔』にはほとんど吸血鬼が残っていないようだった。

 

 しかし、全く遭遇しないわけでもなく、三人(メアリー・クレア・レミー)は散発的に吸血鬼から襲撃されていた。

 

 

「今よ! 心臓を!」

 

「はいはい、わかったわ。」

 

 メアリーの言葉に従い、クレアは首なし吸血鬼の心臓を貫く。

 

 

「不死身の吸血鬼も心臓を破壊されれば死ぬ。後は太陽に弱いんだっけ? さすが吸血鬼狩り、詳しいわね。」

 

「先を急ぎましょう。」

 

 先頭に立って歩き出すメアリー。

 

 

 吸血鬼からの襲撃に怪我一つなくここまでこられたのも、メアリーと()()()の協力があってのことだ。

 

 メアリーは魔力量こそクレアに及ばないが、その剣の腕は熟達している。

 

 とはいえ、レミーには及ばない。

 

 

 しかし何より、吸血鬼との闘いに慣れている。

 

 吸血鬼の多くが身体能力に頼った戦をするが、まともに戦えばその人間離れした動きと驚異的な再生能力に苦戦することは容易に想像できた。

 

 しかし、メアリーは、まるで吸血鬼の戦い方がわかっているかのように先を読み、速やかにかつ的確に動く。

 

 彼女の協力は、『血の女王』の復討伐になくてはならないものだ。

 

 クレアはそれをよく理解していた。レミーは……レミーだから。

 

 

 しかし、それでも……クレアは聞かずにはいられなかった。 

 

「何か隠してるわよね?」

 

「何かって……?」

 

 メアリーは素っ気なく返す。

 

 

「さっきあなたはおかしかったわ。まるで吸血鬼の肩を持つみたいに……あなたの目的は?」

 

「『血の女王』よ」

 

 即座に断定するように返ってきた。

 

「討伐、するのよね?」

 

 ………どうなの、レミー?

 

 ………どうも、違うっポイよー。

 

 

「……私は目的のために生きてきた。」

 

「じゃあ、あの言葉の意味は? 安息の地って何?」

 

 ………レミーは知ってるの?

 

 ………そりゃあ、知ってるけど答えられないかなー。

 

 

「あなたはエルフには見えないけど、千年も語られるって……」

 

「クレア」

 

 メアリーはクレアの名前を強く呼んだ。

 

「…あなたも同じでしょ? 悪魔憑きが人に戻るはずがない、そんな当たり前の話なのに、なぜあんなバカなことを尋ねたの?」

 

 ことさら平坦な口調で続ける。

 

「隠し事は誰にでもある、そうでしょう? 私は詮索しない、あなたも詮索しない、それで良いじゃない。」

 

「ふ~~ん。」

 

 

 そこで、いきなりドーンと塔が揺れた。

 

 

「何!?」

 

 とクレア。

 

「あぁ……」

 

 とレミー。

 

「この魔力は……」

 

 メアリーはその魔力に震えていた。

 

 三人は足音を消して塔を登って行った。

 

 ……うち一人(レミー)は、氣も魔力も、気配も姿も消して……

 

 

 すると、吸血鬼の断末魔の声が聞こえてきた。

 

「吸血鬼は心臓を潰されると死ぬってなぁ、にしても弱え……こいつ確か幹部だろ? まぁいい……替りはいくらでも居る。」

 

『暴君』ジャガノートらしい、横暴な内容と声が聞こえてきた。

 

 残りの吸血鬼たちが、思わず怯んでしまった。

 

「なぁお前ら……『血の女王』はどこだ?」

 

 

 

「アレは……」

 

 メアリーも怯んだ。

 

「知ってるの?」

 

 クレアが小声で聞く。

 

「『暴君』ジャガノート……」

 

「確か、『黒の塔』の親玉よね?」

 

 ………レミー、何か知ってる?

 

 ………そりゃ知ってるけどー、教えられないよー。

 

「そして、あのやられているのが、この塔の3番目の実力者よ。」

 

 ………しかたないわね。

 

「床で潰れてるのは?」

 

「左が5番目で、右が番外よ。」

 

「肩書きだけは強そうね……」

 

 

「ジャガノートは圧倒的な暴力だけで無法都市最強の一角に登り詰めた男」

 

 ………そうなの、レミー?

 

 ………まぁそれくらいならいいかー。まぁその通りだよー。

 

 

「……やり過ごそう。ヤツとは闘うべきではない。」

 

「同感ね。気付かれないうちにこの場を離れ……」

 

 ………警戒して!

 

 ジャガノートが勢いよくこちらを向いて、跳んできた。

 

「「……!?」」

 

「俺ァ勘が良いんだなぁ……。なぁコウモリ野郎、ここで死んどけや。」

 

 ジャガノートの拳が、クレアの顔面を殴りつけようとした瞬間…

 

 ()()()がその拳を掴んで、勢いそのままにジャガノートを背後の壁に叩きつけた。

 

 

 ドーン 鈍い音が塔に響いた。

 

 

「ク、クレア!?」

 

「あれくらい化剄で流せるわ。よそ見をしたらだめよ、メアリー。」

 

 とはいえ、無傷とはいかず、ジャガノートの拳を掴んだ時に、指に傷ができたようだ。

 

 

 壁に上下逆さにめり込んだ状態で、ジャガノートはピンピンしていた。

 

「確かにザコどもよりはマシだったがなぁ……オレも勘が鈍ったかぁ、うん?」

 

 そしてジャガノートが大笑いを始めた。

 

 

 ハハハハハハハ

 

 

「いやいや、中々タフなねーちゃんだ。大抵のヤツはさっきの一発で終わっちまうんだかなぁ。」

 

 そして、ふん、と身体を反らせて壁から抜け出してくる。

 

「私の顔を殴ろうとした男はアンタで二人目よ。」

 

 

「そら光栄だっ!!

 

 

 ジャガノートは巨大鉈を振り廻して、クレアたちを横薙ぎに一閃した。

 

 クレアは間合いの外に素早く下がるが、メアリーが間に合わず剣で受けて、吹き飛ばされてしまった。

 

 

「でも、どちらも私に有効打を与えられたことはない……のだけど、メアリー大丈……!?」

 

 レミーをチラ見してから、メアリーに駆け寄る。

 

 

「はいはいっと。」

 

 顔にマスクを付けて漆黒のロングコートを纏った女魔剣士がジャガノートと対峙した。

 

「テメェもこいつらの仲間かぁ?」

 

「あぁー、まぁそんな感じでー。」

 

 ジャガノートは仕掛けようとして止まる。

 

 

 ヤバイ!!

 

 

 ジャガノートの勘がこれまでで一番の大きさで頭の中に鳴り響いた。

 

 すらりと立つ漆黒の女魔剣士はジャガノートよりもかなり小さい。

 

『紅の塔』の城門であった小娘程度で、女のなかでちょっと大きい程度だ。

 

 しかし、何故か自分よりも大きく見えた。

 

 

 吹き飛んだ先に何かあったのか、メアリーの傷は内臓に届いていた……致命傷だ。

 

「そんな……メアリー、しっかりして。今応急処置を。」

 

 

 クレアはメアリーの傷口に手を添えて魔力を流し込む。傷口がポコポコと癒え始める。

 

 しかし、その手をメアリーが拒んだ。

 

「大丈夫……久しぶり……だから……」

 

「メアリー?」

 

「ごめんクレア……あなたの血を吸わせて……」

 

 メアリーはクレアの手を引き寄せる。

 

 ジャガノートを投げるときに切った指に吸い付き、そこから流れ出る血を吸い取った。

 

「な、ななな、なにするぅ!?」

 

 ………ちょっと、レミー、大丈夫なのよね!?

 

 ………大丈夫、相手がグールにしようと思って吸わない限り大丈夫だよ。

 

 

 すると、メアリーの身体が紅く光って、見る見るうちに致命傷だったハズの傷が治っていく。

 

 

 そして…

 

「ほう……、あのコウモリ野郎…」

 

 メアリーが、身体の周りに血で作った槍をいくつも作り出し、ジャガノートへ撃ち出した。

 

 

 ハハハハハハハ

 

 

 ジャガノートは笑いながら致命傷になりそうなものを巨大鉈で弾いた。

 

「ようやく本気かぁ!?」

 

 そして、巨大鉈を振り上げて魔力を練り上げていく。

 

 

だがっ、俺の方がっ、上だあぁ!!

 

 

 ジャガノートの打ち下ろした一撃は、空を裂き、床を砕き、発生した切断波が、衝撃波がメアリーのすぐ脇を駆け抜けた。

 

「くっ……、久しぶりで血が馴染まない……!」

 

 クレアが瓦礫に気を取られた隙に、瞬時に『暴君』はクレアの横まで移動して、巨大鉈を構えていた。

 

「ごめんなさい、シド」

 

 クレアは刹那、シドに謝っていた。

 

 

「驚いたからと言って、油断してはいけないわね。」

 

 丹田に貯めた氣を全身に(めぐ)らせる。

 

 思考が加速して、世界の動きがスローモーションに変わった。

 

 氣と魔力を合一させ、腰に履いた剣を抜き打ちざまに、()()()()()()()()()()()()()に向かって斬りつけた。

 

 

 カーーーーーン!!!

 

 

 互いの刃が弾き合った。

 

 体格が全然違うというのに、どちらも弾かれた。

 

 互角だった。

 

 

 ハハハハハハハ

 

 

 大笑いしながら、ジャガノートの瞳が狂気に染まる……その時。

 

 ミドガル魔剣士学園の制服を着た新たな女剣士が、『暴君』の巨大鉈の上に舞い降りた。

 

 

「……あぁ? ぶべらぁっ!?

 

 

 シドは無造作にとてつもない速さで、空中を踏みしめると『暴君』を塔の外に蹴り飛ばした。

 

 

 ドーーーーーン!!! 壁の崩れる音が響いた。

 

 

 壁を突き破ったあとの空中では、さすがのジャガノートも対応できない。

 

「って、何しやがるシドォオオオオ……」

 

 ドップラー効果で音が低くなりながら、ジャガノートは塔の外を落ちて行った。

 

 

「シド……」

 

 シドの、遥か格上の圧倒的力にクレアは安堵していた。

 

 

 …が、メアリーは警戒心を抱いた。

 

 

 一体“アレ”はなんだ!?

 

 

 ついさっきまで一緒に居た、クレアの弟のシドなのか?*1

 

 先ほどまで、それこそ闘いが始まってからも全く気に掛からないくらいだったというのに……

 

 まるで()()()()()()かのような段違いの力を感じていた。

 

 

「これが、今年のブシン祭優勝者の力……」

 

 ………ちょっとクレアお姉さま、この人大丈夫? なんか変な勘違いしてない??

 

 ………えぇ、そのハズなんだけれども…

 

 

「助けてくれてありがとう、シド。」

 

「どういたしまして、クレアお姉さま。」

 

「あの『暴君』が一撃だなんて……」

 

 メアリーは、まだちょっと、ほうけているようだ。

 

 

「……で、メアリー、傷は大丈夫なの?」

 

「大丈夫。その……ごめんなさいクレア、あなたの血を……」

 

「いいわよ。……いや、全然良くないのだけれども。それより、メアリー、あなたの隠し事って……」

 

「そう、私は吸血鬼。全てを話す、私が何者で何が目的なのか、そして『血の女王』の真実を……」

 

 そして、メアリーは哀しい瞳で話し出した。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 今より千年以上昔、それは吸血鬼にとって黄金の時代。

 

 吸血鬼たちは遊びでもするかのように人間を狩り、食い散らかし、血を啜っていた。

 

 多くの吸血鬼にとって人間は下等な家畜でしかなく、吸血鬼が人を支配する国まであった。

 

 

 そんな時代の中で、エリザベート様だけは必要以上に人を狩ることを嫌っていた。

 

 生きていくために必要な分だけを借り、むやみに命は奪わない。

 

 そんな彼女のやり方に反発する吸血鬼も多く、彼女は大きな力を持ちながらも配下は少なかった。

 

 

 しかし時代は吸血鬼にとって暗黒の時代へと移る。

 

 人が吸血鬼を狩る。吸血鬼にとって悪夢のような時代。

 

 吸血鬼の王国が壊滅したのを皮切りに、人は次々と吸血鬼に反旗を翻し、瞬く間にその数を減らしていった。

 

 

 その頃、『血の女王』エリザベート様は小さな国の領主として、人間と共に暮らしていた。

 

 彼女の領地では吸血鬼は人を見下さず、人は吸血鬼を恐れない。

 

 そんな関係を築けたのも、彼女たちが人の血を吸わなかったからだ。

 

 

 吸血鬼は人の血を吸わねば生きていけない。

 

 常識だったその考えを、あの方は自ら血を断つことで誤っていると証明したのだ。

 

 その姿を見た配下たる我らも、彼女の選択に従った。

 

 

 その結果、次第に力を失っていったが、代わりに得たものもあった。

 

 それは日の光の下で暮らす力、人と変わらない安らかな心、人と交わることもできるようにもなった。。

 

 吸血衝動は薄れ、光の差す美しい世界で暮らせるようになった。

 

 

 しかしエリザベート様だけは違った。

 

 

 日の光を浴びれば肌が爛れ、日傘なしでは外を歩けない。

 

 灰にこそならなかったのは、元から日の光に耐性があったからだ。

 

 そして、いくら血を断とうとも、彼女の苦しいほどの吸血衝動は消えなかった。

 

 

 だがそんな苦痛の中で、彼女は黒い日傘をさして皆と同じように日中活動し、そして配下を集めて話した。

 

 

 ここに安息の地を作ろう。

 

 吸血鬼も人も皆が幸せに暮らせる地を……

 

 

 彼女は人に追われてきた吸血鬼を保護し下に加えていった。

 

 もちろんそれは血を断つことが条件だった。

 

 中には彼女をさげすみ反抗する吸血鬼もいた。

 

 そんなとき、彼女は悲しい顔で追放した。

 

 従わなければ、彼女自ら手を下した。

 

 

 いつしか世界中の吸血鬼たちが人間に追われて、彼女の下に集うようになっていた。

 

 人口が増え、人と吸血鬼が交じり合い、領地は繁栄した。

 

 強い力を持ち、国に保護された彼女の領地には吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)も現れなかった。

 

 

 そこに、彼女が目指した『安息の地』は確かに存在した。

 

 誰もが幸せであるように彼女は願った。

 

 

 その日は千年に一度の『赤き月』が登る夜。

 

 吸血鬼に絶大な力を与えるその日、彼女は吸血衝動を抑えるため城に閉じこもっていた。

 

 当時ナンバー1の幹部が私で、ナンバー2の幹部がクリムゾンだった。

 

 私たち2人は交代でエリザベート様の部屋に食事を運んでいた。

 

 そして事件は、クリムソンが食事を運んだ時に起きた。

 

 

 クリムソンは血に飢えるエリザベート様の口にたった一滴の血を含ませた。

 

 普段のエリザベート様なら食す前に匂いで気付いたかもしれない。

 

 仮に食しても衝動を抑えることができたかもしれない。

 

 

 しかしその日は『赤き月』の夜。

 

 長い間血を断っていた彼女は抑え切れず暴走し、クリムゾンと彼の配下たちが一斉に反旗を翻した。

 

 

 彼女の夢は……『安息の地』は幻想だった。

 

 

 エリザベート様の暴走は三日三晩続いた。

 

 安息の地はガレキと消え、三つの王国が壊滅的な被害を受けた。

 

 血を断ち力を失ったエリザベート様の配下は、何もできず逃げまどい殺されていった。

 

 私は死肉の血をすすり生きながらえ、エリザベート様を追った。

 

 

 エリザベート様と再開したのは、全てが終わった後だった。

 

「もう二度と過ちを犯さぬように。もう二度と蘇らぬよう……、灰を海に捨ててくれ……」

 

 エリザベート様は自らの心臓を短刀で刺した。

 

 

 並みの吸血鬼であればすぐに灰になるだろうに……

 

 しかしエリザベート様が灰になることはなかった。

 

 呼吸もなく、心臓も止まっている。まるで死んでいるかのようだった。

 

 その口に人の血を含ませれば、たちまち彼女は息を吹き返すだろ。

 

 逆にその剣をわずかに押し込めば、たちまち彼女は灰へと変わるだろう。

 

 

 私はあの方の意思に逆らうことも、従うこともできず、眠りについたあの方を、永久に守り続けることを誓うだけだった。

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

「愚かな選択だったと思う。」

 

 そうメアリーはつぶやいた。

 

 

「守ると誓ったのにエリザベート様はクリムゾンに奪われた。」

 

 悔恨の意思が露わになった。

 

「血を断った私に、あの方を守る力はなかった。」

 

 

 

 ──女王をお守りしたことに免じて見逃そう。──

 

 クリムゾンはそう嘯いた。

 

 ──千年後の次の夜には、同士となってくれることを願っているよ。──

 

 

 

「そして今まさにあの方は再びヤツの野心に利用されようとしている。」

 

 メアリーは悔し気にそう続けた。

 

「もし千年前と同じ悲劇が起きてしまったら、私はあの方に何とお詫びしたらいいかわからない……」

 

 そして、肩の力を抜くとさらに続けた。

 

「これが私の全て、私は人間ではなく吸血鬼だ。隠していて、すまない……」

 

 

 

「私も同じよ。」

 

 クレアが答えた。

 

「子供の頃、悪魔憑きになる兆候があったわ……。私もいずれ化け物になる……」

 

「……クレア……」

 

 しかし、クレアは溜息を付いた。

 

「でもその兆候は、きれいさっぱり無くなってしまったのだけれどもね。」

 

「……クレア!?」

 

 

「だから、私は『安息の地』が幻想だったとは思えない。やり直すことはできないの?」

 

「でも、私はもう同じ誤ちを繰り返したくはない。」

 

 メアリーはクレアの想いを否定する。

 

 

「そう……あなたがやらないのなら、私が彼女を助けるわ。エリザベートを攫って『赤き月』が終わってしまえば、彼女は暴走しないはずよね?」

 

 ………それくらいできるわよね、シド、レミー?

 

 ………向うがこっちの言い分を聞いてくれるのなら、考えないまでも無いよ、クレアお姉さま。

 

 

「クレア……なぜそこまでして……」

 

 クレアは決意を込めた瞳でメアリーを睨んだ。

 

「『赤き月』が終わったら彼女を目覚めさせるの。そこでもう一度話してみましょう。」

 

「でも……エリザベート様はきっと死を望んでいる。」

 

「はん。そんなの話してみなきゃわからないじゃない!」

 

 クレアは続けて言った。

 

 

「こんな終わり方じゃ悲しいわ。メアリーも、エリザベートも、そして死んでいった人たちも……」

 

 メアリーの眼を覗き込みながら続けた。

 

「あなたたちが目指した『安息の地』は幻想なんかじゃなかった。私はそう思う。」

 

 そして、メアリーに手を出しながら言った。

 

 

「だからクリムゾンってヤツをぶっ飛ばして、あなたの王女様を取り返しに行きましょうか。」

 

 そして、クレアは笑って付け加えた。

 

「それに、私のカゲノー家の父方のご先祖様の姉様がエリザベート様なのよ、知らなかったでしょう?」

 

 私のひいひい……ひいひいお祖母ちゃんのお姉さんになるのよ。

 

「それは……クレア。ありがとう。」

 

「さぁ、行きましょう。」

 

「あ、うん……」

 

 そして、三人は階段を昇って行った。*2

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 贄の準備は整い、月は深紅に染まった。

 

「クククク……」

 

 クリムゾンは笑いをこらえることができなかった。

 

「ついにこの瞬間が来たか……」

 

『血の女王』エリザベートを復活させる循環が来たのだ。

 

 

 千年の時を経て、残ったのは始祖の心臓だけだった。

 

 しかし、心臓さえ無事ならば復活する。

 

 始祖とはそういう生き物だ。

 

 

「肉も骨も朽ち果て心臓だけとなっても王女よ、あなたは美しい。」

 

 おもむろに心臓を手に取ると、心臓に語りかけた。

 

「お久しぶりです、我が『血の女王』………。世界を血に染める準備が整いました……」

 

 

 そして、生贄の少年に向かった。

 

「再び世界を血の色に染めましょう。我らに相応しき、鮮血と恐怖に満ちた赤き夜に……」

 

 クリムゾンは、贄の肉体(しんぞう)に、『血の女王』の心臓を入れた。

 

 

「クククク!! ウハハハハ!!!」

 

 

 復活にはもうしばらく時間が掛かるだろう。クリムゾンはここを離れなければならない。

 

 復活した直後の『血の女王』は血に飢えて吸血鬼も見境なく殺す。

 

 女王が落ち着くまではクリムゾンであろうと近付くことはできない。

 

 贄に背後を向けるとクリムゾンは歩き出した。

 

 

「さあ復活を! 愛し御方よ!!」

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

「うわあぁー、これは心が満たされるねー。さすがに吸血鬼の宝物庫ー。なかなかのお宝の山だねー」

 

 クレアたちと別れたレミーは、ついでとばかりに吸血鬼の宝物庫に辿り着いていた。

 

 あれもいい、これもいい、とお宝を物色しては、収納(アイテムボックス)していく。

 

「これは…コッボの名画「ひま有り」……絵画類も収納ー!」

 

 絵画を収納していく。

 

「宝石……加工済みだとかさばるなぁ……ガーデンで再加工してくれるでしょう、収納、収納ー」

 

 宝飾類を収納していく。

 

「他にも金もの物……収納、収納ー。」

 

 王冠や宝剣、刀剣、エトセトラ……

 

「最後に、500円サイズで一枚10万ゼニー、しかもそのまま使える効率と信頼性……金貨も収納、収納ー。」

 

 宝物庫の中身をゴリゴリと収納していった。

 

「シドも一応は不老だし、エルフの生も長いからねぇー……まだまだ全然足りないよー。」

 

 ニコニコしながら、根こそぎ、金貨一枚も残さないように、漁っていった。

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

『血の女王』を贄に捧げた祭壇の下で、クリムゾンは待っていた。

 

「ウハハハハ!!」

 

 満面の笑みを浮かべて。

 

「さあ復活を! 愛しの御方よ!」

 

 千年だ。千年前から次の『赤の月』がくるまで千年まった。

 

「そして夫婦の契りを結ぶ…」

 

 千年の野望が成就する、その瞬間。

 

 

「アイ・アム・アトミック・ミニ」

 

 

 開幕ぶっ放されたシドの必殺技で、蒸発して果てた。

 

 

『紅の塔』の最上階は、きれいさっぱり吹っ飛んだのであった。

 

 そう。最上階()()が。

 

 

 

*1
─正解:レミーと入れ代わっています─

*2
─レミーはシャドウとして別行動を開始した─






 陰の実力者…? 本編の第34話です。

 本編は 2ndシーズンに突入しました。

 話の切れ目の関係で、下はちょっと長いです。

 ここまでGWパワーで書くことができました。できたところまで更新します。


 無法都市編、シドにレミー、更に仲間にいますので、展開は変わって…ます?

 基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。

 カゲマスでのネタバレが酷くて、オリキャラ・オリ展開にしかなりません。


 本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアにローズ、クレアも… 性癖全開です。


 この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。

 他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。

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