陰の実力者になりたくて! 本編の第36話です。
本編の2ndシーズンの無法都市編その第3話となります。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアとローズ、クレアとの関係も…
気に入らない方は、そっ閉じ願います。
──これはそんな「if」の物語──
エリザベートの攻撃により、一部を除いて全員が疲弊していた。
ガーデンのメンバーは『悪魔憑き』の症状が再発していた。魔力の制御を解呪するときのものに変更することがかろうじて動ける状態だった。
ジャガノートは右足を骨折しており、動くことができない。
ユキメは対処する
シャドウ──レミーはクレアと額を合せて、クレアの身体の解呪に集中している。
そしてシドは、どうしたもんか、とのんびりと考えていた。
そして、準備が整ったのか、再びエリザベートは自身の周囲に浮かべた血を、機銃掃射の弾幕のように撃ちだした。
回避不能な絶望的なまでの密度と速度で迫ってくる。
その光景に誰もが絶望し、見ていることしかできなかった。
そう──シド以外は。
「同じ技の繰り返しとは残念ね、これのオリジナルの方を私は知っている。」
シドは左手を前にかざし、青紫色の波動を発生させた。
すると、波動の中に入った血の弾丸は、突然勢いを無くしその場で停止した。
「体から離れた血の制御を奪うのは、そう難しいことじゃあない。」
そう言いながら、
「そして、こんな風に」
左手てフィンガースナップを鳴らす。
シドに向かってきた血の制御を奪い、エリザベートに向かって槍のように飛ばした。
エリザベートは避けもせずそのまま受け、身体が両断された。
だが、すぐに負傷した断面の血から槍を作り出し、シドに向かって反撃した。
「あらとっても元気ね。私のひいひい…ひいひいお祖母ちゃんの姉ならそうこなくっちゃね!」
………レミーどんな感じ?
………もうちょっと掛かるかなー、シド、お姉ちゃんを守ってー。
そして、闘いが始まった。
槍の穂先のように鋭い先端が、敵を眼指して突き進む。
空間を埋め尽くすほどの青紫色の槍の群れがエリザベートに、紅い槍の群れがシドに迫る。
互いに辿り着く前に、相手の遣りと衝突して相殺される。
それが、十、百、千、万の単位で、空中のそこかしこで起こっていた。
繰り広げられる、人外の闘い、美しも苛烈なその闘いに誰もが見入っていた。
「オイオイ、何でも有りかよ。」
さすがのジャガノートも呆れていた。
「無茶苦茶でありんすなぁ。」
ユキメの声にも達観の意思が感じられた。
シドのほんの僅かな槍が、エリザベートの元まで届いた。
その槍で少しの間、動きを封じられるように四肢や胴体を両断した。
………レミーどんな感じ?
………ごめん、もうちょっと掛かる。
どうしたもんかなぁ…このままでは千日手だよ。
血で魔力を回復できるエリザベートに、自力で氣・魔力を生成・精製できる私。
寝起きで暴走しているエリザベートと、エリザベートの暴走を止めたい私。
唐突に訪れた静寂の時。
エリザベートの方は、傷は既に完治しており、周囲に魔力を集めていた。
しかたなく、私も氣と魔力を合一させ、更に練り上げていく。
それだけで風が嵐となって周辺の瓦礫が吹っ飛っていった。
「あの
「はぁ、まだ奥の手がありんすか……」
ジャガノートは悔し気に、ユキメは期待を込めてシドを見ていた。
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ベータは歓喜に震えていた。
ベータには、シャドウ様に対する絶対の信頼があった。
彼女たちがまだ幼く、弱かった頃からずっと、シャドウ様は彼女たちの前で闘い続けてきた。
ベータはその背中を見て育ったのだ。
『血の女王』が相手だあろうと、シャドウ様なら大丈夫!
その安心感から、ベータの眼から涙が零れていた。
──次の瞬間、エリザベートの眼が大きく開き、『血の女王』の魔力が一層増大した。
再び、赤く輝く血を、機銃掃射の弾幕のように撃ちだした。
シドも、再び左手を前に出すと、制御を奪った青紫色に輝く血をエリザベートに向かって槍のように飛ばした。
エリザベートの眼が紅く光り、更に弾幕の勢いが増していく。
それに対応して、シドも制御を奪った血を使って、迎撃していく。
『紅の塔』の上空は、飛び交う弾幕の地獄と化した。
「なんて魔力……! エリザベート様と互角……!?」
メアリーが驚愕の声をあげた。
シャドウ様は、やはり災厄の魔女以上……
しかし、ベータは言葉に言い表せない違和感に気付いた。
ベータは闘いに注視する。
シャドウ様は『血の女王』の攻撃を巧みに防いでいるだけで、反撃に繋がっていない。
ベータの知る普段のシャドウ様なら、敵の攻撃を最小限の動きで躱し即座に反撃に移るハズ。
「……やはり、おかしい」
ベータは困惑していた。
「なぜわざわざ撃ち合いに興じていらっしゃるのですか?」
いつもと違うシャドウ様の闘いに戸惑っていた。
「そこはもう一足一刀の間合いのはず。シャドウ様なら一太刀で……」
エリザベートの槍を弾き、その場に留まる闘い方は、まるで……何か大切なモノを守るかのようだった。
その瞬間、クレアとレミーの頭上にエリザベートの槍が降ってきた。
……それを、青紫色の槍が相殺していた。
それは、ベータや664/665番、それにメアリーにユキメの上に来たモノに対しても同様だった。
─当然、ジャガノートは除外されている─
……まさか……
「まさかシャ……シド様、庇っておられるのですか!? 動けない私たちを!?」
「どれだけ重たかろうと、失うわけにはいかない」
………レミーちょっとキツいんだけど、クレアお姉さまどんな感じ?
………あと少しだから、がんばれ! がんばれ!
「はあぁ……シド様! その慈悲深きお心が黄金のように輝いて見えます!!」
「(お姉ちゃんを)失うわけにはいかない」
………もしもしベータ、クレアお姉さまが今動けないからなんだけど…
「シド様……そんなにも私を……! ならばベータはもう何も言いません!」
………アカン、ベータの何かのスイッチが入ってしまった。
「どうか勝利を、シャドウ様……! 頑張って……!」
………私をシャドウ様って読んでるじゃん! ちょっと落ち着いてベータ。
「頑張ってー! シャドウ様! がんばれぇーー!」
………処置完了! これでお姉ちゃんは大丈夫だよ!
その瞬間、シドの魔力が増大した。
シドは跳躍し空中を駆けると、エリザベートとの間を瞬時に詰めた。
シドの手には、漆黒のメタルスライム・ブレード。
対するエリザベートの手にも、血で形成された紅の鎌。
──そして、三度闘いが始まった。
二人のぶつかり合ったあとが、空に幾何学模様のような、紅と青紫色の光の奇跡を描いた。
縦横無尽に宙を舞い、そこで、あそこで、向こうでぶつかり合い、弾き合う。
離れては弾き合い、時にすり抜けて反転する。
剣戟の音が、途切れずに周囲を満たしていた。
「あれが、盟主シャドウ様…!なんて凄まじぃ!!」
664番は思わず叫んでいた。
「なんで空飛んでんだあのヤロウは?」
「ホンマに……とんでもないお人やなぁ……」
ジャガノートは呆然と、ユキメは
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数えきれないくらいの激突の後、二人は至近距離で相対した。
そこは手を伸ばせば届く距離。
美しき『血の女王』と、青紫色に輝くシドはしばらく見つめ合った。
今までの激しさが嘘だったかのように、静寂が辺りを包んだ。
「今宵の遊びはここまでのようね──女王」
「お名前をお聞かせ願えるかしら、剣士様」
「貴女の妹のひいひい……ひ孫かな。助けてあげる。」
「私の遠い遠い……遠い血族なのね。よろしくね。」
突如、シドの身体を、
「綺麗……」
エリザベートのつぶやきが聞こえてきた。
シドは微笑むと、
「アイ・アム……」
「あぁ……待って! お願い待って! エリザベート様ーーーー」
メアリーの絶叫が聞こえてきた。
エリザベートは目をつぶった。
「リカバリー・アトミック」
シドの身体から、氣と魔力が合一した青紫色の光が発生した。
それは一瞬で拡大して『紅の塔』の最上階を中心に、球状に拡がっていった。
刹那、青紫の光が辺り一面を染めた。
グールにより混乱している無法都市を包み込み──
──グールと化した者達を人間に戻し、傷を癒した。
グール化していない人も、傷が癒された。
そして、『悪魔憑き』状態となっていたガーデンのメンバーを解呪して癒していった。
これにより、無法都市の……赤い月による騒動は終息した。
魔剣士協会は、壊滅寸前のところをギリギリのところで持ちこたえることができた。
……そして蒸気機関車で避難しようとしていた
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「これで良し、と。」
手分けして『紅の塔』の最上階に散らばっていた、始祖の血液のサンプルを瓶に収集していく。
「……こっちは全然良くないけど。」
ベータは自分の血に意識を集中させた。
すると、
「イータがまた暴走しそう。」
溜息を一つつくと、
「行くわよ、664番、665番」
ガーデンのメンバーは連れ立って、ひっそりと『紅の塔』から姿を消した。
そして、『黒の塔』では、ジャガノートが、自室のソファーに身を預けて、酒をラッパ飲みしていた。
「……あの小娘《メスガキ》に、漆黒を纏う魔剣士ども……」
脳裏をあの規格外の闘いがよぎる。
「ヤツらとケンカすんのもおもしれえかもしれねぇなぁ」
魔剣士二人は、無法都市の駅で蒸気機関車を待っていた。
「剣に鎧に、大損じゃねえか……」
「生きてるだけ儲けもんだろぅ。」
「「ハァ………」」
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空気が透き通った秋の朝
クレアお姉さまは、メアリーと結構長い時間話しているから、きっと意気投合した中なんでしょう。
色々あったけど、始祖の吸血鬼の討伐は終わった……ことにした。
私が『血の女王』の討伐を成し遂げた結果、無法都市で蔓延したグール化が解けた……ということになった。
グールも吸血鬼も『悪魔憑き』も、呼び方が違うだけで結局は只の魔力暴走でしかないわけで……
……治すのは簡単だったのだけど、
「というわけで、仮初ではあるけれども『安息の地』として、アレクサンドリアに来てもらうけどいい?」
馬車の中で『血の女王』エリザベートに話しかけた。
「はい。主従共々お世話になります。」
ガーデンに手配して、この馬車や、二人の衣装とか生活必需品等々を準備してもらった。
「イータが人体実験してくるようなら、迎撃していいからね。」
本当は『紅の塔』の宝物庫のお宝で用立てようとしていたのだけど、まさか、それらをレミーがパクっているなんて知らなかったんだ。
「はい。わかりました。」
「一応、始祖の吸血鬼としては安定しているから、吸血衝動も無いし、少々の日の光程度であれば問題ないと思うよ。」
「そうですね。日の光を浴びても皮膚が爛れない、というのはいいものです。」
ガーデンの有志に献血を募るようにするから、血の供給も問題ない……はずなのだけれども。
「また、シドさんの血が飲みたいです。」
何故か私の血の味が忘れられない、っていうの。
「まぁ、ほどほどにね。それにしても、私って魔人と吸血鬼のハイブリッドなんだなぁ…」
「シドさんの血が内包している魔力や生命力が濃厚で、病みつきになります。」
あんまりうれしくない告白なのはなんでなんでしょう。
「エリザベート様、準備はできました。」
すっかりメイドさんになっているメアリーさんが馬車に入ってきた。
「シドさん、いいえシャドウ様。今回は、ほんとうにどうもありがとうございました。」
「いえいえ、アレクサンドリアに着いたら連絡をくださいね。その時に色々とお話ししましょう。」
馬車を降りると、クレアお姉さまが寄ってきて、手を握った。
馬車がアレクサンドリアに向けて動き出した。
それを視界から消えるまで手を振って見送った。
色々あったけど、今回のイベントはこれで終わりだ。
良きせぬトラブルで苦労したけど、ま、終わりよければ全てよし、だ。
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「ごめんね。今回の状況を説明するね。」
「うふふふ。よろしゅうお願いしんす。シド──シャドウはん。」
陰の実力者…? 本編の第36話です。
本編は 2ndシーズンに突入しました。
ここまでGWパワーで書くことができました。
続きは不定期更新になります。
無法都市編、最終話の下です。
無法都市編、シドにレミー、更に仲間にいますので、展開は変わって…ます?
基本カゲマス準拠です…が、オリ展開です(開き直りっ)。
カゲマスでのネタバレが酷くて、オリキャラ・オリ展開にしかなりません。
本作品では、アルファたちの出会いや年齢などがズレ、みんなの性格や嗜好も変わりました。アレクシアにローズ、クレアも… 性癖全開です。
この設定が気に入ってくれると嬉しいのですが。
他にも色々と捏造した設定がありますので、読む際は注意願います。